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Michiyukiさんのレビュー一覧

投稿者:Michiyuki

19 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本一九八四年 新訳版

2015/09/28 23:17

「ディストピア小説」の金字塔

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

村上春樹氏の小説「IQ84」の題名の元ネタとなったもので、それと関係なしに元から大変有名な作品だ。こちらの方が断然解りやすく現実感があるように思えた。

発表されたのは1949年。舞台とされた1984年はとうの昔に過ぎている。だが、描かれた世界はむしろこれから起きうる未来を思わせる。いや、むしろ既に現代社会はその一端をなぞりつつあるのかもしれない。
作中に登場するテレスクリーンは最近駅や繁華街で見かけるデジタルサイネージを彷彿とさせるし、いたる所に設置された監視用マイクは現在各所に設置された監視カメラを思い起こさせる。

絶対的に「正しい」党の支配、複雑な官僚機構、自己都合的に改ざんされる歴史、そして「ビックブラザー」の存在、等々作中の世界はディストピアそのものだ。読んでいて本当に息が詰まる思いがした。
だがこれらの事項がほぼ全て揃っている国家が現代の世界にある。筆頭は中国だ。民主主義が存在せず国民の自由な活動が制限され、インターネット上でも常に当局が目を光らせている。ジョージ・オーウェルの想像した悪夢のような社会は確かに彼の未来に存在していた。その先見の明に驚かされる。
北朝鮮もそうだが、専制的で国民を抑圧する国家が出来てしまうのは人類の必然なのだろうか。考えさせられた。

オーウェルの母国イギリスはもちろんの事、日本を始めこの小説を自由に読める国は十分民主主義が機能している。彼の懸念したこと、警鐘を鳴らしたことが人々に少しでも届いているからだろうか。
世界中の国でこの「1984年」の世界が遠い過去のこと、起こりえない世界と思えるような社会が実現すればと願う。

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紙の本ローマから日本が見える

2015/09/29 00:07

古代ローマ史から我々が学ぶこと

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

塩野七生氏の著書は「ローマ人の物語」文庫本全43巻+スペシャル・ガイドブックに加えて、その時間軸上の続編となる「ローマ亡き後の地中海世界」全4巻を読み通しているのですっかりおなじみの作者だ。

「ローマ人の物語」は新潮社からの出版だが、本作はなぜか集英社からの出版だ。編集方針の違いがあるのか、本作は常体ではなく「ですます調」で書かれている。そのため読んでいて柔らかな印象を持った。

本書はローマ建国から初代皇帝アウグストゥスまでの時代をたどり、ローマの歴史上重要な局面を触れながら教訓足りえる事柄を様々紹介している。そして様々なエピソードを通して現代日本社会への提言と問題解決への糸口を述べている。

地中海を中心にヨーロッパ、北アフリカ、そしてオリエントと空前の領土と繁栄を誇り、現代ヨーロッパの礎を作ったローマ帝国。その成り立ちや推移を知るにつけ、驚きと感心でいっぱいとなる。このローマの長大な歴史は同著者の「ローマ人の物語」を通してまざまざと見せつけられた思いだ。

「ローマ人の物語」は長大で、読後は王政期や共和政期は記憶が薄れていたことも多かった。特にポエニ戦役以後の混迷時代は状況がやや地味で複雑で、自分の中で理解が低かった。いずれ読み直そうと思っていたところで本作と出会い、ちょうど良い復習となった。

グラックス兄弟の改革の動機と目指そうとした事、そしてその悲劇的な結末を改めて知ることができた。特に本作はこのエピソードに限らずそれぞれの局面でその出来事に対する著者の解説や論評が述べられている。このグラックス兄弟の改革の動機は正しかったが政治への理解がやや足りず元老院を真向に敵に回した手法が良くなかった、との評は興味深い。

長いローマの歴史の中でもこのような正面切っての改革はスッラの例などいくつかあるが、著者は決してその手法を是と評価しない。むしろ妥協でも強硬でもない第三の手法とも言えるアウグストゥスの手段を大きく評価する。カエサルが進めようとした共和政から寡頭制への移行をいかにして行うか。その過程はまさに目から鱗だ。いやそれどころか自分からすると奇跡か神業とすら思える。

