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  3. 求道半さんのレビュー一覧

求道半さんのレビュー一覧

投稿者:求道半

82 件中 1 件~ 15 件を表示

司書の願い

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本作は謎の図書館で働く女性司書と主人公の少年との出会いが、少年のその後の人生を大きく変える、本に関わる人々の物語であり、かつ想像上の生物や異形の種族、また不思議な書物が登場するファンタジーである。
 第一巻を最後まで読めば、謎の図書館の成立過程やその背景が読者に分かる構成となっており、その途中では、特に、本の修復に携わる司書の手仕事が、丁寧に描写され、最終頁まで読者を飽きさせる事はないであろう。
 作中では司書の仕事だけではなく、主人公が暮らすアムンの村やその周囲の自然も緻密に繊細に活写されて、中近東風の地理や習俗には実在感が宿り、作中に登場する本やその存在意義にも、説得力がある。
 主人公は読書が好きだが、所属する社会的階層の違いにより、自由に本と触れ合う機会がなく、更にその特異な容貌が、村人との軋轢の原因となり、社会的にほぼ孤立している。
 そのような状況下で、本の都アフツァックから村に派遣された司書の一団が主人公と知り合い、少年は未知の世界の一端を知る事になるのである。
 タイトルに「大魔術師」が含まれるので、本と魔術との関係が気になる読者もいるだろうが、それも第一巻を最後まで読めば、明らかとなる。
 本作には、本を渇望する者の気持ちが、詰まっている。
 書物への愛も溢れている。
 司書の役割は重大である。
 主人公は司書になれるのだろうか。

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母の半生

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

未亡人と一人息子の母子家庭に潜む、亡き父親に由来する謎の現象と秘密を、漫画家である母親と高校生の主人公の日常生活に自然に溶け込ませて、それを読者に不道徳とは感じさせずに楽しませる、断じて、成人向けではない特殊な作品である。
 あとがきの作者の告白を真に受ければ、この題材を扱いたくなかった漫画家が描いたとは思えない、緻密な背景や小物、そして何よりも、ヒロイン大蜘蛛ちゃんこと鈴木綾の年相応の女らしさの表出に対する気合と情熱の籠もった描写は、不思議で、不可解であり、読者は本人の知らぬ間に作品の虜となるであろう。
 作中においては、過去と現在の三組のカップルの恋の進展状況が断片的に、反復的に、映し出されて、共鳴する。
 更に、そこへ、実在する映像作品のオマージュや自作のパロディが絡んで、読者の倫理的な嫌悪感や反発を巧みに和らげる仕掛けが働き、本作は娯楽性の高いラブコメディとなる。
 話の展開は緩やかで、登場人物も多くはなく、結末は見通せないものの、最初に尋常ではない状況さえ受け入れられれば、最後まで読み進めるのが困難な作品になるとは思えず、各読者で受ける印象の異なる、扇情的な描写の有無や多寡のみで、購入の是非を判断するのは避けるべきである。
 主人公、鈴木実は悩んでいるのだ。

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学際的比較文明考

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

下校途中の女学生が目にする光景、放課後の待ち合わせ、秘密の共有、逢引、などと書き連ねると、いかがわしい雰囲気が漂い始めるが、それらを昭和の事物に絡ませて、変質者まがいの異星人との交流を描く連作や短編を収める本作は、言わば変奏曲であり、似たような展開、背景、登場人物の微妙な差異こそが、意識されない、言語化できない魅力の源泉であろう。
 核兵器と少女のヌードが、ある程度、平然と、日常的に並置され、謎の電子機器と地球外に由来する文明の利器が平穏な市民生活の背後で、その使用と回収を巡る諍いを生んでいるとは、作中人物も読者も、知る由がない。
 だが、その経緯は明確には提示されず、断片的な情報の収集と解説を兼ねたあとがきで読者が想像する他なく、未完成、或いは中途半端と感ずる読者も多いのではなかろうか。
 ここが作者の狙い目である。
 語弊を恐れず、作者の意図を推し量れば、全て方便である。
 女子中高生の裸が見たい。変な生き物と戯れたい。機械いじりを楽しみたい。セーラー服、スクール水着姿のおさげの少女への憧れ。欲望ではなく願望をオブラートに包まず、SFという隠れ蓑で、包み隠さず、直截に違和感なく表現する手法上の制約だと考えれば、一から十まで描き切らない事が大切で、この微妙なバランスが崩れれば、ただの欲望まみれの他人が読めない、独り善がりの排泄物に変質するのは間違いない。
 あとがきで作者が分かりやすさの度合いを図示しているが、「たぶん惑星」や「いないときに来る列車」を読んでから、或いはその逆でも、制作年代によるニュアンスの違いを把握した上で再度、本作や他作品に触れれば、作者の一貫した姿勢と意図が自ずと理解出来、後を引くのは確実で、静岡に縁もゆかりもない多くの国民も、昭和を知らない世代も、作者が関心を持ち続ける事物に対する親近感と殺風景な日常に潜む驚くべき未知なる存在への関心が高まるかもしれない。

