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朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。さんのレビュー一覧

投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。

137 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

外資に売られる日本だけど

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

国家戦略特区と聞いて、なんか国スケールのかっこいいプロジェクトを想像しますが、その正体に迫る内容です。

本来貧しい国が工業化を目指したり外資が来ることで国民や国家に利益が期待できた時代がありました。郭さんは国家戦略特区には国民にも国家にもメリットがない、と喝破します。

その昔は構造改革特区と総合特区が地域らの立候補などのボトムアップ型なのに対して、今の国家戦略特区はトップダウン型で政府が規制緩和メニューを策定します。東京や関西など便利という理由で特区が認定されています。

規制緩和を行い、外資を誘致することで格差が拡大だけだと郭さんは主張します。新自由主義路線は世界的富豪の資産を約80倍に増やしたとされています。しかし、農業のような分野は予測や制御がかなり困難な分野です。ここで儲からなかったら企業が逃げて、お膳立てした国民や国家が損するんじゃない?と。詳しいカラクリは本書をご覧ください。

とはいえ、「これは日本再興のためだから」と言われたら「ぐぬぬ」と私たちはなります。しかし高齢化もあり、働き盛りではないわが国では、和食とか安全とか日本の誇るサービスや知識に裏打ちされた産業を育て「おとなの国」になってみては?と述べます。

いやぁ、なんか下り坂の経済を受け入れ粛々と生きていかなきゃならないのかぁ、って思っていたんです。そしたら外資誘致という特別経済区の話でカンボジアの話が出て、すでに多くの日本企業が参入している話を目にすると、今ある私たちの富が実は外国から安いお値段で得た利益もあり、やっぱり資本主義社会って「中心と周辺」からなるパイの獲得の部分も見えて、なんか読後感は複雑な気持ちになりました。

「利益は全て外資が持ち去る」というのは、ふるさと創生なんかもそうですが、こうした仕組みって私たちの生活とは迂遠な部分があって親身にわかりにくい構造になっているので「知らない間に損してた」という部分があり、どれくらいの投資でどれくらいのペイがあったのか?っていうところは監視しないといけないんだなぁって思いつつ、企業のパワーが国家を凌駕しつつある現状も再確認したわけです。

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紙の本

紙の本山本周五郎で生きる悦びを知る

2016/05/27 20:05

本人は山周って呼ばれるの嫌いだったそうな。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

漱石や太宰は学生向きの小説家、そして山本周五郎は中年向けの小説家と言われています。え?言われてない?うちの近所の人たちはそう言ってるんですけどね。

一章につき一作品といった作品紹介です。気にいった章から読んでも差し支えない構成です。史跡を訪れながら福田さんの思いを綴る構成なのですが、これがめっぽう読みやすい。すいすい読めます。序でいきなり獅子文六の話始めますからね。買った本を間違えたかと思いましたよ。

山周作品は「赤ひげ」のように、みずみずしい登場人物の生命力と共に青臭いセリフがたまに出てきますが、それが上滑った言葉じゃない腹の底から出ているような言葉のように聞こえてくる不思議さがあります。

その土地の地に足の着いた人の描写がうまいからだと思います。山周作品ではいろんな世間を引きずりながら、そこから逃れられないけど懸命に生きる人たちが登場します。中には「なんだ?この人」っていうとんでもない人も出てきますが、それでも読んでいると「ま、こういう人がいるのもありかも」と思えてくるから不思議です。

ここが共感できるポイントなのでしょう。単に勧善懲悪でなく中年になると背負うものがたくさん出てきます。いろんな世間をまたいで、トレードオフな事を学びます。そして若い頃のような意思や根気のリソースが有限であることを身体知で認識します。はい、階段上るの最近しんどいです。

目立たないけど、辛抱とかを貫き「わかっておくれよ」と言わんばかりの誠実な態度を示す登場人物の豊富さが中年の共感を呼ぶのではないか?と思ったんです。

福田さんは「あとがき」でこう述べます。「読者は周五郎の小説の中に自分がよく知っている自分を見つける。また自分が知らなかった自分を見つける。それが明日を生きる希望となり、活力となる。周五郎の作品が今なお残っている理由はここにある。」