「インペラトール」の称号授与、「第一人者」の称号、「国家の父」という称号の元老院からの付与、「護民官職権」の保持、「最高神祇官」の兼務、それらすべてが共和政では合法であったのに併せ持つと1人の皇帝への権力集中を実現できるということは、凡人には思いもつかないことだ。考え付いたアウグストゥス、そしてその礎を築いたカエサルの天才的発想に敬服せざるを得ない。

そして「ローマ人の物語」、および本作でも再三述べられているが、ローマの大きな特徴は ”敗者の同化” だ。戦争や武力平定で敗れた他国民や他民族に対して、ローマは決して残虐な扱いはしなかった。むしろ被征服民の権利を最大限認めて、ローマと同化を進めることを推し進めた。医師や教師などの公共性の高い職に就くものや、補助兵として働いた兵士、解放奴隷にはローマ市民権を与えるどころか、部族の権力者には元老院の議席を与えるなど、その進め方は目を見張るものがあった。

ローマ以前、ローマ以後、もちろん現代でさえ、ここまで自国の門戸を開いている国家はないだろう。
混迷する現代社会、日本だけでなく世界各国が古代ローマを手本とすべき点は多い。

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紙の本動物農場

2015/09/27 23:18

痛快な革命批判

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たまたまテレビでオリンピック招致委員会コンサルタントのニック・バーリー氏が推薦している内容をみて興味を持って読んでみた。「1984年」に引き続いてのジョージ・オーウェル作品だった。
寓話仕立てになっていることもあり、長さも程々で気軽に読み進められる。

内容は、歴史を学んだものなら一目瞭然だがロシア革命とその後の流れを動物たちに置き換えて描いている。「資本家」=「人間」を追い出した動物たちが理想の農園を築こうとするが、多少頭のよい豚たちが運営を進めるやいなや当初の目的とはどんどんかけ離れた社会となっていく。言うまでもなく「豚」=「共産党員」である。
腐敗し堕落していく様は正に現実に起こった事そのものであるし、抑圧され一向に生活が上向かない他の動物たちは一般国民の悲しい姿である。
懸命に働き、しかし遂には努力が報われず退場してしまう馬には心を大きく揺り動かされた。
最後に豚たちが敵と憎んでいた人間たちと密約を結ぶ辺りは、豚たちの狡猾さとそれまでの動物たちの行動に対する皮肉を大いに感じた。

動物たちが主人公であるが、結局は人間社会への痛烈な批判が込められている。現状を打破しようと理想に燃えて革命を起こした所で、結局は権力を握ったものが以前の支配層と同等、もしくは更に酷いことをしてしまう。
歴史の皮肉、過去の失敗に学びつつ、人類は自らを顧みながら未来の社会を創り上げる必要があるのだろう。

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ビジネスをするにも歴史を学べ

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ひょんな事から古代西洋史に興味を持ち、いくらか関連書籍を読んできた。単純に思う事は、人類は2000年程の時間を費やしても本質は変わらない。政治は元より経済も似た様な事を繰り返している事例に気付く。

同じ様な意見に基づいて書かれた本書は、自分がいだいた漠然とした思いを補強してくれるものだった。著者は歴史家ではなく会社経営者だ。だが相当の読書量をお持ちの方の様だ。幅広い知識を背景にビジネスマン視点で世界史を解説した一冊だ。
専門家ではない分、独自視点で歴史の断片が紹介される。語り口も平易で読みやすい。
自分が馴染みの薄かった地域や時代も取り扱われており、勉強になった。
本書をきっかけに興味を持った時代に関する書籍を更に探してみるのも良いだろう。

歴史に学ぶ事で自信や組織が直面する課題や問題を解決するヒントが得られるかもしれない。いやむしろ人類の歴史を考えると、過去の事例を大いに参考にして判断するべきなのだろう。

一つ気になったのは冒頭の章での「韓半島」という表現。日本では馴染みの薄い表記でとういう意図があるのか図りかねていたが、後の章で現地表記に倣った名称を用いる事が述べられていた。そういう事はまず一番最初に断り書きを入れて欲しかった。

