野次馬之介さんのレビュー一覧
投稿者:野次馬之介
大放言
2015/08/23 11:14
期待通り
27人中、18人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
期待にたがわぬ面白い本である。とりわけ「第4章 我が炎上史」は、これまで物議を醸してきた著者の数々の放言について、それらを非難した新聞、テレビ、国会議員らに向かって具体的な反論をしてみせる。
著者の放言は[人間のクズ]「束京大空襲は大虐殺」「南京大虐殺はなかった」「ナウル・バヌアツはクソ貧乏長屋」「日教組は日本のガン」「九条信者を前線に送り出せ」「土井たか子は売国奴」「きれいなオネエチャンを食べたい」「軍隊創設」「沖縄の二紙はつぶさなあかん」などなど。
これらの発言と、それに対する非難と反論の応酬は、たとえば東京都知事選で応援演説に立ったとき「田母神俊雄候補以外の候補者は、どいつもこいつも人間のクズみたいなやつです」という言葉が著者の口から飛び出した。
早速、民主党の某議員が国会の予算審議の場で、安倍総理に「候補者に向かって人間のクズなどという発言をしていいのか」と質問した。安倍総理は「私は聞いていないから答えようがない」と答弁するが、その議員は同じ質問を何度も繰り返し、ついに安倍総理から「予算審議の場で延々とその質問を繰り返すつもりか」とたしなめられる始末。
その後も民主党は安倍総理に相手にされず、頭にきて「百田尚樹を国会に呼ぶ」といい出した。著者も望むところで「喜んで国会に行きます」と言っていたが、話は途中で消えてしまう。もし呼ばれたら、以前その議員がツイッターで、ある政治家のことを「かんなクズ」と揶揄していたことを取り上げ、「クズがダメで、かんなクズはいいのか。クズとかんなクズの違いを教えてくれ」と反撃する準備をしていた。
さらに民主党がびっくりするようなことを、いっぱいしゃべってやるつもりだったらしい。著者の国会召致が実現しなかったのは残念だが、もし実現していれば民主党は危うくかんなクズと化して炎上するところだった。
著者の『海賊と呼ばれた男』や『モンスター』など、小説も面白いが、エッセイも面白い。2冊目を期待する。
【後記】気の弱い馬之介としては、上の代議士の実名を出すのを遠慮した。しかし本書にはきちんと書いてあるので、それが誰か知りたい人は、この本を手にとって読んで貰いたい。
「10%消費税」が日本経済を破壊する 今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を
2018/11/15 11:38
恐ろしい消費税アップ
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2019年秋の消費税上積みーー現状8%を10%に増やす案件について、今や日本人の多くが何の疑問も持たずに受け入れようとしている。しかし本当にそれでいいのか。税金のありようを決めるのは官僚と政治家で、この連中は税金で暮らしているわけで、増税は自分たちの利益になる。増税をしたがるのは当然のことである。
おまけに政界、官界に群がって甘い汁を吸うマスコミやメディアーーNHKを筆頭に民放も新聞も、消費税の恐ろしさを伝えようとしない。それどころか、カードで買えばポイントがつくとか、お持ち帰りは8%でいいとか、半分だけのお持ち帰りは何%になるかとか、くだらぬ議論を繰り返し、国民はすっかりだまされてしまった。
現に11月12日のNHKニュースは、消費増税に賛成32%、反対35%、どちらともいえない27%という世論調査の結果を伝えていた。3分の1強の反対を除けば、大半が税金の増加を受け入れるということである。
ところが、これらの回答者は知らぬようだが、増税によって大変なことが起こる。事実、過去の消費増税でも、人びとの気づかぬうちに日本経済が落ちこみ、国民の貧困化が進んだ。今なお2014年の消費増税(5%から8%へ)の痛手から立ち直っていないのに、追っかけるようにして痛撃を喰らわせようというのが、次の10%消費税である。
具体的には、2014年の増税以来、企業勤務者の給与は4%ほど低下して未だに回復せず、各世帯の消費支出も年額平均34万円の減少となったまま。結果として日本のGDP(国民総生産)は2014年以前の上昇傾向に対して27兆円の減少となり、マイナス成長を続けてきた。そのため世界経済に占める日本のシェアはアメリカの4分の1、中国の3分の1にまで転落、経済大国どころか「衰退途上国」になってしまった。