ふだん、おじさんが言葉にしにくい気持ちがここにはある。

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紙の本

個人でも書評を怠けちゃう。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

みんなはあんまり口にしないけど、どうして仕事をするの?って言ったら「怒られたくないから」っていう部分が結構あるんです。自分の能力の低さによって集団に迷惑をかけたくないから一生懸命頑張る(ケーラー効果)っていうのがあります。

だから集団のパフォーマンスや動機づけは、まわりの人物や状況や課題によって影響を受けます。そこから筆者は、集団主義の社会的手抜きの関係の研究結果の分析を行っています。

最後の方に相撲の話とか野球の応援が選手にどれくらい貢献しているか?とか書いているので事例が豊富で読みやすいです。

読んでいて面白かったのは、社会的手抜きが生じる文化差です。どうやら女性は同性と一緒に作業するときは手抜きをせず、男性と作業する時は作業内容のいかんにかかわらず控えめになる、とのことです。介護職なんかで男性が増えてきていますが、社会的手抜きが例えばですね、上司の隣で仕事をするとか他との関連性で自分の意識しないうちに力をセーブしたり奮起したりするのは「ああ、そういうのあるわ」って思ったんです。

救急の講習を昔受けた時に近くにいる人に指差して「あなた、救急への連絡をお願いします」って特定に人に依頼するっていうのを実習した事があったんです。それって、個人的に責任を問われることがなければ、「誰か助けてください」だと、面倒ごとに誰も関わらないので特定個人に援助を求めることが大事なので、これにはそういう意味があったのか、と気づいたんです。

プロテスタント労働倫理の程度が高いと、失業に対して否定的な見方が強くなるっていうのは、こういう人、他人の手抜きに厳しいわって人を思い浮かべてしまいました。どうやら他者に対する信頼度が高いほど、福祉に対しても好意的で、公共心が低い人も、他者に対する信頼性が高い人も福祉を求めるそうです。

集団浅慮は全員一致のコンセンサスを求めるあまり異論を唱えたり、疑問を出すのを控え、集団内に波風が立たなくなる現象。集団浅慮に陥ると正義実現のためには、あるていどの非倫理的行為も許されると考える傾向、愛国無罪が適応されるので、風通しが悪い中での集団統合はかえってパフォーマンスを低下させます。

じゃ、社会的手抜きを少なくするのにはどうすりゃいいのさ?ってとこは、集団形成し、私たちは集団に応じて自分のペルソナを被って行動するので、社会的手抜きを完全になくすのはどうやら無理なようですが、腐ったリンゴに罰を与えるよりも、腐っていないリンゴを活性化させるほうが、高い目標設定して集団成員に示すことのほうが社会的手抜きを防ぐには効果的で、その目標が達成されたら成員に報酬を与える。ポジティブな側面に力を入れた方がいい、とのことです。

われわれの社会には勤勉を奨励し社会的手抜きを抑えようとする規範があり、意識してなくても、人によって有形無形の圧力を受けていて、社会的手抜きのネガ部分だけではなく、その多面性をいろんな統計を交え、知ることができます。

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紙の本

読んではいけない

20人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いわゆる極論、不愉快な真実とかが書いています。もともと近著『「読まなくてもいい本」の読書案内』のスピンオフでして、その近著をラフにまとめると「知のパラダイム転換が起こっていて、自然科学と人文諸科学は統合され、旧来の心理学や政治学なんかは、心理学が進化心理学になったように知の統合が起こっており、若い人はそのパラダイムに乗り遅れちゃいけないよ。」です。

新書に書いていることを一部抜粋するとですね、

安静時心拍数が低い人の反社会的行動の率は高い。東アジアの人は不安感が強い遺伝子傾向があるから高い知能を渇望し、国際比較での試験結果がいい。幅広の顔の人はテストステロン(男性ホルモン)濃度が高いため攻撃的、親の教育よりも子どもの友だちの影響の方が強い、などなど。

この新書のみ読むと還元主義のインパクトのある部分のみが読後感に残ってしまいますが、不都合な事実があるけどそれを認識した上で効率的で衡平で少しでも合理的な世の中にしていけたら、という筆者の思いがあります。(これも近著に書いています)

恐らくこうした還元主義に反発を覚えるのは「人間の能力は後天的に決まる、特に教育とか」と考える人のフェアネスを瓦解されるからです。反面、還元主義のピットフォールは「努力しなくてもいいじゃん。遺伝子の問題じゃん」ですが、遺伝は半分、教育は半分くらいの認識なら、知識偏重社会で人間が集団形成している幻想にある程度の距離感が保たれると思います。