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国民的欠陥を克服できていない

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太平洋戦争等で旧日本軍が陥った失敗をつぶさに解説した「失敗の本質」。本書はこの本を解説した文字通りの入門書。近年刊行されたことから、昨今の日本企業の失敗とも絡めて解りやすく説明がなされている。

戦争の善悪は別として、何故旧日本軍が敗れたのか?コミュニケーション不全や過去の成功への執着、自ら大局作りができない点等が原因として挙げられる。残念ながら現在でも日本人、日本の組織、そして日本社会そのものがこれらの失敗要因を克服できずにいる。
戦後70年を経て、本当に反省すべき、歴史に学ぶべき点はそこではなかろうかと思う。

本書と「失敗の本質」原書を読み比べると、断然本書のほうが解りやすい。読むのに自信がない人、戦術的な話が苦手な人は、せめて本書だけでも読んでみて欲しい。

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失敗の本質は普遍的

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ちょうどこの本を読んでいた辺りで、東芝の不正会計処理問題やVWの排ガス不正操作問題が起こったり、日本マクドナルドの不振が長引くなど、様々な企業の問題が報じられていた。非常にこのテーマと合致した事態が現代も引き起こされていると感じた。

著者は既に他界しており、本書が書かれたのも1960年代と今から半世紀も前となる。だがウォーレン・バフェット氏やビル・ゲイツ氏も読んでいたなど、時代を経ても人を惹きつける要素がある。
取り上げられた個々の題材は確かに古いものばかりだが、背景にある人や企業の行動原理、心情、態度などは今の時代でも何ら変わらず目にすることがある。
更に著者は取り上げた事例に対して自身の見解を述べず淡々と事実を追っている。むしろそれが読み手に深く考えさせる役割を果たしている。

印象深いエピソードは、フォードのエドセルをめぐる話だ。社運を掛けて時間と資金、労力を掛けて華々しくデビューした車種が市場で惨敗してしまった。何がいけなかったか?複合的な要因があろうが、自分は消費者ニーズの読み誤り、技術偏重、生産体制の不備が大きかったと感じた。最近の国内電機メーカーは出す商品がいずれも世界で振るわない。原因究明の一助にフォードの失敗から学んでみるのはどうだろうか?

ゼロックスのエピソードは全然失敗ではなく大成功の部類だと思う。本書のサブタイトルに「成功」も入っているので、こちらに含まれる内容だったのだろう。
だが、21世紀に生きる我々はゼロックス社の莫大な機会損失を知っている。パロアルト研究所で世界に先駆けて開発された技術を自社で活かせず、アップル、マイクロソフト、IBM等に先行を許してしまった。もし研究所の成果を存分に活用できれば、ゼロックス社は更に飛躍的な進展を遂げていただろう。
一見成功していた会社が時を経てむしろ失敗と評価されるという事も、今現在この本を読むと見えてくる部分である。

自身の所属する組織を見直す上で何らかのヒント与えてくれる一冊だ。

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自分にとっての価値を考える

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これまでのちきりん氏による物事の独自の切り口、考え方に毎回新鮮さを感じており、新刊が出るたび期待している。今回の著書も十分読み手を刺激してくれる内容だった。

特に印象に残っているのは、商品、サービスが自分にとっていくらになるか考えること、という部分。原価や市場価格で判断せず、あくまで自分の価値判断を基準に価格を決めてみようという事だ。世の中の消費者がもっと考えて消費行動を取れば売り手も多種多様な売り方、商品作りが必要となる。結果として消費者は自分に満足いく商品を手に入れられたり、細かな市場の中で新たな売り手の活躍の場が増える可能性がある。そんな豊かな市場が形成されれば良いと感じた。
自分の場合、最近 Apple Watch 等ウェアラブル端末に多少興味を持ったが、自身の価値判断ではせいぜい 5000円ぐらいが出せるお金の限度かなと思った。Apple Watch の原価以下であるので自分が入手できるのは相当先となりそうだ。

