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  3. 求道半さんのレビュー一覧

求道半さんのレビュー一覧

投稿者:求道半

279 件中 16 件~ 30 件を表示

豊後の常民

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大分県の名産品は、と問われれば、かぼすやどんこ、ブランド物のアジやサバなどと答えるのが一般的であろう。近年では鶏のから揚げも名物として挙げられる。しかし、それ以外の郷土料理や地誌については、残念ながら、全国的に知れ渡っているとは言い難い。
 その大分県の北東部に位置する国東半島を舞台にした本作は、土俗的な内容を、年少者にも分かりやすいように、平易に語り、読者が現地に行かなくても、方言を聞いて、料理の味を想像するだけで、仮に読者が大分県民や大分県の出身者ではなくても、神仏の気配を身近に感じ、自身の先祖への感謝と万物に対する畏敬の念が湧き上がる。
 岐部ののかは巫女ではないが、神仏に寄り添う者である。
 純真無垢なその言動により、様々な場所が清められ、土地に根付いた不可思議な存在は活力を取り戻す。
 魑魅魍魎の跋扈する世界は、神仏の加護により、住み心地が良くなる。
 本巻を読むだけで大分県の歴史と風土の全てを学べるわけではないが、鬼の特異性に関しては十分に理解する事が出来る。
 また本編では取り上げられなかった国東の奇祭や奇譚についても、イラストとコラムで補完されおり、読者の豆知識の量は確実に増える。
 だが、だんご汁が掲載されてないのは玉に瑕だ。

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深遠な尻

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

未亡人である母親と二人暮らしの男子高校生鈴木実は父親譲りの性的な好みを有しており、母親のお尻を眺めては、物思いに耽っている。
 また、ある理由から、お尻を見た時だけではなく、折に触れて、母親の事を可愛い、と感じてしまう。
 これは罪であろうか。
 本人は悩んでいるのだ。
 第二巻では、彼を救うかもしれない、自身による同級生に関する発見があり、その同級生は何度も登場している女の子である。
 このような話の概略を少し聞いただけでも不潔に思う方には、肉欲を主題にしている作品ではないと伝えたい。
 このような作品を愛読していると他人に知られたくないから、興味はあっても実際に単行本は購入しないと決心している人には、あなたは当事者ではない、と翻意を促したい。
 ブルマを穿いた少女に対して、何故、色めき立つ男がいるのか、と不可解に思う、或いは、そのような読者の心情を理解したいと願う、知的探究心の旺盛な老若男女は、本作を読めば、その疑問が解消するであろう。
 母親の旧姓は大蜘蛛である。
 意外にも、ある虫が苦手で、別の虫も体のある部位に近付きやすい体質だそうだ。
 息子は母親の身体に触れて、虫を取る。
 何ら、いかがわしくはない。

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興奮するまで温めて

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルから連想して、勇者が性的な接待を受けている、と勘違いするかもしれないが、真相は、その逆で、本作は、人間と魔物との戦いに勝利した真の勇者が主人公ではなく、むしろ臆病者と揶揄されたであろう戦功のなかった男子ロキの、魔境の湯治場での下働きの日々が描かれる。
 種族間の蟠りが解消されない状況下で、勝者の立場である、とは言え、敵地に左遷された男の鬱屈した感情が、魔物の心を傷付けてしまう第一話から、徐々に、打ち解けて、女将の片腕として、雑務をこなすその後の展開では、客として来訪する雑多な魔物の要求や要望が、話の中核をなす。
 従業員の法被姿や浴場の造りからして和風でありながらも、ロキが接する客は西洋の魔物であり、その中でも性と密接に関わりがあるのはサキュバス位であるが、スライムの娘や女勇者なども裸で登場し、従業員一同の真心を込めた接客術により、どんな魔性の女でも、いつしか、愉悦の声を上げるのだ。
 残念ながら、年齢不詳の幼女風の魔物である女将ガイアベルの完全なヌードは掲載されず、稀に見て取れる水着の股間の窪みで我慢せねばならないが、各話のゲストの裸体には、必ず、特徴のある乳首が加筆されており、若干、少なめの総頁数の割には、性的な面での読者の満足度は高いと言える。
 絵柄よりも筋書きに重点を置く読者の懸念に対しては、魔王の死により、人間に服従せざるを得なくなった一枚岩とは言えない魔物の動向や、戦勝に沸き立つ王都の貴族や優遇される勇者と僻地の元勇者との感情的な対立、中立地帯の鉱山の利権を巡る問題等、湯治場の内外で起こり得る数々の危機が内包された不安定な世界である、と、答えたい。
 他にも、少女や成人女性の似像として魔物の裸を見るだけでは、魔境の温泉宿の魅力を味わい尽くしたとは言えず、目を凝らして、一人一人の客の顔を確認するのも大事である。勇者の特性を活かしたロキならではの客への対応や裸踊りは必見だ。