プロテスタント労働倫理による個人の努力によって、行動主義で自分は変わる。けど「限界ある」のを私たちは薄々知っています。口には出さないけど。アメリカは行動主義が大好きですので、つい私たちも「そうなのかな?」と思っているので、ここの価値に軸足を置く人は不愉快な思いが募るかもしれません。筆者は最後にこう述べます。

「ちなみに私は、不愉快なものにこそ語るべき価値があると考えている。きれいごとをいうひとは、いくらでもいるのだから。」

好みの分かれる本ですが、背景にある筆者の熱意は本物です。

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紙の本

あの言葉を聞いて「風俗アイドル」を思い出した。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ギャグマンガ家って、寿命が短いんです。うすた先生は20年目だそうです。歳をとると、そんなつもりが全然ないのに「若い感性」のある書き方についていけなくなる、というやつは、漫画家じゃなくても私のようなおじさんが、若い子と「ギャグ的な面白い話」できないところに似ています。twitterとかで若い子のワードは「知識」として入っているんだけど、なんか、「間」っていう奴ですかね?言葉で言いにくいものがあるんです。

 読み手によって「ツッコむとこ、そこかよ!」的なガビーン!って感じの登場人物の青筋がかった表情を見て「うすた先生のこのノリ待っていた!」ってクラスター(群れ)がいる一方で、今のdisり文化って、罵り尽くして荒涼とした世界で、好みの細分化もあって、なかなか「ギャグマンガ」の独特のキャラの立った「ツッコミ」だけが売れる時代ではありません。
 
 キャラクター個人が時にはいじられキャラのようなアバターになったり、そうでなかったり、うすた先生のキャラの繰り出すボケは絵の迫力から激しさを感じるのですが「懐かしくもあるんだけど、どこか微笑ましい一面もある」というのが魅力でして、今も前線で活躍しているのを見て、おじさんは羨ましいなぁと素直に思うわけです。  
 
 老舗のラーメン屋で、実は外見が一緒なんだけど、時代に応じてブラッシュアップしているってのを「マサルさん」と読み比べて気づいたわけです。

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紙の本

紙の本最貧困シングルマザー

2016/04/24 23:57

かなり面白いルポ。

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『最貧困女子』の姉妹版です。題名がショッキングであり、母子世帯の貧困率が56.4%、単身女性の3分の1の年収が114万円未満とかいうデータを聞くと「可哀想」と思う反面、パイの縮小から個人の問題に矮小化され、激しい攻撃感情が起こるのがこの問題です。

室井佑月さんの解説が光っているのでそれを読んでみるのもいいと思います。何といっても単に相手をフォーカスしたルポではなく、鈴木さんご自身が、話を聞いて自棄の感情が出たり、デキ婚なんて軽々しく言うな、とか素直な感情も含まれ、記述にとどまらない臨場感が迫ってきます。

時間の都合がつき、手っ取り早く稼げるのが売春です。しかし、デブ専でもトークがいいとか、可愛いが求められている時代ですし、景気が悪いから風俗の需要も落ちてきています。だから風俗をスルーして出会い系で個人的に援交し、自分で自らを売り込む営業する女性が描かれている部分があります。

そうすると、所得のほとんどが不定期ですし、どのくらいの稼ぎかの把握もできません。危険な目にあっても「ケツモチ」もいません。

養育費を支払う男性も少なく、鈴木さんはいろんな女性の話を聞いて、類型化を行います。精神科通院歴がある、極度の寂しがり屋、自己肯定感を完全に失っている。「女の集団になじめない」という独特のメンタリティ。そして出会い系という男による救済を求めるけど、簡便に寂しさを紛らわせるが、根本的解決にならない。

そんな母子家庭以前に何らかのスティグマを背負っている可能性がある、という残酷な現実を見せます。そして母子家庭に対する福祉を抑制することで政府は生保のスティグマ意識を本気で払拭したがりません。