ほかにも本書は、消費税を上げることの危険性を、国のレベル、企業レベル、個人レベルなどでさまざまに例示し、2019年秋の増税は中止すべきだと説く。同時にいくつもの代替案を提示しているから、安倍首相を初めとする政治家と、財務省などの官僚たちはこれを熟読して今すぐ方針を改め、増税しても景気面で「マイナスの影響があるとは考えていない」と言った無責任な日銀総裁も吠え面をかかぬよう、もう一度考え直すべきである。
2018/09/02 15:36
バカになる
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「朝日を読むとバカになる」というのが本書の主題である。『朝日リスク』という表題はそのことを意味している。
わが家でも親の代から、つまり70~80年前からこの新聞をとってきたせいで、馬之介もすっかりバカになってしまった。しかし、そのリスクに気づいたのは20年ほど前であったか、購読をやめようとしたところ山の神が許してくれない。神様の方も親の代から同じ新聞を読んでいたらしく、今さら変えるのはイヤだという。それを強引に抑えてほかの新聞を3カ月ほど購読したが、結局もとに戻されてしまった。それ以上続けると夫婦喧嘩どころか夫婦別れにまで発展し、危うく朝日新聞のために家庭崩壊を招きかねない状況となって、あきらめた次第。
この新聞の酷さは戦時中、軍部を弱腰と批判して、戦争を煽りに煽ったばかりでなく、戦後はマッカーサーの発行停止処分という一喝に震え上がり、ありもしない南京大虐殺や従軍慰安婦などをでっちあげ、反日プロパガンダを世界中に宣伝してきた。しかしあまりに酷いというので、2014年に昔の紙面を取り消して社長が辞めるに至る。もっとも捏造の修正はそれだけで、中国や朝鮮に出かけて行って直接訂正を申し入れたわけではないから、今も多くの国で誤報が信じこまれているばかりか、日本国内でも偏向報道は収まりそうもない。
というのは本書によれば、最近の朝日新聞は安部首相を倒すという目的をもった活動体になっていて、ジャーナリズムの使命を捨て去ってしまった。記者たちもジャーナリストではなく、自分たちの主張のために新聞を利用するだけの活動家であるという。
福島原発の事故が起こった当時、所員の9割が所長命令に違反して逃亡したという記事を一面トップに掲載したが、これも原発反対のための捏造であった。
日本を代表すると自称すなわち詐称する新聞が、目的が何であろうと、歪曲記事を書いてまで活動に走る魂胆は馬之介の理解を超えるところである。
学はあってもバカはバカ
2018/06/04 16:09
バカの集団
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この本の趣旨は、「学歴のあるバカ」ほど始末におえないものはない。「学バカ」はマスコミや国会、政財界に限らず、そこらじゅうにいて物事の進歩発展を阻害するというもの。言われてみればその通りで、すっかり納得させられると同時に、まことに面白い本である。
そこで思い出したのは、この頃ときどきニュースになる三菱リージョナル・ジェット(MRJ)。三菱重工が開発中の70~90人乗りの双発ジェット旅客機で、15年ほど前に鳴り物入りで計画が始まり、とっくの昔にANAやJALの定期路線に飛んでいるはずだった。
それが思い通りに試験飛行が進まず、世界中から500機もの注文を受けながら航空会社への引渡しができないまま、今や相次ぐキャンセルに見舞われているという。
この事実を本書の観点から見ると、まさしく当然ではないだろうか。というのは三菱は押しも押されぬ日本最大級の重工会社で、入社するのもむずかしい秀才たちの集まりではないかと思われる。すなわち「学歴のあるバカ」の集団にほかならない。
しかし以前は三菱にも、昔ながらの名人芸を持った職人気質(かたぎ)の技術者たちがいて、戦前のゼロ戦を持ち出すまでもなく、戦後もYS-11やMU-2といった傑作機をつくり出した。航空機の開発には好奇心に富んだ独創性と冒険心が必要で、入学試験や入社試験の成績だけを追い求めてきたような連中に出来ようはずがない。馬之介から見れば、いずれ絵に描いたワラの餅に終わるに違いない。
なお本書には週刊誌に不倫を報じられた女代議士や、秘書に「このハゲー」と雑言を浴びせた女代議士も登場する。両人ともに東大法学部の同期だそうだが、担任教師の顔を見たいものである。そして、この本の著者の出身母体マスコミ界にも同じような点取り虫が多いとか。
とすれば飛行機の開発はもちろん、本書が指摘するようなマスコミや政界も、しばらくは「学バカ」どもの支配から抜け出すことができないのではないか。情けない世の中になったものである。
脳はなにかと言い訳する 人は幸せになるようにできていた!?
