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朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。さんのレビュー一覧

投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。

137 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本

基準値のからくり 安全はこうして数字になった

僕たちはこんな基準に囲まれている。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

帯に書いているのが「想定・評価・判断の科学」初めての一般向け入門書 そんな決め方でいいの?、とあります。

安全は個人の主観的なものと喝破し、国際的な安全規格では安全を「受け入れられないリスクのないこと」なんだそうです。これはリスクゼロとイコールではなく、受け入れられないリスクがどれくらいか、という社会的な合意から基準値ができます。これが守られ、社会は安全を確保できます。

で、その基準値がどうやって生まれたのさ?ってところで文系でも読みやすい卑近な事例が多数挙げられています。

「基準値なんてもんは、お上が決めりゃいいんだよ」ってな冷笑的な私だったんですが、読み物として読んでみても、すごく面白いんです。偉い人が会議を開いて数値の値の範囲で「どれくらい安全か?」っていう議論が活発なのかと思いきや、現場の状況を踏まえて妥協していたりかなり「人間臭い」物語が垣間見られます。

水銀におけるキンメダイがマグロのスケープゴートっていうからくりを知った時には「そうなのかー」って思いました。中には他の世界が決めたからなんとなく決まったとか、基準値の根拠とかその誕生を知れば知るほど、その問題に対する考え方とか、背景がうかがい知れます。

慧眼だったのは、高速ツアーバスの過労運転についての基準でした。事故があれば大きく報道されますが、そういう基準だったのか!ってびっくりするのですが、基準を厳しくすれば、その利便性を代償にしなければならないし、基準値は私たちにとっての「可視化されたセーフティネット」ですが、社会の変化に応じて人の行動パターンも変化します。

ペースメーカーの人の前では絶対携帯禁止っていうのが携帯持つ人が多くなったから「この距離からは禁止」ってな感じですかね?悲しい事に事件や事故が起きてから、こうした見直しがされます。あとがきでは「基準値をどのお湯に設定すべきかについての科学は確立しているとはいえない」と述べ、社会的合意が必要なレギュラトリ―サイエンスであると指摘します。

行動経済学みたいに、科学と人間の恣意性を統合し、いかに社会が「まぁそれなら納得するわ」って基準値が生み出される物語。「これまでの安全神話崩壊」って恐れおののくのではなく、「安全神話」がどれくらい制度疲労をおこしているのか?もともと基準値はどうして成り立ったのか?という読み進めていくうちに「裏が取れるまで、鵜呑みにして行動しない」っていう知的好奇心がムクムク湧き出るおもしろい本です。

ホントに文系が読んでも、スイスイ読める本ですので、ぜひ。

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紙の本

10年後破綻する人、幸福な人

紙の本10年後破綻する人、幸福な人

2016/03/03 09:46

国家リスクと個人リスクは切り離せるか?

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荻原さんがもし保険の外交員だったら、もうその保険商品買っちゃう、みたいな話の理路整然とした、しかも枝葉で「こうしたほうがいいよ」と背中をそっと叩く筆致ってのがあります。

お金の価値が下がってモノの価値が上がるという日銀の金融政策の「読み」どおりになっていません。「給料も上がっていないのにモノを買う訳ないじゃん!」という本音の部分が私たちにはあって、それを荻原さんが代弁してくれています。

政府は東証一部上場企業の多くが賃上げしたとPRしました。しかし、アンケートに答えた企業で賃上げしていない企業はけしからんから企業名を公表するとか言ったものだから約半数がアンケートに答えず、大企業で賃上げは2割程度という見立てをあげ、そもそも会社務めの人の7割が中小企業務めなので実感がないという本音を序盤の30ページで説き「なるほど、もっと読んでみたい」という気にさせます。

マイナンバーは税金徴取をもっと確実にするための方法でデメリットの方が多く、小規模経営のところではセキュリティシステムにかけるコストもかかりますが、消費停滞がありながら、国家財政を増やして破たんリスクを減らす「良い面」も指摘しています。なお、2017年4月の消費税が10%へのアップというのが景気弾力条項がないから上がるのは確実とされており、これは知らなかったので、びっくりしました。

平成バブルと東京オリンピックバブルの違いは、平成バブルは日銀の金融緩和でしたが、個人と企業が中心に回していまして、今回のオリンピックバブルは先行き不透明感があって、官が頑張って膨らませるバブルなのだそうです。

オリンピック後は悲観的な見方です。給料が多少上がっても、それ以上に物価や税金、社会保険料の負担増、グローバル化の進展が理由です。そのために、老後資金より、ローンなどの借金返済を先にした方がいいと考えます。

年金については、「保険料上げる」「支給額下げる」「支給年齢上げる」の方法を維持すれば形式上は100年安心なのですが、積立に移行したくてもできない台所事情があり、不安定な耐震偽装の中古住宅なので、騙し騙し住み続けるほかないとのこと。

なんと本書では、マクロ経済スライドから考えた各年齢別の年金支給額や年金支給を希望したら60歳でも70歳でももらえますが、その「損益分岐点」が記載されています。それもハッキリと。

介護離職については、介護でかかる費用より、フィットネスクラブの方が安上がりかもしれないと述べ、荻原さんは介護オバケに不安がるよりも、介護ロボットなど、10年後の介護状況は個人の予防や努力で改善できる余地はまだあるんじゃないの?と冷静になることをすすめています。

