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arima0831さんのレビュー一覧

投稿者:arima0831

57 件中 31 件~ 45 件を表示

この症例に特に関心がない人であっても興味深く読める

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ADHDまたは「注意欠陥・多動性障害」と言われる発達障害は、最近かなりいろいろなところで取り上げられて、世間の認知度も高まってきているらしい。本書の作者。星野仁彦氏は精神科の医師なのだが、実はご本人もそれと気づかぬうちに幼少期からこの障害で苦しんでいた人で、現在は第一人者として多くの著作を出している。

彼の過去の著作は、ADHDの症状や症例をわかりやすく解説することに主眼を置いていた。そこをさらに推し進め、本書では漫画家で作家のさかもと未明さんという「一患者」の協力を得て、そのライフストーリーから実際の治療のプロセスまでをドキュメンタリー風に追いかけることで、この障害に興味関心のある人がよりリアルにADHDの実態を感じられるような形になっている。

さかもと未明さんのライフストーリーは切ない。
本人がそれと自覚せぬままに苦しんできた違和感や、父母の抱える問題と彼女に対する虐待に近いような言動、学校でのいじめ、大人になってからの飲酒問題、異性とのかかわり方など、普通であればなかなか赤裸々に公開するのが辛い話ばかりだ。
しかし、辛いながらも大きな波乱に満ちたストーリーでもあり、この症例に特に関心がない人であっても興味深く読めるものなので、多くの人が手に取りやすい良書になったと思う。

本書の面白いところは、そうした一連の辛い話をADHDという症例で裏付けていった、という試みにあると思う。こういう話の場合、必ず当事者を何らかの形で責めたり反省させたりすることになるのだが、そこはスッパリ置いといて何故こうなったかを症例を背景に解説してくれる。だから何がどうなってこうなっていく、というプロセスが良く見えてくる。

これはあくまでも一例であって、他にも様々な形があるはずなのではあるが、表現者として成功している一人の大人の女性が医師が向き合って一冊を出した、という功績は大きいと思う。こうした話で世の人がこの症状に注目し、単なる人格的な不全として自信を失っていた人々が「生き直す」きっかけになるとしたら素晴らしい。

でもないものねだりながら一点だけ。
本書やその他の著作を通してADHDという発達障害を知った結果、本人や家族などが治療したいと考えた時に、どこに行って何をすべきかの指針が欠けているのは残念なところだ。実はこの症例をきちんと治療できるところは少なく、一般の精神科ではやはり満足な対応がしがたいのが現実らしい。だから情報の補足をしたくてもしようがない、という事情はよくわかるのだが。

まずは症状が世間に認知されるのは大事なことであって、そういう意味では貴重な一冊なのは間違いない。だからこそさらに一歩踏み込んで、社会を啓蒙し現状を変えるアプローチが欲しい、と痛切に感じた。

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紙の本みんなバーに帰る

2015/09/27 23:36

泥酔文学・・・

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昨年2014年末に刊行された『シスターズ・ブラザーズ』の著者の処女作。前作は実に「ヘンな小説」で、まるでアルコール中毒者の妄想を縷々綴り立てたようだったが、実はこの作家は正真正銘ダメな酔っぱらい出身だったらしい。本作はまさにそんなアルコール中毒者の妄想と現実が展開されていく。

原題は"Ablutions: Notes for a Novel"。
abulutionは「洗礼」の水をかぶる部分、ということだ。Notesというだけに、今後小説を書いていく上でのスケッチ的な作品である、というメッセージもありそうだ。

本書の場合、水の代わりに全身に酒をかぶったような酔っ払いの様々な痴態が、やっぱりアルコール中毒者のバーテンダーの目線で描かれていく。基本的にこういう話は、酒を飲まない人や飲酒を嫌う人には理解不能だろう。だから、とりあえず飲酒に良くないイメージがある人が読んでも、きっと面白くもなんともないと思う。まずそこは確約できる。お酒なんかダイッキライ!ていうタイプの人は読んじゃダメ。

で、酒をよく飲む人(ワタシのような)にとってはどうかと言えば、これはこれでかなり耳が痛い話が展開されていく。酔ってどうなって、ああいうことをしてこういうこともする・・・アイタタタ、て感じ。とりあえず楽しくはないが、相当リアリティーはあった。

