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bsさんのレビュー一覧

投稿者:bs

7 件中 1 件~ 7 件を表示

いのちをだいじに

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

事実上の前作『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』の出版時における裏話や、日常生活の中で感じた様々な事を、同レポと同じフォーマットでまとめたエッセイ。交換日記とあるが、連載における引きという体裁を、今回の自分から、次回(あるいは時期不詳の未来)の自分宛へのメッセージという形で締めくくっている。
先に注意を挙げておくと、作中には自傷行為がさらりと描かれている部分があるので(本人にとっては自然な事なのだろうが)、作者の精神的世界を理解しておく為、多少ショックを和らげる為にも、風俗レポを先に読んでおいた方が良い。また、同レポでは散々母親が嫌いと言っておきながら、その母親にすがってばかりの作者を不快に感じる読者も多かったと思うが、これに関する理由も説明されているので、読んでおいて事情を理解して欲しいと思う。
個人的に印象に残っているのが、『自立とは何でも一人でやることじゃない』という部分。自分も一時期1人暮らしをしていたが、一度だけこの言葉を痛感させられた出来事がある。ある時とある病気にかかってしまい、その時はどうにか自力で病院まで行ったのだが、診断の結果、一晩入院する事になる。その際、「誰か連絡出来る方はいますか?奥さんとか同居している方は?」と聞かれたのだが、身近に頼れる知り合いなどおらず、仕方なく両親の連絡先を告げた。しばらくして、ベッドで横たわる自分を心配そうに見つめる両親の姿がそこにあったのだが、その時自分の中にあったのは、「どうして来るんだよ、入院費位自分で払って復帰したかったのに。誰にも迷惑なんかかけたくなかったのに…」という悔しさだった。最近、1人暮らしの男性の孤独死の話をよく聞くが、こう言っては何だが、それでも彼らは、自分なんかよりは自立している方だと思う(ただ、頼れる人がおらず、その結果死に向かって一直線というだけで)。
結局自分は失業を機に、また前述の事もあって実家に引き戻されてしまい、もう二度と親から独り立ち出来ないんじゃないかという諦めの境地と共に生活している。だからこそ、二度と実家に引き戻される事の無いよう、作者にはそんな時に頼れるようなパートナーを見つけて欲しいと切に願う。
一方で気になるのは、連載の最初の部分は絵柄が安定しているのだが、後半になると、それが段々と崩れていくというか、精神的にも不安定になっているのが感じ取れるという事。当初は「罰が当たるのではないか」という強迫観念により酒が飲めなかった作者だったが、むしろ酒が無いと精神的な安定を保てなくなっているようで、作者は自身をネタにする為に、自身が耐えられない位に精神的に傷ついているのではないのだろうか?
風俗レポ出版時の裏話として、これを作者の家族やその周辺の人々に読んでもらった時の反応というのも載っているのだが、その中の父親の一言。最初読んだ時は、作者の暴走をなだめるものという印象を受けたが、作者のうつ病が完治していない事を考えると、そんな作者を気遣う父親からのの助言とも受け取れる。
風俗レポを読んで、作者が幸せになって欲しいと願った読者は多いと思うし、自分もその中の1人ではある。レポを通じて、自分がいかに苦しんできたかを打ち明けた作者と、その家族に今後どのような変化が表れるのか気になる所ではあるが、一方でこのまま連載を続けて大丈夫なんだろうかっていう不安がよぎる。漫画家は命を削ってでもマンガを描くという職業ではあるが、命を削り取っていくうちに、作者自身が消えて無くなってしまうのではないかという不安が。読者としても、注意深く作者を見守っていく必要があるだろう。

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紙の本全日本道路地図 3版

2021/12/31 22:09

地図から始まる知識の旅

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

書店に行けば必ず目にする道路地図の定番。競合となるミリオン道路地図の方は更新が停滞しているようで、書店でも見かけるのが難しく、事実上これ一択というのが現状のようである。