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女優の想像力

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

中学生の時、同い年の若手清純派女優に恋をした高校一年生、玉梨大地は、本人は知る由も無いが、憧れのその人とSNS上で文字だけの会話を交わす仲である。
 一方、皐月菜乃花は、相手が自分のファンであるとは知らずに、自ら、連絡を取り、常に共通の趣味について語り合える事に喜びと安らぎを覚えている。
 身体的な側面と精神的な側面の両面で劣等感に苛まれる少年と、自身の虚像と実像との乖離に悩む少女とが、仮初の知己として、互いを励まし、共に成長する物語に、更にもう一人の少女、大地の幼馴染である高峰真麻が恋愛面で絡んで三角関係になりつつあるのが第一巻の概略だ。
 学園のアイドルと売れっ子女優が、冴えない男子を巡って、間接的に張り合う様は、双方に恋心の自覚がなく、まだ、恋の駆け引きとは言えないものの、険のある物言いや態度がそれぞれから看取されて、今後の展開が楽しみだ。
 共学高校を舞台にしている以上、男女間の性的な騒動も起こり、主人公がそれに巻き込まれる事で、周囲との関係に変化が生じるのも、読者の期待に少なからず応えようとする作者の姿勢が垣間見えて好ましく、本作の評価を高める一因となる。

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紙の本いないときに来る列車

2015/09/30 23:18

隣人の性癖

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

世紀末、核戦争、人類滅亡の恐怖を肌で感じた東西冷戦時の記憶を少しでも持つ読者は、肩透しを食わされる、張りつめない緊張感の中での妙な居心地の良さが味わえる、あっさりとした短編が、連作も含めて、多数、収められている。
 何故、宇宙人は女子中学生の生態に興味を抱き、大規模な仕掛けを施して、その裸体を覗き見ようとするのか、と、疑問を抱いてはいけない。宇宙人の嗜好は人類とは異なり、人類でさえ、少女の水着姿やヌードに、美を見出してきた歴史を知る者にとっては、無粋な、自明の理である。
 昭和の後半を舞台にする事で、一昔前の機械や風俗に対する知識を実体験として保持する者の意表を突く、腑に落ちながらも微かな違和感を残す、その違和感が不快感や否定的な感情を催さない、郷愁とは異なる親近感に似た感情が、きっと、湧き上がるであろう。平成以降に生まれた読者の興味も必ず引く趣向に満ちた、少しずつニュアンスの違う物語の中を、一度でも覗いた途端、何かが心に引っ掛かり、また、その世界に浸りたくなる中毒性が宿っており、注意が必要だ。
 名立たる出版社の発行する夥しい漫画の中で、似たり寄ったりの作風が氾濫し、現状に飽き飽きしている読者こそ、新たな読者になる資格を備えていると言える、堅苦しくない、芯の通った、SF作品集の体を装っていると誤解されるかもしれない、紛れもなく、女の子と謎の生き物が活躍するSF漫画である。