極端な事は述べず、気になることのメリットやデメリットを丁寧に説明してくれています。それでいて切れ味がいい文章。テレビで登用される理由も、なるほどですね。

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紙の本

「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか

冷徹な一撃か、若者への檄文か

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「反安保のデモ、盛り上がってるなぁ」って感じていて、最近じゃ「民主主義の危機が!」みたいな書籍が多くなりました。しかし、日常生活を送っていて、あんまりピンときません。アベノミクスに賛成していたけど、安保にも賛成票を投じた「抱き合わせ販売」みたいな部分で、なんともなぁって考えておりました。

原発や安保に反対するデモは多くの人を巻き込みました。週末なんかに時間を作って参加するほど、デモは敷居が低くなりました。なんか時代が動いているのか?って感じですが、しかしその上のフェーズを考えたら、リベラルの弱さが露呈します。

安倍政権に原発や安保の撤回をせまるカードをリベラルが持っていないんです。大正初期のデモの成功は、その7年前のデモが暴徒化し、日比谷焼打ち事件があった印象があったとしています。言論の不自由さがあった時代です。

今は、デモへの参加への抵抗感が薄まっていますが、権力の側からしたら逮捕者を10名ほど出したら蜘蛛の子のように散っていくと分析し、自公は3割が組織票で、10万人のデモで潜在的に多めに見積もって2000万の声があっても、3000万の組織票には届かないリアルがあります。

自主的でクリーンなイメージのあるデモの前に「人命」を盾にデモ礼賛をされたら私たちは何も言えません。私たちは仕事があるので、立場のない人は気軽にデモに参加できますが、その身軽さゆえに政治的結集という部分には結びついていません。

ということで、知識人には次のフェーズに向かうには組織化や交通整理が必要です。しかしリベラルはデモ当事者を持ち上げますが、次のステップが見えてこないので、政策担当側に足元を見られ、彼らの票がなくとも勝てる算段がついているので、譲歩の「じ」の字も出てこないのが現実です。

リベラル論客はリアルな勝ち負けよりもデモという行為自体に自分の考えを照らし合わせ、脳内バーチャルで満足しちゃっていると論考します。彼らにとっての民主主義が宗教として他者を想定しない世界なら、なるほどです。

反原発やデモにおいても、どこまでの譲歩が可能か?という優先順位が外からだと見えてこないし、ここを突き詰めるとデモ参加者の敷居が高くなるというジレンマがあります。

とはいえ、浅羽さんは、反戦を考えるなら大東亜戦争じゃなくて、国際世論におさえて日本も参加したシベリア出兵とかフォークランド紛争から戦争を捉えなおしてみては?と問いかけ、単なる「リベラルディスり本」じゃないバランスのよさが垣間見られます。

政策は結局、未来という不確定要素を変数に抱えるから知的分析が限界になったら、あとは「賭け」になっちゃうけど、私たちはどこまでを容認できるか?が鍵になると思われます。反戦や反安保は弱者という立場上、責任を問われることがないいわば「安全区域」にいるのですが、現実には、世論調査では原発を関心のある政策課題と考える人は8%にも満ちません。

どんな言葉、どんな立ち振る舞いでリベラルは脳内バーチャルにとどまらない現実世界での道しるべを見出すか。カジュアルなデモから見えたのは、全国規模で見たら、募金をお願いしている若者を通り過ぎる圧倒的多数の通行人の多さなのかもしれません。

リベラルにとって耳の痛いお話ですが、避けては通れない問題ですので、逆に考えたら、闘争の参考書としてリベラルにとっても良書だと言えます。

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紙の本

なぜ、あの「音」を聞くと買いたくなるのか サウンド・マーケティング戦略

ソニックブームと言われてガイルしか思い浮かばない人が読んでみた。

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うちの近所のドラッグストアの歌ってのが、頭にこびりついて離れないんです。そんなサウンド・マーケティング上、音って、みんなが思っている以上に重要なんだよ!っていう本です。

震災の時、ACのCMがあまりにしつこく不快という声がありましたが、その年のCM好感度では、上位でした。つまり、頭にこびりついて離れない歌は必ずしも人を不快にさせることはありません。

そもそも人間は音と深く繋がっています。音を理解する必要がある本人が意識しようがしまいが、脳は常に聞き耳を立てています。五感の中で音の情報処理に関する神経回路の働きから、人間の脳は音刺激に対して最も速く反応します。においや香りを連想するのは対象物に視線を向けた時に限られます。しかし、音は、私たちの視線以外からも認識しています。

そんな音の工夫として、ロシアの地下鉄では、環状線の時計回りの電車には男性のアナウンス、時計と反対周りの電車には女性のアナウンスが用いられています、声を聞けば乗り間違えにくいので安心します。

音の機能をうまく使えば、社会公共性のみならず「儲け」にも使える。お祭りの夜店の焼きそばの音なんかは、一瞬にして私たちの過去の記憶を呼び起こし、いろんな淡いほのかな気持ちがよみがえってきます。

大抵のお店は消費者の反感を買わないよう有線の音楽で無難な音楽でお茶を濁します。でも音を重視したある巨大スーパーでは、各売り場ごとに音楽を変えています。しかも、売り場に沿った音の流し方で、一方で静かな場所をちゃんと用意しています。ワインセラーと葉巻の保存庫です。聞こえるのは室内の温度を低温に保つエアコンのシューという音だけです。

音楽のみならず、スターバックスでは、店内に入るとコーヒーのいい香りがします。しかし、店内に響き渡る音として、ミルクスチーマーのシューという音があり、スタバ独特の音があります。鉄板焼きのジューっていうシズル感たっぷりの音を聞いたら、表だった意識に上がってこないけど、独特の感情が沸き起こります。