背景になるバーは、入り口に屈強なセキュリティー担当者を置いて、マネージャーにバーテンダーなど5~6人くらいは働いているような、そこそこ大きな店だ。場所がハリウッドなので、最近の日本のように飲酒運転が徹底管理されてもいないし、ドラッグ関係もはるかにおおらかに濫用されている模様。
日本でも無いとは言わないが、もうちょっと管理が行き届いた状況ではあろう。こうした彼我の違いも面白い。

なにより一番興味深いのは、店の雇われバーテンダーが、なんだかんだと常連客にタダ酒を振る舞いまくる部分ではあった。実際その結果、店は潰れそうな感じなのだが。日本の場合、バブル期のディスコだのカフェバーだのではあったのかもしれないが、最近はあまり聞かないパターンだ。

そんなグダグダな話が、それなりの流れ(ストーリーでもないが、それに近いもの)を持って流れていくので、案外スッキリと読み切れてしまった。二作目を先に読んだイメージからすると、そこは非常に意外だった。Notesというわりに、各エピソードがユルユルといい加減に連携している。

第二作目のほうがヘンでミョーな話なのは、背景がバーじゃないからなのかもしれない。
そういう見方をすると、この作家は今後「泥酔文学」の道を究めていくのかもしれませんなあ。

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なかなか面白かった♪

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チョイチョイと最近話題の社会現象に絡めて事件を起こして、マコトとタカシを適宜動かして、事件解決&なんとなくいい感じのオチを付けて中編一丁上がり。四篇くらい溜まったら単行本化・・・という「商業スタイル」が確立した感のあるIWGPシリーズ。ほぼ水戸黄門レベルの安定ぶりにちょっと嫌気がさしている。

でも本作は番外編で、長編になっている。雑誌連載ではなく書き下ろし。
狂言回しとして果物屋の息子の真島誠が出てくるのは同じなのだが、メインとなるのはGボーイズのキング安藤崇、それも高校時代と聞いて思わず手が出た。ワタシに取ってこのシリーズで一番魅力的なのは、クールで美形でむやみに強いタカシ。しかも高校時代、Gボーイズのキングになる前段。最初にGボーイズを立ち上げた、タカシの兄タケルも登場する。

このシリーズの面白さは、結局のところ町の不良少年らの瑞々しさと、登場人物のキャラクターにある。どうでもいい社会現象とセットにしないで、小説としてストーリーを追いつつ、魅力的な登場人物の言動を楽しめる本作は、このシリーズでは久しぶりに楽しめ、熱を感じるものだった。本シリーズのように中編をチャッチャとヤッツケてホイな感じもない。
あくまで軽い小説で長くもないので、ちょっとした息抜きにちょうどいい。

よろしいんじゃないでしょうか。
で、この調子で本編ももうちょっとどうにかなってくれないかねえ・・・。

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紙の本恋するソマリア

2015/08/22 03:19

どうせ読むなら前作から・・・

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高野秀行氏のソマリアもの、第二弾。『謎の独立国家ソマリランド』の姉妹編だ。

前作は500ページを超える分厚さで、ソマリアの地誌背景政治状況などを、面白おかしくも綿密に解説しながらのルポルタージュだった。構えとしてはこっちの方がかなり重厚で、本としての評価はやはり圧倒的にこちらが上だとは思う。

今回の本は、その後の作者のソマリアとの関わり合いを描いたもの。
細かい背景をきっちりとまとめあげた後段なので、本作では心置きなく高野節が炸裂した取材記となっている。全体の構えは軽めで、サクサク楽しく読める感じだ。

しかしそうやってサクサク出てくる話は、作者の現地化と相乗して危険度も難易度もはるかに増している。

再びソマリランドに入国した作者、まず早々に警察に連行されてしまう。その(ユルい)顛末は・・・?!

そして再びソマリアの首都モガディショへ。そして南部ソマリアに取材に入り、ついに現地で戦闘に巻き込まれる、危険極まりない取材の一部始終。

骨子としてはおそろしくタフでワイルドなものだが、これが一貫して例の「高野節」でユルユルゆるるんと語られていく。実際に命がけになったシーンもあるのに、全てが絶妙な脱力感で支配されていて、そこにだらんと身を委ねているだけで脳内にヘンなα波が出始めるようだ。

この独特な語り口を通せば、話がなんであってもとりあえずおもしろ楽しいのだが、現地で戦闘に巻き込まれた一部始終から、家庭の主婦に料理を習う経過(実は戦闘取材並みの難易度ではあるらしい)まで、ネタの鮮度がまた比類なく高いのだから、スゴイを通りこして呆れかえった話。
そんなこんなで、スルスルと楽しく一気に読んでしまった。

そうしたソマリアと作者の「蜜月」は、一体どのような展開を見せるのかと思えば、あれあれあれれれれ、と不思議なところに着地。はてさて、今後はどうなっていくのだろうか?

