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KTYMさんのレビュー一覧

投稿者:KTYM

33 件中 1 件~ 15 件を表示

ユダの窓

2020/12/08 21:46

「密室の名手」による法廷物の傑作

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

カーター・ディクスン(ディクスン・カーの別名義)による法廷物。おどろおどろしい怪奇趣味は封じていますが、圧倒的なリーダビリティで最後まで一気に読ませます。
結婚を申し込むために訪れた恋人の家で突如前後不覚となり、気が付くと、結婚を祝福してくれた筈の恋人の父親が胸に矢を突き立てられ、息絶えていた。部屋は内側から「差し錠」がかけられた完全な「密室状態」。矢からは本人の指紋が検出され、殺された父親は結婚に反対していたという証言も。
圧倒的に不利な状況で、窮地に立たされた青年を救うためにH・M(ヘンリ・メリヴェール)卿が立ち上がる。得意の毒舌と下品な冗談は(やや)控え目に、ただし芝居っ気はたっぷり。この人は柄にもなく弁護士だったんですね(スパイの親玉かと思っていました)。
タイトルの「ユダの窓」を使ったトリックはさておき、密室状況を作り出す手腕はさすがです。
次々と新たな事実が明らかになるスリリングな展開で、巻を措く能わず能わずの傑作です。

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Xの悲劇

2020/08/14 10:35

名探偵ドルリー・レーン登場

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エラリィ・クイーンが1932年にバーナビー・ロス名義で発表した「悲劇4部作」の第1作。

本作の見所は、まずは探偵役ドルリー・レーンの造形でしょう。「ハムレット荘」と呼ばれるハドソン河沿いに建つ古城に執事フォルスタッフ(!)と(キャリバンと呼ばれる)元舞台の扮装係の老人クエイシーと共に住む引退した世界的シェイクスピア俳優。聴覚の障害が原因で既に舞台を退き、会話も読唇術を使って行います。ドルリー・レーンは、大時代なインバネスのケープを身に纏った総白髪の一見上品な老紳士なのですが、時に俳優としての天賦の才(とクエイシーの職人技)を活かし変装もして捜査を行います。そして、時にはハムレット荘の屋上で全裸(に腰布一枚の姿)で日光浴(笑)をします(褐色で筋肉質のいい身体をしています)。別名義での作品を発表するにあたって、作者も相当な工夫をこらしているようです。
本作のもう一つの見所は、これはクイーン名義での作品と同様、論理の力で真相が導き出すされるプロセスで、特に路面電車での第一の殺人においてドルリー・レーンが犯人を絞り込んだシンプルな論理には、「成程っ!」と唸らせられました。そして、第三の殺人の被害者によって残されたダイイングメッセージ(クロスされた左手の人差し指と中指)の意味が解き明かされるラストにはドキドキしました。なぜ左手なのか、なぜX(クロス)なのか。

変装術のリアリティ等、現代の眼からは突っこみたく点もあるのですが、とても読み易く、謎解きも見事で、まさに推理小説史に残る名作です。

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オリエント急行の殺人

2019/11/04 12:45

いじられキャラの名探偵ポアロ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アガサ・クリスティ、1934年の作品。
大雪に降り込められ、立ち往生した深夜のオリエント急行で発生した殺人事件。
事件に挑むのは、偶然乗り合わせたベルギー人の名探偵エルキュール・ポアロ。
容疑者は寝台車に乗り合わせた国籍も社会階層も様々な乗客たち。雪のため誰も逃げられない「クローズドサークル」の状況下、ポアロによる捜査が始まります。
本作では、「ちょっと変な外人」というポアロのキャラクターが際立っています。「スタイルズ荘」での初登場以来、回を重ねる毎にポアロを描く筆致はこなれてきて、今や作者自身、ポアロをイジるのが楽しくて仕方ないといった按配です。
「・・・エルキュール・ポアロは口髭を濡らさないようにしてスープを飲む仕事にとりかかった。」
「(ポアロは)毛髪をカールさせるのに使う焼きごてを持って戻ってきた。『口髭に使ってるんです』焼きごてのことをポアロはそう説明した。」
「(ポアロ)『わたしの名前はご存知と思いますが』『そういえば、どこかで聞いたような―婦人服のメーカーの名前だと、ずっと思ってたんですが」