しかし、生保で子どもがいじめられるからという理由で、福祉に甘えないシングルマザーは肯定しなければならない部分もあります。独立独歩で、子どもがいれば所得が低くても高いQOLを得ている場合があります。だから、たとえ「彼女たちに必要なのは売春をやっても、子どもを殺さず生き延びていることを褒める事。」というのはなるほどな、と思えました。子どもが自分の数少ない成功体験であり、それを手放したくないわけです。

私のような男性はピンとこないのですが、男で例えるなら無職であることが金銭よりも、どれだけ自尊心を傷つけるか?ってことに置き換えて考えると自助努力による精神論で片づけるのが短見であることがわかります。

しかし改めて思うのは保育所問題とかそうですが、点としての福祉問題は焦点になってもそれが線にならずに漏れる人がいて、貧困リスクも特定の属性を持つ人に集中的に発生しますし、データにすら「載らない」女性もいる、そういう人がいるんだよ、っていう可視化がようやく行われている「まだまだ」そんな段階なんだ、と改めて気づくわけです。

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紙の本

なぜ、あやしい論理にだまされたくなるの?

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こういう本って「疑似科学のこういうトコがダメなんだよ」っていう文句のみの本が多いのですが、筆者は専門柄、そういう疑似科学を信用する人の内面にまでスポットを照らしています。

疑似科学は社会の維持、掟の表現に積極的に使われたと筆者は推測します。昔から私たちは他人の模倣をするという高度な学習能力があり、ネットや広告が広がり他人の意見が聞けるようになったのは最近の事です。「先史時代に周りの仲間に従って協力するように私たちが進化した結果」と述べます。

かといって科学は「現時点での暫定的事実」であり、未来では常識が非常識になる事があるので科学と疑似科学の明確な境界はありません。じゃ、どうすりゃいいのさ?というところで筆者は「だまされ上手」になるのがいい、とします。

科学は客観性や社会に役立っているか?という応用性がありますが、または論理性や体系性といったものです。かといっても年取った時の病気の不安になんとか「明確な安心」を私たちは求めます。

お守りみたいに「心を癒す一定効果」はあっても、それ以上の効果があるのか?というのはなかなか判別が難しいです。マイナスイオンの森林浴効果が心理的でも「体にもよくなった!」といった場合、自己体感を客観的に効果の度合いを比較するモノサシを私たちは持っているわけではありません。

筆者は心のモジュール理論を用い、ノストラダムスの大予言を挙げ、知識よりも噂に影響力があることを示唆します。科学の先端は不確実な仮説がせめぎ合っています。そして科学報道は「正しい」ことばかりなので、市民は科学の事実は「いつも正しい」と誤認識し、疑似科学はそこにつけこみます。科学を装うと「正しさ」のイメージがくっついてきます。「こんな統計が出てます!」「あの医師が推奨しています」とか。

愛用者の感想って、CMで出てくるじゃないですか。ああいうのは規制できないないんだそうです。言論の自由に引っかかるので、私たちが真贋を見極めないといけません。「愛用者の90%が続けたい」と言っているのなら「愛用者の割に10%の人が続けたくないんだな」とか疑似科学の見破り方が書かれています。

水ビジネスとか生活に関する不安を除去したい、将来の不確実性を低減したい気持ちは誰しも持っており、地図を作ってみて、どこまでだったら自分は受け入れられるか?を整理してみては?と筆者は問います。

システマティックレビューで洗練されたエビデンスのみ信用しなさいといっても、案外あれ、書いているのが「あまりに常識的」なんです。ゆえに「なんかもっと手軽に」とかリカバリー欲求があって、それが社会や本人に活気をもたらす源にもなっているのですが、どんなものにも効果とリスクはつきもので「私ならどれくらい賭けて、損しても許せるかな?」って読後感に浸れたので、いい本だったと思います。

水ビジネスの項だけでも、かなり科学の味付けがある「疑似」を常識にしてしまっていた私がいて、ここを読むだけでも本代のもとは取れました。

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紙の本

とても切れ味のいい文章

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本書は最初から「なぜ日本では略奪も行動も起きないのか。私の答えは簡単である。世間があるからだ。」とクリアカットに呈示します。

筆者いわく「日本人はみな法のルール以前に世間のルールに縛られている。新自由主義は競争的環境に追い込み世間の様々なルールの肥大化が起きた。その結果、世間全体が深刻なストレスを溜め込んでいき異質なものを排除する同調圧力が強まったのである。」と。