前作を読まなくても十分面白く読める一冊だとは思うが、ソマリアの全容をある程度イメージできる状態で読んだ方が面白さは広がる。どっちにしろ本作を読んだら、まず前作も読みたくなるはずなので、どうせだったらまず分厚い方から攻めるのがオススメかも。

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紙の本ブラックオアホワイト

2015/08/19 00:37

浅田次郎、復調か?!

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本作の主人公はエリート商社マン。
古き良き、と言われた時代から少し時代が過ぎて、ちょうど今の団塊世代が若手から中堅ベテランになるくらいの時代が背景になっている。携帯電話もEメールもないころだから、時間感覚は今よりかなり牧歌的だが、それだけに海外で現場に立ち向かうビジネスマンたちには、その場その場を自己裁量で決めて引っ張る胆力が必要とされた時代だったともいえる。

そんな主人公がふとしたきっかけで、眠るときに白い枕か黒い枕を選ぶことになる。白い枕を選ぶと、極上の幸福感に満ちた夢を見られるのだが、何故か続いて黒い枕で眠ることになり、そのたびに闇と恐怖に満ちた夢を見る。そしてその後、現実のビジネス上の苦境に陥って左遷されてしまう。

ビジネスと夢の舞台はスイスの湖畔、パラオ、インドのジャイプール、北京、そして京都。
それぞれの場所を背景に、昼間は商社マンらしい仕事を展開する主人公が、夜に見ることになる「良い夢」と「悪い夢」とは・・・?

話はわかりやすい結末に至りながら、うまくオチを付けずにふんわりと流れる部分もあり、なんだか不思議だがちょっと面白い後味となった。
つまるところは「昭和の一時期、日本の男が追い求めた夢って何だったんだ?」という問いかけのように思えるエピソードの数々が、リアリティーと夢幻性を併せて描かれていく。たまたま商社関係者が身近にいろいろといるので、不思議な親近感を感じながら読んだ。

それなりにうまく枯れてきた浅田次郎の、一つの到達点なのかもしれない。
上手くできていて面白い小説だった。

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紙の本

2015/08/19 00:28

この作家にしては比較的軽いが読み応え十分

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主人公は中学生男子。家族の問題を抱え、受験勉強に向かう中、ある夏の日に部活動で人里離れた地の合宿に向かう。このエリアは携帯の電波が一切届かない陸の孤島だ。

この合宿には、彼に仄かな思いを寄せる女子も、素行に問題のある男子や引きこもりの女子も参加する。引率する教頭は年中説教ばかりの辛気臭いオヤジで、補佐の女性教諭もぱっとしない地味なタイプで・・・と、始まりはなんだか青春小説くさい。

やれやれ、こういう甘酸っぱいジュブナイル風味なお話、苦手なんだがなあ・・・と思いつつ頁をめくっていったら、突如キャンプ地に凶悪な半グレ集団出現。えええ、なんだなんだ?!と驚いている間に、血まみれの大殺戮が始まる。

主人公と仲間たちは半グレたちに捕われたが、その窮地を救ったのは引率の地味な女性教諭。彼女は冷静沈着に暴力集団に反撃を仕掛けていく。彼女の謎に満ちた正体とは・・・?
殺るか殺られるかの凌ぎあいがエスカレートする中、中国マフィアも絡んできて血生臭さはいよいよ増していく。果たして無力な少年少女らは生き残れるのか・・・?!