そして、誰もが驚き、誰もが納得する大胆且つシンプルなメイントリック。「アクロイド殺し」や「そして誰もいなくなった」などもそうですが、クリスティは「読者を如何に騙すか、そして愉しませるか」ということに拘り、考えに考え抜いた作家なのだな、と感じました。
実は今回は、小学校高学年での初読、英語の勉強もかねた中学生時代の原書での再読に続く、3度目の「オリエント急行」だったのですが、忘れようもない「衝撃の真相」を念頭に読み返してみると、のっけから登場人物の怪しい言動や手掛かりが満載。あちらこちらに真相を示唆するヒントが明示されていて、本当に良く出来た推理小説だと驚き、かつ感心した次第です。
誰が読んでも満足できるミステリ黄金期を代表する傑作です。

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アクロイド殺し

2019/05/27 20:51

推理小説史に残る衝撃の真相

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

推理小説史上に燦然と輝くアガサ・クリスティーの傑作(1926年)。
ポアロの相棒、愛すべきヘイスティングス大尉は本作ではお休み(アルゼンチンにいるとの設定です)で、英国の田舎町キングズ・アボット在住のシェパード医師が語り手となる、ポアロ物としては異色の体裁。警察を引退して余生(カボチャ作り!)を過ごしにキングズ・アボットに移住してきたポアロが、「おかしな外人」としてゴシップの対象となるのが楽しいです。
本作の読みどころは何と言っても、誰もが唖然とし、我が眼を疑い、何度も読み返すことになる衝撃の真相でしょう。多くを語ることは出来ませんが、推理小説史に永遠に残るトリックです。余りの衝撃のため、現代推理小説がメタフィクションの方向へ進化するきっかけの一つともなりました。何を隠そう、小生は小学生時代に子供向けリライト版で本作を読んでしまったという黒歴史の持ち主で、今回はほぼ半世紀ぶりの(犯人を知った状態での)再読だったのですが、随所に伏線やヒントが残されてて、作者が「フェアネス」確保のために、本当に細かい箇所にまで気を使っているのが良く分かりました。メイントリックだけでなく、サブのアリバイトリックも時代を感じさせるアイテムを利用していますが、秀逸です。
本書中盤で、ポアロが関係者を集め「みなさん全員が何かを隠していらっしゃる。どうです、わたしのいうとおりでしょう?」と挑みかけるシーンがあります。そしてポアロが謎を一つ解き明かす度に、明らかになる人間ドラマ。純情で口下手な老ハンター、ゴシップ好きのシェパード医師の姉に見せるポアロの優しさなどなど。衝撃の真相をさて置いても、三面記事的読み物としての楽しさに溢れていて、ここら辺りも、クリスティ-人気の秘密でしょうか。

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シャーロック・ホームズの冒険

2018/08/13 10:07

お馴染み名探偵ホームズの活躍

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

シャーロック・ホームズものとしては、「緋色の研究」「四つの署名」に続く初の短編集。長編よりも短編の方が、ホームズものらしさを味わえる気がする。言うまでもなく推理小説草創期の古典ですが、シンプルに読み物として面白く楽しめます。
舞台はガス灯がともり、辻馬車が行き交うヴィクトリア朝後期のロンドン。拡大鏡を片手に証拠を集め、時には変装して阿片窟への潜入捜査も行う名探偵ホームズ。鋭い観察眼で初対面の人物の職業・経歴や直近の出来事を言い当てて得意がる姿もお馴染み(専門技術=メティエ)という言い方をしてます)。
ボヘミアの王族、大銀行の頭取や女家庭教師が持ち込む謎を、(当時としては)最新の科学的知見と論理的思考で解決してみせるホームズの活躍はとても魅力的。現在でも人気があるのも納得です。
推理小説のトリックとしては、やはり「まだらの紐」が一番かな。

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第二の銃声

2021/01/21 20:34

ミステリ黄金期の実験作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アントニイ・バークリー、1930年の作品。「毒入りチョコレート事件」と同じ素人探偵ロジャー・シェリンガムもの。「毒入り~」がちょっと肌に合わず、警戒していたのだが、これは傑作。語り手である中年に差しかかかった(35歳!!)野暮天男(シリル・ピンカートン)の不器用な恋物語を大笑いしながら読み進めてい行くと、プレイボーイの嫌われ者エリックが殺される。推理劇で殺され役を演じている最中に殺されるという凝った設定。登場人物は全員がエリックを殺す十分な動機を持っている。(いつもと違って?)颯爽とした探偵ぶりを見せるロジャー・シェリンガムが解き明かした真相は。。。
「毒入り~」と同じく、推理小説における探偵の特権性、「真相」の恣意性を強く意識した実験作ですが、とても読み易く、満足しました。