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興奮するまで温めて

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルから連想して、勇者が性的な接待を受けている、と勘違いするかもしれないが、真相は、その逆で、本作は、人間と魔物との戦いに勝利した真の勇者が主人公ではなく、むしろ臆病者と揶揄されたであろう戦功のなかった男子ロキの、魔境の湯治場での下働きの日々が描かれる。
 種族間の蟠りが解消されない状況下で、勝者の立場である、とは言え、敵地に左遷された男の鬱屈した感情が、魔物の心を傷付けてしまう第一話から、徐々に、打ち解けて、女将の片腕として、雑務をこなすその後の展開では、客として来訪する雑多な魔物の要求や要望が、話の中核をなす。
 従業員の法被姿や浴場の造りからして和風でありながらも、ロキが接する客は西洋の魔物であり、その中でも性と密接に関わりがあるのはサキュバス位であるが、スライムの娘や女勇者なども裸で登場し、従業員一同の真心を込めた接客術により、どんな魔性の女でも、いつしか、愉悦の声を上げるのだ。
 残念ながら、年齢不詳の幼女風の魔物である女将ガイアベルの完全なヌードは掲載されず、稀に見て取れる水着の股間の窪みで我慢せねばならないが、各話のゲストの裸体には、必ず、特徴のある乳首が加筆されており、若干、少なめの総頁数の割には、性的な面での読者の満足度は高いと言える。
 絵柄よりも筋書きに重点を置く読者の懸念に対しては、魔王の死により、人間に服従せざるを得なくなった一枚岩とは言えない魔物の動向や、戦勝に沸き立つ王都の貴族や優遇される勇者と僻地の元勇者との感情的な対立、中立地帯の鉱山の利権を巡る問題等、湯治場の内外で起こり得る数々の危機が内包された不安定な世界である、と、答えたい。
 他にも、少女や成人女性の似像として魔物の裸を見るだけでは、魔境の温泉宿の魅力を味わい尽くしたとは言えず、目を凝らして、一人一人の客の顔を確認するのも大事である。勇者の特性を活かしたロキならではの客への対応や裸踊りは必見だ。

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紙の本取水塔

2016/08/20 15:06

不埒な調査

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

惑星探査計画の運用は、何世代にもわたる膨大な月日を要するが、これは人類に限った話ではなく、未知なる生命体にとっても事情は同じである。
 戦前に駿河湾の沖合いから始まった異変は、昭和の末期になっても確認され、表面的には平穏な町の、秘密を抱える大人の目を掻い潜り、思春期の少年少女や大学生らが、好奇心の赴くままに、海辺を探索し、思案を重ねる、ある夏の出来事が描かれる本作は、何の変哲も無い取水塔の存在に違和感を覚えた若者の、一枚岩とは言えない団結の下に繰り広げられる、公然の秘密を暴く、命懸けの冒険である。
 命懸けではあるが、海中での調査に必要不可欠なスクール水着が突然、脱げると、年上の女の子に恋心を抱く男の子の目が輝くのは当然で、謎の物体の中に二人きりで閉じ込められると、その裸体を心行くまで堪能し、死と隣り合わせの極限状況と緊張感のない会話との対比が面白い。
 異変を引き起こした黒幕とそれに加担する人間との思惑の不一致が、部外者を巻き込んで、当事者の予期せぬ事態を引き起こし、混乱に乗じて主導権を握ろうとする各勢力の戦いは、電波やビームを駆使した、国家機密に抵触する、本来、一介の中高生の手に余るものだが、目まぐるしく変転する形勢を見極め、窮地を脱する彼らの手際の良さは、驚嘆に値する。
 長編が一本だけ収められたこの単行本は、直線的な作中時間の流れにより、断片的な出来事の寄せ集めである、と、読者に受け取られる恐れがなく、物語は必然的に、ある地点に向けて、加速度的に収斂する。
 エピローグと最終話との間には数年の隔たりがあり、最後に簡潔に描写されるそれぞれの関係の変化こそが、実は最高の見せ場だ。