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恋路の道標

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

嫁入り前の娘が、政略結婚に反発し、ささやかな性的な抵抗を試みる、姫の秘め事と言う解題で間違いがない内容である。
 幕末の政情不安を背景にした大名家の婚姻は、予想以上に面妖な政治力学に支配され、当事者の女子には口出しする権限も自由も無いが、主人公の敬姫は、世継ぎの懐妊に資する閨房の術を習いつつ、ある男らと共に嫁ぎ先の江戸を目指す。
 薩摩から船で長崎経由で大坂まで行き、そこから中山道を経て、江戸に到る道すがら、正体不明の刺客に行く手を阻まれつつ、異国情緒溢れる丸山遊郭での饗宴、上方の商家の奇習、信州の奇祭を体験し、既に隠居した婿に対面する頃には、手抜かり無く初夜を迎える心構えが備わっている事であろう。
 表題作以外に一本、前シリーズの短編が収録されているが、登場人物には全く関連がないものの、火伏札という共通のモチーフが用いられる。「ひめごと」での火伏札に関わるエピソードは僅かであるが、同じモチーフを扱いながら、全く異なる艶笑譚が仕上がるのは興味深い。
 成人向けの内容だ、と敬遠される恐れがあるが、徹頭徹尾、裸体や性愛の描写で埋め尽くされている訳では毛頭なく、チャンバラや刃傷沙汰、権謀術数を味わえる、虚実織り交ぜた時代劇である。

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紙の本取水塔

2016/08/20 15:06

不埒な調査

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

惑星探査計画の運用は、何世代にもわたる膨大な月日を要するが、これは人類に限った話ではなく、未知なる生命体にとっても事情は同じである。
 戦前に駿河湾の沖合いから始まった異変は、昭和の末期になっても確認され、表面的には平穏な町の、秘密を抱える大人の目を掻い潜り、思春期の少年少女や大学生らが、好奇心の赴くままに、海辺を探索し、思案を重ねる、ある夏の出来事が描かれる本作は、何の変哲も無い取水塔の存在に違和感を覚えた若者の、一枚岩とは言えない団結の下に繰り広げられる、公然の秘密を暴く、命懸けの冒険である。
 命懸けではあるが、海中での調査に必要不可欠なスクール水着が突然、脱げると、年上の女の子に恋心を抱く男の子の目が輝くのは当然で、謎の物体の中に二人きりで閉じ込められると、その裸体を心行くまで堪能し、死と隣り合わせの極限状況と緊張感のない会話との対比が面白い。
 異変を引き起こした黒幕とそれに加担する人間との思惑の不一致が、部外者を巻き込んで、当事者の予期せぬ事態を引き起こし、混乱に乗じて主導権を握ろうとする各勢力の戦いは、電波やビームを駆使した、国家機密に抵触する、本来、一介の中高生の手に余るものだが、目まぐるしく変転する形勢を見極め、窮地を脱する彼らの手際の良さは、驚嘆に値する。
 長編が一本だけ収められたこの単行本は、直線的な作中時間の流れにより、断片的な出来事の寄せ集めである、と、読者に受け取られる恐れがなく、物語は必然的に、ある地点に向けて、加速度的に収斂する。
 エピローグと最終話との間には数年の隔たりがあり、最後に簡潔に描写されるそれぞれの関係の変化こそが、実は最高の見せ場だ。