凡庸に多数派につくというのは生存戦略として私たちの身体に染みついており、そこに資源を優先的に配分します。

西洋社会では法のルールがあります。アメリカでは子供が何か悪いことした場合に外出させないと脅します。しかし日本で叱る場合に家から外へ閉め出すよ、と脅すことで、日本人は処罰とは社会からの排除ということを学ぶのだそうです。

「お前なんか出てけ!」ってな感じ、なるほど私の身体に染みついています。そうした「世間」という日本人を強く縛っている非公式なルールが犯罪の防止策になっています。

ある芸能人が不倫をして関係者にはちゃんとケリをつけたのに世間は許してくれないのに不満を述べ「世間ってなんなんだろうね?」って感じのコメントがありましたが、本書では世間の4つの特徴が述べられています。ネタバレになるので詳しくは本書を。

西洋社会にみられない治安のよさや犯罪率の低さを維持してきた世間は、ケガレの排除だけでなく赦しの機能もあるからここまで機能したっていうのはなるほど慧眼です。

「大岡裁きを期待している日本の世間では、正義の実現はお上が一気に為すべきことであって、西欧社会のような地道な民主主義的手続きは必要ない。」っていうのは、個人の自立した民主主義が…ってリベラルが言っても、実際は多数派に歩調を合わせる人がマジョリティという現実が腑に落ちてしまいます。

本書は「だから世間がダメなんだよ」っていうのじゃなく、ちゃんと世間がどういうものか、また卑近な例を豊富にそろえてくれているのでスイスイ読めます。便所飯とか既読スルーとか。ネットなんかで対象物をフルボッコにするあの力も世間によるものって考えたら、なんかもやもやしたものの構造がわかってすっきり腑に落ちます。

中間層が解体されることで低所得者層が増加し社会的格差が拡大しているそうですが、個人化が進むなかで肥大化している「世間」を知るのにとてもよい一冊です。

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紙の本

自己啓発本ってエナジードリンクだよね。

2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私ってほら、皆様も薄々気づいていると思うんですが、心が広い人間じゃないですか。だからレビューで「4人のうち0人が役に立ったと言っています」とか見て「低評価はいいけど、どこが悪いかの理由がわかんねーから改善のしようがないんだよ!くそがっ!アマゾンみたいにネガティブ評価を最初から反映しないシステムならいいのに、わかってねーよなぁ!」って部屋のゴミ箱を蹴って小指を痛めるなんて子供みたいなこと、するわけないじゃないですか。

「したたか」ってなんか腹黒くて、上目使いでアヒル口しとけばいい、みたいなイメージがあるんですが、本来の意味は「相手に屈しない」「しっかりしている」「強い」というのが辞書的な意味合いなんだそうです。

「結局のところ、誰からも非難されず、誰からも反対されない“いい人”でいるためには「何もしない」以外に道はないのです」と筆者は指摘します。

とはいえ、他人の評価って気になります。影響力がある書き込みをする人は「自分が悪口を言うことのマイナス」を勘案して書いています。悪口言うのもいいけど、多数の人に「それわかるわー」って同意が必要なんですね。相手にメリットがあると感じられるものなら受け入れられるんですね。

そこの機微がわかんないわけなんですよ、私。そもそも「いい評価を頂けるのはいい事をしている」から、であって「オレの言うことが分からんチミたちが悪い」ってよりも、一人でもいい評価してくれたら、それは私とおススメ本をつなぐパッサーとなれたっていう「期待値調整」のお話が本で示されていて気に入りました。

「自分の考え」というものに対するハードルはもっと低くていいと筆者は述べます。読書は耕す作業に似ていて他者の言葉を自己に取り入れることで富裕化する特徴があります。筆者はネットにおけるベータ版を挙げます。いわば試作品でいろいろトラブルあるけど「早く出したもの勝ち」というビジネスルールに則ってサービスを琢磨していくという考え方は背中を押された気分になれました。まだまだ勝負はこれからさ。

筆者は問いかけます。「あなたにとっての勝ちは何でしょうか?」

「いろいろ失敗を恐れてレビュー書くの、やんなっちゃた」って気になっていたのですが、もともと「役に立った」「立たなかった」という数で勝負していたわけじゃない。あ、こういう目的で書いていたんだって「初心」を顧みることができたんです。