「うちは音のある商品、取り扱ってないよ」っていう人には「店内の BGM を変えてみては?」とジョエルさんは言います。ゆったりして欲しいときにはスローテンポな曲。逆に忙しい時はミディアムテンポでお客の入りの出入りを多くする。

これを聞いて思い出したのがマクドナルドの椅子が座り心地悪いっていうこと。わざとゆったりさせないことで回転率を上げるっていうアレです。私たちは個人の自由意思で選択を行っていると考えていますが、アーキテクチャによって、意志が統制されているとも言えます。

アメリカの国歌「星条旗」は、多くの人々の心に響く名曲となったのは曲に「空中で炸裂する爆弾」の歌詞に人々は奮い立ち、この国歌のもとに一致団結したそうでして、君が代を好む私たちは、国家に荘厳さを求める気質をあるのかしら?って思い、文化の違いが楽しめました。

音を用いたマーケティングはまだ余白な部分が多く、冗長ですが読み物として面白い仕上がりになっています。

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紙の本

ノンフィクションはこれを読め! 2014 HONZが選んだ100冊

ちくしょう!

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↑これが読後感です。もうね、くやしゅうて、くやしゅうて。

書評を適当に書いている私にとって、ガツンとくるものがあったんです。HONZメンバーの書評と自分の書評を見比べるとですね、自分の書評が悲しくなっちゃうんです。HONZメンバーの書評には滋味あふれる言葉が載っていたり、単に「まとめ」に留まらず「うーん」とうならせる書評があったり。

最初の文章で「おっ!」って「つかみ」にかかる文とか、書評の書き方として読んでも十分面白いわけです。成毛さんの「やばい!この本はほんとうにやばい!」って文章は本当に目が釘付けになりましたからね。

もちろん単に要約ってのじゃなくて「もうこれ読んだら、この本読まなくていいんじゃない?もう読んだことにして本棚登録でもしようかしら?」ってくらいの書評もあるし、私の知らないこんな世界があるのか、って感じにほのかな感覚に浸ることもあります。いろんな人が関わるからこそ、いろんな感情がデジカメのシャッターをパシャパシャ切るような感覚。

HONZは提出したレビューがHONZの基準をクリアしないといけません。切り口、構成、背景理解、いろいろあって、時にはレビュアーに再考を求めたりします。だから質の良いレビューがそろっており、個人の感想文でなく、不特定多数の人に届き、なおかつ読み手の知性の起動を促すわけです。そら人気でるわ。なんかもうね、私がチンピラ的に書評界隈で「おらおら」ってやっていたら、向こうから本職来ましたよってなもんです。

hontoだと書評を出す敷居が低いのですが、レビューの出来不出来は、個人の裁量に委ねられます。もちろん書評を出す時は、各人の基準ってものがあるし、あっていいと思うんです。

ただ書評が本と見知らぬ読者を繋ぐ橋として公の部分があるのだとしたら、なるべく読んで心地よい書評が大事ですし、本って、書き手だけじゃなくて、編集とかいろんな人が関わっている営みですので、的外れな書評は書き手だけじゃなくて、多くの人に影響を及ぼす凶器にもなりえます。

しかし、イエスマンだと本の「髄」が伝わらない。メディアが権力のチェック機構なら、書評は読書のチェック機構…。なんか気が重くなりますね。書評書きたくなくなりますね。

hontoのトップページ見ていたら、下の方に「マンガHONZとhonto」のコラボがあったんです。最初、なんでかよくわかんなかったんです。競合他社が一緒に製品売っているみたいで。HONZクロニクルを読んでわかりました。HONZのモットーは「出版文化を楽しむこと」なんだそうです。つまり「業界全体を盛り上げていこーぜ」的なもの。ここのコアがしっかりしているから排外主義的な部分がないのが各レビューで伝わります。

HONZ活動記の佐々木俊尚さんの「家めし」も面白く、書評を通じて実社会と関わるというHONZの動的な部分もおもしろく、単なる書評の羅列でない本であり、しっかりした構成になっています。いい本ですね。

あ、ごめんね。最後にこれだけ言わせて。  ちくしょう!

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紙の本

ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体

大人が読んでも面白い塾の本。

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首都圏学力上位層には、鉄緑会とサピックスって当然の選択肢なんだそうです。東大医学部合格者の6割以上が鉄緑会出身、進学校の築駒の合格者の7割以上がサピックス出身って…。一番頭いい子はZ会の通信教育っていうのが私の世代です。あ、年、ばれるわ。

でも奥さん、知識詰め込みなんでしょ?って思っていたら、東大にも記述式の問題があり、ちゃんと論理構成力が必要な問題があり、一昔前の「暗記でOK」ってのは無理だとわかります。サピックスは暗記科目の社会でも、教材は親が読んでも「なぜこうなったの?」が示されていて、確かに面白い。

『歴史が面白くなる東大のディープな日本史』とか、「東大 歴史」で検索したら確かに順序だって話の流れがわかる面白い本が書店にありますもんね。

今まで、東大合格出身校ランキングみたいなのが毎年、週刊誌に出てきますが、実は学校歴×塾歴という多様性があるんだよ、って教えてくれる本です。高校進学率がアップし、教育の平等化が果たせたと思った瞬間、誰かが早歩きになっていたから、知らない間に周りのみんながいつの間にか全力疾走になっていたってのが、国民的教育競争が始まりました。

