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une femmeさんのレビュー一覧

投稿者:une femme

96 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本貝に続く場所にて

2021/11/05 03:54

卓越し、凝縮された表現

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

卓越した表現力や、凝縮され、的確に表される文章に、目を見張りながら読み始めた。

過去と現在ー現在暮らすドイツと生まれ育った日本の東北ー、生者と死者の間を見つめながら、二重に引き裂かれる中を生きるかのような主人公の眼差しを通して、ノスタルジーに浸り切ることのできない記憶を描写しているのではないかと思った。
 直情的な表現ではないが、気持ちが静かに揺さぶられ、心情が浮かび、淡い切なさを呼ぶ。

 不可避な断絶に対して目を逸らすことなく見つめる現実感と、記憶から浮かび上がる像の幻想性のバランスが絶妙であり、上質で濃厚な描写となっている。著者の絵画についての見識も、堅固な下地になっているように思う。

こういう小説作品をずっと読みたかったと、上質な時間をいただいたように思った。

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紙の本

第一部の裏側の物語

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第 一部において描かれた時間を、主人公が別の視点から見直して、描いているのだが、第一部では、美しさやロマンスの雰囲気を醸し出していた物語の、いわば、裏側を垣間見るようである。
アレクサンドリアという都市が、ヨーロッパ化された、中途半端さを持ち、また、ジュスティーヌの策略のような罠を、主人公は、知ることになる。それでも尚、ジュスティーヌが、この土地が生み出した独特の女神のように描かれているのが、面白い。
また、最終部で、時間や記憶について、芸術作品と作家の現実的な生活についての言及が、登場人物らの意見や引用を用いて、主人公の探求として、曖昧に記されるところにも、巧みさがあると思う。
人生の、もっとも濃密な時間を、振り返り眺め描くことでらこのような幾重にも重なる物語となることに、興味深さと、力強さのような魅力を感じる。
最終的に、記憶とは、過去とは、芸術とは、芸術家の生とはというところに、辿り着くのだが、それらの問題に対する答えのなさが、この小説の面白く、素晴らしいところだと思った。

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紙の本

紙の本二都物語 下

2017/06/24 03:23

不朽の名作

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フランス革命時という舞台で、その時代の様子と、個人的な苦悩や葛藤の物語が、どちらかに偏ることなく、巧く描かれ、飽くことなく読み進められる。その一時代の、個人と社会の問題に物語性を持たせて、面白く読むことのできる作品。

それぞれの個人の出自や家族のストーリーを軸にしながら、反面、客観的な視点で、世の不条理が、示される。ダイナミックな舞台設定と、個人的な情が、巧妙にバランス良く織り交ざることで、ごく自然に、しかし、映画のように、読むことができる。

読んでいる中で、何度も、ユーゴの『レ・ミゼラブル』を思い出した。しかし、舞台がロンドンとパリを行き来する二都であることと、革命によって弾劾される側に関しても、平等ともいえるまなざしを当て、人間味ある描き方している。

 とにもかくにも、練りに練られた構成のもと、物語が絡まり合いながら、次第に繋がり収束していく様は、見事としか言いようがない。

(格調を損なわないが、理解しやすい翻訳が、物語の面白さを伝えてくれたことで、読書がすすんだように思う。また、解説が、興味深く、ディケンズの生い立ちなども書かれ、作品との関連性なども、解りやすかった。)

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紙の本

紙の本聖火

2017/05/15 05:42

時代を感じさせないテーマ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

無駄のないストーリーが、わずか三日の出来事を、一日に一幕を当てて、展開される。推理小説仕立てであることも手伝い、一気に読んでしまった。ただ、犯人を探して落着するのではなく、最後の場面は、感動を呼ぶ。

また、短い時間のなかに詰め込まれたテーマは、この時代の作品だとは思えない。今もって、ここに描かれているテーマを考えることは、まったく、時代錯誤ではないことに、驚く。

これまでに読んだモームの作品の中で、これほど、自由な、女性像や男女の関係が、描かれているのを読んだことがなく、その思想に、意外さと驚きと、興味と敬意を抱いた。

(解説にもあるが、戯曲として、舞台で演じるのを見るよりも、もしかしたら、文字を目で追う形で、読む方が、楽しめるのかもしれない。)