ふるさと納税で地域ごとの競争が生まれつつあり、公務員といえども市場を睨んだ戦略が必要との指摘は興味深い意見だと感じた。

本の内容で気になった点がただ一点ある。
事業者でも個人でもニッチな市場や消費者向けにサービスを提供すべしと前半で述べられている。一方、中程で旅行代理店の企画したサービスは人気が落ち、個人プランナーが発案した旅行プランに人気が集まると述べてある。
それぞれは特に矛盾がない内容だが、本書を巻頭から読み進めていくと、何故人気が落ちる旅行代理店もニッチな市場向けにサービスを提供すべしという意見を出さないのだろうと感じた。
前半の内容を理解した読者にとって、旅行代理店も生き残りを掛けて対抗策を用意すべしという内容が含まれるのが当然のような気もする。

それ以外の点は毎度のちきりん氏の新鮮な意見が多数で、読み手は大いに学ぶ点があると思う。

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紙の本機械との競争

2015/09/23 15:27

来るべき機械化された社会に備える

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今年に入り、人工頭脳や自動化を巡る話題へ注目が俄然集まっている。30年後の 2045年にでもやってくるという技術的特異点 (Technological Singularity) もかなり大真面目な議論対象となってきた。
一体どういう事態になるのか理解を深めたいと思っていた中で読んだ本だ。

この本を手に取ると一目瞭然だが、装丁が独特だ。更に黄土色の厚手の紙質に紺色の印字という大胆な製本が読む者の気持ちを引き付ける。そしてページ数が少なめだ。僅か 200 ページあまりしかない。しかし内容は十分だ。様々な経済統計や資料、調査結果を列挙して「機械」によって多くの雇用が失われ実感の乏しい経済成長が進んでいる実態を浮き彫りにしている。


何度もキーワードとして現れるのが「チェス盤の残り半分」である。指数関数的な影響力の増大を表す表現で、今まさに機械化の影響が一気に加速する場面だと警鐘を鳴らす。
半導体の性能向上指標である「ムーアの法則」を例に出すまでもなく、コンピューターは高度化していき、我々は年々依存度を増している。単に依存するだけではなく、様々な業務分野で労働者が駆逐されているというのがこの本の中での大きなテーマになっている。
しかも駆逐されるのは比較的単純な業務とは限らずむしろ高度な専門知識が要る分野も含まれるというのだから無関心ではいられない。

機械を「持つ者」と「持たざる者」との対立が明確になるとの記述は背筋が寒くなる思いがした。

しかし著者らは将来に楽観的な見通しも立てている。人間と機械の最良の組み合わせを模索すれば優れた結果をもたらせるだろうということだ。具体的な方法は各方面で様々な取り組みの中から見出すしかなさそうだが、この先に現在は想像だにしなかった新たな職種、労働市場が生まれることを願う。

著者らがまとめた政策提言も興味深い。教育分野重点化はまったくその通りだと思うが、労働流動性促進のため住宅補助を打ち切れとの内容はドラスティックだと思う。現状のアメリカですら労働流動性が足りないとの認識であるが、著者らは日本の労働市場をどのように見るだろうか?

全体を通して、現在の世界的な景気減速や恩恵の行き渡らない経済成長は、根底に機械化や自動化が起因していると思うようになった。著者らの主張が正しければ、各国政府が実施している経済政策は根本に誤りがあるかもしれない。
機械に労働が奪われている現実を直視し、知恵を絞って次世代の雇用を考える必要性を痛感する。

しかし、日本版の解説を寄せた元経済企画庁のエコノミストは、ご自身が官僚時代労働派遣の規制緩和を実現させて日本の企業や労働者が90年代を乗り切ったという趣旨の事をあっさり書かれているが、派遣労働者の大多数が賃金、待遇、そして生活でずっと辛酸を舐め続けていることはご承知されているのであろうか?

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紙の本オープンサイエンス革命

2015/08/30 23:40

研究者にオープンサイエンス革命を押し進める動機付けが必要だ

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近年、科学研究のデータが一部公開され始めていると聞いている。一般の人でも入手できたり解析に関われることもあるらしい。是非とも「オープンサイエンス」に付いて詳しく知りたいと思っていた矢先に出合った本だった。

現在様々な分野で研究者が得られたデータを公開する取り組みが行われ始めている。データの種類も生のデータや加工されたものだったりするが、公開形態は研究者に留まらず一般の人でも閲覧できるものもある。