経験を積むことで、読者像を想定し、どんな言葉で人が反応するのだろう?とか考えると楽しいですし、小指の鈍痛が少し心地よく感じた読後感でした。

・・・あ。

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紙の本

僕たちはこんな基準に囲まれている。

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帯に書いているのが「想定・評価・判断の科学」初めての一般向け入門書 そんな決め方でいいの?、とあります。

安全は個人の主観的なものと喝破し、国際的な安全規格では安全を「受け入れられないリスクのないこと」なんだそうです。これはリスクゼロとイコールではなく、受け入れられないリスクがどれくらいか、という社会的な合意から基準値ができます。これが守られ、社会は安全を確保できます。

で、その基準値がどうやって生まれたのさ?ってところで文系でも読みやすい卑近な事例が多数挙げられています。

「基準値なんてもんは、お上が決めりゃいいんだよ」ってな冷笑的な私だったんですが、読み物として読んでみても、すごく面白いんです。偉い人が会議を開いて数値の値の範囲で「どれくらい安全か?」っていう議論が活発なのかと思いきや、現場の状況を踏まえて妥協していたりかなり「人間臭い」物語が垣間見られます。

水銀におけるキンメダイがマグロのスケープゴートっていうからくりを知った時には「そうなのかー」って思いました。中には他の世界が決めたからなんとなく決まったとか、基準値の根拠とかその誕生を知れば知るほど、その問題に対する考え方とか、背景がうかがい知れます。

慧眼だったのは、高速ツアーバスの過労運転についての基準でした。事故があれば大きく報道されますが、そういう基準だったのか!ってびっくりするのですが、基準を厳しくすれば、その利便性を代償にしなければならないし、基準値は私たちにとっての「可視化されたセーフティネット」ですが、社会の変化に応じて人の行動パターンも変化します。

ペースメーカーの人の前では絶対携帯禁止っていうのが携帯持つ人が多くなったから「この距離からは禁止」ってな感じですかね?悲しい事に事件や事故が起きてから、こうした見直しがされます。あとがきでは「基準値をどのお湯に設定すべきかについての科学は確立しているとはいえない」と述べ、社会的合意が必要なレギュラトリ―サイエンスであると指摘します。

行動経済学みたいに、科学と人間の恣意性を統合し、いかに社会が「まぁそれなら納得するわ」って基準値が生み出される物語。「これまでの安全神話崩壊」って恐れおののくのではなく、「安全神話」がどれくらい制度疲労をおこしているのか?もともと基準値はどうして成り立ったのか?という読み進めていくうちに「裏が取れるまで、鵜呑みにして行動しない」っていう知的好奇心がムクムク湧き出るおもしろい本です。

ホントに文系が読んでも、スイスイ読める本ですので、ぜひ。

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紙の本

結婚・出産なんて「ぜいたく」だ。

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題名は私が言ったんじゃなくて、本書の帯にそう書いてあったんです。社会福祉士である筆者による貧困世代の定義とは「一生涯貧困に至るリスクを宿命づけられた状況に置かれた若者たち」とのことです。筆者の想定では今の10代後半から40歳までを貧困世代と考えています。ちなみに筆者の前著『下流老人』は20万部突破のベストセラーになっています。

本書「貧困世代」とか「下流老人」というワードを用いながらその相互関係をわかりやすく示そうという姿勢は反貧困運動の失敗の総括から来ているというのは知りませんでした。

私たちは努力至上主義や精神論を若者に求めます。しかし今は、働いても貧困が温存される時代です。労働万能説を唱えるおじさんはもともと自らの雇用を安定させるために若者を非正規にすることで自分のポジションを安定させる事になっています。

そんな若者は下流老人予備軍でその層は「相当に分厚い」と筆者は考えます。若いうちから資産形成のための賃金が貯まらないのに出産や子育てどころじゃありません。親もゆとりがないのである程度の年代まで育てたら「あとは自分でなんとかしなさい」となります。

筆者は「若者たちに対する社会一般的な眼差しが、高度成長期のまま、まるで変わっていないのではないだろうか?」と問います。

少子化対策として保育の義務化とかがありますが、そうした支援の効果は限定的と考えており、若者への社会福祉は就労支援のワンパターンであり、社会保障が高齢者、身障者、児童という対象を重視していたので、給付やメニューの不足があります。