2016/07/16 16:01
脳はなにかと面白い
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野次馬之介も文字通りの馬齢を重ねて、20歳になった。 人間でいえば80歳(傘寿)にあたる。そのため最近はド忘れ、もの忘れがひどくなり、馬小屋のこっちからあっちまで何かを取りに行ったりすると、何を取りにきたのか分からなくなることが多い。そんなときは、もう一度もとに戻って周囲を見回せば、「そうだ寝藁を取りに行ったんだ」などと思い出すことができる。
仲間の馬の名もしばしばド忘れする。みんな馬面で同じように見えるせいもあるが、馬だってそれぞれ個性があるし顔つきも異なる。中には丸顔の馬もいたりして、こういうのは憶えやすい。
そういうド忘れやもの忘れの現象と、忘れたことの思い出し方など、われわれの日常に即して、脳のはたらきを科学的に面白く教えてくれるのが本書である。たとえば意識、言語、睡眠、脳波、集中力、自律神経、アルコール作用などが取り上げられ、巻末にそれぞれの話題に関する学術論文が膨大な一覧表になっている。だからといって本文は決して堅苦しいものではない。
一例として、よくダジャレを言う人を「親父ギャグ」といって軽蔑する。しかし、ダジャレには人間の言語能力を発達させる重要な働きがあるという。したがって子供の会話にはダジャレが多い。さらにダジャレの話が人間はなぜ右利きになるのかという話題にまでつながるといった具合。
もうひとつ、本書に出てくる面白い学説は「赤色は試合の勝率を上げる」というもの。ボクシングやレスリングなど、アテネ・オリンピックの格闘競技4種の試合結果を学術的に調べたところ、ウェアやプロテクターに赤色を着用した選手の平均勝率は55%であった。さらに調査対象をサッカーにまで広げると、赤いユニフォームを着たときの試合の方が得点率が高いことがわかったという驚くべき結果が出た。
そういえば昔、どこかの女代議士が赤い服を着て「勝負服」と称していたことを思い出す。風水でも赤は太陽が昇る力をあらわし、健康と仕事に効く決断の色、勝負運を運んでくる色といわれる。特に濃い赤色が良いらしい。
とすれば、オリンピックでも国際試合でも、日本選手はこれまでの地味なユニフォームを脱ぎ捨て、真っ赤な服装で試合に臨んだらどうか。馬之介も次のレースでは赤い鞍をつけ、騎手にも赤い勝負服で乗ってもらうつもりである。
漢字雑談
2016/04/19 10:41
篇と編
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ここ数日来の熊本および大分の地震で思い出すのは、阪神淡路大震災のていたらくである。ヘリコプターは上空から「高みの見物」ともいうべきテレビ報道に使われるばかりで、人命救助や消火放水など防災の役はほとんど果たさなかった。
当時、いったい国の防災計画はどうなっているのかと思い、『防災基本計画』(国土庁防災局編、平成7年7月)を買ってきて目を走らせた。けれども、ヘリコプターで人を助けたり、火事を消したりする役目はどこにも書いてない。
「第2編 震災対策編」には「被災現場の状況をヘリコプターテレビシステム等により収集」したり、「ヘリコプター等により緊急に担当官を現地に派遣する」とあるばかりで、要するに役人の便宜のためにヘリコプターを使うことしか書いてなく、大いに憤慨したものである。
あれから20年ほどたって、最近の『防災基本計画』はやや改善されたようだが、依然として「第3編 地震災害対策編」などと書かれている。なぜ「第3篇 地震災害対策篇」としないのか。
そこで、ここから本書『漢字雑談』の読後感に入る。この本は「雑談」といっても、学問的な根拠に裏付けされた高度な内容で、しかも面白い。上のような「篇」と「編」の混同も昭和31年当時、考えの浅い文部省が両者の意義も用法も違うことを無視して、当用漢字表に「篇」を入れず、「編」に書きかえるよう指示したのが原因であった。
しかし「当用漢字政策がすでに破綻した今」、「篇」も人名用漢字として復活していることだし、こんな「篇な字」を子供の名前につける親もそんなにいないだろうから、せめて「第3篇」や「対策篇」として貰いたいもの。これらに「編」を使うのは単に間違いであるばかりか、馬之介まことに気持ちが悪い。
ほかの本でも『神曲』の翻訳など、河出書房や集英社は「地獄篇」「天国篇」とまとな表記だが、岩波書店は「篇」が使えないのを避けたか、「地獄」とか「天堂」と称するのみ。いつも反政府論を声高に言いつのる岩波だが、これは訳者の指示かもしれない。他方『書物愛 日本篇』(紀田順一郎編、創元ライブラリ)の用法は、二つのヘンを正しく使い分けている。