この著書で紹介されていたのは天文学分野や構造生物学等であったが、著者曰く、紹介できたのはごく一部で他にも様々な取り組みがあるとの事。
有名どころの SETI (Search for Extra-Terrestrial Intelligence 「地球外知的生命体探査」) やタンパク質の構造最適化プロジェクト “Foldit” の他、純粋な科学とは異なるが、プロチェスプレーヤーとの対戦や GNU、Linux 等のオープンソースソフトウェアやプログラムコンペが紹介されていた。

多人数による考えの精錬化、いわゆる集合知というのが本書で幾度となく言及されるオープンサイエンスの利点である。一人一人の能力は平凡か上々程度でも、多くの人が知恵を出し合うと非凡な人物一人に匹敵、あるいは凌駕する。

本書は現役の理論物理学者による一般向けによくまとめられたオープンサイエンスについての解説書だ。今後オープンサイエンスという言葉が頻繁に取り上げられるようになれば、必ずや参照されるべき書となろう。
だがオープンサイエンス化の推進に妨げとなる問題点への言及もある。一番の阻害要因は、現役の研究者たちにとってメリットが見出しづらいと言う点である。特に最前線に立つ若手研究者は自分の業績を挙げるので精一杯である。日々休まず研究を継続し次々と結果を出しつづけないと研究予算どころかポストの確保もままならない。研究データベースのオープン化などに協力する余裕がないのだ。

こんな懸念を著者も重々承知していて、しかもしつこいほどこの懸念点を様々な章に書き連ねている。翻訳者によればこれでも重複内容を削ったとのことだが、それでもこんなに残っているとは元はどれ程同じ事を書いたのだろうか?

しかしそれほど問題点を指摘しているにもかかわらず、具体的な解決策や提案は乏しいのは残念な限りだ。せっかくここまでオープンサイエンスの現状をつぶさに調査し問題点の洗い出しもした現役の研究者であるのだから、多少大仰でも印象深い提言をまとめて欲しかった。

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「つながりすぎた世界」の脅威は目の前に、しかし翻訳者の意見に疑問。

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昨今のネット社会に対して利便性を大いに感じると共に、依存度を増す現状に不安を覚える事がある。何かの事件や耳目を引く情報があっという間に拡散され共有される状況は、時には恐ろしさすら感じてしまう。現状は果たして正しい姿だろうか。
この著作で取り上げられたテーマはこのような瞬時の情報共有化や伝達が引き起こしうる現象についてである。まさに自分が感じていた不安に答えてくれるような内容だった。もっぱら株取引や証券市場などの経済分野からの事例引きが多かった。しかしこの「つながりすぎた世界」、海の向こうの経済の動きがあっという間に身近に影響を及ぼし得る恐れがある。

年々高速化する株取引はわずかなきっかけで制御不能の状態に陥る恐れを内包する。経済活動に限らず、情報が拡散し瞬時に多数へ共有化されることを著者は「思考汚染」という言葉で表している。本書では何度も現れるキーワードであるが、拡散する情報の真意や正確性、波及する影響等が吟味されずに人々へ行き渡ってしまうことは恐ろしいことである。瞬く間に人々の間である一定の方向へ雪崩を打ったように意見や行動が傾き、止めるられない流れを生み出しうる。

これ以上の過剰なつながりは予測不可能な状況をもたらすことが懸念されるため著者は様々な防止策や対策案を掲げている。結局のところ、政府なり監視、取締機関なりが過剰なつながりの規制や制御を行うことが必要との意見だ。具体的には大規模な金融取引等への課税強化などが挙げられよう。著者が本書で数々指摘した事例や憂慮すべき状況を鑑みると、指摘しているような規制強化や対策案は確かに用意されるべきかもしれない。
ただし世論を味方に付けての実現にはいくつものハードルがあろう。だが既に過剰な情報共有化による危険な状態は日々深刻化している。誰もが情報共有過剰化について認識すべきだが、果たしてどのような方向へ進むか不安は尽きない。
本書をきっかけに議論が起きればとも思う。