少しでも隣の子よりかはちょっと優位になりたいっていう個々のニーズの集約が世の中のニーズとなり、塾は急成長します。

塾は民間教育であり、自ら求める教育である自由がある。その意味で塾は学校教育を陰で支えるパートナーで、対立構造のものではありません。

そんな塾では、「エリートの集まり」だから「そこそこ」でも合格できるという安心感。切磋琢磨できる相手が身近にいることでモチベーションが高まる。学校とは違ったコミュニティを形成できる。学校では人間関係があるけど、塾は適度な距離が保て、純粋に学力だけの「ものさし」は楽というメリットがあります。

デメリットは、結果にコミットするスポーツジムみたいな感じなので、自分で勉強法を考える手間が省けたため、大量の課題をこなす処理能力と忍耐力だけしかいらなくなった。立身出世であるために、教育を受けたことによる利益は本人のみが享受する商取引のようになります。

「社会の成熟化が進み「正解」が多様化し常に変化する中で必要になるのは、早く「正解」に辿り着く能力ではなく、問いを問いとして抱え続ける力なのではないか。簡単には「正解」を出してしまわない胆力なのではないか。」

動的な問題、つまり、社会の変数が変わると結論が変わる問題とか、トレードオフな問題はあえて、経過を診ることも必要になります。正解やクリアカットな基準がない状態に私たちは耐性が弱くなっています。

回り道とか、無駄を極力排除したい効率至上主義を私たちは望んでいます。ランキングや順位付けは私たちの生理に関わってきます。死というリスクを極力減らしたいOSを古代から持っていましたから。特に、社会がしんどい今の時期は、その人の本性が表面化しやすいです。

「大卒プレミアムは、高いお金を投資として支払って将来高い賃金を得る資本なんだ」という考えに陰りが見え、低所得層は金銭的理由から手を引きはじめています。教育の不確実性のため、逆にがんばる親は「もっと投資したらできるんじゃね?もっと頑張ったらそこそこ行くんじゃね?」って思います。だってうちの国は再チャレンジには冷ややかな国ですから。

塾は子どものことだろ?って思っていたら、私たちの生き方、考え方に跳ね返るわけです。「子どもは親の鏡」とは、よく言ったもんですね。

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紙の本

この経済政策が民主主義を救う 安倍政権に勝てる対案

予測は大事。

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アベノミクス批判において「じゃ、対案出せよ」って感じなのですが、野党からこれといった対案が見えてこないのがあるけど、それに一定の解を出そうとする試みです。

 失われた20年とは、需要と供給が相乗的に伸びていた成長時代→需要停滞で成長期に築いた供給能力が過剰な移行期によるデフレ不況→将来的には、人手不足で需要をまかなえない慢性的インフレ傾向の少子高齢化。

 2016年7月の国政選挙までに国内的要因で不況期に入る可能性はゼロと筆者は推察しており、ありえない経済危機予言は「オオカミ少年」だとはっきり述べています。アベノミクスの語源は朝日新聞が批判の為に使った言葉ですが、この言い方が定着したからかえっていろんな指標がよくなった時に「安倍さんの手柄」となって総理も「アベノミクスが…」と言いだします。

 特に失業率は、基本的に生産年齢人口が減るから普通の政策だけでも労働市場が引き締まる傾向が強まります。そして、野党は安心して働けて、暮らしが楽になるという展望が語れない。原発や安保で支持されない与党なのに、他の政党より景気の先行きに希望があります。

 老後リスク論が刺さり、老人に3万円配りますってのは、景気拡大効果が選挙の時に出る予測があります。世論調査を調査して逆算して政策しているわけです。で、必殺ワードが「また不況に戻りたいんですか!」

 第一の矢のクロダノミクスが奏功し、輸出と設備投資はよくなったけど、政府支出の緊縮、増税で回復感に乏しい景気というのが実情です。大規模な金融緩和で作りだしたお金で政府支出する方向自体はいいけど、それを格差縮小、教育に使うべきと考えるのです。

 松尾さんの勝てる政策は、簡単に言えば、安倍政権の弱点は福祉なので、少子高齢化する将来を見すえ、無から生じた金融緩和マネーをインフレ目標の2%になるまで介護・医療・教育・子育て支援につぎ込んで雇用拡大するというのが大きな流れです。
 
 政府支出の総額が増えないと、世の中の総需要が増えない。民間からの借金や増税は民間の購買力を喪失するから、不況下では低所得者が継続的に所得を得られることが重要で、増えた所得は確実に消費に回ります。激安商品が売れていたのは、単に所得が足りなかったから。で、完全雇用でインフレになったら増税してもいい、とします。

 具体的には最低賃金や年金、生活保護や社会保障給付も2%インフレ目標と連動させ、同じかそれ以上に引き上げることをあらかじめ定めておく。そうすると自分の恩恵になる保証が出てきます。今までは「福祉のまちづくり」なんかよりイオンが1店来てくれたら所得も雇用も増えて便利という現実がありました。

 2017年4月に消費税が10%になるのは五輪特需ですが、特需効果は首都圏に集中するし、地方経済は、設備投資と輸出が壊滅するとの見立てです。

 いかに2%インフレ目標が自分たちの生活に得をもたらすか?という保証が大事なんですね。ただ、野党は子ども手当みたいな感じの「やるやる詐欺」感が国民には強く印象に残っているため、ターゲットを貧困層に限定するとか戦略が必要な考えだと思います。


 アベノミクス政策は賛成だけど、安保と抱き合わせセット販売だったのかよ!ってカタルシスを覚え、右左両方を問わず一考の価値はあると思うので、本書の太字の部分や図をパラパラ見るだけでも、ぜひ。