最後にもう一度震災の話に戻ると、本書は「義援金」が「イヤな言葉だ」と書く。本来は「義捐金」でなければならず、「戦後政府の漢字制限」対策として「(1)かな書きする、(2)まぜ書きする、(3)同音異字にする、(4)別語にする」の四方法があるが、(3)には愚劣なものが多く、「義援金」もそのひとつ。被災者からすれば「どっちでもいいから早く助けてくれ」と叫びたいところかもしれぬが……。
2018/11/04 16:06
アホバカどもの勘違いを突く
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
馬之介も歳を取って勤めもなくなり、馬小屋でテレビを見ることが多くなった。といって面白い番組はほとんどない。それどころか見ていて腹の立つこともしばしばだから、ついつい画面に向かって「なに言ってやがんでエ」などと怒鳴りかけ、横にいた家人から「静かにして」と叱られる。とまあ、こんな光景が連日、小屋の中で繰り返される次第である。
本書は、それを活字の上で再現してくれるのだから面白く、かつ溜飲の下がる思いで読むことができる。
最初に、先日カンヌ国際映画祭で最高賞を得た「万引き家族」の映画監督が槍玉に挙がっているが、その槍先は驚くべき鋭さで、突かれた方はグウの音も出ないであろう。
続いて歌舞伎や政治家の世襲が切りつけられる。市川エビゾウかカニゾウかザリガニがやられ、返す刀でたかが芸人のビートたけしが反社会的なやくざ映画をつくっただけで「師匠、先生、監督、巨匠」などとヨイショされ、本人もその気になってご高説をたれる。ご高説といっても大したものではない。クダラン思いつきをモゴモゴした口調でごまかすだけのことである。
馬之介も昔テレビで航空関連の評論を依頼されたことがあるが、どこかのスタジオでちょうどたけしの出番であった。すると誰かがドアのところからスタジオに向かって「お入りイ」と大声で告げる。そこへ静々と本人がやってくるという次第で、まるで殿様か殿様ガエルが登場するみたいなバカバカしい光景であった。今でも同じようなことを、もっと大げさに家来どもの行列を従えてやっているのかもしれない。
もうひとつ「尾木ママと呼ばれている教育評論家がいる。オネエ言葉を発する気色の悪い奴である。……なぜ、この手の男がテレビにひんぱんに出演するのか理解できない。ただの八方美人で……紋切り型の反応をする。たとえば戦争反対、原爆反対、体罰反対、シゴキ反対、いじめ反対……」と本書は書く、馬之介もかねて、この気色の悪い奴が出てくるとテレビのチャンネルを変えることにしていた。
とまあ、こんな口撃が政界、テレビ・新聞界、芸能界、スポーツ界の誰彼に対して繰り出され、そのほとんどが馬之介の感覚と一致するものだから、読んでいて胸のすく思いがする。また防衛省と警察に対しても遠慮することなく、現今の勘違いぶりを指摘して、そこから脱却すべきだと追求する。さらに、ほとんど知られていない事件としてベトナム戦争中に韓国軍が現地で繰り返した虐殺の数々が告発されている。
しかし口撃ばかりでは救いがない。巻末では、去る8月15日に大分県で行方不明の2歳の幼児を救出した尾畠春夫さんを取り上げている。その救出後の態度振る舞い、日常生活とボランティア活動など、いっさいの栄誉や欲望を解脱した達観ぶりから「この人は現代の聖人」と讃え、こういう人にこそ国民栄誉賞を贈るべきだと提案する。
ふだんの胸のつっかえを取り除いてくれる、すがすがしい本といってよいだろう。
あの航空機事故はこうして起きた
2017/10/08 18:48
事故調査のあり方
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世界の主要な航空事故を振り返り、事故調査のあり方を論じて、まことに面白い。航空の安全に関する教科書といってよいかもしれない。
というのは馬之介、いくつかの航空事故について一般に流布している原因説明をそのまま受け取っていたけれども、この本で見ると真相はやや異なっているらしい。
たとえば御巣鷹山に墜落した日本航空ボーイング747の事故は、胴体後部の圧力隔壁の破損が原因とされている。破損の原因は、以前に尻餅事故を起こしたときのボーイング社の修理が不十分だったためで、これはいうまでもなく事故調査委員会の公表した調査結果である。
ところが実際は、この機体は事故以前から垂直尾翼に変形があったらしい。そのため機体後部のトイレのドアが飛行中に開閉できなくなる異常が時どき見られた。これは上空で空気の力を受けて胴体が変形するからで、後方客室で金属性の異音が聞こえることもあったという。