ところが、せっかく良いテーマと良い問題提起となる著作だったにもかかわらず、邦訳版の訳者あとがきを読んで驚愕した。原著者の言う「正のフィードバック」と「負のフィードバック」をうまく調整するためには中国共産党のやり方がベストと言うのだ。
はっきり言及しておくが、原著者は本書内で中国の統制方法が解決策だなどとは一切述べていない。それどころか中国に関する記述はほとんどない。それなのに翻訳者の酒井泰介氏は勝手に著者の主張が現況の中国の統治方法を是とする内容と曲解してしまっているようだ。
著者は「過剰結合」と「思考汚染」に懸念を示し、急激な変化をもたらす流れにブレーキをかける機構が必要と指摘しているが、決して中国共産党のような専制的政治手法で行えなどとは主張していない。
中国共産党は情報統制を行い、国民の言論の自由を侵害し、一切の健全な政治、経済活動を阻害し続けている。民主主義を否定するこの政治体制は到底受けいられるものではない。過剰な情報伝達による様々な弊害を抑制するために、人類が積み上げてきた民主的な社会を根底から崩すような主張には一切反対だ。

このような曲解を持ちながら行った翻訳では、どこかしら原著者の記述も歪められて日本語化されているのではないかと不安になってくる。
この翻訳者の後書きがなければこの本の評価はずっと上がっただろう。せっかくの著書の汚点であり残念である。

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自分の仕事へプラスするために

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正直に言うとあまり印象に残らなかった本だ。「エリートが学んだ」と言われてもこの程度ではないだろうと思う。

だが会議に臨む態度には6通りあり、全ての役割が揃えば効果的な議論が行えるという説明は興味深かった。会議の場でいずれかの立場の参加者がいなければ、自らがその役を買って出れば積極的な役割を果たせるとの事だ。
だがそれとて実は他の著書からの引用で、本書の著者の独自意見ではない。
しかしながら、すぐにでも役立てそうな方法を教えてもらえた事に感謝はしたい。

本書を読んだだけでは「エリート」の域に達するに至らなそうだか、その一歩にはなるのかもしれない。

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働き方は色々ある

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ちきりん氏の著書は毎回読みやすい文体で、尚且つ読者に新たな視点を気付かせてくれる。本書も同様であった。

平均寿命も伸び、皆がこれまで通りの働き方、生き方で良いのかという問題提起がなされ、それに対し著者自らが調べたり考えた意見が述べられている。
難関資格が必ず役立つとは限らないこと、定年延長を見据えた生き方を考えること、人生を全うするまで必要なお金のこと等々、示唆に富む内容だ。

自分も生き方や働き方を見つめ直す必要がありそうだ。

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世界を歩いてわかった事、感じた事

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「自分のアタマで考えよう」以来ちきりん氏の著書に注目している。今回は自身が様々な国を訪れた体験を元にした内容。アジア各国から崩壊前の共産圏、中東など本当に世界各国様々な場所へ足を運んだのだと感心する。
自分自身も外国を訪れた際、その国の文化や風習、社会制度など様々な事柄を目の当たりにするし、日本と比較することがある。そこから日本の良い所を再認識することもあれば見習うべきことを思ったりする。自身の中の常識がかき乱される感覚だ。
著者は数多くの国を訪れそのような体験をたくさんしている。実体験から得られた知見や意見は大変貴重だと思う。一つ一つのエピソードと著者ならではの切り口で迫った分析に新鮮な驚きや共感を覚えながら読んだ。

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人間はランダム化が不得手、そこに勝機あり (但しわずかに)

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感想を一言で言うなら思ったよりも地味だった。更に副題のテニスに関する章は僅かに5ページ。拍子抜けしてしまったが、自分もテニスのプレーですぐに実践できそうな内容だったのでよしとしたい

人間は物事のランダム化や偶然の事象の認識が不得手で、本来ならば期待値が同じになる事柄でいくらか差が生じることがあり、そこを狙えば長期的に利益が他人を上回る事になるとのことだ。確実な必勝法はないし、自分一人だけが大勝することもない。あくまで統計的な勝率の差に応じての「勝ち」を扱っているのだ。

人によっては他者を出し抜ける必勝法を期待してこの本を手に取ったかもしれない。一応スポーツトーナメントや掛けの予想で他人の出方を踏まえた有効手段を紹介している章もあるが、それにはあまり期待しないほうがよい。著者は数学者で、確固とした数学的、統計学的裏付けを元にこの本を書いている。巷にあふれる株やギャンブルの安直な必勝法指南本とは訳が違うのだ。