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紙の本

名作うしろ読み

紙の本名作うしろ読み

2016/01/31 09:39

願わくば名作のオコボレを少しでも長く頂戴できますように。

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↑これが文庫版の結尾です。
 

 名作のお尻の部分から見開き1ページで終わる書評を書かれています。「きのうきょう出た新刊書じゃないのである。やや強引に定義し直せば、人々がある程度内容を共有している作品、「お尻」を出しても問題のない作品が「古典」であり、「名作」なのだ。」と「はじめに」で書いています。
 

 カフカの『変身』は主人公が虫になる話ですが、斎藤さんは介護者と被介護者の現場だと印象を持ち、『変身』の解説を書いた有村隆広さんは「登校拒否児」「ノイローゼになった猛烈社員」を連想させると述べていたそうでして、ここらへんが風雪に耐えた古典の「読み」なんだと思います。時を超えて新しい解釈が生まれる。
 

 昔の恋愛小説も今の価値観で読んだら「何?これ、ひどい」とか思うわけです。そうした柔軟な思考が生き生きと書かれているんですが、読後感はそんなに名作を「ひどい」と思わせないのが不思議な感覚です。
 

 132冊の名作の解説がだだっ広く続くのかと思いきや「あの作品とあの作品は系統がある」みたいな繋がりを意識させることができる部分もあります。
 

 で、名作のエンディングは一件落着といった閉じた結末と、作中の人が泣いたり歩いたり物語は終わるけど、「中の人」の人生は続くという開いた結末。
 

 で、文庫版のあとがきで、お尻を取り扱ってきたから「罰が当たった」と述べています。何が書いているのかはここでは書きません。ただお尻の部分は「斎藤がそれなりに頭を悩ませたのも事実である」とします。
 

 「願わくば名作のオコボレを少しでも長く頂戴できますように。」をじゃどう解釈したらいいの?素直に読んだら「続刊のCMかい!」ですが、途上感は確かに感じます。何だろね?これ。そしたら、ご本人が書いていました。
 

 「読者への挨拶で終わる本は、ちょっと見素朴に思えるが、気取りを捨てた本ともいえる。言い訳も自己主張もえらそうな箴言も、著者の情熱に免じて許してやろう。」
 

一般人の書評で、斎藤さんのスタイルを丸パクリしていいのかって?いいんですよ。名作なんだから。

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紙の本

心配学 「本当の確率」となぜずれる?

人間の意志の絡む選択は不確実。

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心配事があるからこそ、リスクを回避できる賢い知恵であった心配性。しかし、本当の確率とはズレがあることがわかっています。昔はリスクを低減するために支払うコストがわかりませんでしたので、こうしたコストに目を奪われることはありませんでした。
 

 平均年収を見ても「そんなにもらってないよ!」と訴える人も多いですが、収入は正規分布ではないので、基準値の極少数の人がお金を持っていると、分布で一番多い山よりも平均値が上がっちゃう。
 

 わかっちゃいるけど、数字で見せられたら「下流なんだ」と心配しちゃう。経験や知識を得るがゆえに損得で勘定してしまいます。
 

 災害とか事故が起きると「人災だ!」って思いたがるのは、人災だと人や管理のせいで、犯人がいるかのような印象になります。天災は損害を補償しないけど、人災って言うと責任補償してくれたりコントロール可能な印象をもたらします。
 

 こうして「人災だよ」って言葉に慣れるとこう感じます。「リスクって軽量可能なんだ」と。
 

 本書ではネットの情報を用いながら四則計算でわかりやすくリスクの計算方法をケースを用い紹介しています。なるべく簡易に書かれています。「そんなのいい統計じゃない」と思われるかもしれませんが、人の恣意的判断が混じるリスク計算は計算しても「計算外」の事がどうしても出てくるんだそうです。ざっくりの計算でいいから考えてみたら知識として知っとくだけでも無用な心配はなくなりますよ、と背中を押してくれます。
 

 性悪説に基づくと、負担コストが高くなります。生レバは禁止のままだし、私たちはなるべくゼロリスク思考でリスクの大元を排除するやり方をとってきたわけですが、生レバを買うことの選択肢や消費のアップを潰すというコストも支払っているわけです。
 

 しかし、飛行機の安全レベルが高い理由が、他の乗り物よりずっと高いレベルの安全性を提供しないと利用してもらえないから頑張ったっていう側面も島崎さんは見逃しません。私たちは飛行機を極端に恐れる人をなんかバカにしちゃいますが、ここまで信頼してもらうのに、どれだけの年月を費やしたことやら。
 

 リスクはあるけど、人生の豊かさを考慮した時に、私たちはどういう行動をしたらいいのか?私たちが自衛できる武器を島崎さんは配っているのだと思います。
 

 「心配学」ですが、怖がりの人も、そうじゃない人にもクールな視点を与えてくれる一冊です。ここまで読んでちょっといいかも?と思った方は本屋さんで開いてみるだけでも、ぜひ。

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紙の本

東京タラレバ娘 4

紙の本東京タラレバ娘 4

2016/01/31 08:42

TTM(東京タラレバ娘)を否定しない男。

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私、評論文の書評がホームベースなんで、この本の書評って難しいですね。下手したら感想文になっちゃう。41歳のおじさんの女子力わかってない書評だから怒んないで読んでね。


 「失恋した人は遺族と同じなんだから、それを癒す方法などありはしない。ただひとつ言えるのは、とにかく体を疲れさせて毎日眠ることだ」(@亀井勝一郎さん)っていう巻です。
 

 女子会の内輪ムードってどうよ?ってとこがあるんですが、やっぱりこれだけ売れているのは、心象描写が徹底的にうまいから共感を得るんでしょうね。わかっちゃいるけどぉぉ!ってやつ。
 

 倫子に自分を重ね合わせた女性は、そんな消化不良を自覚しつつも、生き方に指針を求め、背中を押してもらいたい。そんなカタルシスが「タラレBar」があることで、うまく機能できています。


 「お悩み相談」があるから作者の本音を共有できるみたいな?現実に引き戻される感。落語に似てますよね?現実にお帰りって。そんな変にスッキリした読後感。
 

 ちなみに東村さんの「おまけマンガ」の体を張ったファンサービスがおもしろくて、もし私が「『かくかくしかじか』読んでヤバいと思って仕事を一生懸命…!」とか言ったらどうなるんだろう?
 