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未知の知

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人間は酷薄な生き物だ。
 対象を、一度、忌むべきものと見定めたら、自身の周囲から徹底的に排除して、再度、そのものを吟味する機会を設けずに、未知のものを、既知のものとして、誤った認識を改めずに、迫害し続ける。
 我々は吸血鬼を理解していない。
 相手が人権を尊重しないのに、何故、人間が吸血鬼に手を差し伸べねばならぬのか。
 有無を言わさず、吸血鬼は駆除すべきである。
 だが、アインの立場は異なる。
 彼は共存する手立てを模索するのだ。
 その態度は、彼の出自と生育環境に拠る所が大きく、余人には真似し難いものであるのだが、人間のみならず、吸血鬼からも、賛同を得にくく、むしろ、両者から、反感を買うものである。
 一応、彼は、駆除する側の立場を弁えており、無思慮な言動で、吸血鬼を野放しにはしない。
 だが、彼は老獪だ。
 話し合いを続けても、暴力に訴えても、吸血鬼は誘導尋問されたかの如く、アインの術中に、嵌る。
 けれども、彼の説得に応じなければ、吸血鬼はこの世で生きられない。
 人間は、吸血鬼に関する知識が足りず、手っ取り早く、火を用いて、殺そうとする。
 アインの言葉に耳を傾ける吸血鬼は、この世に、存在するのであろうか。
 人間は酷薄な生き物だ。
 利用する価値があると見るや、嫌いなものとも、積極的に交わろうとする。
 吸血鬼にも、吸血鬼なりの暮し方がある事を、分ろうとはせず、人間の意に沿わなければ、相手の住処を奪う。
 だが、アインの立場は異なる。
 彼は金を有意義に使う。
 吸血鬼とは何か。

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舌禍の交わり

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スパイに浮名は付き物だ。
 しかし、年端も行かない御令嬢から色目を使われたからと言っても、コードネーム黄昏は仮初の妻を裏切る真似はしない。
 それでも、任務に資する情報を得ようとして、世間知らずの娘を口説くような行動を、義理の娘の前で、する事もある。
 政財界の要人の子が通うイーデン校は、名門校だが、閉鎖的な価値観を持つ教師や在校生が多く、スパイが成り済ました一介の勤務医の娘が、運良く、入学を許されたとしても、事ある毎に、肩身が狭い思いをするであろう。
 黄昏はロイド・フォージャーと名乗り、児童養護施設からアーニャを引き取り、娘に猛勉強を課した末に、イーデン校の入試に、見事、合格させる事に成功した。
 アーニャの同級生のベッキーは、アーニャよりも年上で、恋愛ドラマとロイドに夢中な、おませな少女だ。
 ベッキーは、時々、毒舌を吐く。
 ロイドとヨルが偽装結婚をした夫婦だ、とは想像だにしないベッキーだが、アーニャの継母になれるかもしれない、と、スパイの男と殺し屋の女に対して、攻撃を仕掛ける。
 フォージャー家が居を構える東国は、反体制分子や非合法組織の構成員が、官公庁や民間業者に潜り込んでいる、お世辞にも、治安が良いとは言えない国である。
 秘密警察が幅を利かせる密告社会において、脛に傷を持つ者は、細心の注意を払って、人脈の維持と構築に、心血を注ぐ。
 情報屋フランキーは顔が広い。
 お調子者の彼は、ベッキーの秘密を掴んだ。
 女王陛下のいない国で、フランキーは、知恵を絞って、ロックを奏す。