したがって尾翼の破壊過程、つまり本当の事故原因を追求するにはできるだけ多くの尾翼破片を回収する必要があった。にもかかわらず、相模湾からの破片の回収はおこなわれなかった。それでいて事故調査委員会は「回収された破片が少ないので尾翼の破壊過程は明らかにできなかった」というだけで片づけている。
しかし調査委員会がいうように圧力隔壁が破壊したのであれば、飛行中に機内の空気が急激に外へ出て行くため、キャビン内部で強風が起こったはず。しかし、そのような現象は生存者の証言にはなかったという。また方向舵のゴムの圧着痕があり、さらにボイス・レコーダーに記録された低い周波数の振動音などから見て、事故原因はフラッター現象ではないかと本書はいう。
これと対照的なのが英国航空コメットの事故であった。この史上初のジェット旅客機が1954年、立て続けに2度の空中分解を起こす。イギリス王立航空研究所は、海底に沈んだ残骸を細かい破片に至るまで回収し、組立て直して原因を究明した。当時のイギリス首相ウィンストン・チャーチルも、コメットの謎を解くためには費用や手間のことなど考えてはならないと号令した。その調査の結果、現在の大型旅客機は例外なく恩恵を受け、人類全体に大きな利益をもたらしたと言ってよいほどの成果をあげた。
それにしても、航空事故は多くの人命を奪い、しかも原因究明がむずかしい。つい先日も、2014年に消息を絶ったクアラルンプール発北京行きマレーシア航空機(乗客乗員239人)の捜索を主導したオーストラリア運輸安全局が、捜索対象となったインド洋で同機を発見することはできなかったとする最終報告書を発表した。これで捜索は事実上打ち切られ、解明されぬまま終わることになる。
航空機の安全性はまだまだ充分とはいえず、事故原因の解明も不充分といわざるを得ない。飛行機に乗るときは、神に祈ってから乗るほかはないのだろうか。
2017/08/15 12:38
航空の安全に多大な貢献
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航空関係者であれば「ダウンバースト」という言葉を知らぬ人はあるまい。しかし、それがどのようにして航空事故をもたらすのかを知る人は、定期航空にたずさわる人を除いては、少ないであろう。
そのメカニズムを発見し事故の防止策を確立した天才、藤田哲也の名前は日本では、少なくともこの本が出るまではほとんど知られていなかった。逆にアメリカの気象学会で有名だった気象学者である。
藤田は若いとき、竜巻の中に下降気流のあるのを見つけて論文を書き、シカゴ大学に送った。アメリカはメキシコ湾の暖かく湿った空気とカナダの冷たい空気がぶつかり合う「竜巻大国」で、その大きな被害は絶え間がない。論文を読んだ大学はすぐに無名の藤田を招聘することになった。
藤田の渡米は1953年、33歳のときだったが、竜巻の調査研究を進めているうちに、1975年イースタン航空66便がニューヨーク・ケネディ空港に着陸しようとして滑走路の手前で墜落、乗っていた115人が死亡する大きな事故が起こった。
この事故について、米運輸安全委員会(NTSB)は、パイロットの操縦ミスが原因という事故調査の結果を発表した。しかしイースタン航空は納得できず、藤田に詳しい調査を依頼してきた。そして、ほぼ1年後、藤田は事故の原因は「ダウンバースト」と結論づけたのである。
では、ダウンバーストはどのようにして航空機を墜落させるのか。それは雷雲の中に発生した下降気流が地面に衝突し、爆風のように放射状に広がる。その爆風の中へ旅客機が入ってくると、まず向かい風を受け、機首が上がって速度が落ちる。そこでパイロットは操縦桿を押して機首を下げ、速度を上げようとする。
そのとき機体は下降気流の中心部に達し、大きく沈下する。パイロットは今度は操縦桿を引き、エンジン出力を上げようとするが、機体の反応が間に合わぬまま放射状に広がった爆風の向こう側に達する。すると激しい追い風を受ける恰好になり、当初の機首下げのまま地面に突っこむのである。
これが藤田の名づけた「ダウンバースト」による事故原因である。なお、この現象を「マイクロバースト」という人もあるが、これも藤田の命名で、彼はマイクロ(小さい)バーストとマクロ(大きい)バーストの二つに分けた。マクロバーストは直径数キロ以上の大きな吹き下ろしで、風速も毎秒40メートル程度だが、マイクロバーストはごくせまい範囲に発生し、風速は毎秒80メートルほど。この強風が航空事故をもたらすのである。