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脇目を振ったら

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スポーツ推薦で入学した本屋の娘と公立高校に落ちた定食屋の息子が通う石川県の私立高校を舞台にしたコメディーである。
 この爽やかな青春物語は、中学では疎遠になった幼馴染が、学期末試験の勉強をガリ勉の男の子に手伝ってもらうことで旧交を温める、肉付きの良い女の子の片思いの物語であり、ムッツリスケベな男の子の苦悩と葛藤の日々の記録でもある。
 スケベだが少年は誠実で、勉強の妨げとなる豊満な胸、肥えたお尻、見え隠れする上下の下着を堪能した上で、直接、彼女に申告する。当然、羞恥心の裏返しである暴力的な返礼を毎回、受け取るわけだが、誇張されたタンコブは痛々しさや不快な感情を伴わず、これがなくてはコメディーが成り立たない。
 「まーくん」の目の届かない女子更衣室では、女友達が女子ならではの特権を活かして戯れ、プールでは破廉恥な特技を披露して「天野めぐみ」の素顔を読者に届ける。それに伴い、必然的に他の女子生徒の下着姿や水着姿も楽しめ、ありふれてはいるが、なくてはならない場面が目白押しである。
 部数回復の起爆剤に選ばれた新人の作品としては申し分ないが、人体各部のバランスの悪い描写が複数あり、多少、目を瞑らなければならないが、一巻目にしては上出来だ。
 男勝りな活発な少女が小学生の感覚で気安く接し、無邪気な色気を発散する中で、自身の目標の実現に向かって勉学に励む少年の過去と現在は、実は肉欲との戦いの過程に他ならず、度々、打ち負かされるその様子から、いつまで耐えられるか目に見えているが、二人はまだ高校一年生で、夏休みの真っ只中でもあり、焦らず、じっくりと親睦を深めるのが読者の理想である。

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豊後の常民

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大分県の名産品は、と問われれば、かぼすやどんこ、ブランド物のアジやサバなどと答えるのが一般的であろう。近年では鶏のから揚げも名物として挙げられる。しかし、それ以外の郷土料理や地誌については、残念ながら、全国的に知れ渡っているとは言い難い。
 その大分県の北東部に位置する国東半島を舞台にした本作は、土俗的な内容を、年少者にも分かりやすいように、平易に語り、読者が現地に行かなくても、方言を聞いて、料理の味を想像するだけで、仮に読者が大分県民や大分県の出身者ではなくても、神仏の気配を身近に感じ、自身の先祖への感謝と万物に対する畏敬の念が湧き上がる。
 岐部ののかは巫女ではないが、神仏に寄り添う者である。
 純真無垢なその言動により、様々な場所が清められ、土地に根付いた不可思議な存在は活力を取り戻す。
 魑魅魍魎の跋扈する世界は、神仏の加護により、住み心地が良くなる。
 本巻を読むだけで大分県の歴史と風土の全てを学べるわけではないが、鬼の特異性に関しては十分に理解する事が出来る。
 また本編では取り上げられなかった国東の奇祭や奇譚についても、イラストとコラムで補完されおり、読者の豆知識の量は確実に増える。
 だが、だんご汁が掲載されてないのは玉に瑕だ。

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忍間日記

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本作は、病弱で外出がままならなかった少女が、元気になり、ゲーム好きの幼馴染の少年を家の外へと連れ出して、一緒に各地を探検する、二人のデートの記録のような作品である。
 部屋に閉じ籠っていた少女にとっては、病床で夢想した場所を訪ねる、ピクニックやハイキングのような近場の散策も、未知の世界の探訪であり、紛れもない探検である。
 抑圧されたさぐりちゃんの好奇心と行動力が、高校への入学を待たずに、昆虫採集へと向けられ、ツムと再会する契機となって、二人は久しぶりに行動を共にする。二人が同じ高校に進学する春から話は始まり、学校で知り合った人々も、探検の仲間として、二人に同行する。
 第一巻では、首都圏を中心に、西は三重県まで、二人は足を運び、旺盛な活力と豊富な知識で、さぐりちゃんはツムを圧倒する。目まぐるしく変化するさぐりちゃんの表情からは、本等から得た知識を、自分の目で見て裏付けられる喜びが読者に伝わるであろう。
 冒頭とおまけで、幼少時のさぐりちゃんの姿が見られるが、高校生になったさぐりちゃんは健康的な体形となり、ツムを惑わす。ゲームと探検を天秤にかけるツムの助平な態度は、素直で、好感が持て、知的なさぐりちゃんにも直情的な面が多々あり、二人の遣り取りを見ているだけで、読者は自然と笑わせられる。
 探検中のさぐりちゃんの観察対象物に寄せる興味や着眼点、造詣の深さには学ぶべき事柄が多く、本作は、単なるガイドブックではない。
 ツムは入学祝にカメラを貰い、探検に携行する。
 ツムが写真を撮る動機に着目すれば、二人の探検に対する読者の見方は、必ず変化する。
 単行本のおまけは番外編だけではなく、作中で探検した場所の写真やカットも多数、載せられている。