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電解質の郷愁

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図書館の蔵書を閲覧する時に、ヘルメットを被る少女がいる。
 彼女の名前は鳩まこと、父親が凶悪事件の容疑者として指名手配されている十七歳だ。
 父親の共犯とされる野中ふじ緒とは、最近、親睦を深めつつあり、東京湾の臨海工業地帯にある盛り場に、野中を含む数人の男と一緒に、彼女は車で出掛けた。
 追っ手は警察だけではない。
 野中や父親の知り合いが、電子機器やドロイドを駆使して、二人の潜伏先を割り出す。
 情報化社会の進展に伴い、個人情報の管理の徹底が益々求められる中、それを推進する立場にある一流企業のトップが、その立場を悪用して、不公正、且つ、不道徳な商業活動を社の内外で行う事を容認している疑いがある。
 黒幕は顔を隠す。
 現時点では、鳩まことに出会わなければ、野中ふじ緒の人生は、犯罪とは無縁のものであった、とは、言い切れない。
 前の職場の同僚が、彼を嵌めた、とも考えられる。
 まことの父、鳩たかとが開発したデバイスを、ふじ緒は身に付けているのだが、そのデバイスには映像を実体化する機能が備わっており、これは貴重な品で、開発者から返却を求められている代物だ。
 娘が何歳になっても、我が子を子供扱いする親がいる。
 遊具は進化し続ける。
 有能な人材を確保したい大企業の社員は、目的の為であれば、手段を選ばず、刃物やその他の武器の使用を想定して、鳩たかとの身柄を確保し、その発明品を強奪する計画を練った。
 まだ、まことは、お子様ランチが食べられる。

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ノーモア

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神と人との戦いは、何百年も続いている。
 しかし、破壊神マグ=メヌエクと聖騎士イズマとの戦いは、休戦状態にある。
 その理由は、封印が解けたマグ=メヌエクは、依然として、強大な力を有しているものの、弱体化しており、尚且つ、人間に対して、甚大な被害を与えるような破壊活動を行ってはいないからだ。
 しかし、油断は禁物である。
 イズマは、常日頃、同胞を裏切った上位存在のウーネラスと共に、マグ=メヌエクの監視活動を怠らず、定期的に、聖騎士団の本部へ近況を報告しているので、彼は順調に任務を遂行している、と言っても差し支えないであろう。
 愛倉市には、異形の神が集う食堂がある。
 この事実を知らされたからであろうか、聖騎士団の本部から、数名の猛者が派遣された。
 現在、使徒から、マグちゃんと呼ばれるマグ=メヌエクは、市内の中学校において、学校行事を、台無しにしかねない暴挙を企てる。
 他の上位存在も、刑法に抵触しかねない行動をして、女子生徒から咎められる。
 愛倉市内の治安は、当然、警察官によって、守られており、不審者に対しては、確実に、職務質問が行われる。
 マグ=メヌエク包囲網は、着実に、狭められつつあり、神と人との戦いが、再び、繰り広げられるのは、時間の問題だ。
 マグ=メヌエクは、不敵な笑みを浮かべる。
 人間は神の盾ではない。

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色即是空空即是色

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

夫を亡くした妻が、男手の代わりとして、家に迎え入れたのは、少女のようなロボットだった。
 息子の小学五年生、宇佐美九よりも、背が高いそのロボットは、外見に似合わず、感情の機微を理解し得ない幼児のような一面を持つ。そのロボットは宇佐美いちこと名乗り、九の同級生として、小学校に通う。
 集合住宅に住む宇佐美家の隣家入江家には、九と同い年の女の子、愛がおり、二人は遊び友達だ。
 しかし、いちこが宇佐美家で暮らすようになってから、二人の関係は、徐々に、変化し始め、いちこが来てから一年が経過する頃になると、愛は、九を、避けるようになった。
 九は愛の事が嫌いではない。
 いちこは、クラスメイトと九とを、同列視しない。
 いちこの心の発達段階は、九や愛から、どの程度、遅れているのだろうか。
 人格の形成期にあるのは、九も、愛も、いちこも、同じで、詰まる所、人もロボットもその立場に違いはなく、思春期を迎えた少年少女の内面の葛藤と、ロボットの自我の確立とは、相互に影響を及ぼし得る事象であり、生物と無生物の共生が、今後、どのような利益と不利益を生じさせるのか、と考えれば、二人と一体の成長を見守る期間は、読者にとって、至福の時となるであろう。
 一般家庭の宇佐美家に導入されているとは言え、ロボットは、まだ、人間社会に、溶け込んではおらず、いちこの存在は、児童や生徒にとって、好奇心を掻き立てる対象だ。
 もし、人間から、思いを寄せられていると知ったら、いちこは、どのように対応するのであろうか。
 父親の代役は、いちこには務まらなかった。
 九はいちこの事を疎ましく思っている。  
 心を学び終えたら、いちこは宇佐美家から出て行く。 
 いちこは浜辺で泣いていた。