現場となるキャンプ地は、人里離れているとはいっても都会からもそこそこアクセス可能な場所らしい。誰でも一度は行ったことがあるような、首都圏から数時間くらいのありふれたキャンプ地のイメージ。知っているところと簡単に重ねられる意外な身近さで、それがむしろ怖さを増幅させてくる。

そしてそんな身近な場所で展開される戦闘シーンが凄まじい。派手な銃撃戦から激しい格闘技まで、この設定で良くこれだけバラエティー豊かな状況が展開できるな、とつい感心してしまうほど。作者の描き出すこうしたシーンの迫力は過去の作品で体験済みだが、今回も相変わらず強烈なリアリティーに痺れさせてくれる。

話の展開はもう一切予測不能。
この作者の作品としては、比較的軽く書き飛ばした感じのする話ではあるが、話を一切破綻させることなく読者を一気にラストまで攫っていく。派手な戦闘シーンや意表を突く展開の連続は、うっかり間違えるとバカっぽくなってしまうのだが、徹頭徹尾きっちりとリアリティーをもって迫ってくる。そして読後感もよい。
ふと気づいたら完全に話に引きずり込まれて一気読みだった。
数時間読み耽ってスッキリできる、優良エンタテイメント小説だ。
暴力描写がダメな人だけはやめておくのが良いかなあ、とは思うが。

で、なんだかんだと、決まり手はカントリーマアム、だったり。
この辺のひねりが、若干クサイがいい味を出していた。

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紙の本神さまがぼやく夜

2015/08/19 00:22

真面目なクリスチャンは激昂しそうで面白い(?)

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神様が自らの「男性性」も露わに、かつエゴイスティックでちょっと間抜けに「現代人類とコミュニケーションを取ろう」と悪戦苦闘する話。

まずは手っ取り早く、スタート地点はバーのカウンターから。隣の女性に名前を聞かれて「アル・ラー」とか「アル・マイティー」とか名乗ってしまう、など、いいのかこんなの・・・?!なネタが続々と展開される。あくまで寓話とはいっても、これは生真面目なクリスチャンがだまってはおるまい、と思えるほど、思いっきり神様が茶化されまくっている。
英語小説版『聖おにいさん』とでも言おうか。

どのネタもかなり面白い。クスクス笑いながら楽しく読めた。
翻訳がちょっと厳しい場面もあったが、これは難しい話だから仕方があるまい。
天使オラフに東北弁をしゃべらせる日本語訳はやりすぎだと思うが。
原文ではフツーに格調高くしゃべっているではないか。

で、最終的には思いっきりふざけているようで、案外真面目なオチが来たような気はする。
個人的にはもうちょっと振り切れて欲しかったような気もするのだけれど。
特に神様のバー・カウンターでのコミュニケーション能力の発展先は、意外にまともな成果をあげるので、下劣な興味とともに読んでいたワタシは、ちょびっとがっかりしたのだったり・・・。

作者のマイケル・Z・リューインは『のら犬ローヴァー町を行く』も面白いです。
神より犬の話のほうが良かったかも。

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紙の本近所の犬

2015/08/10 12:30

『昭和の犬』は何故あんなに泣けない萌えない犬モノになったのか?

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同作家の『昭和の犬』という本を読んで、まず実に驚いたのが、あまりに淡々とした筆致。犬猫ものでここまで泣きも萌えも入らない話を書けるって、むしろ究極の技ではないだろうか、と。関わりあう犬たちに向ける強い愛情は感じられるのだが、どうもなんだかあまりに抑えた感じで、そこがミョーに引っかかっていた。だから本書に手が伸びた。

さて、また同著者の犬ものである。
なんでも本書は作家のリアルな「犬ライフ」を反映しているという。
なぜ『昭和の犬』は、あんな泣けない萌えない犬話になったのか?

それは、作者があまりに激しい犬狂いだったから、という真実が、ここでは臆面もなく語られる。
本書のエピソードはすべて、作家の「近所の犬ストーカー生活」なのだ。

作者は犬狂いなのだが犬が飼えない環境。だから近所を散歩する犬をこまめにチェックし、仲良くできる犬の目星を付けては飼い主とうまく仲良くなれるように努力し、場合によっては散歩のタイミングで電話をもらえるように頼み込む。ワンコと仲良くするために、スッピン・ボロ服・無香料な生活形態となる。なるほど、平素そこまで思い詰めているからこそ、逆に「犬小説」を書くと極力できる限りダダ漏れする愛情噴射を抑え込んでしまうことになるわけだ。ううむ。

だから『昭和の犬』は、あんなそっけない小説群になってしまったのだが、しかし脈々と滾り立つマグマのごとき犬愛が抑え込めない。それがエッセイ集という形で一気に逆噴射してくるのが本書、てことらしい。わかりやすい。いや、勝手な解釈にすぎないのではあるが。

とにかく圧倒的な「犬愛」を思うさま噴出し、近所の犬を追いまくる犬ストーカー生活。その姿はなんだか共感できるし面白い。
かなりベタではあるが、仲良くなった犬たちの姿は、なんとも実にかわいらしいのでもある。
萌え満載。で、泣きはなし。だから安心して読んでいい。

まずはワタシにとっては「あの本の謎解き」としてなかなか面白く読めた。
犬好き必読、かも?