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紙の本

紙の本虹いくたび 改版

2016/05/13 05:21

美しい日本語

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

以前にも、一度読んだことがあったが、やはり、日本語の美しさと、その世界観の綺麗さには、溜息が出る。改めて読んでみると、他者との距離感が、現代とは異なるように感じた。

なかでも、女性のしぐさや振る舞いが現代とは異なり、一見すると、しおらしさだけが、目につくようだが、凛とした強さが見え隠れする。登場する女性、それぞれが、底にある強さやしなやかさ、したたかさ、プライド、そのようなものを、心に抱え、支えられ、突き動かされているようだ。その様子が、日本人らしく慎ましやかで、美しい。
 
 このような美しい日本語と、日本人にしかないような<間>が、美しく存在した世界が、眩しいような、羨ましいような、切ないような、また、懐かしいような気持ちになる。

 折につけて、何度も読み直したいと思った。

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紙の本

紙の本わたしたちのすべての昨日

2016/04/12 18:04

おススメしたくなる一冊

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

イタリアのある家族の物語。隣人や友人との交流や迫り来る戦争のなかで、一家族とその子供たちの成長が描かれている。読んでいると、端的な言葉を綴っているのに、情景や人物の人となりが、広がるように想像できる。イタリアの雰囲気も伝わるのはもちろんのこと、単に、本を読むことの面白ささえ、思い起こさせてくれる、そんな素朴さもある。

 物語に流れる時を追うように、読み進むうちに、「これは小説なのか、作者の物語なのか」という疑問が、何度も浮かんだ。解説によると、自らの人生を投影した人物(主人公のアンナとその夫)なのは明らかだが、そのほかの設定は、作者が創ったという。解説には、本書の後に書かれた『ある家族の会話』についても書かれている。どちらの作品も、飾り気がないのに、品があり、(『ある家族の会話』は、ユーモアもあり)とても、素敵な作家だと思う。

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紙の本

紙の本百年の散歩

2020/03/17 03:18

現代詩のような短編集

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

言葉遊びが、ところどころに散りばめられた現代詩のようであり、しかし、エッセイのような、一つずつの物語になっていて、とても面白い。

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紙の本

紙の本不時着する流星たち

2019/06/30 06:16

はみ出した者らの物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

片隅に居るようなひとや、片隅にあるような物語が、ひっそりとだが、強く存在していることを、想像させてくれるような短編集だと思った。
ささやかに生きることを、あるいは、片隅に目を向けることを肯定することで、世界は、肯定的な広がりや、やさしさ、面白みを持つのかもしれない。

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紙の本

紙の本詩の誕生

2019/06/15 04:11

詩を書く人から見た問題についての対談

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この対談は、詩を書く人や、物語を書こうとしている人には、共感するところが多分にあるだろうと思われる。
詩を書くということ、詩とは何か、日本と西洋の世界観の相違について、自身のなかで、あやふやなまま、もやもやとわだかまっていた問題が、お二人の言葉で、織り成されていくようで、面白かった。同人誌や結社の話題の辺りでは、日本の現代詩が、なぜか一人遊びになってしまうことの問題や、閉塞的にならずに、競いながら、個性を出して、プロの詩人たるべきという、的を得た指摘に、非常に納得し、励まされるように思った。

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紙の本

紙の本小さな美徳

2017/09/11 01:18

強さに包まれた哀しみと切なさ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ギンズブルグの著作のなかで、最も彼女の人生や私生活、彼女の想いや気持ちがストレートに描かれていように思う。

友人でもあった作家パヴェーゼのことが描かれるなど、それぞれの章に青春、友愛、家族、郷愁、望郷などが、詰まっている素敵な本。

「アブルッツォの冬」の章の終りに書かれた言葉、「夢はけっしてかなわず、私たちはそれが砕けるのを見たとき不意に、自分たちの生活の最大の喜びは現実の外にあるのだと理解する。それらが砕けるのを見たとき、それらが自分のなかで燃えていたときへの郷愁に苛まれる。私たちの運命はこのような希望と郷愁の連続のうちに過ぎゆく。」を読んだとき、共感と感動で、胸がいっぱいになった。