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天球の大祓

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祖母から謎の訓練を受けていた女子高校生が、或る日、訳の分からない間にロボットのパイロットにされ、裸で操縦して、未知の敵と闘う本作は、見かけは近未来のSFであるのだが、その本質は太古から続く信仰と人類の尊厳の物語である。
 弱虫で泣きべその女の子に主人公としての魅力が備わっているのか、或いは、全二巻での完結は不人気の証ではないか、との疑問に対しては、純真で潔癖なうら若き処女の裸体が、肉体的にも精神的にも多大な負荷のかかる激しい戦闘に連動して、色香を漂わせる作品は、たとえ打ち切りであったとしても、ひっそりと流通する事に意義があるのだ、と答えたい。
 グラマラスな女体にしか惹かれない読者には、主人公佐京姫香のスレンダーな、慎ましやかな無防備な裸身は、成育不全で病的な、性的にも美的にも、価値の無いものでしかない。しかし、几帳面で律儀な内面を反映し、かつ意外にも芯の強い少女の造形として、これ程までに理に適った形質は、他には考えられないであろう。
 性的な面だけではなく、ロボットによる激しい攻防戦や、その合間合間の、緊張感を和らげる戦闘員のコミカルな一面にも注目すべきであり、むしろ、近未来の混沌とした世界情勢を更に悪化させる複数の集団と、それに抗う一派との水面下での出し抜き合いが、興味深い背景として、最終的に浮き上がるのが本作の特徴である。
 主人公の姫香は斎女である。
 霊的な、或いは精神的な力の発露が、コミュニティーを破滅の危機から救うのだが、その構成員は八百万である。
 神聖な儀式を執り行う、選ばれた少女の舞に見惚れるのは、敵の将兵だけではない。