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紙の本時限紙幣

2015/08/10 00:09

クールな悪党が疾走する!

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巨額の現金強奪を生業とする世界的なプロが主人公の犯罪小説。

一昔前の銀行強盗は、拳銃片手に銀行に押し入って、カウンターで「金を出せ!」だったが、いまやそこから数十年たって、すっかりハイテク化。昨今は極めて高度で緻密な犯罪となり、分業化も進んでいる。
その仕事の一つが「ゴーストマン」で、事件関係者の痕跡を幽霊の如く消してしまう役割だ。他に「ホイールマン(運転担当)」、「ボックスマン(金庫破り担当)」、「ボタンマン(荒事担当)」と色々な役回りがあって、企画立案者の「ジャグマーカー」の声掛けで世界各地から事件ごとに集まってくる。主人公はこの「ゴーストマン」だ。

二つの現場が同時並行で描かれていく。一つはアトランティックシティ。もう一つは5年前のクアラルンプル。先の事件が失敗し、48時間後に爆発するように設定された現金200万ドルが行方不明に。この金の行方を追うように依頼される主人公。後の事件で主人公は致命的な失敗を犯していたため、そのオトシマエとして嫌々追跡に乗り出すのだが…。

スムースな語り口と臨場感で、瞬間的にストーリーに引きずり込まれた。話の牽引力は一級品で、一度読み始めると、400ページのラストまで息もつかせず読み耽らせてしまう。
登場人物がどいつもこいつもとんでもない悪党ばかりで、強烈なノワール感を充満させている。主人公の偏執的なほどのプロ意識が実に細かく描き出されていく一方で、血も涙もない殺戮シーンや戦闘シーンもふんだんに盛り込まれてくる。勢いだけでなく、ディテールもきっちりした話で、これがデビュー作とは到底思えない。凄い新人作家が出てきたもんだ、とただ驚きながら読んだ。

まあ、非常に細かいところを突っ込むと、あれ?と思う部分もなくはないのだが。例えば、一流ホテルの使い方なんかはかなり大ざっぱだ。これだけ偏執的なプロがそれはなかろう、とちょっとムッと来た。

しかしまあ、全体に上々の犯罪小説ではある。次回作は是非読みたい。

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本自体はスカスカだが、CDは効いた

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寝付きの悪さが悩みの種で、ストレスのリセットも下手らしい。
若いうちは寝不足を勢いで補ったりしていたのだが、年とともにそうもいかなくなってきたのもので、何か良い策は無いものかと試行錯誤を繰り返す今日この頃。

そんな折、たまたま目に入った一冊がコレ。
本に「自律神経に効く」という触れ込みの30分程度のCDがついて1200円だから、とりあえずダメもとで投資しやすくはある。
この手のものは胡散臭いものも多いのだが、一応著者は順天堂大学医学部教授で、医学的な根拠に基づく音楽らしい。本の帯などによると「自律神経研究の第一人者」なのだそうだ。

で、結果からいうとCDはワタシに関してはびっくりするほど効いている。音楽としては特別深味もないBGM系なのだが、寝しなに読書しながらボヤッとかけておくには、耳障りにならない素直なピアノ曲が9曲。たいてい最後まで聞かずに眠ってしまっているから、最後まできっちり聞いたことがない。

「耳障りにならない」というポイントは意外と大きい気がする。一般的な音楽だと作曲家の妙な自己主張が何かと入ってくるので、一般的に「癒し系」とされる音楽でも「引っかかってくる何か」がどこかにあって神経に触るのだ。

この辺は高尚か俗かは関係ないのだろう。高尚な音楽は高尚ななりに、俗な音楽は俗ななりに、作り手が「聞かせたい」と念じて作るものだろうから、そういう意味では「いい音楽」ないしは「プロが前向きに自己表現をした音楽」は「眠るために聞くもの」としてはみんなアウトだ、という気がする。とりあえずワタシにはダメだ。

そういう意味では、こういう「目的をしっかり持って去勢された音楽」は意外によろしいのかも。
本を読む限り、理論的な裏付けとしてはなんだか中途半端なのではあるが、とりあえずα波が出やすいパターンの音が並んでいる感じ。

