joe90さんのレビュー一覧
投稿者:joe90
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インフェルノ 上
2015/02/23 22:00
インフェルノ
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『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチコード』『ロスト・シンボル』に続くラングドン教授ものの第4作である。例によって宗教象徴学の権威ラングドン教授が古蹟・古跡を舞台に持てる知識を駆使して謎に挑む。
今回ラングドン教授はイタリア・フィレンツェにある病院で数日間の記憶を失った状態で目覚める。どうやら自分は銃撃され、弾丸が頭部をかすった衝撃で記憶を失ったらしい。しかしなぜ自分は銃撃されるハメになったのか、しかも記憶では自分はハーバードに居た筈なのに。
混乱する教授の元に暗殺者が現れる、間一髪病院から脱出した彼はアメリカ大使館に助けを求めるが隠れ家に現れたのは先の暗殺者であった。アメリカ政府も自分の敵なのか、自分が追われる理由もわからないまま、彼は持てる知識を頼りに逃走をし続ける。
新刊紹介風に導入部を書いてみたが、キャッチーでサスペンスフルなのは相変わらずである。
し・か・し、このサスペンスは全て「都合のいい記憶喪失」の上に成り立っている。
小説・映画でさんざん使い倒されているが、この「当人の知識・経験・判断力に何の影響も与えず一定期間の記憶だけ忘れる」という記憶喪失って本当にあるのか?
たとえあるとしても、失った記憶が事件の核心部分だけというのは都合が良すぎないか。更に言えば、お話が進行するにつれ記憶の断片が(サスペンスを補強するように)蘇ったりするのも都合が良すぎないか。
最終段、記憶が蘇るとそれまで主人公を悩ませていた謎が解け、埋まらなかったピースが埋まり、霧が晴れるように事件の全貌が明らかになって大団円となるのだが。これを予定調和、ご都合主義と言わずしてなんであろう。
もう全ての出版社は作家に記憶喪失禁止令を出したほうがいいんじゃないだろうか
鈴木さんにも分かるネットの未来
2016/01/18 00:06
浅い考察?
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私としてはそれなりの知識のある分野もあれば、まるで知らない世界の話もあってふんふんなるほどと読んでいたのだが。電子書籍についての章に到り、冒頭で「いずれ紙の書籍はなくなる」と断言されたのにはショックを受けた。
ネットと出版の双方の要職にある人間が言うのだからこれは避けられない未来なのかと思ったのだ。
しかし! その理由というのを聞いて唖然とした。電子書籍が紙媒体の本にとって替わる理由というのが。
1・電子書籍は紙媒体の本と比べ軽く携帯性に優れている
2・紙媒体と比べ省スペースである
3・文字列の検索が可能である
4・製作コストが安い
であると言うのだ。
「は?正気ですか?」というのが直後の私の反応だった。
それはレストランで食事をしている人に「この丸薬なら、持ち運びに便利でどこでも栄養補給ができて、時間も取られず、しかも安いですよ」と言うようなものだ。
まあ、川上氏といえど食に対してそんな事は言わないと思うのだが読書に関しては効率が全てのように言うのは何故なのだろう。
と疑問型で書きはしたが、おそらく氏に取って本は知識を得るツールでしかないのだろう、ならば効率がいい方に決まっている。
しかし「読書」は作業ではない。
重厚な装丁の本の分厚い扉を開けると、一転して繊細な薄紙の見返しが目を引き、その後ろでは紙質から、書体、そのポイント数に一分の緩みもないタイトルが読者を迎えいれる、ページをめくると、行間の狭い2段組の本文が現れ、読者にその後の長い旅路を予告する、といった舞台装置まで含めた体験を楽しむものだ。
こう言っては何だが川上氏は幸福な読書体験をしたことがないのではないか。
あまりに面白く、寝る暇も惜しんで読みふけり、次第に減っていく残りページを見て「この魔法のような時間もあとわずかで終わってしまう」と悲しい思いをしたことがないのではないか。
右手は飛ぶようにページをめくり、しかし終わりが来るのを少しでも遅らせようと、その右手を左手で押さえるというようなマネをしたことがないのではないか(この行為、自分だけかと思ったら同じ事をしている人がけっこう居るので驚いた)
「『姑獲鳥の夏』も異常な厚さと思ったら、出す本出す本、どんどん厚くなっていって、しまいにはコロコロコミックと見まごうばかりの縦横比で、これはどうなるのかと思ったんだが、今度の『塗仏』ちょっと薄くなってないか? え? 前後巻?! これで半分?合わせてこの倍? あはははwwwwwww、京極どうかしてるぜ(狂喜)」というような思いをしたことがないのではないか。
つうか、きっと無いのだろうな。
読書とは本を手に取ることから始まる「体験」なのだ。
書籍の未来について語るなら、書痴の意見も聞いてみたらどうなのかと思う、リサーチした上でやはり電子書籍は紙媒体に取って替わるという意見なら耳を傾けてもいい、しかしここまで浅い分析で書籍の未来を語られてもまるで信用ならない。
そして、ここが重要なのだが、こうなってくると他の項目に関してはどうなのか?と思わざるを得ない、他の考察でも実はこの程度の分析でモノを言っているのではないだろうかということだ。
私自身は川上氏の人となり知識、経験については何も知らない、従って言っていることにどれだけの重みがあるのかはわからない、その手がかりは自分のわかる範囲の事についてどれだけ相手が「わかっているか」で判断するしかない。
そういう意味で、私としてはこの本は傾聴するに値しない本であると判断せざるを得ない。
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