しかし、藤田の努力は事故原因の発見ばかりでなく、その事故を如何にして防ぐかに至る。そして当時開発されたばかりのドップラーレーダーによって風の状態を検知する方法を編み出し、今では世界中の空港がドップラーレーダーを備え、そこで離着陸する旅客機はダウンバーストを避けることが可能となった。
ここに至るまで10年以上。イースタン航空を含め、パンアメリカン航空(1982年、死者153人)、デルタ航空(1985年、死者137人)と3件の大きな事故が離着陸中に発生した。ほかにもダウンバーストが原因と思われる事故が頻発し、1983年にはレーガン大統領を乗せたエアフォースワンがアンドリュー空軍基地に着陸しようとして、危うくダウンバーストにぶつかりそうになったこともある。
そうした危険性を取り除いた藤田博士は、さまざまな反論を受けつつも「不世出の気象学者」として「先駆者であり、開拓者であり、革新者でもある」道を歩みつづけた。だからこそ世界の空を救うことができたのであろう。
多くの人に刺激を与える本である。
2016/12/16 17:35
怒鳴るぞトランプ
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1月号は「さあ、トランプだ 覚悟せよ!」という総力特集である。数えてみると日本の21人の論客が、アメリカの次期大統領ドナルド・トランプについて右から左から、前から後から縦横に論じて、まことに面白い。ご本人が見たら「退屈だ、買うな」と怒鳴るかもしれない。
トランプの当選が決まった直後、安倍首相はまことに上手に約束を取りつけ、会談することができた。その直後のフェイスブックにはトランプ自身が「素晴らしい友情が始まった」と記したそうである。まさか単なる外交辞令とも思えない。
ところが鳥越俊太郎はテレビで、まだ大統領にもなっていないのに早速会いに行くなどは「植民地のやること。とんでもない」と言ったらしい。
これに対し「お前の頭がとんでもないっちゅうんや」と語るのは百田尚樹。鳥越のような男が「ジャーナリストである限り、日本の既存メディアも一度崩壊しなければいけない」と。
トランプの当選を予測できたメディアは日本になかった。にもかかわらず、朝日新聞などは習近平がトランプと電話会談した記事を一面に出して「中国は偉大な国」といわれたという見出しを掲げた。新華社通信そのものともいうべき性格が恥ずかしげもなく丸出である。
ところが、朝日新聞の大報道にもかかわらず、トランプの方は「いや、会談してないよ」と発言。習近平も新華社も朝日も面目丸つぶれとなった。
日本の大手メディアがトランプの当選を予測できなかったのは、主要紙のすべてがCNNを情報源としていたからだと説くのは藤井厳喜。
加えて高山正之は「ワシントン駐在の記者たちは、ワシントンポスト、ニューヨークタイムス、ウォールストリートジャーナルの三紙くらいの論調を見て大まかな流れをつかむと、それに沿った報道をする。独自の見解なんかない。翻訳業にすぎない」としゃべっている。
加えて外務省もおかしいと、高山正之はいう。「米紙のいうままに、翻訳で外交している」。選挙期間中に訪米した安倍首相をヒラリーに会わせたのはいいとしても、トランプには会わせなかった。なぜなら外務省は、投票の直前までトランプが当選するはずはないと、信じきっていたからで、あとになって安倍首相から「話が違うじゃないか」と叱責されたらしい。
したがって安倍首相がトランプ当選の直後、電話でアポイントを取って会うことを決めたとき、外務省は蚊帳の外におかれていた。
その一方で、選挙期間中の9月だったが、安倍首相が外務省の斡旋で会ったヒラリーは、マドンナなどの人気芸能人を集めて「無料のコンサート」を開催したり、ハンバーガーをただで提供して自分への投票を依頼したり、有権者を馬鹿にした「愚民政策」を取っていた。日本ならば「明らかに露骨な買収・供応」にあたる選挙違反である。もっとも有権者の方も、ハンバーガーを食べても、ヒラリーの人気は回復しなかった。落選するはずである。
結局は本誌冒頭の「トランプは天才奇術師ですな」という渡部昇一のひと言に尽きるのではないか。
孫子の兵法 ヒト・モノ・カネを自在に操る
2016/06/26 13:44
敗北の法則
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孫子の兵法というよりは、孫子に名を借りた「飯島勲の兵法」ともいうべき本である。
とりわけ有益で面白いのは、自軍を負け戦(いくさ)に導く「走、弛、陥、崩、乱、北」の六つの条件による敗北の法則で、走とは一の力で十の敵と戦う羽目になった場合、弛とは軍の幹部が弱い場合、陥とは兵卒が弱い場合、崩とは組織が崩れている場合、乱とは組織の統制がとれていない場合、北とは敵情を把握できない場合をいう。