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紙の本ぬむもさんとんぽぬくん

2017/06/09 17:39

真空からの贈り物

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二足歩行する二頭身の異星人ぬむもさんとんぽぬくんの外形的な違いは、頭にアンテナのような突起があるか、単眼鏡のような物を掛けているか、であるが、んぽぬくんについては『いないときに来る列車』に収録された書下ろしの短編でその素性が少しだけ明かされており、本巻にもタイトルに偽り無く登場するものの、その活躍は二年前の断片的な出来事が過半を占め、ぬむもさんの地球での滞在記が本巻の大筋である。
 『いないときに来る列車』の大部分を占める「斥力構体シリーズ」の続編である『ぬむもさんとんぽぬくん』は完結していない架空の静岡の郷土史の一部であり、本巻では昭和から平成へと作中時間が経過しており、それに伴う少女の裸体表現に対する世間の風潮を反映して、スクール水着を着用する機会は十分に確保されてはいるものの、腰蓑姿は影を潜めている。
 年頃の女の子に対する性的な関心は、地球人だけの特質ではなく、本巻に登場する性別不明の宇宙人とも共通する自然律であり、彼らの地球滞在の目的を遂行する上で欠かせない財政的な基盤に資する宇宙規模での一大事業を興す動機ともなっているのだ。
 残念ながら本巻では、日本人の少年や成人男性は直接的には登場せず、複数の少女が様々な異性人と交流する様子が和気藹々と描写され、彼らが男の子の代役として、少女の羞恥心を刺激しつつ、微笑ましい日々を共に過ごす。彼らの存在は噂として周知されており、初対面であったとしても、旧友のような自然な応対から交際が始まる。
 通常の異星人と「彼等」と呼ばれる存在の区別が作中でなされているのが「斥力構体シリーズ」の真骨頂で、時間的、空間的な広がりが、凡百の異星人の来訪譚とは趣を異にする、独特の謎と訴求力を産み出し、ある状況下での、当事者ですら想定し得ない展開は、物語の根幹に関わる秘密の一端を覗かせ、読者を唸らせる。
 半官半民の組織なのかさえ明らかではない杉登機関と呼ばれる異星人との窓口機関や政府の関係者が、男子の件と同様に直接、読者に姿を見せることは無く話が進み、ぬむもさんの居候先の娘である吉川奈美に地球人代表の権限が託される、ある異常事態が本巻の山場である。    
 空を飛べる機械で自宅の周辺を散策したり、謎の生き物を採集したり、海辺まで遠出したりする、夏の日の出来事や、学校での部活動は、読者の郷愁を呼び起こし感傷に耽らせる役目を果たすだけの陳腐な情景ではなく、気の抜けたような絵柄からは想像し得ないサスペンスの舞台に変貌する性質のものである。
 繰り返し用いられるモチーフをマンネリの所産だと決め付けるのは早合点であり、他の作品との比較、類推から「斥力構体シリーズ」を、より深く理解する手立てを読者が自らの意思で放棄する事を意味し、賢明な態度とは言えない。同一の行為や状況が作中の時間経過で、その内実を変化させているのに気付けるか否かで、作品に対する愛着の度合いが変わるのだ。
 締め込み姿の少女は健在である。

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おまけの重み

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初出時に無料で読み、単行本は買わない、と判断した読者も、本巻を読めば、その妥当性を疑わざるを得ず、初めて本作の事を知った読者と共に、第十二巻から遡って購入する決意を固めるのも、遅きに失する事ではない。
 年末年始の番外編のような一話と四コマ、鬱屈した感情に振り回される少女の悲喜劇全四話と、一話で完結するその他の五エピソード、合計十一話が収録された本巻は、冒頭のアプリゲームの話を例にして考えると、第七巻を読んでいれば、登場するカップルの成立過程を踏まえた上での感想が生まれ、前巻で別の登場人物が同じゲームをしていた事を知っていれば、同一のモチーフで全く異なる内容が描かれている事に、新鮮さと驚きを感じ、重苦しい長編の端休めの役割を果たす毎回のおまけが、そのゲームとは表面的には関わりが無いものの、全体の読後感を左右する重要な役割を担っている事に気付かされる。事程左様に、単行本を全巻揃えていれば、再読の楽しみと喜びは一入なのである。
 本巻で初登場した人物が番外編や書下ろしの四コマで再登場する、週刊少年ジャンプでの第一話のカップルが初詣に出掛ける、比較的登場人物の多い第十二巻は、言うまでもなく、それ以前の十四巻分の時間の経過と蓄積の上に成り立っており、オムニバスと言う形式の特性を十分に活かした構成で、それはこの一巻だけに限った話ではなく、連載が続く限り、各巻の内容は随時、深みと厚みを増すのだ。
 もし、単行本化の際の目玉が、乳首の加筆だけの、男子の性欲の捌け口である、浅墓な作品だ、と未だに本作を侮る者がいるのであれば、認識不足も甚だしい。それは武勇伝で名高い朱雀少年の活躍をロハでしか目にした事のない者の妄言であり、相棒の筧少年と共に一肌脱いだ本巻での冒険を聞き及ばない、不見識な輩の負け惜しみである。
 作中で女子のプライバシーを侵害して凍結されたアプリ、パパラッチの、おまけでしか知りえない個人情報や、それを暴く謎のイルカの生態等、乳首が描かれているか、否か、は、さして重要ではない。
 携帯電話の性能と機能から逸脱すればするほど、魔法のアプリは本領を発揮したと言えるが、本巻ではむしろ、現実世界の延長線上の出来事だと思える、起こりえる事象、起きたら楽しい事案が豊富で、謎の組織パームズは影を潜め、新年祝賀に相応しい陽気な笑いが最終的に生じるのだ。

