lookさんのレビュー一覧
投稿者:look
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紙の本キャプテンサンダーボルト
2015/01/31 23:56
二人の有名作家の競作であることを忘れて
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私がこの本を手に取ったきっかけは、あの阿部和重とあの伊坂幸太郎の競作だからだった。このふたりなら、という期待。阿部氏のインタビューの中から言葉を借りるなら、ふたりの「陰謀論的な思考」に期待したと言っていい。
そして(やはり)二人の作家は期待に応えてくれた。
「ひねくれ者で無鉄砲」な相葉時之と「理知的」な井ノ原悠。水と油に見えるふたりは、しかし、同じヒーロー戦隊が好きで、「ここぞというときに不思議な力を発揮する、唯一無二のふたり組」。ふたりは高校時代に一度再会し、そのときのある出来事が原因で関係が壊れ、疎遠になっていた。そんな相葉と井ノ原が、偶然にも映画館のトイレで十二年ぶりの再会を果たす。それぞれに悩みを抱え、窮地の中にあるふたりが同じ目的のためにもう一度手を組むことに。
その目的は、カネ。
墜落したB29、村上レンサ球菌、公開中止となった映画『鳴神戦隊サンダーボルト』...物語が進むにつれてこれらのキーワードが繋がっていく。
ひとたびページを開けば、二人の有名作家の競作であることなども忘れて夢中で読んでしまうだろう。
相葉と井ノ原の目的はカネだが、ふたりは自分自身の欲望のためではなく愛する家族のためにカネが必要という点でも共通していて、だからこそ読み手は二人を純粋に応援できる。
スリルを齎す凶悪な追手に物語を引っ張る謎と陰謀、感情移入できるキャラクターたち。すべてが揃った最高のエンターテインメント小説である。
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