こうした条件が敗北を招くというのが孫子の教えるところだが、それを受けて著者は民主党政権の悪夢を想起する。2011年の東日本大震災にあたって、当時の菅直人首相は震災翌日の朝早くからヘリコプターで福島原発へ飛んで現場を混乱させたり、東電本社へ押しかけて怒鳴り散らすなど、上の「弛」の条件をそのままやって見せた。
トップがこんな状態だから、民主党はまったく組織の統制がとれていなかった。震災対応が非難されると、新たに内閣参与を15人も任命し、対策本部や会議などの組織を次々と立ち上げた。その結果それぞれが好き勝手なことをいうばかりで、官邸の混乱はいっそう深まった。孫子のいう「崩」と「乱」である。
具体的には「行政刷新会議」「行政改革実行本部事務局」「行政改革に関する懇談会」など名前ばかり大げさな会議を三つ、事務局組織を五つもつくった。しかし「国家公務員制度改革推進本部事務局」を除いては、法的根拠や権限のないものばかりというでたらめぶり。
おまけに民主党内でも似たようなことが起きていた。議論をしても何も決まらず、たまに何かが決まると気にいらない人が組織を飛び出す。こうして政権を取ったあとの離党者は100人を超え、孫子のいう「崩」を実証してみせた。
結果として孫子の兵法そのままに敗北の憂き目を見たのは、日本国そのものであった。
同じようなことは政党や政治家ばかりでなく、民間企業でも十分に考えられる。社長から平社員に至るまで、組織として個人として、誰もが「走、弛、陥、崩、乱、北」に当てはまることのないような考えをもって行動してゆかねば、競争相手の前に敗北を喫することとなろう。
名文どろぼう
2018/09/17 15:15
激化と劇化
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昔テレビがなかった時代、NHKラジオに和田信賢というアナウンサーがいた。のちに「話の泉」の司会をつとめて広く知られた。あるとき何を間違えたか「マグダラのマリア」を「マタグラのマリア」と読んでお目玉を喰らった。そんな話が本書に出てくるが、「マリアのマタグラ」だったらお目玉ぐらいではすまなかったろう……などと下品なことを考えるのは馬之介だけであろうか。
そういえば今年8月30日の何時のテレビ・ニュースだったか忘れたけれど、アメリカの中間選挙について報じるアナウンサーが、共和党の福音派を「フクオンハ」と読んでいた。聞いていて「おや?」と思ったら、数分後にまた同じ間違いを繰り返した。あとで、この人がお目玉を喰らったかどうかは知らない。
もうひとつ、何年も前からアナウンサーの誰もが「激化」を「ゲキカ」と発音するようになった。「航空界にLCC(格安航空会社)が増えて、競争がゲキカするでしょう」などという。これでは競争が激しくなるのではなくて「劇化」されるように聞こえる。航空界の競争をテーマとするドラマでも作るつもりかといいたくなるが、ここは「ゲッカ」と言ってもらいたい。
テレビやラジオのアナウンサーは、日本語の音声について模範となるべき職業である。その人びとが単純な間違いならともかく、故意か無知か、ヘンな日本語を広めようとしているのはまことに嘆かわしいことである。
「編集手帳」の文章術
2018/08/26 15:50
文の横好き
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作文は子供のときから好きだった。しかし下手の横好きというやつで、下手のくせに書かずにはいられない。だからこの70年間苦労してきた。
小学校5~6年頃のことだったか。ある朝、台所の炭を入れた袋の中にネズミが入りこんで出られなくなり、チュウチュウと大騒ぎをしている。それをどうやってつかまえるか。そうそうネズミ捕りの中に追いこんだらというのが母の思いつきで、金網でつくった角型のネズミ捕りを袋の口に当てがい、子供たちが棒切れで突ついているうちに、いかなる隙を見つけたか、あっという間に逃げられてしまった。
そのときのドタバタ騒ぎと残念な結末を、誰に指示されたわけでもなく、作文に書いて学校の先生に見せたところ、大いに褒められて、みんなの前で読み上げられた。これがまた病みつきになった理由のひとつで、とうとう学級新聞の主筆とでもいうべき役割を果たすことになり、毎週自分で鉄筆を握り、原紙を切って、謄写版で刷ったワラ半紙の新聞を出し続けた。友だちの失敗談を書いたり、体操の時間の野球の結果を書いたり、先生の授業中のダジャレを載せたり、大いに楽しんだものである。
