月面考古学さんのレビュー一覧
投稿者:月面考古学
紙の本微分積分 大学教養
2020/07/22 08:45
こんな本を待っていた!
12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
高校での「受験数学」と大学の「学問としての数学」との乖離がはなはだしい。
問題集に関しても、受験数学ではチャート式シリーズを筆頭に無数に存在するのに対して、
大学数学のそれはとにかく少なすぎて困る。
おそらく、大学数学の設問は、学部レベルでも1問の回答に1時間以上かかるのが当たり前という実情もあるので、「学生が勝手に勉強すべし」というのが大学関係者の意識だからだろう。
そうした「数学(微分積分学)の高校と大学の大きな穴を埋める」のが本書である。
チャート式らしく、説明は必要最低限に、その分回答(なぜその答えになるのか)はくどいほど丁寧。
高校数学の復習にもかなりページ数を割いており、ε-δ論法のように
「高校ではこう習ったものが、大学ではこう考える」という説明が明確にされている。
「高大接続」の必要性や重要性が指摘されて久しいが、
それをかなりの程度実現している一冊。
理工系学生にとっては優れた復習用の教材に、
数学が必要になる人文社会系の学生には心強い助け舟になる。
紙の本グノーシス
2017/09/26 19:12
キリスト教神学の読み物
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ファンタジー作品で出てくるような、アダムとイブを誘惑した蛇を崇拝する神秘主義的な異教という狭義の思想ではなく、初期キリスト教における実験的な思想という広義のグノーシス主義を考察した一冊。
ある程度の予備知識を前提とはしているような文体ですが、難解というほどではなく専門書というより読み物に近いです。
実際、高卒で、独学で学問をやっている自分も読んでいて面白いです。
「ユダヤ教グノーシス」という節はいろんな意味ですごい(笑)
2019/04/26 09:39
学部4年次でも読める、鏡像群の解説書
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
代数幾何の本のうち有限群に関係するものは、対称群や結晶群などはこのレビューを書いている時点で新品で出回っている好著が数冊ほど(洋書も含む)あるが、鏡像群を扱った本で、かつ日本語訳されているものはおそらく本書のみだ。
しかも、ただ類書がないというだけでない。
原著はイギリスの研究者や専門家ではなく、修士課程3,4年(日本の博士後期課程に相当する)での教材として執筆されている。
日本語版もそれを反映して、学部1,2年次の線形代数、代数学、幾何学、集合論、そして基礎的な代数幾何の予備知識があれば通読できる程度の難易度で、有限群の数学書としては初学者でも取っつきやすい。
他の有限群でも本書のように敷居が高すぎない本があれば良いが。この分野は「難しいことは良いことだ」といえるほどに初学者お断りのものが少なくないので。もちろん、入門用の本もあるが…
紙の本宗教法人会計のすべて 「宗教法人会計の指針」逐条解説と会計・監査・税務実務 第3版
2020/12/24 20:31
会計専門職、宗教関係者なら必読の価値がある
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
宗教(法人)と会計というのは確かに、相容れないものではある。
会計のめざす資本的利益の最大化に疑問を持つ人々の組織である宗教にたいして
既存の会計モデルというものは概ね通用しない。
だが、宗教界からも批判を集めた旧オウム真理教事件以降、
宗教も組織的集団である以上は透明性、つまり会計による情報開示が必要で、
それが出来るのにしない宗教はカルトとして見られやすい、という認識が強まってきた。
しかしながら、殆どの宗教者にとって会計は門外漢である。
本書は、「一般的な(=企業の)会計ではこのように書くが、宗教ならこのようになる」という
具合に具体的な言葉と用例で宗教法人会計の模範例を記述してくれてある。
勿論、現場で用いられる書類の様式も多く掲載されている。
例えば宗教法人から会計についてアドバイスを求められて困っている会計職や
会計の必要性を感じているが書き方が分からない宗教者には
是非とも一読を願いたい研究実務書だ。
2018/11/17 11:05
本格的!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
プロの写真家によるダイナミックな、一方では凶暴な、時にはかわいいホッキョクグマの写真を多数掲載し、
それに合わせて生態・行動から分布・進化、ヒトとの関わり、そして保全と、類書ではトリビア程度でしか触れられていない知見が非常に多く掲載されている。
この生き物を紹介した本は数多いけれど、写真及び情報の質・量は(おそらく)最高峰でしょう。
本書のもう一つのテーマとなっている環境保護についても、本文の随所で言及され、色々と考えさせられます。
先進国(日本だけでない)も途上国も、本音では国益さえ守れれば地球環境を守る必要は無いという気配がある、と訳者のあとがきにありますが、概ね同感です。
各国揃って、将来の地球のことなど知るかという自己中心的な人間が増えていると思いませんか?