この本で一貫して指摘されている人間のランダム事象取扱の不得手さだが、当たり前の事だと思っていたものの、改めて様々な事例から事実を突きつけられると愕然としてしまう。

コイントスの例は単純で気が付く人はすぐに見抜けるが、世の中様々なところで無意識のうちに人間の特徴的な列挙方法が顕在化してしまう。

興味深かったのは数字の偽造、操作の痕跡発見方法だ。
様々な数字の並びは「ベンフォードの法則」、若しくは「上一桁現象 (The first digit phenomenon)」と呼ばれる分布に従うそうだ。この法則は帳簿上でも同様で、人為的に手を加えた数字の分布はベンフォードの法則から乖離が出てくる。これを利用して、会計検査のスクリーニングにしているとのこと。

また他にも興味を引かれたのはスポーツにおける「ホットハンド」を巡る話だ。バスケットボールで選手がシュートを連続して入れられるような勢いのある状態を言う。いわゆる絶好調の状態だ。このホットハンドに入ると、そうではない状態と比べてシュート成功確率が上がると信じられている。
だが相当な数の試合を解析したところ、「ホットハンド」状態とそうではない状態とで成功率は変わらなかったという結果になった。どうも数本連続してシュートが入ると今日は調子がいい、と選手も周囲も思い込んでしまうようだ。
これはバスケットボールに限らず他の競技でも似たような事例があるだろう。

全体を通して、人が関わることに癖や確率分布の偏りが現れる事が狙い目であることが十分理解できたが、その勝率の違いも結局はわずかで、期待値に差はあるが大勝ちすることは少ないと実感した。しかも癖や偏りを見出すのも地道な集計や分析、確率計算によってやっと見えるものである。だいぶ労力が要るという印象だ。

ところで大いに勉強になった本書であるが、全体を通して文章自体に違和感を覚えることが多かった。翻訳のせいかもしれない。
説明が回りくどかったり、文章の流れが前後でうまくつながっていない箇所があった。こんな文章のせいでよりこの本の内容を地味かつ感想気味に感じたのかもしれない。やや難解な部分もあったのかもしれないが、もう少し読者が読みやすい翻訳を期待したい。

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エリートらしい失敗の例。だが失敗を避ける工夫は誰にでも必要だ。

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失敗し歯がゆい思いをたくさんしてきた。これ以上の事を避けるヒントを得るべくこの本を手に取った。

著者は元NHKディレクター。米国の経営大学院に留学しMBA取得後、外資系コンサルタント会社で勤務。現在は独立し執筆やコンサルタントとして活動している。

本書は著者自身の体験も述べられているものの、大半が国内外様々な場で活躍する人たちに取材し、彼らの失敗体験談、そしてそこからの立ち上がり方について紹介している。取り上げられた人物は30代から40代で、皆輝かしい経歴を持って社会の第一線で日々自分の仕事に向き合っている。

どんな頭脳明晰、あるいは果敢な行動力を持った人物でも誰もが必ず失敗を経験していることがこの中で明らかにされている。だが一方で、失敗の中から彼らはいかにして、どのような考えを持って克服したのか。この点を興味深く読んだ。

はっきり言って失敗もエリートらしい失敗だったり、とりわけ深刻でもなかった事例がいくつかあった。もっととてつもない失敗、例えば会社に何千億円もの損害を与えたとか、業務上の過失で訴訟沙汰になったとか、顧客を怒らせ会社の信用を著しく失墜させた、ぐらいの事例も一つ、二つは知りたかった。だがさすがにそこまでの失敗をした人は取材に応じなかったかもしれないし、エリートでも何でもないのかもしれない。

著者も終盤で取材した事例に基づきまとめているが、大事なことは失敗に備えるということだ。失敗は付き物で絶対避けることはできない。そのためいつでも失敗することを前提に計画を立てて状況を改善できる策を持っておくことが必要だ。また、周囲とのコミュニケーションや信頼関係も重要だ。自分一人で進められることは限られているし、極力失敗を避けるためにも周囲との協調や協力関係は欠かせない。社会人として、そして一個人として大事なことが結局は「失敗」と向き合い、それを克服することに要るのだと思う。

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