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ぶんチャンさんのレビュー一覧

投稿者:ぶんチャン

10 件中 1 件~ 10 件を表示

紙の本宮沢賢治 存在の祭りの中へ

2016/10/05 20:32

窓の中から窓の外にいる自分をみつけてしまうような感覚

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もしかすると本当はどこにもいないのかもしれないという感覚であるのかもしれない。
 
 “現在あるものが・・・、すきとおることで、詩人の感官の外に置き去られていく”のではなく、“詩人の感官がすきとおることで、詩人が詩人の外部にあるものから置き去りにされる”感覚により近いのではないかと思う。
 また、化石が賢治にとって重要であったのは、それがもう既にその本質的な部分を失い、冷たく無機質なものであり、それは賢治に遠い時間を感じさせ、自分は決してその実体に触れることのできないという現実を思い知らさせるから、という一面もあったのではないだろうか。
 そして賢治は隣にいるユリアとペムペルを、覚醒した夢の中で実際に見てしまったのであり、賢治にとってそれらの全ては見間違いようのない現実であり、実感として知覚する世界に対する違和感そのものだったのだと思う。
 さらに副題の「存在の祭りの中へ」が意味するものが何なのかは理解できなかったのですが、賢治の本質から言って多分、祭りの中には居ることはできず、そこから遠い場所に一人ぽつねんと佇み、祭りの終わった後にしか帰ることができなかったのではないでしょうか。
 
 「出現罪」であるとか「消滅刑」というような、見慣れない用語が使われている点などを含めて、高校生が読むには少し難しい印象を受ける。
 
 引用は詳細で本文の中に多用されている。一度全てを読みとおした後、さらにもう一度、著者の記述の部分だけを読んでみるとより理解しやすいと思います。

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全体主義と民主主義を比較しながら人間がその本質として有する悪と善に関する論考

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言語学者としての緻密な論理的言説によって、20世紀が有した極めて広範で多様な問題を扱い明晰に論じている。その中で、民主主義の有する様々な理論的・現実的弊害についても議論しながら、全体主義の目撃者である次の6人の活動、ならびに彼らの作品の中で扱われた悪と善に関する考察を解釈し記録している。

    ワシーリー・グロスマン、マルガレーテ・ブーバー=ノイマン、ダヴィッド・ルーセ、プリーモ・レーヴィ、ロマン・ガリ、ジェルメーヌ・ティヨン
 
 彼らはいづれもユダヤ人としての故なき迫害(ソビエトとナチスの強制収容所への収容も含まれる)を被りながら、人間が悪を実現する存在であることを“正しく”認識し、それと同時に、 “人間は素朴な意味における善を行い、それを具体的かつ個人的アイデンティティにおいて受け入れ、人間であることを行動の究極の目的として、他者を愛おしむものである”と捉えた。

 そして我々がなすべきことは、“人間は限りない悪と限りない善の間のグラデーションである”ことの意味の本質を、多くの事実に基づいて認識し記憶し続けることであり、それによって他者との関係性において、またわれわれ自身の中において、善へと誘惑され導かれ、 “20世紀に生まれた全体主義という悪に蹂躙された過去は記憶しなければならず、それにより善とは何かを認識し、善を実行することの重要性が導かれていく”とする。

 本の構成は次の通り。
   「プロローグ―世紀末」、「1 世紀病」、「ワシーリー・グロスマンの世紀」、「2 比較」、「マルガレーテ・ブーバー=ノイマンの世紀」、「3 過去の保存」、「ダヴィッド・ルーセの世紀」、「4 記憶の用法」、「プリーモ・レーヴィの世紀」、「5 現在における過去」、「ロマン・ガリの世紀」、「6 民主主義の危機」、「ジェルメーヌ・ティヨンの世紀」、「エピローグ―世紀の始まり」

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紙の本幽霊の書

2016/08/09 21:03

ジャン・レイによる9つの幽霊話

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最初に「序について」の中で筆者がこの短編集を書いた事情が書かれていて、全て実際にジャン・レイ自身が経験したり、あるいは直接聞いた話とのことです。
 以下題名と簡単なご紹介をします。

