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Takeshitaさんのレビュー一覧

投稿者:Takeshita

131 件中 1 件~ 15 件を表示

若き学究の情熱溢れるアーレント研究

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者はまだ26歳の京都大の大学院生であり修士論文に加筆して出版されたと言う。ハンナ、アーレントはハイデッガー、ヤスバースに師事したドイツ哲学の嫡流であり、その著作は古代からの西洋哲学に精通して洵に内容が深い。アーレントが亡命までして悩んだのはなぜ近代西洋思想は行き詰まり、全体主義という悪夢を産み出したのかであった。著者はアーレントの晩年の著作「活動的生」を足がかりに、アーレントが人間は死すべき存在ながら新たな生を次々生み出す(可生性)の故に、世界は信頼と希望を保ち、愛しうるものになると説いていると語る。内容は学術論文と言うよりエッセイに近く、浩瀚な注とともに著者の勉強ぶりが伺われる。それにしてもこう言う情熱的な論文はある若さでないと書けないものだ。文体も良い。若き日に「地獄の思想」を書いてデビューした梅原猛のように久々に京大哲学科に熱き新星が現れた。大成を期待したい。

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穀物の流れという新鮮な観点からの世界史

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これは良書だ。こう言う歴史の見方もあったのかと開眼させられた。穀物の需要と供給並びにその運搬は道と水路の整備を促し金融を発達させる。その覇権を巡ってローマ帝国以来欧州の戦争は起こったし、糧食の兵站を制したものが戦争の勝利者となる。南北戦争などは兵士のみならず軍馬の糧食の補給も重要でそれを制した北軍が勝利した。また穀物取引は先物予約と言う金融技術も産み、しばしば恐慌の引き金にもなる。後段の主人公である富豪で共産主義者であったバルヴスのレーニン、トロッキー、ローザルクセンブルクとの交友、ロシア革命との関わりの話題も面白い。日本でも江戸時代から近代までの米を巡る農業経済史があるはずだが、これだけスケールの大きい叙述が書ける学者は日本人にはいないだろうなと思われた。

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書物という発明を通して見る世界史

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これは良書だ。内容はかなり学術的だがヨーロッパで100万部売れたと言う。人類は紙(パピルス)を発明してから軽量で多くの情報量を盛り込める書物を作り出し、アレクサンドリアの壮大な図書館のように文化と歴史を延々記録し続けてきた。書物があつたからこそキリスト教も広がりローマ帝国も栄え、強制収容所の迫害にも人類は耐えてきた。書物も文学も真に優れたものだけが歴史に残る。文献学者でもある著者は古文書や語源に詳しく、ギリシャ、ローマ以来現代まで続く書物の歴史は時空を超えた大旅行の感さえある。教養ある名講義を聴くごとき洵に愉快な読書体験だった。

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電子書籍資本とイデオロギー

2023/09/25 21:28

富の配分をめぐる壮大な世界経済史

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前著「21世紀の資本」では資本収益率は常に経済成長率を上回る(r>g)、これは資本主義に根ざす本来的傾向であり格差は放っておけば益々拡大すると言う斬新な主張の本であった。今回はこの観点を過去500年の歴史をたどり、欧米日のみならず中国、インド、ロシアまで範囲を広げた壮大な世界経済史である。そして格差はイデオロギー(政治思潮)と経済の結びつきであることを詳しく分析している。累進課税、株主権利の上限設定、大学教育への富裕者関与の制限、企業政治資金の禁止と全国民への政治資金バウチャーの配布、EU強化のための欧州社会主義連邦化、インドのような階層別各種枠の導入など実現性はともかく提言は興味深い。これだけ広い領域をデータを集めよく勉強している。やはりピケティは並の経済学者ではない。大江健三郎の小説まで読んでいるのには驚いた、

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政争に明け暮れた李朝朝鮮の尾撃

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イザベラバードは「朝鮮紀行」の中で朝鮮を「大河が流れ土地は肥沃で自然災害もなく」良い所なのに政治は酷く、文化は見るべきものはないと言っている。本書は政治史なので文化への言及はないが、李朝500年は党争とその復讐の繰り返しで、殺人、四肢切断、墓暴きと遺体損壊、毒殺と言った残虐な記述はしょっ中出てくる。みな朝鮮側に残った史料に拠る、17世紀半ば国民の4割は奴婢で売買、相続の対象だったと言う。これでは江戸時代のような文学、演劇、詩歌、絵画、落語などの庶民文化は起こらない。韓国併合時、日本政府は11宮家の歳費計が80万円だった所韓国王室には150万円拠出した。台湾が10年で日本政府補充金不要となったあとも結局終戦まで朝鮮植民地経営は赤字だった。伊藤博文の懸念した通りだったのである。とは言えこうした「客観的」な朝鮮近代史は初めて読んだ。大国に挟まれた朝鮮半島の地政学的な難題はあるが、日本はこの厄介な隣人とどう付き合っていけば良いのか考えさせられた。