シー・シェパードやグリーンピースといった環境テロは、そうした人類レベルの重要課題を盾にした悪質な集団ではないでしょうか。
紙の本エトルリア学
2018/05/16 10:02
エトルリア学
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
欧米では定番の教科書とされている一冊の本邦初翻訳です。
古代ローマ以前のイタリアに存在したと推察されている、エトルリアに関する研究書として価値が高い本。
原著には多数ある写真が殆ど掲載されていないのが欠点ですが、この点については訳者も言及している。写真の版権や所蔵庫が世界各地に散在しており、日本人がそれらの使用許可を得ることはほぼ不可能。
しかし、それに目をつぶっても、税込み約一万円という価格は高すぎるとはいえない。
東洋の1カ国においてエトルリア関係の学術書が母国語で読めるという時点で、まさに驚異的な魅力です。
紙の本新生児学入門 第4版
2017/07/14 09:25
定番の一冊
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
新生児医療のイロハを初めて学ぶ方にとっては、本書は、避けては通れない、基礎事項のほとんどを叙述した良書であると言えます。
解剖学、生理学の基礎知識があれば読破できますが、文章が平易なので、医学以外の研究者でも一通り読むことは可能です。
価格に関しても医学書としては良心的で、その意味でも入門書に適した本です。
紙の本信託法講義
2016/11/18 17:55
信託法を初めて学ぶ人にはありがたい
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ほぼ同じ題名で同じ信託法の本がありますが、こちらのほうが安いです。そのぶん、条文を1条ずつ説明していき、巻末に信託法と信託業法(一部のみ)の原文を掲載という、研究書ではなく教科書といったおもむきの本です。
各種判例の解説などあまり深い内容はありませんが、初心者にとっては、それがかえって学びやすく、学部生や独学者ならぜひおすすめです。
紙の本泡の物理
2016/11/18 17:37
値段は高いが読みやすい
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2000年代以降の本では(おそらく唯一)泡の物理的挙動に限定して、流体力学的な性質や特有の現象を述べている一冊。
定価6000円とそれなりに高価なうえに、同種の専門書もないので、さぞ難易度が高いだろうなと思ったら、高度な数式がほとんどないうえに、図表やイラストが多く載っており、高価な理工系の専門書とは思えないほどに読みやすいです。
ただ、本格的に研究論文などの参考文献を探している方なら、流体理論や熱力学に関する別の書籍も必要不可欠だと思います。
2023/05/04 10:31
これぞ入門!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
題名は入門、でも実際には各分野の基礎知識を学んでいることが前提という「入門書」は
特に哲学や理工学だとよくあるパターンだが、
本書は可能な限り具体的、かつ中立的な文章で、教養のために読んだ門外漢でもかなり理解しやすかった。
(逆に言えば哲学的でない、という反対意見もあるだろう)
2022/03/02 11:10
基本を学ぶ構造力学
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建築学では必要不可欠な構造力学を、理解するために必要になる高校物理の復習をも織り交ぜて解説しており、
高専や大学で初めて学ぶ人にはもちろん、建築関係の基礎知識を習得したい他分野の人間(レビュアーもその一人だ)
にも重宝する。とにかく親切設計な1冊だ。
基本書ということで当然、不静定構造などは深くは説明していないが、
より高度な部分も究めたいという場合にも、同じ著者が本書よりも難易度が高い構造力学の専門書を執筆している。
もしこれで物足りないという時はそちらを読めば更に深く学べる、というのもありがたい。
紙の本古代官道の歴史地理
2020/12/31 10:38
遺著
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56歳で早逝した著者の代表的作品。
歴史学と地理学の学際分野である歴史地理学に、
考古学的な遺構や出土品の分析と解釈とを組み合わせた研究成果。
おそらくこの方面では第一人者だった。
論法としては、歴史的史料と考古学的物品を同一視するなど、一元論の立場をとっている。
そのため、現在では古臭さや多少の難解さは否めないが、
未だに分厚く、権威がある層も取り払おうとしない(自分の地位を守るため)専門分野の壁を
大胆に、しかしながらあくまでも実証的に乗り越えようとした試みは大いに評価できる。
紙の本安定マッチングの数理とアルゴリズム トラブルのない配属を求めて
2020/04/24 10:01
内容が興味深く、分かりやすい
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著者が近年、研究テーマとしている「安定マッチング問題」の本である。
おそらく、日本語の著作としては本邦初だろう。
いわゆる婚活サイトでの男女の最適な組み合わせなど、扱っている内容がユニークで面白い。
実際、高校での出張講義は大変好評だったという。
数式・プログラミング言語や専門用語も、高校生でも読めるレベルで執筆されており、
参考文献としてはもちろん、単純に数学やコンピュータ科学の読み物としても通読できる。
紙の本マトリョーシカ大図鑑
2019/11/17 12:08
いいね!
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図鑑ものは、写真を鑑賞するだけでも癒されますね。
しかもただの写真集じゃなく、マトリョーシカの歴史や製作、
さらには日本国内での主な取り扱い店舗といった情報・知識まで網羅されているので
愛好家や興味がある方なら買って損をすることはないでしょう!
紙の本交通政策入門 第2版
2019/08/21 08:31
大学等のテキスト
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交通政策とは何なのかを、主に経済学、つまりは市場メカニズムとの関連から、
七人の執筆者(そのうち六名は研究者としては気鋭の若手)が懇切丁寧に説明している。
書名が入門ということで、内容は交通政策を学ぶために必要な専門的な用語や知識の解説、および
政策評価・環境・規制緩和と市場の失敗・地域交通などに関するケーススタディの紹介にとどまり、
具体的な政策提言やより踏み込んだ議論はあまりない。
しかし、本書のような広く浅い内容の本は初心者のテキストとしては最適だろう。
一般向けではないものの価格も比較的お手ごろで、その点も評価できる。