付属の本は非常に軽い。とりあえず「自律神経とは何か」という一般的な解説があって、あとはデカイ字と絵を多用して、医師の過去の経験、CDを使ってみた患者のデータらしきもの、セルフチェックシート、自律神経を整えるのに有効なアレコレ、といったことが書いてある。それなりに参考になる部分もなくはない。まあCDのオマケと思えば許せる。どうせならもうちょっと中身を詰めてほしかったのだが。

いい音楽を聞きたい、とか、まとまった知識を得たい、とかいう場合にはオススメしないけれど、寝る前に何でもいいから神経に触らない音楽でも聞きたいな、という向きにはよろしいんじゃないでしょうか。

それにしてみても、このコメントを書くにあたって調べてみたら、著者の専門は小児外科だとの由。まあ専門家が必ずしも正しい見識を持っているとも限らないのだが、自律神経の第一人者のバックグラウンドとしてはちょっと不思議だ。第一人者は神経科や精神科にいるんじゃないの、というのは素人考えなのであろうか・・・?
それともこの世界は、別分野の専門家が数年の試行錯誤で第一人者になれるほどの層の薄さなのか?

なんかちょっと批判的な感じになってしまったが、一応ワタシには効いたので、第二弾が出たら買ってしまうよね、とは思います・・・。

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紙の本ナイルパーチの女子会

2015/08/10 11:55

作者の悪意がひっそり炸裂してお腹いっぱい。

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この作家の小説は、昨年来数冊読んだ。まず『この手をにぎりたい』、それから『本屋さんのダイアナ』、そして本書。

一冊目と二作目は昭和バブル期前後の風俗をよく描いていて、一瞬その年代なのかと思うのだけれど、どちらも読み切ると奥底に妙にとがった悪意を感じる。なんだろうなあ、と思いながら作者の年齢を見たらまだ三十代。ハアなるほど、この世代の女子によくある話だけれど、この作家はバブル期の女子に複雑な嫌悪感があるんだろうな、などと思ったのだった。

で、本書で槍玉にあがるのは「ブロガー女子とその周辺女子」。今度は同時代かちょっと前くらいの話。ユルい専業主婦生活を描いて人気のブログをやっている女性と、その愛読者の30歳エリート女子が出会ってぐちゃぐちゃと揉める。

この作家の話に何かと出てくる「女子高育ち女子」は今回は一流私大卒で一流商社勤務の高給取りで美人の栄利子。父も同じ商社のOBなので、基本的に裕福に育っているのだが、何やら不思議な鬱屈を抱えている。そんな彼女が愛読している主婦ブログ。その作者翔子とひょんなことで親しくなって、良い友人関係を築けそうな雰囲気になるのだが、関係は一瞬でこじれて栄利子はストーカー化。その後は二人のドロドロしたせめぎあいが描かれていくわけだ。

こうした描写のリアルさ綿密さは凄い。それぞれの登場人物を、ここまで徹底的に意地悪く戯画化して表現できる力量に感嘆する。そうした登場人物を物語にのせて、ラストまで破綻なく一気に持っていくパワーも大変なものだ。それでも筆致はあくまでも軽くユーモラスなので、ぎりぎりの中和ができている感じがする。

しかし全体に一貫して本当に気分の悪い話が続くので、一気に読み切ってかなり胸焼けした。
ラストだけはなんだかイイ感じを予測させるオチを付けているのだが、正直取ってつけたようにしか思えない。ここまでフルスロットルで悪意を噴出させてくれると、ある意味清々しくもある。こうした形で、ある時代あるカテゴリーの女性像を、かなりの悪意を盛ってリアルに戯画化していくのがこの作家の持ち味、ということなのだろう。

それが嫌なら「読まない」という選択肢はあるな、などと思った次第。
いや本当に、もうお腹いっぱいです・・・。

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紙の本あの家に暮らす四人の女

2016/01/10 14:56

最初は格調高く『細雪』だったが、後半三浦しをん節に入ってからが面白い。

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四人の中年から老年の女子四名の同居生活を描いた話。
場所は杉並区は善福寺川流域、というところが個人的にツボ。この地域にわりと地縁があるのだ。
平成版『細雪』という気分をちょっと出しながら、話は始まる。