解説でも指摘されていたが、どの章にも、どんなことが起ころうと、どんな気持ちになろうと、当然のように、前を向いているような強さが感じられた。その強さの中で、小さくなったかのような、哀しみや切なさに、胸がじんとなる。
また、その強さは、人生に対する愛から生じると気付かされ、あるいは、人生を愛する気持ち、そのものとも思われ、納得すると同時、はっと目を覚まさせられたかのように、勇気づけられた。
 
 また、第二部では、著者の人生哲学や、書くことについての考えが、力強く記されていて、興味深かった。

折あるごとに、読み返したいと思った。

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紙の本

紙の本迷子たちの街

2016/10/30 06:18

理由の付けられない大切さ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

とりとめのない時間のなかで、日々、起こる出来事がある。それらを大切に思う過去として振り返ってみても、やはり、そのような過去の日々は、とりとめがなく、纏めることはできないだろう。そんな、時の流れからあふれてしまう、日々を、あふれる形のまま、描き取ったような物語。
 そうして描かれる過去は、孤独であり、現在の時間の流れでは、主人公に大きな変化が起こらないために、とても静かだ。また、気取らない文体や表現が、軽やかな切なさをそっと呼び、静かに心に響いてくる。
 ある時期の<過去>が、わけもなく大切で、一つの理屈や形で説明できない時間であることを思い出させてくれる小説だと思った。

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紙の本

作品を読むきっかけに

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

編者も言うように、この本を読み、トルストイと大作『戦争と平和』を読むきっかけになると思う。あまりにも偉大で、また長編ともあり、これまで手付かずだった私も、この本の、編者による物語の大胆とも言えるダイジェストを読むことで、是非、作品を、丁寧に呼んでみたい気持ちになった。
 このダイジェストを読んだ印象は、当世の貴族の生活と、戦争により変化した生活が、人の生死という普遍的なテーマと相まって、三人称による冷静な物語運びと、登場人物らの細かな心理描写により語られ、戦争を題材にした小説の、まさに「お手本」のようだと思った。例えば、イレーヌ・ネミロフスキーなども影響を受けテ執筆したのだろうか...。
 
 その他、トルストイの短編も、いくつか監修されており、面白い本だと思う。

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紙の本

紙の本つぐみ

2022/04/27 02:31

日常のなかの温かさ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

時に、自分の意思とは別に、否応なく、自分たちを取り巻く状況や景色が変わってゆく。そのことを知りつつも、変わらないほど、やさしい時間を共に過ごすこと、当たり前にあるような時間を思い出す思いだった。温かい気持ちに包まれるように感じた。

 かつて、主人公たちと同じぐらいの年齢の時に読んだときとは異なる感動をもらいました。

身体感覚の健全さは、時に弱く、儚く、意地悪で、不安定でさえある人間の強さだと、ひしひしと伝わりました。人間の根底に、どんなときにも流れている強さを、思いださせてくれました。

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紙の本

紙の本ダロウェイ夫人

2022/04/26 04:22

現実の時間の流れと詩的なもの

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

現実を生きる人々の営みが描かれていることを感じた。そこには、時間の流れがあり、そのなかで、登場人物のそれぞれが、各々の気持ちや感情を抱き、行動し、過ごしていく。それぞれの内面にある考えは異なり、対立さえしている。
 見え隠れする客観的な俯瞰性が、全体を纏めているからだろう。現実のなかでの、細々した葛藤を描きながら、それが、大きな思想や詩的な美しさに繋がっていることが読み取れる。
 終盤にかけて、ウルフ作品に、総じて見出される、現実と詩的なもの(芸術)の葛藤の描写が顕著になる。様々な要因により、葛藤に打ちのめされた者も描かれるが、現実に溶け込ませて流れていくものとして、物語は、進み、閉じられる。
 素晴らしい作品だと思うと同時に、ウルフ作品のなかで、どういった位置付けができるのか、気になった。

 (登場人物の一人である、家庭教師の女性の眼差しや考えが、やや真実味に欠ける印象があり、理解しにくく思ったが、解説を読み、納得できるように思った。)

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紙の本

不朽の名作

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主題や構成に、非の打ち所がない。

 深みと儚さ、真剣さや若さとそね対局にあるもの、そして、中立的なものや凡庸さなどの多くのことが、人が生きる様相から見出されることを、劇の形式を生かして描かれている。

不朽の名作というのは、こういうものだと思った。

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