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常春の特攻

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十二月二十四日、春霞には、硝煙が含まれており、東京は視界が悪い。
 花に浮かれて、長居をすると、大事な人を失いかねない。
 少年兵は足手纏いだ。
 二人一組で、大人一人と戦わせても、勝てる見込みはなく、その配置を巡っては、作戦の計画立案に悪影響を及ぼし、指揮官を大いに悩ませる。
 従って、少年兵の徴募や学徒出陣の実施に関しては、相当、熟慮が必要だ。
 それでも、少年少女が志願して、戦地に赴く、と決意したら、大人は、命を賭して、彼らをサポートせねばなるまい。
 この世は生き地獄、数十億人の常住坐臥は、神の監視下にある。
 人間は、何度も、滅ぼされた。
 唯一人を除いて。
 神の気紛れであろうか、戦時下に芽生える恋心は、黙認されており、愛を糧にした人類が神に鉄槌を下す。
 愛する人の苦しみを和らげたくて、全世界の人の苦労を、一身に背負い込んだ。
 愛された者は、愛した人を救いたくて、その人を殺そうとした。
 不死のアンディは女たらしだ。
 世界各地で、浮名を流す。
 今度の相手は、十八歳の小娘だが、この娘は只者ではなく、アンディが彼女を手玉に取る所か、反対に、風子から骨抜きにされそうだ。
 不真実のシェンは妹思いの命知らずで、従者のムイに見守られつつ、好き勝手に、猛者と手合わする。
 妹の無念を晴らす為に、妹と瓜二つのムイを傍に置いて、シェンは、命を削る。
 漫画家はヒーローを描き、読者は希望を抱く。
 この状況は、神の思惑通りなのであろうか。

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磐石な虚像

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近未来の日本では、拡張現実の技術が、急速に進展し、人類の社会活動に寄与しているのだが、日本人が繁栄を謳歌しているとは言い難い。
 技術革新に伴う、旧来の規範や文化の否定は、大量の失業者を生み出し、社会不安と人心の荒廃を招き、世間の失業者に対する風当たりは予想以上に強まっている。
 一介の技術者である野中ふじ緒は、手に職をつけたものの、大企業の身勝手な論理に振り回されて、転職を余儀なくされる。
 人手不足は、ロボットで、解消される世の中だ。
 天涯孤独で、行く当の無いふじ緒は、僅かな伝手を頼りに、ある場所へ訪れた。
 近頃、彼が立ち寄る先では、不可解な出来事が、立て続けに起こり、気味が悪い。
 図書館においては、ヘルメットを着用した、特異な髪の毛の女の子と彼は出会い、来館者と小競り合いを繰り広げた矢先である。
 彼は、映像と実物の区別が付かなくなったのかもしれない。
 ロボットは、人を殺さないし、殺せない。
 映像からは、物理的な衝撃は、発生しない。
 天才が天才と手を組めば、企業の業績は、右肩上がりに伸び、好調を堅持するであろう。
 だが、天才であろうとも、経営判断を誤れば、社員とその家族を、路頭に迷わせる。
 役立たずの人間は、生きる価値がなく、ロボットに虐げられても、文句を言えない。
 鳩でさえ、平和の使者として、人の世に貢献する。
 凡人のふじ緒には、何か、取り柄があるのだろうか。