とりあえずこの一冊でオールマイティに使えるが、やはり1/200,000(北海道は1/300,000)という縮尺故に大分小さくなってしまい、その中にこれでもかという位大量の情報が詰め込まれているので、視認性の悪さもまた随一。桜や紅葉の名所はともかく、好景観道路みたいなのって需要あるのかなあと思いつつも、この地図自体相当長い歴史があって捨てるに捨てられないのだろう。
主要でない交差点名や駅名はほぼ省略され、ドライブにおけるルート選択はかなり大雑把なものになってしまう事は否めない。自分の場合折りたたみ自転車で出かける事が多いので、交差点の曲がる場所を間違えた時なんかは、かなり精神的ダメージが大きい。まあやっぱりこの辺りは、ズームイン・ズームアウトが自由自在なカーナビやGoogleマップの方に軍配が上がるのは仕方のない事だが、Googleマップはかなり拡大しないと交差点名が出てこないのに対し、この道路地図は広い範囲を見渡した状態で、主要な交差点名の確認が出来るという点では一日の長があるかも知れない。

では今時この道路地図を購入する意義というのは一体何だろうか。自分は小さい頃から道路地図が好きで、当然自分で車を運転する事など出来ないにも関わらず、自分用の道路地図を購入していたりして、何となく地図を開いてはパラパラとページをめくり、たまたま出てきた観光地等のシンボルを見つけては、その見知らぬ土地に思いを馳せるという事をよくやっていた。
一例を挙げると、仙台市のページを開いた際、宮城県と山形県の県境の辺りに、『最上カゴ』『仙台カゴ』という、山でも岳でも峰でもない、少なくとも自分の中では聞いた事の無い呼び方の場所が存在する事が確認出来る(Googleマップだとかなり拡大しないと出てこない為、直接その名前を入力しない限りその存在を認知するのは難しい)。そこから「カゴって何?」と調べてみると、どうやらカゴ=加護を意味する、山伏達の修験場の事を指す言葉らしいのだが、更にそこからカゴというキーワードで調べていくと、その修験場の島があるから『カゴ島(鹿児島)』(うろ覚えなので本当かどうかは各自で調べて欲しい)・・・と、果てしない知識の旅に出かけてしまう事もしばしば。
一方Googleマップは、経路検索機能やリアルタイムでの混雑状況の表示といった分野では、隙が無い位に便利過ぎるのだが、敢えて全く関係の無い場所をランダムで表示するという機能は標準で搭載されておらず(外部サイトだとストリートビューで色々と飛べるようだが、試してみたら海の中に飛ばされた)、そういうようなアナログなニーズに応えてくれそうにないのが味気なく感じる。Googleマップは旅先でのナビゲーションとして、道路地図は旅先よりも家の中で余裕のある時なんかに、知識の扉を開く為の読み物として使い分けるというのも一つの道ではないだろうか。

版を重ねる毎に、新しい道路が開通したり、それまで繋がっていなかった道路がいつの間にか繋がっていたりという発見があるが、一方で鉄道の方はどんどん廃線に追い込まれていき辿れなくなってしまうのが寂しく感じられる。他にも市町村合併により消えていった市町村名とか、そういった過去の記憶を留めておく為の書というのも意義の一つかも知れない(Googleマップもストリートビューみたいに過去の地図を見返せる機能があれば良いんだけどなあ)。

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電子書籍おりたたみ自転車はじめました

2021/12/31 22:00

案ずるより乗るが易し

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ふとしたきっかけで折りたたみ自転車を手にする事になった作者が、その折りたたみ自転車と共に様々な所を旅するというコミックエッセイ。最初は近所のベーカリー巡りから、次に輪行(折りたたみ自転車を列車に積み込んで持ち運び、旅先で組み立てて走る)と徐々にステップアップしていき、写真を交えつつ、原色鮮やかでかわいらしいイラストと共に旅の様子を紹介してくれる。
その行先の中で特に目を引いたのが、東京都北区の十条・赤羽、そこからちょっと足を伸ばした所にある荒川河川敷で、かつて自分が一人暮らししていた赤羽周辺が二つも紹介されているというのはとても嬉しく、他の人から見るとこんなに魅力的な所だったんだと再認識させられた。

