ところ点さんのレビュー一覧
投稿者:ところ点
葵の残葉
2020/09/26 10:10
女性らしい細やかな筆致が、登場人物の心を描き出す
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本書裏表紙に「兄弟の誰か一人でも欠けていれば、幕末の歴史は変わったーー」と書いてあるが、これは多いに疑問である。
徳川慶勝は、沈思熟考タイプだが優柔不断で器が小さい。一橋茂徳は、意思がなく流され、松平定敬は若過ぎる。あえて言えば、悲劇の会津藩主松平容保くらいだが、結果的には一橋慶喜ほか周囲の曲者たちに引き摺り回されただけだ(同情すべき面は多々あるが・・)。
と、偉そうなことをボクは全く言えるレベルではないのだが、そんな高須4兄弟を描いた、最近読んだ歴史小説では断トツに面白かった作品である。
戦国時代や幕末の話は、男性作家による緊迫した力強いものがほとんどだが、本作品は、それらとは一線を画す女性らしい細やかな筆致が魅力で、そのためか、彼らの心の中、苦悩が絶妙に浮かび上がってくるところが素晴らしい。秀作!
みずうみ 他四篇 改版
2015/10/12 10:28
何度読んでも飽きることがないドイツの名品
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30年以上前の大学教養部時代、ドイツ語の授業で「みずうみ」を習った。ドイツ語のほうは全くモノにならなかったが、これがきっかけでシュトルム作品に親しむようになり、折に触れて(日本語で)読み返してきた。
表題作「みずうみ」のみならず、併録作品も含めて、全般に静謐で写実的な語り口は、ほの暗くも美しいドイツの片田舎を想像させるとともに、登場人物の微妙に揺れ動く心、希望やあきらめ、あるいは堅固なドイツ人気質を絶妙に描き出していて、何度読んでも飽きのこない名品揃いである。
王になろうとした男
2017/10/11 23:22
登場人物の生き生きとした筆致が素晴らしい
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織田信長の家臣の運命を描く傑作集。登場人物の生き生きとした筆致が素晴らしく、時にサスペンスのような手に汗を握る場面もあり、どの作品も読み応えがある。特に、中川清秀の裏切りと荒木村重の復讐を描く「復讐鬼」、津田信澄の信長暗殺画策と自己崩壊を描く「小才子」が面白かった。
エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学
2015/12/27 11:08
名科学者はやっぱりすごい
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カルノーに始まり、トムソン、クラウジウス、ボルツマン、マックスウェル、ギブスほか熱力学、エントロピーに関与した科学者の人となりや、周辺の歴史についても述べられていて、面白く読めた(物理学的な中身は難しいが・・・)。さすがに名を残す科学者は、すごい発想ができるなあと感心する。入門書としてもよいと思う。
2015/08/31 01:04
幸之助さんの真骨頂ここに
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松下幸之助氏はやっぱりすごい人だ。本書を読むと、普通の人があまり深く考えないようなことも、自分なりに掘り下げて熟考し、本質を見極める姿勢を持っていること、そして、物事を多面的に見ることのできる心の広さに感動を覚える。ちょっとでも幸之助氏に近づきたいものだ。
科学者は戦争で何をしたか
2015/08/24 00:48
人智を尽くして天命を待つ
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科学者や技術者は、この世をより良く、より平和に、より幸せにするために、日夜奮闘しているが、これらの科学成果、技術成果が戦争に応用されてしまうことについては、結局為政者に依存し、科学者や技術者はせいぜい積極的に加担しないことくらいしかできず(それすらできない=加担させられる場合もある)、無力な存在であることをあらためて思い知らされた。だからこそ、本書で唱えられている、戦争をしない知恵を絞ることと、積極的に声を上げることの重要性も理解できる。
人智を尽くし、200年後には戦争のない世界が構築できていることを期待するばかりだ。
額田女王 改版
2015/12/31 03:36
激動の時代を生き抜いた知性ある女性像
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周囲を惑わす絶世の美女というようなイメージもある額田王だが、この小説にあるように、二人の皇子に寵愛されながらも、神に仕える女官であることを第一義とした知性ある女性だったのであろう。百済出兵や近江遷都、壬申の乱など、激動の時代状況も詳しく書かれており、日本史の勉強にもなった。
七時間半
2015/09/12 12:41
傑作人情喜劇
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理屈抜きに楽しめる傑作喜劇。それぞれの思惑を持った色々な人物が出てきて、次々にさまざまなことが起こるので、なかなか読むのを中断するのが難しい。喜イやん、サヨ子、有女子、岸和田、恭男など妙な特徴を持つ人物に対して、分け隔てなく愛情を持って描かれているので、ドタバタする割には、どこかほのぼのとした暖かみがある。人情味のあるチーフコックの渡瀬など、脇役も素晴らしい。
悪の出世学 ヒトラー、スターリン、毛沢東
2015/08/24 00:45
とんでもないヤツらがいたものだ
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中川右介氏の本は、複雑な時代状況や人間関係を解きほぐして、大変わかりやすく、一気に読める。権力が人を自己中に変えるのか、そういうヤツが権力を得てしまうのか、翻弄される国民はたまったものではないのがよく分かる。時折、現代の会社の組織にたとえて述べているところなども面白い。個人的には、文化大革命あたりの蛮行をもう少し詳述して欲しかった。
カラスの教科書
2017/10/09 01:08
カラスの面白い読み物
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カラスの生態を、著者が経験した具体的な事例をふんだんに盛り込みながら、面白く描かれている。可愛らしい挿絵もよい。でも、カラスはよく見かけるものの、素人ではなかなか近くで観察できないので、ハシブトガラスとハシボソガラスの違いもよくわからないなあ。
高山右近 新装版
2016/10/15 00:31
政治家に読んでもらいたい
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高山右近の気高い人間性が描かれた本。金沢前田藩に迎えられて(拾われて)以降、マニラで亡くなるまでの話だが、織田信長、荒木村重、豊臣秀吉、明智光秀、徳川家康等に関係する過去の武勇についても、回想のような形で随所に出てくる。ポルトガル人宣教師などが色々出てきて、ややこしいところもあるが、そのあたりは軽く読み流してもいいと思う(というと、作者に怒られるかもしれないが・・)。
現代人にあっても、高山右近のような人格の高さは、大いに見習うべきところだ(特に、政治家は)。カネのスキャンダルにまみれた元都知事たちや、最近よく話題になっている政務活動費をちょろまかす議員たちには、高山右近の爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいものだ。
交流のしくみ 三相交流からパワーエレクトロニクスまで
2016/06/30 00:13
良き復習の友
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交流の初歩から応用展開にいたるまで、大変わかりやすく書かれている。
初歩的な電気回路でも、ちょっと細かいことになると、途端に知識があやふやになっていた小生には良き復習の友であった。
淀川にちかい町から
2015/11/23 23:06
静かな、しかし奥深い短編集
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昭和の大阪庶民の生活と心の内が、静かな口調で語られる。しかし、単に穏やかというわけではない。「子供の死」では、隣家の精神的に不安定な息子に盲目的な愛を注ぐ母親が亡くなるところはグッとくるものがあるし、「おたふく」では、しばらく来店していなかった元の夫が現れることを想像して終わるが、ひょっとすると、元夫は永遠に来ることがなかったという悲しい話とも取れる。奥深い短編集である。
光とは何か 虹のメカニズムから「透明マント」まで
2015/10/12 15:11
ワクワクする光の話
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とてもわかりやすい光学の入門書である。とともに、物理の知識をある程度持っている技術者にとっても、光の色々な側面をワクワクしながら勉強できる楽しい読み物だった。