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「中国」と言う物語を創り出した中国人

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原題は「invention of Chinaだから「中国という「発明」」とか「創出」と訳した方が良いだろうが、中国と言う国家、民族、中国語、中国領土、歴史とかは全てこの100年余の間に中国人の作り出した「物語」であることが詳細に亘り明らかにされている。典拠は欧米の文書、欧米人談話等による処が多く、日本語の類書に慣れた我々には新鮮な視点がある(無論日本人研究者の業績も多く紹介されてる)。日本の訳語から転用した近代概念の多いこと、西沙諸島の島名は英仏の海図をそのまま中国語に訳したので変な地名が多い事など、要は中国の近代は殆どが欧米、日本の学問的成果を借用しており、中国5千年の歴史などは現代中国に直結していない虚構、つまり「捏造」だとされている。とは言え全てを机上の書物の組合せで何とか辻褄を合わせる中国人の頭のよさには感心する。延々と続いてきた「文飾の文化」がこの国の本質なのだ。それは西洋科学の明晰、衡平な理性ではなく、要は感情に基づく理屈付けなのだ。

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紙の本中国詩史

2023/05/24 13:23

中国詩の伝統全体を見渡した碩学の名著

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本書は中国詩の通史を書こうと企てられたものではなく、吉川幸次郎が折々に書いた雑文、論文を高橋和巳がまとめて編纂したものである。初版から50年以上経ってるが少しも古びていない。解説の川合康三が、自分の専門領域に詳しいのは研究者だが学者ではない。学者には境界がない。何でも広く知っててしかも対象と全体を的確に洞察する見識を持ってなければいけない。学識ではない見識だと言ってる。吉川幸次郎はまさにそうした学者しかも碩学であった。本書に現れた碩学の学識のひろさと時代の本質を見抜く見識には驚嘆するほかなく、今はこれだけ守備範囲の広い中国文学者はもうなかなか現れないだろうなと思われた。

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戦火に散ったポーランド女性将校の家族史

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これは良い本だ。カティンの森でソ連に虐殺されたポーランド人将校1万人余の中にただ一人女性がいた。ポーランドの英雄ムシニツキ将軍の娘でありパイロットであったヤニナであった。著者は大変な熱心さでヤニナの生涯をポーランド、ロシア、カティンまで足を運び調べ上げた。あの広い大地を行くだけでも大変な手間がかかる。その結果妹もナチスに虐殺され、兄はフランスに妹の夫はイギリスで戦闘に加わったことを明らかにする。2次大戦でポーランドはドイツとロシアの侵攻で亡国し、国民の5人に1人は死んだと言われている。T.スナイダーの「ブラッドランド」の通りなのだ。2005年ヤニナの頭蓋骨が65年ぶりに故郷の村に還リ埋葬される時に集まった村人達はみな涙した。長い年月を思うとその場面はは誠に胸に迫る。丹念に各地を取材した著者の奮闘を讃えたいと思う。

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電子書籍また会う日まで

2023/03/30 19:38

爽やかな読後感の残る小説

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著者の大伯父(祖母の兄)秋吉少将の生涯を追った伝記小説。海軍軍人でありながら戦闘には生涯加わらず、海図作成や天文観測をし、経験なクリスチャンであったが、信仰と戦争との葛藤や親族の世話等に心労の多い生涯であった。ただその誠実な一生は清々しく、一族からは福永武彦や池澤夏樹が出た。池澤夏樹も理科系出身で信仰ある人だけに、叙述は平易ではあるがしみじみとした味わいがあり爽やかな読後感の残る小説である。

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一人っ子政策のもたらした特異な価値観の国、中国

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著者は長年中国に住み、多くの中国一般の庶民の率直な本音を聞き出している。中国人は男女が自由な恋愛感情で結婚することは少ない。学歴、家柄、戸籍(都市戸籍).収入を調べ上げ、婿が妻に新居を用意して始めて結婚が成立する。育児は4人の祖父母が交代で家に泊まり込んで手伝う。一人っ子政策の結果嫁が足りない、特に農村は頭さえ変でなければ誰でもいいと言う。人物ではなく条件が先の社会では、若者は人付き合いが苦手な「寝そべり族」になるが、自尊心や愛国心はやたら強い。しかし親や祖父母の世代との価値観の差は大きい。中国人の人生観は結局功利主義、個人主義であり、美意識や宗教的感情は日本人とは根本的に違う。こうした民が14億人もおり一人っ子政策はそれな益々拍車をかけている。この国は何処へ行くのだろうか?