地元の地主でそこそこ大きな一軒家に住んでいる母娘がいて、部屋が余っているから下宿する女子を置くようになって、その女子がもう一人会社の同僚を連れてきたので四人暮らし、という設定。最後の一人は、最近まで同棲していたオトコがストーカー化して困っている。

正直言って、冒頭からしばらくは結構眠い話が続く。ワタシにとっては。
どうもこういう、複数の女子がきちっとした同居生活を営むような話、ワタシは苦手なんだなと感じる。そうそう、梨木果歩の『りかさん』とかでも「げげ」となったパターンではないか。関係ないけど。

まあ、この人は梨木果歩ではなくて三浦しをんなので、そこまでキリッとした生活にはならないのだが、冒頭はかなりまだるっこしかった。細雪を意識した結果なのだろうか。そうそう、そういえば昔々読んだ『細雪』もかったるい話でしたな・・・とか妙に懐かしい感じ。

でも半分近くまで来て「もうやめようかな」と弱気の虫が顔を出したころ、突如話は急展開する。そこから先は大烏やら河童やら、謎のモノどもが出てきて結構楽しい。

序盤もきっと面白い人には面白いに違いない。
女性たちが生活を共にしながら、ああでもないこうでもない、とわちゃわちゃするパターンが苦にならなければ良いだけの話。ワタシはダメなのだこれが。イマサラ分かった。

・・・などなどと、個人的な感慨を呼び起こしながら、後半のストーリーはけっこう面白かった。
何故前半があんなに眠たい話になってしまったのだろうか?
ワタシは秘かに、最初は格調高く『細雪』だったが、結局うまい具合に本来の三浦しをん節に戻ってしまったのだな、と思ったのだが、どうなんだろう?

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昭和な菓子どもの、昨今の世界戦略に関心があるならばドウゾ。

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主題は「日本のお菓子が海外にいかに進出しているか」。
お菓子といっても、和菓子などの伝統的なものではなく、ポッキー、ハイチュウ、カラムーチョといった、所謂スナック菓子系の話。

私自身は普段スナック菓子などをまずほとんど食べないし、基本的に甘いものも特別好きだとは言えないのだが、幼いころに喜んで食べた時代はある。最近は諸事情で、ちょこっとした駄菓子を仕事に使うケースがたまたま出てきた。数十年を経て、特にお菓子を好んで食わぬオバハンになってみると、幼いころに好きだった駄菓子の類の多くが、実は今も結構しぶとく生き残って流通していることに驚くことがある。
こうしたお菓子が海外で売れている、というところから本書は始まる。

例えば日本は「チョコレートの本場ではなく、先進国」なのだそうだ。なるほど、確かに日本の数百円程度で買えるジャンクなチョコレート菓子って、世界各地の同程度の菓子に比べたらかなり丁寧に作られている。一応十年ほど海外に数か国住んだ経験はあるので、イメージはできる。海外諸国で食べる菓子は、高級なものはともかく、ジャンク系はとにかく雑で不味い。「きのこの山」とか「ポッキー」とか、あのわかりやすい味は、いま改めて考えると完成度の高いものなのかも、と改めて思う。

また「ハイチュウ」は、メジャーに行った田澤投手が周囲に配ったのがきっかけで、アメリカで広く売れるようになった、とか。

本書ではこうした少額の菓子を海外マーケットで爆量売りまくる戦略が、成功したり失敗したりする話がアレコレ展開されている。各トピックはネタとしてとても面白いが、ちょっと礼讃調が強いなあ、とは感じる。取材先の各企業との関わりもあるから、どうしてもそうならざるを得ないのだろうが。
ある部分「プロジェクトX」的でもある。
まあ、所謂ビジネス書の特性なのでもあろうが。

各エピソードは面白かったが、タイトルにわざわざ上げた「フランスでのポッキー」などをはじめとして、話によってはどうも裏付けが甘い。もうちょっと具体的なデータがあればいいのにな、とはつい思った。

しかし昔食べたあの菓子この菓子の一部が、ひょんなことで世界制覇を成し遂げる可能性も無きにしも非ず・・・と思えば、それなりに楽しい。

昭和な菓子どもの、昨今の世界戦略に関心があるならばドウゾ。

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副題の「英語知の追及」が本来のタイトルだったように思える。

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話題になっている二つの英語にまつわる社会現象に反論する、という表題。
そのとおり!とタイトルに強く同意しつつ読んだ。