各章の最後には、実際に自転車で走行したルートを示した地図と、どんな服装で行ったか、カバンの中にどんな物を入れて持って行ったかというのが記されており、自分も行ってみようという読者への配慮がなされている。自分の場合は割と着の身着のまま、カバンの中に『マックスマップル 全日本道路地図』を放り込み、カメラは旅先で写ルンですを現地調達(まだスマホはおろかデジカメすら無い時代)という感じだったので、持って行くものをこれだけきちんと揃えているというのは、作者は女性なのでその辺りの気遣いがあるとは言え、何だか新鮮に感じられた。
章間には折りたたみ自転車の基礎知識や、具体的な輪行の方法等が紹介されているが、実際に必要な知識のうち、ここで挙げられているものは感覚的に半分位だろうか(補足するならば、自転車を持ち運ぶ際、ペダルの位置が悪いと足に当たって歩きにくいので、袋の中でぐるっと回してペダルが当たらないように調整しておくと良いとか)。自転車を運ぶ時の重さには慣れるしかないというのは同意だが、試しに10kgの米袋を紐を使って肩にかけてみて、どれ位重いのか感覚をつかんでおくと良いと思う。あくまで初心者向けに書かれた本であり、あまり多くの事を書き過ぎると、かえって読者を混乱させるだけなので、この方向性は悪くはないと思う。ここに書かれている事を足掛かりにして、もう半分は自分自身で経験として積み上げていこう。

最後の章は、言わずと知れたサイクリストの聖地、瀬戸内しまなみ海道なのだが、通常は広島県尾道市から渡り始める所を、作者は反対側の愛媛県今治市から渡り始めており、自分も最初に走った時は今治側からだったので、前述の赤羽周辺の事といい、お前は俺か!と叫ばずにはいられなかった。自分がしまなみ海道を走ったのはもう20年以上も前、前述の通りスマホが無い時代で割とぶっつけ本番の旅だったのに対し、作者は事前に行きたい店をチェックした上で、効率よく回れるルートを構築したりと、旅先での行動プランを綿密に立てており、GPSのおかげで目的地が分かりやすくなった事も含め、スマホがあるだけでこんなにも旅の様相が変わるものなのかと、時代の変化を感じさせられた。
一方で変わらないものもある。今治市の旭方バス停近くの公民館の所で休憩を取っていた所、そこに集まっていた婦人の皆さんから、つきたての草餅を分けてもらった事がある。それが忘れられない思い出になりそうな気がして、皆さんの写真を撮らせてもらい、今もまだその時の写真が手元に残っている。作中の作者が出会った人たちの優しさが羨ましいなあと思う一方、自分だってこんな素敵な出会いがあったんだぞと、作者に自慢したくもなる。旅の楽しさや思い出は、いつの時代も人それぞれ、千差万別。この本を手に取った貴方も、ページの続きを書き加えてくれる存在になってくれる事を願う。

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恋愛を題材とした、ハイティーン向けのファンタジー童話

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Twitter上で現在も精鋭更新中であるラブコメの単行本化。基本4ページ単位で話が進んでいき、その中で話が完結するのでテンポよく読めるが、連続して読んでしまうと、あまりの甘さに高血糖症を発症する事必至なので、ブラックコーヒー等の苦い飲料を片手に読む事が推奨されている。単行本には第一話の前日譚も収録されている。