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赤い収穫

2020/12/20 18:27

ハードボイルドミステリの原型にして、究極の完成形

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

西部の鉱山町パースンヴィルに現れたコンチネンタル探偵社の調査員(通称「名無しのオプ」)。しかし、依頼人は彼と会う前に殺されてしまう。町は銀行家兼新聞社オーナー、賭博師、酒の密売人、警察署長等の大立者達が喰いものする「ポイズンヴィル(毒の町)」だった。
「さてこれからは、こっちのお楽しみの時間です。お遊びのカネも、あなたがくれた一万ドルがあります。ポイズンヴィルの町を、のど首から足首まですっぱりと切り裂くためにつかうつもりです。」黒沢「用心棒」やレオーネ「荒野の用心棒」にも踏襲されたあまりにも有名なプロット。演出は名無しのオプ。血で血を洗う抗争劇の幕が切って落とされる。
1927~28年にかけてアメリカのパルプ雑誌「ブラックマスク」に連載されたダシ―ル・ハメットの処女長編。
 1.心情描写を排した、乾いた歯切れのいい文体。
 2.感情に流されず、固く信念を曲げない主人公(だが、必ずしも倫理が高いわけではない。そして大量の飲酒を伴う)。
 3.曲がりくねって辿り難いストーリーライン(主人公が人に出会い、会話をすることで何かが起こり、行き当たりばったりに事件が展開する)。
というハードボイルドミステリの特徴を見事に兼ね備えています。黎明期に登場したハードボイルドミステリの原型にして、究極の完成形、凶悪な傑作です。

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黄色い部屋の秘密 新訳版

2018/12/22 14:55

推理小説黎明期の「完全密室」ものの傑作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かの「オペラ座の怪人」の原作者ガストン・ルルーによる1907年の作品。クロフツ「樽」、クリスティ「スタイルズ荘の怪事件」に先立つこと13年、世界初の本格長編推理小説と言っても良いかと思われます。そしてまた、「密室ミステリ」の古典でもあります。そう、「金庫のように固く閉ざされていた」「黄色い部屋」にて惨劇は起きるのです。作者自身も余程自信があったのでしょう、作品中でも先行するポオ「モルグ街の殺人」やドイル「まだらの紐」への言及があります。
この「完全密室」の謎に挑むのは、18歳の駆け出しの新聞記者ルールタビーユとパリ警視庁の名刑事フレデリック・ラルサン。この二人の知恵比べが、物語の一つの興趣ともなっています。
さて、本書のメイントリック(黄色い部屋の完全密室)については、ミステリの世界ではいろいろと議論があるようで、確かに大筋としては「成程、これしかないなっ」という見事なものなのですが、一点、読者には示されていなかった重要な手掛かりが、ルールタビーユによる最後の謎解きの場面で提示されるので、「これは、ちょっとずるいなあ」という印象を持ってしまいます。本作が「読者への挑戦状」、(作者と読者の知恵比べを前提として)真相解明に必要な手掛かりは読者にも公平に提示されていなくてはならない、という「フェアネス」等の概念がまだ十分に発展しきっていない推理小説黎明期の作品であるが故の、(現代のミステリ読者の視点から見た時の)些細な欠点なのかもしれません。いずれにしてもゴシック小説や、怪盗対名探偵(ルブランのアルセーヌ・ルパンものと同時期の作品)ものの要素を取り込んだ本書の面白さは抜群ですし、(前述の欠点を考慮しても)本格推理小説としての出来栄えも見事なものだと思います。