英語エリート教育の在り方と、文法をきちんと習得することの重要さについては、渡部氏なりの考察が展開されていて面白かった。
英語を実用としてばかりとらえず、素養教養として学ぶ意義については心から同意。
実用的でなければだめだというなら、数学の微分積分なんか無駄の極みということになる。
人間としての知力を鍛えるための意義が、英語という科目でもっと見直されてよいと思う。

本書で渡部氏が語っているのは「日本の文法中心教育は必ずしも間違っていない」という論と「日本人の高度な知力に貢献してきたのは、漢文の素読という究極の訳読方式の追及だった」という話。そして日本の官僚が海外との政治的駆け引きにおいて、英語を駆使して戦えるようになるにはどうすべきか、という提言。

この方が見ているのは、どこまで行っても最低限が上智大学レベルのいわば語学エリート層であって、語学を得意としない中間層以下の学生は視野に入っていない様子だ。
できる層がより伸ばせる環境が未整備なのは現実なので、それはそれで別の議論として、現状の「日本人の英語力を上げる」というテーマにまつわる諸方面での迷走ぶりを軌道修正するインパクトはなかった。

一方で表題の「社内公用語」の問題については、ちょこっと触れた程度でほぼ何も書かれていない。
早期教育についてはそれなりの紙数が割かれているが、基本は他の研究者の論説の紹介で斬新さはない。この方が紹介することで、世により広く知られることに意味はあるだろうが、表題にするほどの内容はなかった。残念ながら看板倒れだ。

副題の「英語知の追及」が本来のタイトルだったように思える。
出版社が話を採録してから、売れそうなタイトルを後付けしたのだろうか?
看板と中身がかなり食い違うことさえ念頭にあれば、参考になる話ではあるので、ちょっと残念・・・。

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外食業界でどんなおかしなことが起きているかを、とりあえずわかりやすくまとめてある。

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ワタシは食い意地っぱりなので、とにかく家でも外でもなるべく美味しいものを食べたいと思う。
時間やエネルギーなどの関係で、なかなか思うようにいかないこともあるのだが、忙しさのどさくさに紛れて中途半端な変なものばかり食べていると、てきめんに体調がおかしくなってくるから不思議なもの。

外での飲み食いも大好き。忙しいときに食事を作る手間と時間を省いてもらえるし、自分の家では到底作れないものを食べることもできる。楽しい人たちと楽しい時間を過ごすこともできるし、一人でぼやっと寛ぐこともできる。
忙しいときに駆け込んで、ヒットエンドラン式にまとまったものを安く食べさせてくれる店などは、ワタシの命綱と言ってもおかしくない。

その外食産業が色々おかしなことになっているらしい、とはよく聞く話だ。
以前は国内レベルで賞味期限や食材の内容を偽装する、といった類が主だったが、最近はその偽装現場が国際化して、もっと大がかりなものになってきている。スーパーマーケットなどで売れる野菜の多くは国産品である一方で、外食の現場、特に大手チェーンのそれは中国や東南アジア産のものを主体に回っているそうだ。

本書では、コスト削減のために店の裏側で行われていることを、こまごまと紹介してから、実例として洋食、ファミレス、コーヒー、イタリアン、回転寿司、定食屋チェーンなどの分野別に、ダメな例と良い例に出かけて行ってルポをする、という体裁が続く。どちらも実名はもちろん伏せられているが、良いと評されたほうはどこがどの店か大まかにわかる仕組み。
作者は長年食品製造業界の現場で生きてきた人だそうだ。

正直この手の話自体は、フィクションとはいえ最近数冊読んだ後なので、具体的な詳細にショックを受ける、というようなことはなかった。こういう話は、篠田節子の『ブラックボックス』や相場英雄の『震える牛』みたいなフィクションで小説として読んだほうが怖い。
これが「物語の力」ということなのだろうといつも思う。

しかし一般常識として、あんなことこんなことが行われているよ、という情報をわかりやすく頭の中で整理するには良い本なのではないか。
一時間もあればざっと読めるので、こういう話に興味があってもなくても、一応知ってて損はない話が、とりあえずうまくまとまっている。

ただ、最後のほうに出てくる「外食店心得」系のうんちくは、前半にもそれなりに出てきた話だけにちょっとくどかった。衛生管理やホスピタリティーが大事なのは言うまでもないことだが、本の最後にくどくど書き並べるんじゃなくて、本文中にもっとさらっと織り込むほうが読みやすくなったのでは?
専門知識を離れて、若干説教臭くなったのが残念だった。

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