晴れて恋人同士になれた西谷君と東さんは、映画を観に行ったり、クリスマスプレゼントを交換したり、慣れない愛のささやきをさえずってみるものの、互いに真っ赤になってオーバーヒートしたりと、かつての恋愛の先駆者達が作った道を忠実に辿っていく。その道には恋の駆け引きも障壁も一切無く、二人の事を明るく、優しく照らしてくれる。恋愛マンガで散々使い古されたセリフやシチュエーションも、恋愛初心者の二人だからこそ許されるのを逆手にとって、恋愛のおいしい部分だけをギュッと凝縮した話作りになっている。
恋愛強者から見れば物足りないのかも知れないが、元々二人とも高校時代は異性に恵まれず、言わば恋愛の分野では落ちこぼれという事になる。昨今では小学校の算数の問題が解けない大学生というのが問題になっており、その遅れを取り戻す為の学び直しが課題になっているそうだが、これを読むと、恋愛にも同じ事が言えるのではないかと思えてくる。学問以上にノウハウに乏しく、学問のように習熟度を計るのが困難な恋愛の学び直しの為には、少なくとも大人の恋愛マナーを語るよりも、相手を敬う事の大切さみたいな基本的な事から教えていく方がよっぽど説得力がある。恋愛ブログによくある説教が全く心に響かないのは、子供の頃から異性と関わる経験を積めなかった事がトラウマになっており、大人になっても心が迷子のまま泣き続けている-本当に欲しいのはそれに対する精神的なケアなのに、それに気付いてくれないからなのだろう。その心の迷子を抱えている人ほど、このマンガは胸の中にじんわりと浸透していくと思う。
二人は大学生でありながら、子供目線でお互いを見つめ合い、自分達の素直な気持ちを明かし、ちょっと背伸びしてオトナの恋愛を味わってみたりする。この大学生という、もうすぐ成人する年齢である彼らが見せる最後の童心というのもひとつのポイントで、そのギャップもまた読者を引き付けているのだろう。
これは、そんなハイティーンの為の、甘い夢だけをたっぷり詰め込んだファンタジー童話、とでも言うのだろうか(童話の定義が良く分からないが何となく)。やがてその童心を忘れて、何の変哲も無い大人になっていくのかと思うと、子供の成長を見守ってきた親にとっては、どこか寂しさを感じるのではないだろうか。

多くの読者は、砂糖のように甘い、恋というシロップの中に浸かっていたいというような感想を抱くだろうが、それ以上に自分はずっと胸の痛みが治まらなくなっている。大学時代にこのような恋愛が出来なかったという後悔もあるが、就職氷河期世代の一人としては、もし自分がそれ相応の年齢で結婚していたならば、恐らく今頃はこの位の年齢の息子か娘がいたのかも知れない-ページをめくる度に、自分はそんな彼らの未来を奪ってしまったんだという自責の念が通り過ぎていく。
唯一の救いは、この位の人口密度だったからこそ、二人は奇跡的に出会えたんだという事かも知れない。もし第三次ベビーブームが起きていたならば、多くの人混みの中で、西谷君は東さんを見つける事も出来ないまま、別々の人生を歩んでいたのだろう。二人が出会えた事を祝福出来るのだから、これで良かったんだと自分をなだめるのが、今は精一杯である。

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『オトナ』になりきれないまま、大人になってしまった人達へ

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今の時代、オトナの世界に飛び込むというのはハードルが高い。子供の頃、11PMのような深夜番組を親に内緒で観ていた人もいるだろうが、今はほぼ壊滅状態だ。その影響もあり、子供はともかく、大人と呼べる年齢に達した人達でさえ、オトナの世界に興味を持つ人の数も減少していった。『アダルトチルドレン』と呼ばれる現象も、こういった背景があるのだろうか。自分もまた、「無理にオトナになる必要なんて無いんだ」と、心の平静を装ってきたつもりだった。最も、飛び込むのは簡単な事だろうが、きっと自分はオトナの世界を自慢するだけのつまらない大人になってしまうだろう。
そんな中、とあるニュースサイトで知ったこの本。「…ヤバイ、これ絶対俺の心を抉(えぐ)りにくる悪魔の書だ。」平静を装っていたはずの自分の心がざわつき始めたが、本屋に駆け込むまでそう時間はかからなかった。ちょっとたじろぎながらもレジに渡す。「作者の方がずっと恥ずかしいんだ!自分が恥ずかしがってどうする!」オトナの世界に飛び込むというのはハードルが高い。