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精霊たちの家 下

2018/05/27 22:35

矛盾と混乱に満ちたラテンアメリカの近現代史の全てを詰め込んだ物語

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

チリ出身の女性作家イサベル・アジェンデの1982年作品。精霊たちの棲む「角の邸宅」と大農場ラス・トレス・マリーアスを舞台に矛盾と混乱と暴力と純愛に満ちたラテンアメリカ近現代史の全てを詰め込んだ物語。
精霊と交信し、三本脚の椅子を踊らせ、蓋を閉じたままのピアノでショパンを奏でるクラーラと、近代合理主義と資本主義的経営を体現し、血の滲むような努力の末に荒れ果てた農場を地域で最も豊か農場に育て上げたエステバン・トルゥエバが結婚する。クラーラとその娘ブランカ、孫娘アルバの三世代の女性たちの必ずしも幸福に満ち溢れたとは言い難い人生を主軸としながら物語は展開する。
図式的には(透視者クラーラに象徴される)精霊たちが棲む土着的世界と、(エステバン・トルゥエバに象徴される)西欧近代的価値観/行動原理の相克を軸にラテンアメリカの近現代史を描いたということなのだろうが、あまり堅苦しいことは考えずに、多彩な登場人物(反権力のカリスマ国民歌手、変態フランス貴族等)、奔流のように語られる出来事(マルクス主義運動、農地改革、降霊術、革命、クーデター、恐怖政治、更には大地震や蟻の大量発生まで)を楽しめば良いのだと思う。この矛盾、混乱、過剰さこそがラテンアメリカの現実なのだ(と想像する)。豊かな物語性でこの矛盾、混乱、過剰さを描き切るのがラテンアメリカ文学の魅力だと思う。
壮年期には傲慢で精力横溢し、男性至上主義の権化のような偉丈夫であったエステバン・トルゥエバは、軍政下でそれまで築き上げてきた財産を失い、老いさらばえ、身体も(文字通り)縮んでしまうが、精霊となったクラーラに見守られながら、最愛の孫娘アルバの腕の中で安らかな最期を迎える。悲惨な死に方でなくて、本当に良かった。

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ドリフトグラス

2015/09/20 12:15

奇跡の名作「エンパイア・スター」収録

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

米SF作家S・R・ディレイニーの中短編集。「スターピット」「コロナ」「時は準宝石の螺旋のように」などの傑作揃いですが、何と言っても、白眉は伝説の名作「エンパイア・スター」です。サンリオSF文庫、早川書房版ともに、長らく入手困難でしたが、ようやく読むことができるようになりました(酒井昭伸さんの新訳です)。
腰まで伸びた三つ編みのブロンド。コーヒー色のスリムなからだ。オカリナひとつ。左手には真鍮の鉤爪。悪魔仔猫と<宝石>を道連れに、衛星リースを飛び出す<彗星のジョー>。謎の美女サン・セヴェリナと出会い、帝位継承戦争が繰り広げられるエンパイアスターへ向かう旅の中で、ジョーは多観性(マルチプレックス)精神に到達する。
23歳のディレイニーが僅か十一日間で書き上げたという、小品ながらSFの魅力が凝縮された奇跡的名作。発表(1965年)から50年過ぎても、まだまだ新鮮です。「ダールグレン」に挫折した方も、是非、どうぞ。

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人生を面白くする本物の教養

2015/10/24 12:29

教養人への道は果てしなく遠い

18人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昔から、教養豊かな人になりたいと思っていて、古典を読んだり、美術館に行ったり、音楽を聴いたりもしているが、一向に「教養」が豊かになった気がしない。どうやったら教養は身につくんだろう?「そもそも教養って何だっけ?」という根本的な疑問が沸いてきたりもする。

そこで、この本。「人生を面白くする本物の教養」。著者は大手生命保険会社退職後、インターネット専門の保険会社を起業し、現在会長兼CEOをされている方。専門の学者でない、現役のビジネスパーソンの語る教養(論?)は参考になるかも、と思って手に取った。

著者によれば、教養とは単なる物知りではなく、その本質は「自分の頭で考える」ことにある、と。様々なことを知り、自分の頭で考え、本当に納得の行く答えを見出し、よりよい社会を作るために行動し、それが自分の生活の向上につながる。そのようなサイクルを回す、人生を面白くするためのツールが、すなわち「教養」である、と。
第二次世界大戦後の日本社会では、欧米キャッチアップモデル下で経済成長に邁進する中で、個人の個性や主体性が軽視され、むしろ企業へのロイヤリティ(言われた通りに働く没個性の集団)が重視されてきたが、高度成長を支えた諸条件が崩壊した現在、日本人が生き残るためには、自分の頭で考え、行動するする個人の力、すなわち「教養」が必須である、と。

著者の語る「教養」のあり方には共感できるし、そういう教養人を目指したいと思うのだが、やはり、どうやったらそうなれるのかが分からない。本書の各論では、「数字・ファクト・ロジックで考える」という方法論や、「本、人、旅」で教養を培ったという著者の経験が語られていたりもするのだが、それは自分でも既に同じような事をやっていて、ただ自分のレベルが圧倒的に低いだけだったりするので、「所詮は才能の違いか。。。」と思ってしまったりもする。実践面で参考に出来る点が少なかったのが、ちょっと残念だった。「教養」を身に付けるための近道なんてあるわけなくて、「無いものねだり」と言ってしまえば、それまでだけど。

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誰の死体?