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紙の本青猫について 1

2016/10/19 17:19

おぼこと火男の剣舞

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巫女による化物退治で相手が傷付いても読者は痛みや不快感を覚えないのと同様に、本作の少女による刃傷沙汰には不届き者を成敗する痛快さを感じこそすれ、生身の人間が切り刻まれる瞬間を目撃する恐怖や残虐行為に対する嫌悪感は抱かないであろう。
 逆に無法者の狼藉に対しては、勧善懲悪を求める心が沸き起こり、主人公青猫の敵討ちに同情と賛意を禁じえないのだ。
 毒をもって毒を制する、無垢な少女の捨て身の弔いは、終戦前後の退廃した世相を背景にした、復興とは無縁の、暗澹たる日々の記録であり、いつの頃からか彼女に寄り添う幼い相棒が、戦災孤児という境遇にめげずに、抜け目なく立ち振る舞う姿が、場の雰囲気を和らげ、残忍だ、と断罪するには忍びない潜行活動に、張りと潤いを与える役割を果たす。
 斬殺される輩の血煙で画面が曇り、脳漿や臓物の触感と臭気を想像して、吐き気を催すのを抑えるには、嫁入り前の生娘の柔肌を凝視するのが効果的で、男の視線など気にも留めない年増の乳房や、女主人と使用人の秘密の情事を覗き見るのも気晴らしになる。
 青猫はキリスト者である。
 南無阿弥陀仏とは唱えないが、別の言葉を呟く。
 世間とは真逆の下り坂を駆け下りる少女は、地獄の底を見据えている。

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きなことラーメン

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週刊誌連載分の三冊とタイトルに+が加わった七冊との間には、設定上の変更点や話数の断絶がなく、第一巻から順に読み進めるべきだが、試し読みとして手当たり次第に手に入れるのであれば、最低、二冊は読んでほしい。
 どの巻にも必ず登場する魔法のアプリの説明書アイビスが仲立ちする高校生の恋模様は、オムニバス形式でありながら、数話後に、別のシチュエーションで、新たな側面を見せることも多々あり、読めば読むほど、登場人物に対する思い入れが深まるのだ。
 本巻でも、今迄、何度も登場した空手部の面々や不良少女、生徒会長や異彩を放つパソコン部員が本編や特別編で活躍し、一度読めば彼らの人となりをより詳しく知りたいと思わない読者はいないであろう。
 物語の大半は恋愛絡みの話であるが、本巻収録の不良少女のエピソードのように恋愛とは全く無関係な話もあり、毎年恒例のクリスマスの特別編はゲームブックの要素を取り入れたショートストーリーであり、新刊発売時の宣伝を兼ねた番外編や新年に因んだ四コマも七巻には収録され、各巻で収録話数や内容が大きく異なるのも、本作の魅力である。
 単行本収録の際に加筆訂正される女の子の乳首の描写は、暗黙の了解事項で、本巻でも踏襲されており、心配は無用だが、本編を補完し相乗効果を発揮するおまけの存在が、実は、本末転倒になりかねないほど際立つのが本作の特徴だ。
 「人なら誰でもついてるし。」と言い放ち、グラビア撮影に臨む少女の姿は、単行本でしか目にする事が出来ず、本編では裸になる場面など一切なくても、おまけでは惜し気もなく上半身を露にする、と今更、注記するのは蛇足かもしれないが、初出時との印象の変化は大きく、第一印象で久しく見向きもしていない人こそ、是非、本巻を読んで全巻揃えて貰いたい。
 連載開始時から最新話まで、似たような場面、似たような構図はあるものの、各エピソードの核となる魔法のアプリは常に新しく、「パパラッチ」のように特殊な状況で再使用されるのは例外的な扱いで、爆笑することが多くなった予測不可能なギャグセンスと愛のある性的な表現は発展途上だ。

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