 首根っこを掴まれて固くヘッドロックされて…KOEEEE!

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紙の本

10代の脳 反抗期と思春期の子どもにどう対処するか

脳が完成するのは、30代。

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19世紀を通じて子供は「小さな大人」とみなされていました。18世紀後半の独立革命の頃までアメリカの植民地の人口の半分は16歳以下でした。20世紀の初頭でのアメリカは実に200万人以上の子供が働いていました。

じゃ、ティーンエイジャーとは「半分大人」なのか?実際の子育てではその急速な成長、可塑性は諸刃の剣で柔軟で興奮しやすいのは脳が活発すぎるために、大人にはわかりにくかった生物学的理由が脳科学の知見からほんの少しだけわかってきたことが紹介されています。

10代後半の脳は未完成なだけでなく、極めてアンバランスです。灰白質という神経細胞の束は有り余っていますが、白質(情報伝達の配線)が足りません。本書では「新品のフェラーリでエンジンは唸りを上げているのだが、路上テストはまだで、どこに行けばわからない状態」としています。

学習によるシナプスの結合がまだ十分でなく、前頭葉の各領域間の繋がりは30代ほどでようやく完成します。少なくとも脳の成長は脳科学的には20歳以降も続いている。だけど抽象的思考はうまくなるので、判断力、洞察力、物事を包括的に把握す能力も向上し、前頭葉との接続がスムーズになる過程ですので、なんか「大人みたい」と考えてしまいます。

発展途上であるこの脳は「可塑性」であり、脳はとにかく新しい情報を得ることに特別に熱心になるようなプログラムされています。新しい情報を得ることこそが学習の核心です。ティーンは一晩に9時間~10時間眠ります。それは脳でいろいろな事が起きており、様々なことを急速に学習しているからで、平均的に若者に必要な睡眠時間は CDC推奨で一日8時間半~9時間半としています。

反抗期のキレやすさの原因は前頭葉の未成熟があり、扁桃体(根源的な感情と反応の源)という性や感情的行動を担当する場所が非常に活発です。68ページに成人の脳のシナプスに対する割合で抑制性シナプスよりも興奮性シナプスの方が若い脳には高いがグラフがあります。

自分を客観的に見る洞察力があればいいのですが、この能力は前頭葉と頭頂葉から生じるので成熟までに時間がかかります。外見がほぼ大人で、大人のような考えをしているから、成人式で変なことをしたり、大学のサークルで過剰に飲酒してしまうのを見て、私たちは眉をひそめます。

若い子はキャバの働きが弱く、そのせいで酒を飲んでも小脳運動(協調性をコントロールする)などの活動が抑制されず運動機能や協調が損なわれにくいので、抑制が効きにくい故に飲酒への耐性が強く、飲み過ぎちゃいます。

「僕が悪いんじゃなくて脳がそうさせたんだ。」と屁理屈をこねる若い子も出てくるでしょうが、本書では、彼らには自分の行動を判断する能力があり、それは不道徳なり行為の言い訳にはならず、脳は理由の一つでしかない、とします。

未成年者を自らの行動に責任を持たなければならないけど、彼らは概して意思決定能力が未熟で仲間の影響を受けやすく、将来への影響を慮ることができません。ソマリアとアメリカだけが18歳未満の被告への重罪を課している、と述べています。

私見です。まとめが各章ごとについているので立ち読みでもなんか納得できます。しかし寝室からTV、PCを撤去とかできねーよ、って部分もあるし、ラットの実験が人間に応用可能なのか?とかデータの整合性の問題もあるけど、未成年者への厳罰重視が広がる中、自分の思いを理論的に展開できない子の理解の一助になります。

結局、実際の子育ては根気強く、一度に一つのことを言い続けるっていうことになります。ここまで読んで読みたいと思った方はぜひ「まとめ」だけでも。

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紙の本

生存教室 ディストピアを生き抜くために

生き残るって、難しいね。

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本書は、マンガ「暗殺教室」から教育や身体の使い方、はたまた戦争責任なテーマを交え闊達に対談しています。「暗殺教室」ってまた、セレクトがいいですね。内田氏は「ワンピース」の派生本のあとがきも書いているからマンガにも強い。

教育はシステムであり、秩序と安定が前提ですので、安定した社会となりました。腐ったミカンがいた時期もありましたが、公的装置で排除してきた。でもフレンドリーに「お前のことを思って言っているんだから」という「ものわかり」よさげな態度をベースにした支配は、きゅうくつなものです。

今、そういう人って会社でもいますもんね。

で、スポーツのように身体能力を測るものさしが、数値化されて単一であるのですが、本当の勝敗は「生き残ること」であり、親も社会もクリアカットな格付けを求めます。私の年代だったらドラゴンボール的な成長のインフレ化を青少年期に目の当たりにし、その社会パターンが身に染みているけど、「暗殺教室」のみならず、最近のアニメはセカイ系とか新たな枠ができています。