本書は、長年精神障害に悩まされてきた作者が、その原因について自己分析を行い、生きる為の力を取り戻していく物語である。形式上はレポートだが、作者自身の成長物語という印象が強い。ただ、レズビアン風俗指南書を期待するのはお門違いか。
作者はメンタルが弱いようで、実はものすごく強い。作者の行動は、猛スピードで走る車のようであり、左右の壁にぶつかりながら、段々と作者自身が壊れていってしまったように見える。一方、自分の場合は安全運転だが、それは自分のメンタルの弱さ故、精神的に壊れない範囲で行動しているからだと気付かされる。
ふと思い出したのが『エマニエル夫人』だ。ただ、あちらは性行為ばかり注目されてしまい、性を通じて自分自身を解放するという本来のテーマが理解され難かったのではないかと思う(自分も未だ良く分からない)。そのテーマを作者は自身の過去を絡め、思考の過程を丹念に提示していく。『フリーハグ』の目的は?自分を大切にするとは?この過程が描かれる前半の部分を、自分は何度も読み返し、感嘆の声を上げた。もうこの前半の部分だけで十分とも思った。

そして後半の体験談であるが、ちょっと寸止め感。作者はこの分野において素人なのだから仕方無い。ただ、自分は深く心を抉られる事を覚悟していたが、結果的に致命傷にならずに済んだ。
最終的に自立した女性になった(と思った)エマニエルと比べれば、作者はちっぽけな芽でしかない。それでも芽が出る土壌を作り、種を蒔いた。初めて太陽の光を浴びた時の作者の表情はどんなものだったか、是非本書を手にとって見て欲しい。
多くの読者は作者の幸せを願うだろう。だが、今の作者はそんな必要も無い位幸せだ。そのちっぽけな芽を見つけ、水をやってくれるのだから。これは作者が始めの一歩を踏み出す、いつか大輪の花を咲かせる未来へと続く、作者の物語なのだ。
基本的に1ページ4コマ固定だが、時折2コマ大の大きさの表現が見られる。そして後日譚の最後のページには、丸1ページで作者が歩みだす姿が描かれる。それは間違いなく、作者自身の欲求の増大がもたらしたものだ。いずれ作者は、見開き2ページで自分自身の欲求を描くだろう-その日が来る事を願ってやまない。

ただ、その作者の後ろ姿を見ると、少しだけ傷つけられた自分の胸がまだ痛む。ふと振り返ると、未だ“知らない”側にいる自分の足元で、作者に置いて行かれた『もう1人の自分』が、1人淋しく泣いているような気がした。「お願い…1人にしないで…」と言いながら。