2020/04/29 11:48

貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿デビュー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ドロシー・L・セイヤーズの1923年発表のデビュー作です。セイヤーズは、「ミステリの女王」としてアガサ・クリスティと並び称されるミステリ黄金期に活躍した作家です。
ある朝、ロンドンにあるフラットの浴室で全裸に金縁の鼻眼鏡と金鎖を身につけただけの死体が発見され、同時に金融界の名士の失踪も明らかになります。事件に挑むのは、青年貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿。これは一体、誰の死体なのか?
メイントリックについては、後半にさしかかるあたりで何となく分かってきてしまうのですが、とにかく読んでほんわかした気分になれる楽しい作品です。超有能なスーパー執事バンターや、ピーター卿の母親であるデンヴァー先代公妃などサブキャラクターが最高です。シリーズ物になっているので、是非続きも読んでみたいと思います。こういう作品が何気なく存在するところに、ミステリ黄金期の懐の深さを感じました。

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僧正殺人事件

2019/07/21 21:33

「見立て殺人」ものの代表作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

推理小説黄金期を代表するヴァンダインの傑作(1929年)。
 だあれが殺したコック・ロビン?
 「それは私』とスズメが言った
 「私の弓と矢でもって コック・ロビンを殺したの」
ニューヨークの高級住宅街で殺人事件が発生。胸に矢を突き立てられた被害者の名前はロビン。新聞社には「僧正」を名乗る人物から、英国の童謡マザーグースの一節をタイプしたメモが届けられる。そしてマザーグースの歌詞に導かれるかの様に、第2、第3の殺人事件が。緻密、狡猾かつ凶悪な犯人に翻弄される捜査陣。「僧正」と名探偵ファイロ・ヴァンスの息詰まる駆け引き。これといったトリックは出てきませんが、異様な雰囲気に引き込まれ、衝撃の結末に至るまで一気に読まされます。
所謂「見立て殺人」ものの嚆矢にして代表作。音楽、美術、最新の理論物理学からチェスの名手に至るまで様々な分野への夥しい言及がなされるペダンティックな語り口が特徴。当時としては相当スタイリッシュな作品だったと思われます。

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黒死荘の殺人

2019/04/30 11:40

怪奇趣味と個性的な名探偵、通俗小説的な楽しみ満載の傑作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

密室物の名手カーのカーター・ディクスン名義による2作目。H・M(ヘンリ・メリヴェール)卿の初登場作品(1934年)。
冷たい雨の降りしきるロンドン。風雨に曝され荒れ果てた「黒死荘」の密閉された石室で、「祓い」の儀式の最中に、降霊術師が惨殺される。血塗れの死体の傍らには、黒死病が猖獗を極めた17世紀に、黒死荘で不慮の死を遂げたとされる絞刑吏の遺品である禍々しい短剣が。
物語は、重苦しく、陰鬱で、怪奇趣味が横溢した雰囲気でスタートしますが、中盤に入り、「象のような巨体」で「並外れたものぐさ」「無類のお喋り好き」「どうしようもないうぬぼれ屋」で「猥談の名手」たるH・M卿が登場すると雰囲気は一転、解決に向かってテンポ良く進み始めます。そして、黒死荘の石室に関係者を集め、けれん味たっぷりにトリックを再現して見せるH・M卿。
密室の仕掛けは物理トリックと、ミスディレクションが組み合わされた独創的なもの。物理の方は、「えっ?」と言いたい気もしないではないですが、手掛かりは、語り手によって明確にメンションされており、作者が「フェアネス」や「読者への挑戦」に意識的であったことが良く分かります。
個性的な名探偵、独創的なトリック、意外な真犯人と、推理小説黄金期を代表する傑作ですが、端正で上品なクリスティと比べると、怪奇小説的な風味と、陽性でお下劣なH・M卿のキャラクターが絶妙に絡み合った通俗小説的な楽しさが特徴です。

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トレント最後の事件 新版

2019/02/23 15:52

トレント最後の事件

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

英国のベントリーによる1913年の作品。個性的な登場人物と良く練られたトリック、恋愛小説的要素も相俟って、リーダビリティがとても高く、1920年に幕を開ける推理小説黄金時代を用意した作品の一つと言えるでしょう。素人画家兼新聞記者であるトレントは天才型ながら、初心なところがあって好感が持てます。悲劇のヒロインのマンダースン夫人もとても魅力的で、二人の恋愛部分をもっと存分に展開して欲しかった気がします。本作品における重層的に構成されたトリックは、発表当時としては斬新で、推理小説の歴史において重要な意義を持つと言えるでしょう。但し、二転三転しつつ真相が明らかになって行く終盤部分がやや冗長に感じられたのが少し残念。

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