「そんな事言ったって俺たちだって苦しいんだ!」という「貧困世代」じゃない私たちおじさんの叫びが聞こえてきそうですが、筆者は単に問題点の指摘でなく、貧困世代問題解決のための一定の解を示し、なおかつアクションを実際に行っているという点が語られています。

若者は公営住宅からはじかれやすく、公的な低家賃住宅によって世帯形成率は高まり、少子化の原因は住宅にあるのかもしれないという仮説を立てます。

そして新しい労働組合の取り組みなど、言葉だけでない、極めて実地に足のついたアクティブな印象を読み手に与えてくれます。社会福祉士という仕事柄か、社会のセーフティネットの網から零れ落ちる人たちの問題を解決したいというパッションが伝わってきます。

今の国債は民間貯蓄で補っているから大丈夫という言説がありますが、国債発行額以上に民間貯蓄がないといけないのですが、内閣府の国民純貯蓄データからも将来世代に富を残せておらず、富が集っているのは企業貯蓄で、家計の貯蓄はマイナスだけど企業貯蓄があるから民間貯蓄がプラスに見えるという日本の現状があります。

じゃ、企業からお金とればいいじゃん、ってなるのですが、そもそもそんな企業が少数で、会社務めの人の7割が中小企業務めという状態です。今の団塊ジュニアの2050年問題は「2人で1人のお年寄りを支える肩車時代なわけです。

しかし、公教育費の専門書とかの書評も書きましたが出産や教育は、個人や家族の問題と考える人は圧倒的多数派です。世代間倫理の話題がそうなんですが、私たちはまだ生まれてこない若い人よりも今の問題の方に意識が集中するというのは太古から持っている感情です。

私たちはこうした問題を頭で納得しても、つまるところ「他の人と同じようにふるまっていけば安心安全」という生存選択をセレクトしてきたのであり、「アクションにする」というフェーズにおいては「いばらの道」があることを知るのです。

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紙の本

お前誰だよ的表紙。

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前巻よりも、ちょいギャグが多めだから安心しました。お金にガメつくて声が大きい人が活躍しています。ヅラがタイマンしてます。声が大きい人とヅラのお話から、リーダー論がちょこっと入っています。

まぁ、難しい事はよくわかねーけど、簡潔に言うとですね、陸奥ちゃんかわいい。

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紙の本

バビュっと見るタイプの本。

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おじさんはねぇ、ウル4勢なんだよ。だから発生何F(フレーム)で技が出るとか、硬直がどれくらいあるとか、そういうデータベースが知りたいんだよぉ。

てな人にはおススメできません。ゲーセンに置いている小さい冊子がでっかくなったバージョンだと思って下さい。

この本を買う人はおまけのアイテムコード狙いかもしれませんが、よくよく考えたらこのゲーム、これまでの2D格闘みたいな発生何Fみたいなデータよりも実際に動かせばわかるのですが、展開がスピーディーなので硬直がどうこうっていうタイプのゲームじゃないのです。

技が似ているのも多いのでカタログとして見ているのもなんだか楽しいです。

バフ、デバフのアクションも載っていました。このタイプの本は「じっくり見る」んじゃなくて細切れ時間にグラフィックをぼんやり見るってタイプの本です。

今後もアップデートによって情報や新キャラが追加になったりしますが、本書に載っている使っていないキャラクターも使ってみたくなる楽しい本です。

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紙の本

『翔んで埼玉』の時代的考察

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この本のおまけマンガで「埼玉県についての風土記的考察」っていうのがあったので、それをモジってみました。

本書はいわゆる「埼玉叩き本」で、埼玉の描写がとても江戸時代のような極端な描き方になっています。初出が1982~83年。著者の大ヒット作『パタリロ!』がアニメ化されたのが82年です。

作品の感想は他の書評におまかせします。ここで話すのは、なんであんなにも「ど田舎差別ネタ描写なのか?」です。今、こういう描写で世の中に出したら炎上確定です。

80年代は高速道路や新幹線ができて流動性が高まる過程のまだ「地方と都市」が均質化されていない時代でした。

ツービートはブスと田舎者の悪口を言い、あんまりよくわからない「地方」のことを笑える時代だったのですが、「埼玉に海がない」とか、埼玉県民がリアルに気にしているネタは言わずに地方独特の話し方を誇張してみたり、地方の世界を極端な描写にして、第三者が見ても「いや、そこまでひどくはないのは知っているし、パロディだよね」という誇張による担保があって地方の悪口が成り立っていたんです。

