K.ザムザさんのレビュー一覧
投稿者:K.ザムザ
残像に口紅を
2016/02/28 17:08
才能とバイタリティ
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
筒井康隆先生の作品を読んだのは今回が初めてですが、圧倒されてしまいました。音を一つずつ消していくというアイデアもさることながら、豊富な語彙や読者を楽しませる工夫が散りばめられており、飽きることがなく読了しました。音が消えることに伴ってその音を含む物も同時に消えていってしまう世界に漂う哀愁は今まで他の作品では味わったことがありません。先生の才能とバイタリティにただただ感服しています。
テスカトリポカ
2021/07/02 05:03
人間の弱さと克服
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
濃密な犯罪描写に圧倒されるが、その中で描かれる人間の虚栄心や保身といった弱さが却って印象的。超人的な犯罪者たちが川崎に集う過程はワクワクするし、パブロとコシモの師弟が舟に乗るシーンはパブロの覚悟が窺え感動的。矢鈴の決意はややとってつけた感が拭えないが、主要人物のほとんどは背景をしっかり描いているので行動原理に納得でき、非常に満足だった。
ジニのパズル
2016/08/05 15:48
力強いデビュー作
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
表現にはまだ初々しさが見られるが、そんなことが気にならないほど力強い作品だった。
主人公・ジニの違和感、苦しみ、怒りが痛いほど伝わってきて、ラストシーンでは思わず泣いてしまった。
世の中には受け入れ難い事象が数多ある。それでも、受け入れること、受け入れられることで皆が輝くことができる。そう強く叫んでくれる本書と著者に感謝したい。
旅する練習
2024/05/28 09:07
静かな感動
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結末へ向けて細部まで緻密に計算されていながら叙情性も損なっていない、高い完成度の純文学。小説家の男とサッカー少女の姪がひたすら歩くという小規模な話だが、凡百の物語より圧倒的に人間の生と死を描き出している。
哀れなるものたち
2024/02/29 22:26
縦横無尽
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幻想的な世界観を背景としたある女性の成長譚だが、一筋縄ではいかず、企みに満ちた構成になっている。登場人物が繰り広げる議論や会話のテーマは多岐に渡り、非常に野心的な小説だが、それでいてとっ散らかった印象は受けず、見事に話をまとめている。
自由研究には向かない殺人
2023/07/30 10:12
爽やかさとほろ苦さ
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聡明な主人公ピップを応援せずにはいられない。事件の真相は手放しに喜べるものではないハードさだが、ピップたちのフェアネスの勝利という爽やかさも感じさせ稀有な読了感が得られる。ミステリーとしても手堅い面白さ。
名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件
2022/12/30 18:03
多重解決ものとしても探偵ドラマとしても秀逸
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
カルト宗教の信仰が推理に影響を及ぼすというアイデアがまず素晴らしく、それを緻密に書ききった筆力も素晴らしい。「探偵は加害者になりうる」という命題がエピローグに効いている構成の巧さにも感心した。今年の本格ミステリの大収穫。
居心地の悪い部屋
2022/04/02 04:11
読み心地のいいアンソロジー
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明確な説明やわかりやすい起承転結がない作品が多く、読んでいて不安になったり何を読まされているのかと思う人もそれなりにいるだろうが、刺さる人には深く刺さりそう。それぞれの作家の別の作品も読んでみたくなった。
本にだって雄と雌があります
2022/02/20 16:45
アイデア倒れではない傑作
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本が交尾することで出版されていない幻の本が誕生するという突飛な発想がまず魅力的だが、それだけにとどまらない。ユーモア溢れる語り口、強烈な登場人物、幻想的な出来事の数々など、どれをとっても素晴らしく、本が好きなあらゆる人々に読んでほしい傑作。ドタバタコメディ、悲惨な戦争描写、ファンタジー、家族愛といった様々なものが詰まっていて作者の手数の多さに驚く。
失踪者
2021/08/03 05:35
絶望感
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第一章から不穏さが漂い、主人公が理不尽に居場所を追いやられていくさまに茫然としてしまう。悲しい気分のときに読むとなんだか落ち着く気がする。
浮遊霊ブラジル
2020/01/26 00:42
魅力的な軽薄さ
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本短編集は生や死をテーマとした作品がいくつか収録されているが、いずれも語り口が良い意味で軽薄で軽快に読ませる。後半4編(「地獄」「運命」「個性」「浮遊霊ブラジル」)を非常に楽しく読んだ。特に表題作は主人公のような状態になったら誰しもこんな感じなのではと思わされた。
供述によるとペレイラは…
2019/08/02 02:53
たましい
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モンテイロ・ロッシの言動にやや腹を立てながら読み進めたが、最後のペレイラの行動に鳥肌が立った。これはたましいの在り方の物語だ。
熱帯
2021/10/03 10:08
どこへ行くのか
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
読んでいる間どこへ連れていかれるのかわからない感覚がずっとあって期待と不安が半々くらいだった。投げやりな感じは否めないが、森見登美彦らしさは感じられてファンとしては楽しめた。『千一夜物語』を読みたくなる。
君のクイズ
2022/11/07 01:54
小川哲でよかった
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
小川哲が「競技クイズ」をテーマに書いてくれて良かったなと思った。競技クイズプレイヤーの思考や葛藤を丁寧に描いているが、ただ説明的なだけでなくエンタメ性も両立できている。これまで小川が書いてきた歴史空想小説と比べるとスケールは小さいが、綿密な取材と虚構の混ぜ具合はこれまでの作品の経験が活かされていると感じた。