これまで内田氏の身体論の本を複数読んできたのですが、読後感はちょっと「もやもや」していたものがあって、正直あまりピンとこなかったのです。でも光岡氏のお話でそれが氷解しました。

本の中にの米俵、1俵あたり60キロを背負う女性の写真が出てきます。で、1俵60キロの根拠は明治当時「誰にとっても肩に担げる持ち運びやすい重さが60キロ」という理屈でして「なんじゃぁそりゃぁ!」ですよ。だってその写真の女性2人はですね、それぞれ5俵担いでいるんですよ。(43ページ)

もうね、この写真見ただけで、購入金額のもと、とれましたわ。田植えとか、薪割りとか、中腰で作業する足腰の強さが根本的な身体能力として備わっており、まわりの人がそうだったから自然とそうなったという身体観の常識が昔はあった。ビジュアルにズドンときましたわ。

そういや、職場でですね、古武術介護ってのをやってみたんですよ。感想としては、「うーん、役には立つけど思ったほどの驚きじゃないなぁ」でして、腰痛を自覚する時だけ意識的に古武術介護で自己の身体に負荷をかけない程度に実践していました。

でも、たった160年前の、生活習慣に裏打ちされた身体の基礎と今の私たちのあまりに違い過ぎ、まず身体がスタート地点で立っていなかったから、私が古武術介護を使おうとしても、それは現在の感覚、身体観で使っており、便利を求める心理があったわけです。「今日は体の調子いいから、じゃぁ、ちょっと300キロ担いでみようか?」って気になりませんもん。技術どうこうよりも、まず、過去の身体観と今の私の身体は完全に分断されたものなんだ、ってことを自覚しました。

「暗殺教室」を媒介として争いや師を超えること、共生とは?という完全管理社会下で、ふわふわした自己の身体・生命という疑問に応じる本になっています。

上記の写真を見るだけでも、ぜひ。

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紙の本

患者から「早く死なせてほしい」と言われたらどうしますか? 本当に聞きたかった緩和ケアの講義

ようやく出会えた緩和ケアの医療者用の良書

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緩和ケア領域において、他科にその魅力を伝えることの難しさに「緩和ケア領域において、患者、そして第二の患者である家族へ寄り添う。症状の最小化よりQOLの最大化」という視点があります。患者の行動一つをとっても、患者が医療者に遠慮するバリアがあったり、「気持ちの深淵」があります。

ハッキリ言います。私にとって緩和ケア領域の本でしっくりくる本は本書以外になかったです。医療者側が表現する緩和ケアにおいて、吐き気や嘔吐や腹水など、緩和ケア領域において、医師が経験や専門に大きく左右される、手探りでやっている部分があり、成功例があるとその成功例がまるで「ベスト」な感じでプッシュしてくる本もあったんです。不帰となる患者の苦痛や経過に対して症状の除去に焦点が置かれている本もありました。

痛みがコントロールできない時、私たちは無力を感じ、自責を持ち、立ち尽くす。筆者は素直に「医療者にも苦痛があって、目の前で痛がっている人がいると、見ている人も痛く、人の心にも痛みは伝播する。」医療者側も辛いんだよ、と述べます。

患者は小さな状態の変化を起こして病状は絶えず揺らいでおり、バリアンスが生じます。コントロール不可な痛みが眼の前にあり、後ずさりしながら「頼む、これで眠ってくれ」と歯ぎしりする。

その場しのぎの処方が必要になる「痛み」に対する三つのパターンってのが秀逸でして、「ああ、こういう機序だったのか」と膝を打ちましたよ。

医療用麻薬が効かない時、レスキューの頻度を多めにしたり、容量を多くしても、「鎮痛薬の投与が痛みを決着させるというよりも自然と嵐が去るように痛みが治まってくれるという感じ。」という瞬間があるわけで、その中でも医療者は家族にどう答えたらいいのか?って言葉に詰まる時、筆者は「私ならこうする」と逃げずに自分の考えを述べるのです。

私たちの不安や無力感はバーンアウトも生むし、鎮痛薬で眠らされたという家族の思いがないように事前から治療方針を適切に患者や家族に伝え話し合う必要がある、とします。それも単に確認作業じゃなく「いっしょに考える」姿勢を示し、コミュニケーション技法より、まず信頼関係を持ちましょうと。

目の前の患者も家族も自分たちの手持ちの知識を総動員しながら、苦痛を抱えています。食べられるようになれば元気になれると信じ、味覚や楽しむ余裕よりも、本能的な欲望が食行動の根幹となる場合があります。

医療者も苦しい!マインドがあっても、それでも私たちはプロなんだから時には型にはまった「振る舞い」は必要でして、患者は「自分がどうしたいのか」というニーズ以前に、心の「溜め」がない場合があり、医師の好奇心は患者にとっては希望の光になることがあります。だから心的疲労が溜まると、患者への興味がそがれるので、患者への関心が医療者自身の心的状態のバロメーターになります。

私たちは当たり障りのない表現としてつい「いつどうなってもおかしくありません」とリスク回避的言動をとりがちです。しかし、時にそれは「医療者の説明責任と免責の言動」より「呪い」であり、そのデメリットを考える機会は少ないです。

信頼関係が整うと、予期される、せん妄や鎮静の説明が可能で、の多くは病床の悪化によるもので、治らないことが多いことの説明を理解してくれます。

「私は苦しくないように地球することを約束します」という未来を保証することが大切で、もちろん軟着陸が理想形ですが、着陸できるようにいつも滑走路で灯火を照らすという緩和ケアの神髄が読後感に残る良書です。