敗戦からコンプレックスの固まりで戦ってきたけど、気づいた時には「ジャパンアズナンバーワン」ともてはやされ、それなりの「ふるまい」として見栄を張るようになった80年代。『金魂巻』の「まる金」「まるビ」という「貧乏」がギャグとして受け入れられていました。

「東京対地方」において、日本はパリコレに進出し、若い人たちは自分のファッションに自信を持ち、豊かで平等な社会という印象があって、土建国家的資本が地方に流入し、余滴が中央から地方に分配される時代。流動性が今みたいに高くないがゆえに「周辺としての地方」がありました。均質的なものから個性が尊ばれ、東京から風土や歴史がノイズとして消去され、個性的な周辺としての「地方」に魅力があった時代。豊かになるという総中流の同一性だからこそ「大衆」というのを嫌い「ダサい」「イモ」という差異をかえって欲しがっていた時代だったわけです。

今「貧乏ディスり」っていうのがギャグにならないのは、パイの縮小があって、貧しいことがリアルになり、今の貧困が特定の属性を持つ人たちに集中して発生していて、それは都会や地方という住む場所という「属性」に限らなくなってきたから、と考えられます。

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紙の本

紙の本10年後破綻する人、幸福な人

2016/03/03 09:46

国家リスクと個人リスクは切り離せるか?

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荻原さんがもし保険の外交員だったら、もうその保険商品買っちゃう、みたいな話の理路整然とした、しかも枝葉で「こうしたほうがいいよ」と背中をそっと叩く筆致ってのがあります。

お金の価値が下がってモノの価値が上がるという日銀の金融政策の「読み」どおりになっていません。「給料も上がっていないのにモノを買う訳ないじゃん!」という本音の部分が私たちにはあって、それを荻原さんが代弁してくれています。

政府は東証一部上場企業の多くが賃上げしたとPRしました。しかし、アンケートに答えた企業で賃上げしていない企業はけしからんから企業名を公表するとか言ったものだから約半数がアンケートに答えず、大企業で賃上げは2割程度という見立てをあげ、そもそも会社務めの人の7割が中小企業務めなので実感がないという本音を序盤の30ページで説き「なるほど、もっと読んでみたい」という気にさせます。

マイナンバーは税金徴取をもっと確実にするための方法でデメリットの方が多く、小規模経営のところではセキュリティシステムにかけるコストもかかりますが、消費停滞がありながら、国家財政を増やして破たんリスクを減らす「良い面」も指摘しています。なお、2017年4月の消費税が10%へのアップというのが景気弾力条項がないから上がるのは確実とされており、これは知らなかったので、びっくりしました。

平成バブルと東京オリンピックバブルの違いは、平成バブルは日銀の金融緩和でしたが、個人と企業が中心に回していまして、今回のオリンピックバブルは先行き不透明感があって、官が頑張って膨らませるバブルなのだそうです。

オリンピック後は悲観的な見方です。給料が多少上がっても、それ以上に物価や税金、社会保険料の負担増、グローバル化の進展が理由です。そのために、老後資金より、ローンなどの借金返済を先にした方がいいと考えます。

年金については、「保険料上げる」「支給額下げる」「支給年齢上げる」の方法を維持すれば形式上は100年安心なのですが、積立に移行したくてもできない台所事情があり、不安定な耐震偽装の中古住宅なので、騙し騙し住み続けるほかないとのこと。

なんと本書では、マクロ経済スライドから考えた各年齢別の年金支給額や年金支給を希望したら60歳でも70歳でももらえますが、その「損益分岐点」が記載されています。それもハッキリと。

介護離職については、介護でかかる費用より、フィットネスクラブの方が安上がりかもしれないと述べ、荻原さんは介護オバケに不安がるよりも、介護ロボットなど、10年後の介護状況は個人の予防や努力で改善できる余地はまだあるんじゃないの?と冷静になることをすすめています。

極端な事は述べず、気になることのメリットやデメリットを丁寧に説明してくれています。それでいて切れ味がいい文章。テレビで登用される理由も、なるほどですね。

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