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隠せた頭

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正義の味方は大変だ。
 知り合いに、その正体を、知られてはならず、仲間にも、身分を明かせない。
 カクテルナイトは、四人の少女で編成される、きらめき市を守るヒーローである。
 彼女らは、何者かの手により、怪人化した市民と戦う。
 天上空は二つの秘密を抱えている。
 それは、自身がカクテルナイトの一員である事と、男装して通学している事とである。
 大地陸は天上空の本当の姿を知っている。
 つまり、彼は、彼女がカクテルナイトのメンバーである事と、級友の男子が本当は女の子である事とを把握しつつ、素知らぬ態度で、学生生活を送っているのだ。
 カクテルナイトはアイドルのような存在であり、陸にも、好きなメンバーがいるのだが、その娘こそ、空が変身したバレンシアである。
 空は、バレンシアに対する陸の好意を認識してはいるものの、真正面から、その気持ちに向き合う事は、許されず、悩んだり、焦ったり、戸惑ったりする。
 だが、陸の存在とその重要性は、徐々に、他のカクテルナイトのメンバーにも、敵にも、知られる事となり、彼の身に危険が迫る。
 正義の味方の親友も大変だ。

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ノンアルコールシードル

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きらめき市には怪人が出没する。
 極度のストレスを抱える老若男女が、何らかの作用によって、個体差のある異形の姿となり、一般市民に対して、暴言を浴びせたり、暴力行為を働いたりするのだ。
 そのような迷惑行為を止めさせ、お灸を据えて、怪人を元の姿へ戻らせられるのが、カクテルナイトである。
 きらめき市立きらめき第三高等学校に通う一年生の二人の男子、大地陸と天上空は、良き友人関係を保ちつつも、それぞれ、相手に対して、秘密を抱えていた。
 カクテルナイトは四人組の女の子だが、その正体は不明である。
 彼女らは、雑誌やテレビで、大々的に活躍が報じられる、アイドルのような正義の味方だ。
 陸はカクテルナイトのバレンシアに恋している。
 空のお尻を見ると、陸は顔を赤らめ、昔、バレンシアに助けてもらった時に見た、彼女のお尻を想い出す。
 陸は、バレンシアの正体について、何か勘違いしているのだろうか。
 カクテルナイトの正体を暴こうとする者が、きらめき市に潜伏しているようだ。
 第一巻では、一話に一怪人が登場し、各話の構成はカクテルナイトが敵を退治して話が終わる形式である。
 コスチュームが破れたり、お風呂の場面があったりするものの、良い子に悪影響を及ぼすと保護者から騒がれるような刺激的な描写は皆無なので、誰もが安心して読める作品だと言えよう。
 但し、陸の股間は衆目に曝されるので、その点は留意してほしい。
 高校一年生の男子の乳房も、プールの時間に、見られる。
 高山氏が作画を担当する「不倫島」を読めば、本作が、如何に、健全な内容の作品であるのかが、分るであろう。
 バレンシアが変身を解くシーンは、他に類例を見ない、斬新な演出で描かれるので、必見だ。

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骨肉ちゃんぽん

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戦闘中、力尽きた少年の陰陽師が女性の胸に手を触れるのは、相手の同意が得られれば合法的な行為である。
 だが、妖怪の女性の胸に手を触れて、その力を転用するのは、御法度だ。
 名門の出の若き陰陽師、迅内カザミは、そのような大罪を二度も犯したので、死刑宣告は免れない。
 妖怪の白羅さんは、年下の人間の男の子に、胸を触るように強要する。
 しかし、白羅さんは阿婆擦れ女ではなく、ある目的の為に、陰陽師のカザミに、胸を触るようにと、命令するのだ。
 白羅さんはカザミと一緒に骨を集めようとしているのではない。
 目的の為には手段を択ばない白羅さんは、押しかけ女房のように、カザミの部屋を占拠した。
 カザミは父や兄と同居しており、迅内家はその対応にてんやわんやだ。
 カザミは白羅さんの豊かな胸元に見惚れて鼻血を出し、白羅さんに弱みを握られた兄のアキナは妖怪の下僕と化す。
 カザミの身の上を案ずる幼馴染のりのちゃんは、白羅さんへの対抗心を剥き出しにして、実力を行使し、各所で、混乱に拍車をかける。
 昔、カザミが妖怪の力を借りた仲良しの河童は、陰陽師によって退治されたらしい。
 白羅さんは、身体は柔らかいのに、骨は硬く、衝撃の緩衝材としても、陰陽師の任務に役立つ逸材である。

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