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小説のように面白い歴史ノンフィクション

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本書は1ドイツでベストセラーになった言う。著者は東ドイツの生まれでベルリンの壁が壊れた時20才。その後西側教育の結果新聞記者になったが、中年になり自分のルーツを探る旅に出た。母方曽祖父はアウシュビッツで殺されたユダヤ人であり、その子の祖父はフランスに亡命しパルチザンとして独軍と戦つた英雄で、その子である著者の母は党員として知識階級になる。父方の祖父は労働者階級出身でナチ党員の独軍兵士だったがフランスで捕虜となり帰国し、子である著者の父は才能を活かして画家になる。出自階級も思想もちがう2つの家系は、戦後故郷で新生東ドイツの建国に努力する。しかしその国も40年後に消滅してしまう。東ドイツを建国した普通の市民は理想に燃え普通の生活があった。共産主義を悪としてでなく人生の哀歓と歴史の悲劇を織り交ぜて描き、最後はまさに壁が崩壊する夜の熱狂の中にいた著者な筆致は殆ど感動的ですらある。日本でも単純な軍国主義批判論だけではなく、こんな骨太の歴史ノンフィクションを書く書き手は現れないものか?

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紙の本鳴雪自叙伝

2022/11/23 16:15

実に面白い幕末、明治の庶民目線の史料

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実に面白い幕末、維新、明治の史料だ。内藤鳴雪は安政大地震も長州征伐従軍も体験したし、松山藩への土佐藩進駐、森有礼殺害、正岡子規臨終の現場にも立ち会った。維新の志士の回顧談は自慢話はかりだし、町人農民の談は惜しいことに記録性が弱い。その点この自叙伝は淡々たる口述筆記ながら、記録も背景の説明もしっかりしている。武士ではあるが庶民目線なのもいい。東海道、中山道の旅、三十石舟、高瀬舟、江戸と京都の芝居、寄席の有様、幕末武士の戦闘の実態。自分の見た通り生き生きと語る実に貴重な史料だ。因みに著者は大正15年79歳まで存命した。

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中国と言う「弱肉強食」社会の凄まじさ

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興味深い本だ。著者は米国の大学卒業後中国に戻り、そこで妻と出会って温家宝首相夫人と親しくなる。2人はこのコネを皮切りに政府高官と次々と「関係」を作り巨万の富を得る。その過程での接待、贈答、欧米旅行の詳細が明かされるが貪欲、贅沢の一語に尽きる。しかし習近平の登場により、腐敗は暴かれ著者は妻と意見の違いから離婚し長男と英国に逃れる。妻は行方不明となり2021年9月の本書出版直前に出版中止依頼の電話が中国からかかって来るが未だに行方不明と言う。中国人は幼い頃から生存競争が厳しく、世界を敵と味方に分けることを学ぶ。味方との関係も一時的なものであり、党に命じられれば親や友人でさえ密告する覚悟を持たされ、良心の呵責に苦しむのは馬鹿だと教えられるとの一節が文中にある。革命以降、宗教と言う人々の紐帯を断ち切った共産主義社会の凄まじさがここにある。

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紙の本妻はサバイバー

2022/10/25 16:05

精神病者の妻と生きる壮絶な体験記

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身内や親しい友人に精神病者を持っている人は意外に多いが、実際に体験記を書く人はなかなかいない。結果が自分や家族に跳ね返ってくるからだ。作家には「死の棘」のような例もあるが「死の棘」には娘が幼年期のトラウマから後日失語症になったことまでは書かれていない。著者は幸い子どもはいないが壮絶な妻の闘病記録をよく書いた。その勇気と誠実ささを称えたい。長い人生平穏な事ばかりではない。私たちもいつか介護や老衰で人に迷惑かけるかも知れぬし、自分自身も決して人を裏切ったり、見捨てたりしたことはなかったと言い切れるだろうか?そんなことを深く考えさせられた重い読書であった。

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昭和日本軍の独善性を招いた日清戦史の改作

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司馬遼太郎が「坂の上の雲」を執筆した動機は、官修の「日露戦史」が全く面白くなく各将軍の戦後の自慢話ばかりに堕してしまっているからであった。しかし戦史の改作は既に「日清戦史」の時から始まっていた。90年代に官修「日清戦史」の草稿である「日清戦史決定草案」が発見され、本書は草案と公刊戦史との違いを詳述したものである。例えば平壌城での戦いは日本軍苦戦であったにも関わらず清軍は一日で白旗を掲げたが、これは白旗を出せば捕虜にならずに直ぐ自国に帰れると誤解していた清軍の「一人相撲負け」であった。しかし官修戦史では清軍の内部腐敗と日本軍の勇猛が強調されている。その他準備不足による兵站補給の拙劣、前線指揮官の独善先行などが草案では指摘されているが官修戦史では削除されている。
「草案」を書いたのは東条英機の父である東条英教であり、改作を進めたのは大島浩の父である大島健一である。子は2人共東京裁判の戦犯になったが、日本軍の独善的思考の淵源となった戦史改作のもたらした歴史の皮肉を思わずにはいられない。

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