蒼宙蛍さんのレビュー一覧
投稿者:蒼宙蛍
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海蛍
2015/08/26 12:09
3話がラストで、ひとつながりになる時空小説
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純文学風の恋愛小説「見合い蛍」
原爆ドキュメンタリー風の「牡丹」
ラノベ風の近未来戦争「人魚と海蛍」
この3話が最後に、海蛍に運ばれた灯籠によって、見事に1つにつながり、
半世紀の時空の流れにハッとさせられる。
第1章「見合い蛍」 (沖縄市戯曲大賞佳作の小説化)
見合い後ヌードを晒し子作りを迫る美女。怯える男。
美女の過去は悲惨で、安保反対の学生運動家への失恋や
女子高時代の親友との別れは痛ましい。
純文学風の文体と気品漂うエロティシズムで、
意外に深みのある幻想的でなおかつリアルなラブストーリーだ。
第2章「牡丹」
アインシュタインに日本人女性との間に隠し子がいたという大胆な設定。
その天才少年が渡米し、原爆製造に関わり、悲惨な運命の選択を迫られる。
米政府の卑劣な企みを暴露し、天才科学者たちの罪を問うと同時に、
ボタンを押すかどうか、その選択の真の動機と秘められた恋が浮かび上がる。
第3章「人魚と海蛍」 (NHKラジオドラマ最終ノミネート作の小説化)
夜の海で裸で泳いでいた恋人達が突如巨大な海坊主クジラ?に飲み込まれる。
目が覚めると、青年は拉致され、美少女は変身?
ライトノベルのような近未来戦争が始まる展開。
現代に蘇った元特攻隊の老艦長が、アメリカに復讐しようとおぞましい計画を練る。
それに反対し、恋人を救おうとする青年。第3次世界大戦の危機。
その葛藤は、今現代の、戦争に先導しようとしている老政治家と、
反対する若者たちの葛藤に似ている。
最後の灯籠で全ての葛藤が氷塊し、別々の3話が一つに繋がり、
半世紀の時空の流れにハッとさせられる。
集団的自衛権と安保関連法案で、
戦争やテロに巻き込まれつつある現代の日本人が、
今読んで考えさせられる、深みのあるラブミステリーだ。
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