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子供と向き合う大人達の生き様

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コロコロアニキ-小学生男子が対象のコロコロ本誌に対し、それよりも上の年齢層を対象とした漫画誌。漫画のフォーマット自体はコロコロのそれを踏襲しているが、小学生には理解が難しいであろう『オトナの事情』が入っている事、子供にはふさわしくない表現が含まれる事、そしてメインターゲットが、かつてのコロコロの熱気を知っている、当時小学生だった元読者-という点で、コロコロ卒業生向けのコロコロコミックという事になっている。
本書は、『つるピカハゲ丸』等で有名なのむらしんぼ先生が、コロコロ創刊当初からの様々なエピソードや、『ゲームセンターあらし』等のコロコロを代表する漫画の誕生秘話等を、自身の経験も交えながら振り返るというもの。漫画家の自叙伝としては、既に藤子不二雄の『まんが道』があり、その二番煎じとも取られかねないが、コロコロ自体も相当な歴史の重みを持っており、ありがちな企画と一蹴する訳にはいかないだろう(それどころか作中にはその藤子・F・不二雄先生と話した時のエピソードというのもある)。ストーリーの語り方も、若干説明口調は入っているが、基本的にコロコロのフォーマットを踏襲しており、コロコロらしい熱さというのが伝わってくる。
全体を通してつくづく感じるのは、「あの頃の大人達は、こんなにも真剣に子供達と向き合っていたんだなあ」という事。当時でさえ、漫画の対象年齢が段々と上がっていき、子供向けの漫画が廃れていく傾向にあったが、少子化と言われる昨今の子供達の軽視ぶりを目の当たりにすると、あの頃の子供達がいかに恵まれていたかという事を痛感する。
そして多彩なキャラクター。漫画家としては当たり前の事ではあるが、しんぼ先生本人はもちろんの事、千葉編集長、編集担当の平山氏、その他にも多くの漫画家が出てくるのだが、その本人の特徴が良く分かるような造形も含めて、「よくこれだけのキャラクターを作り出せるなあ」としきりに感心する。
また、過去のエピソードと平行して、しんぼ先生自身の現況というのも描かれている。前々から離婚したとか、借金を抱えているという噂はあったようだが、その様子がコミカルに描かれており、悲壮感よりもネタ感の方が強い(実話のはずなんだけどね…)。借金返済の為にこの単行本が売れて欲しいとか、漫画の為なら自身もネタにするというプロ根性を褒めるべきか。
ただ、一通り読んだ後、冷静になって出てきた感想は、「…そりゃカミさんに逃げられて当然だわ。」

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5年ぶりの再会

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『片思いの春川さんに告白するつもりが、手違いで学年成績トップの冬月水菜と付き合う事になってしまった…?主人公の夏目君が散々振り回される展開かと思いきや、慣れない恋愛について試行錯誤する、冬月さんの初々しさに胸キュン。』

基本的には4コマ形式の軽いノリで進行していくが、各話の最後だけ通常のコマ割りの形式となり、時にはセンチメンタルに、時には次回を期待させるような感じで締めくくられ、このギャップが一般的な4コママンガと一線を画す。通常のストーリー進行の部分だけ見ていると物足りなさを感じるかも知れないが、それだけに締めくくりの部分は、第1話の場合、思わず胸キュンという言葉を持ち出してしまう程に意表を突かれる。

個人的な思い出話になるが、元々このマンガは、同人誌即売会『コミティア』にて頒布されていたもの。自分は同即売会が主催する読書会で、『ぼくたちつきあってます…?』(本書の第1話)を読み、上記のような感想と共に、推したいマンガとして一票を投じた。結果、同誌はコミティアにおいて人気上位となり、自分が提出した感想と共に紹介された。
そこまでは良かったのだが、これによって人気が出てしまった事が災いし、自分がコミティアの会場に着いた時には既に売り切れという状態が続いた。2(第2話)は何とか手に入れられたが、読書会で読んだ1の方はとうとう最後まで手に入れる事が出来ず、自分にとって幻の1冊となってしまった。仮に自分が感想を提出しなかったところで、代わりに他の人の感想が紹介されただけだったのかも知れないが、「あの時感想なんか書かなければ良かったのに…。」と、自分の行いを悔やんだ。

だが、楽しみというのは、今我慢すれば後で大きくなって帰って来るもの。当時の事をすっかり忘れていたある日、隣町の本屋で運命的な再会を果たす事となる。実際にはマンガごっちゃ・現在連載中のサンデーうぇぶりと、Webコミックとして多くの人の目に触れる機会というのは何回かあったようなのだが、このような紙の本という形で再会する日が来ようとは、夢にも思っていなかった。
「…そっか、あの時感想を書いたから、今こうして棚に並んでいるんだ。」
何はともあれ、5年ぶりに手に入れる事が出来た第1話。この喜びを独り占めするのではなく、皆さんにもおすそ分けしたい。

ちなみに、元々同人誌だったという事は後書きでも触れられており、修正も加えられているという。同人誌版と比較してみると、主に振り仮名が付いた事と、当初1の春川さんの頭にはアホ毛が無かったのだが、2からキャラリニューアルに伴って加えられ、連載時に第1話もこれに合わせる形で修正されたようだ。

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