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紙の本

「リベラル保守」宣言

紙の本「リベラル保守」宣言

2016/01/13 02:27

保守のマインドを通史的に読める。

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西部邁さんの雑誌『表現者』に載っていた論考が、さらに文庫本化したものです。ネットで「愛国者です」って感じでお手軽保守宣言ができる世でして「保守への敷居」が低くなったような気がします。

左翼思想というのは、人間の理性によって理想社会を作ることが可能と考える立場です。基本、人間の可能性に対する信頼があります。努力次第で完成形に到達できるという確信があります。

国家を使った平等主義の具体例が欧州の社会民主主義です。彼らの福祉国家的構想の中には、国家による平等社会の実現という設定主義的合理主義があります。政治工学を重視し、人間社会の複雑さや歴史の継続性はあんまり重視しません。

保守は、人間は絶対完璧じゃないよ、って捉えます。だから保守は「進歩」という立場を取りません。とはいえ、ノスタルジックに「復古」という立場もとりません。なぜなら、未来の人間が不完全であるのと同様に過去の人間も不完全だから。高齢化社会だし、保守は時代に応じた斬新的改革を施行する、とします。

あれですよ。老舗のラーメン屋さんで「この変わらない味がいいんだよ」みたいなことを私たちオールドファンはドヤ顔して舌鼓打っても、実は時代に応じて客層の味の好みに対して、気づかれないような感じでマイナーチェンジしてますよ的なもんです。

「決められる政治」ってのに私たちは弱く、民意は流動的で、脆弱です。だからかえって「ぶっちゃけ」って感じの切れ味もあって、毒舌な人をリーダーにしてもいいんじゃない?ってマインドになるのは、はるか昔、プラトンも指摘します。

保守派は死者の数とかを指標にする功利主義的立場を打破したい。保守にとって大事なのは、生まれた土地や伝統、そしてそこで培われた歴史的集合的価値感です。

それでも、「自分磨き」とかですね、進歩をするってのは、人間の快楽に結びついています。進歩こそが人間の普遍的衝動であり、豊かさを得てきました。設計社会があるからリスクも管理できるようなマインドにもなります。しかし、保守思想はこのようなラディカルな合理主義に対して懐疑的。

面白いのは、夢野久作の関東大震災の振り返りで、震災で下町からトポス(居場所)がなくなり、江戸っ子は、行政が用意した避難民バラックに落ち着きます。以降、東京は各地から集まった人々の様々な顔をによって構成される流動的都市空間となりました。昔は「顔」という人類最高のパスを持っていたけど、あっと言う間にそのパスが効くところがなくなりました。

そして、筆者は「取り戻すべきはトポス。中間共同体を厚くしなければならない。社会的包摂を強化し、地域における相互扶助の関係を再構築しなければいけない。」と提案するわけです。

しかし、地域にとどまったムラ社会的安心社会は流動性によって再構築はほぼ不可能ですし、進歩を重んじる私たちのマインドって結構、左派なんです。「俺らにとっての、マジの国体」って思いを馳せることはないのです。

でも、アトム化で今、セーフティネットの網目から落ち行く人もいるわけでして、中島さんの「リベラル保守」という考えは「思考の軌跡の途中経過」と記していますので、今後、どのような思索に辿り着くのか見守りたいです。保守思想が衰退しているのか?それともパイの縮小は今後も排外主義を促進するのか?

文章は読みやすく、この国の保守思想について通史的な理解ができますので、続きは是非本書を開いてみてください。

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紙の本

マンガで分かる心療内科 14 (コミック)

私の書評がイマイチな理由がわかった。

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社会的比較理論とかショットガン・アクションが紹介されています。前者はフランクルの『夜と霧』を思い出しました。このエピソードは過去の単行本に載ってます。でも幸せの総量って、つい近い人との相対評価になっちゃうのは、石器時代からの脳のOSがそうなんでしょうね。チンパンジーもキュウリを食べていて、隣でバナナを食べるチンパンジーがいたらそのキュウリを投げつける行動があるので。

で、ショットガン・アクションは「思いついたことは全部やれ」でして、これも過去にアディクションの項目で「自分の意志なんて無意味!環境を変えろ」って部分がありました。

例えば勉強したいなら、枕元とかにも本を置いておく。勉強したくなくても「とりあえず本を開く」という「とりあえず」の導入のハードルを低く設定すると、ショットガン・アクションは抵抗を感じにくいかもしれません。

悪口を言うと、言った本人の評価も下がるってのは、確かになぁって思いました。でも世の中、他人の評価を下げることで自分のポジションを上げたい人もいるわけでして、なんともこういう人とは深入りできないもんです。

実際、なんだかんだ言って、私たちって「お客様の声」とか店舗とかのアンケートで「あの店員さんの対応がよかった!」とかよりはクレームとか改善点を書きがちです。

巻末のおまけで療先生の事が書かれているんですが、唯一の誠実マジメ路線です。ツッコミキャラとか言いますが、他のキャラも時につっこんでいます。常に言葉づかいが丁寧で温かみがある。

分け隔てをしない聞き上手な描き方をしているからこそ、オールラウンドに対応でき、信頼を置けます。そしてこのマンガの特徴って、テーマがあってから「教えて!療先生!」ですので、男性特有の「教えたがり」の圧迫を感じさせません。だからなんとなく口うるさく感じず、逆に頼りになるマインドになります。

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「いいえ」のショットガン。

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