空間の設計者さんのレビュー一覧
投稿者:空間の設計者
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雁の寺・越前竹人形 改版
2015/10/31 23:46
哀しく生きた男女のものがたり
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山深い人里の佇まいに、溶けこむような当時の裏日本越後という地方、貧しく暗い背景がこの物語の底を流れる。
それは、日本がかつて歩んだ風雪の時代を端緒に象徴しながら読む者のこころの舞台の照明の基調となっている。
妻という名の母は、竹細工という男の生業における最高で永遠の主題となる。
竹の精とまで美しく擬せしめた美貌の持主が、はかなく消滅していく終末は、
女の臨終のことばとともに、果てしなく哀れだが、ロマンの光彩に縁どられ静かに語りかける読後感がよかった。
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