そんな馬之介にとって、この本はまことに面白く、作文の参考にもなる。冒頭の「文章十戒」のひとつ「接続詞に頼るなかれ」という戒めも「だが」とか「しかし」を多用していくと、論旨が途中で何度もひっくり返ることになり、文章がごてごてして読者の頭の中がごちゃごちゃになって分かりにくい作文ができてしまうーーといった注意点が多数出てくるのである。
あるいは文章の書き出し。向田邦子の例をいくつも並べて、「どうでしょう、つづきを読んでみたくなりませんか」と誘いこみ、その要点は
短い
年月日から入らない
会話文から入らない
とまとめた上で、この3原則に反した形で同じ内容を書き並べて見せてくれる。
なるほどと感心するばかりだが、そこから横好きの「下手」を直しながら、いかにして自分らしい作文を書いてゆくか。それが馬之介に課せられた宿題である。
2018/08/10 12:46
似て非なる偽造憲法を廃棄せよ
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自国を悪く言うようになると、その国は亡びる。国民が自国の歴史に自信をなくすからだ。
その実例はどこか。本書によれば、スペインだという。南アメリカでスペイン人がいかに残酷なことをしたか。その実態を書いた報告書がスペイン語のうちはまだよかったが、それをみずから英語に翻訳して世界中にばらまき、凋落の一因をつくった。
同じようなことを、日本は自らやったわけではないが、戦後の占領軍によって検閲されるようになった新聞は本当のことを書くと発行停止になったり紙の配給を止められたり、ラジオはNHKに占領軍のスタッフが大勢入って、連日「真相はこうだ」などという捏造放送を続けた。
これで日本人の洗脳は相当に進んだが、占領軍がいなくなった後も、東大総長を初めとする大学の教員や日教組などの「敗戦利得者」が自らの利権と立場を守るために、占領条項にすぎない偽造憲法にしがみつき、生徒には日本のありもしない「悪」を教え続けている。
占領軍のつくった憲法は、それだけで国際法や条約違反である。ただちに廃棄して明治憲法に戻し、その改正条項にしたがって新しい日本国憲法をつくるべきだ。今の憲法が国会議員の3分の2以上の賛成を経て国民投票にかけるなどという面倒な改正条項を定めているのは、未来永劫に改正させないという占領軍の魂胆から出たものである。
いっぽうで戦後のドイツは50回以上も基本法の改正をくり返してきた。これを憲法といわないのは、いずれ自分たちの手で真の憲法をつくるつもりだからである。
日本も間もなく73回目の8月15日を迎えようとしているが、自国を悪く言い、誇りを取り戻せないようでは、歴史の先例が示すように、遠からずして亡びてゆくであろう。
ゴリラは戦わない 平和主義、家族愛、楽天的
2017/10/06 11:10
見習うべし、ゴリラの生き方
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昔からよく「歯医者は嫌われる」という。せっかく歯の治療をしているのに、それが痛いものだから、どうしても患者に嫌われる。同じように本書によれば、獣医は動物に嫌われるらしい。時どきつかまえにきて、何かの予防注射をしたり、ヒリヒリする薬を怪我に塗ったりするからである。
だから動物園でも、園長の著者が檻の中に入っていくと、動物は近寄ろうとしない。飼育係には体をすり寄せて、甘えたりするにもかかわらずである。しかし、まかり間違うと、飼育係でもゴリラに殺されることがある。これはゴリラの方に気持ちの余裕がないためで、檻の中ではどうしても飼育係が上位に立っているからである。
ところがアフリカの森の中に行くと、そこはゴリラの領域で、ゴリラの方に余裕がある。人間が何かの邪魔をしたり手出しをしない限り、ゴリラは自分が上位だと思っているから、ことさら人間を襲うことはない。むしろ気づかいを示し、仲間として行動させようとする。
ゴリラどうしの関係も同じで、一方がわざと首筋を相手の前に突き出したりする。「噛めるものなら噛んでみろ」といわんばかりの仕草で、相手は「恐れ入りました」と去ってゆく。こうしてお互いに血を見るような闘争は起こらない。それが本書の表題にもなっている。
さらに群を率いる大きなオスは背中に白い毛があって、この「シルバーバック」が群の信頼を集める象徴である。メスも子どもも常に、シルバーバックを見上げながら暮らしている。オスが号令をかけたり、叱責したりする必要はないのだ。
そんな心あたたまる話がふんだんに出てきて、人間も太古の昔に返ってゴリラの生き方を見習うべきではないかと思うほどである。