「私の幽霊(赤いスカーフの男)」
  ジャン・レイが見た幽霊。危害を加えようとして出てきたのではないらしく、なんのためにわざわざでてきたかは不明。
「売家」
  とある鬼神学者から聞いた幽霊屋敷の話。
「シュークルート」
  別にシュークルートが恐ろしいわけではなく、出てくる場所が恐ろしいのです。ちなみにシュークルートはキャベツ料理の一種です(ネタバレ?)。
「ベントンヴィルの夜」
  ユダヤ人の行商が置き去りにした緑色の薬酒を飲んだ男の運命。ちなみに余談ですが、ヨーロッパの薬酒はアルコール度数がやたらと高かったり、昔は危ない薬草の入ったものがあったり、現在でも修道院系のリキュールの中には製法秘伝のものがあったりと、幽霊と同じで怖いですが心惹かれます。
「マーシャル・グローブの話」
  作者も言っているようにあまりに冗長で読むには若干の忍耐が必要。
「ティモシュース叔父の真相」
  叔父さんは死神だった。その叔父さんの指導を受けている私=ディック。どうも話の繋がりが断片的すぎて、さすがにこれはフィクションらしい。
「ケーニッヒシュテインにおける夜のロンド」
  幽霊ではなくて悪魔の話。十三人目は悪魔だった。
「徒弟パスルゥ」
  ポリネシアの幽霊話。後半緊迫感があります。
「通り」
  ジャン・レイの体験も含まれるらしい。薄暗い通りの奥には何かがいる、といった雰囲気の話。

 最後に作者自身による「後日談」、訳者による詳細なあとがきとして「ジャン・レイについて」が書かれています。他の作品のあらすじも書かれていて面白いです。ジャン・レイは1964年まで生きたのですが、その生涯の詳細は専門家の間でもあまり知られていないらしく、海賊をやったり猛獣使いとして働いたり、結構波瀾万丈な人生だったようです。

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紙の本見知らぬ私

2016/08/09 20:43

8話のホラー・アンソロジー

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それぞれの題名と感想を簡単ですがご紹介します。
  「バースデー・プレゼント」
    心も体もバラバラになってしまうような感覚は味わえます。
  「会いたい」
    ここでラストに幽霊を登場させるのは安易かな?
  「雨が止むまで」
    二人称で語られていく展開は独特だが、若干冗長な感じがします。
  「陽炎」
    表現が力強い。ラストの描写は引き込まれていく。これは読む価値ありです。
  「トンネル」
    トンネルの中にある部屋には死んだはずの兄と姉が・・・そして自分も実は死んでいたらしい。不思議と癒されるのは何故?
  「幽霊屋敷」
    娘が死んで幽霊になってしまった父親の恐怖と悲しみ。
  「晩夏の台風」
    これが何故ホラーなのか良くわかりません。
  「水の中の放課後」
    これが何故ホラーなのか全くわかりません。

 メインテーマである「見知らぬ私」という雰囲気があるのは「バースデープレゼント」と「トンネル」だと思います。

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紙の本クービンの素描

2016/08/09 20:32

不安な絵・・・クービンの一般的な分類としては“象徴主義の後継者・表現主義の同志・シュールレアリスムの先駆者”

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・・・とされていますが、野村太郎氏の解説である「素描家アルフレート・クービン」にあるように、クービン自身は芸術の形式に捉われる事なく、芸術上のイズムに関しては無関心であり、自身の内面の声に従って制作する独立独歩の芸術家だったようです。

 またクービンによるエッセイなどによると、彼の制作の原点は子供時代に経験したある恐怖の体験にあり、それに由来する不安が、内的な衝動や存在の根幹を脅かす不条理な感覚となり、彼の素描が表象するものであったことは明らかです。
 
 解説の中では『対極』の紹介もされ、クービンが東西の神秘思想に近親性を持ち、白日夢的な不安感が、彼のモノクロームの表現に与えた影響も説明されています。

 素描は58点。その他に解説と最後の「作品解説」の中にも小さいですが20点を超える小説の挿絵、自画像、スケッチなどが載せられています。
 「作品解説」も詳しく、作品が制作された背景などにも触れられ、クービンの素描を見るだけでは分かりづらい意味についても解説されています。

  『双書 版画と素描』(岩崎美術出版社)の中の一冊です。クービンフアンの方以外にも、不安な絵、不思議な絵の好きな方にはお勧めです。

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紙の本物質の見る夢 詩集

2016/07/03 15:10

解離的で途方に暮れるような抒情

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扉にある「悔恨も憤怒もそして愛も苦しみもすべて 物質の見る儚い夢の組み合わせに過ぎない」という言葉で詩集が始まり、これが最後の詩である「鳥の影」の最後の二行を構成し、詩集を閉じることになります。

詩集は大きく「旅する男」、「あなたとわたしそしてわれわれ」、「影絵の中の街」、「物質の見る夢」、「鳥の影」の四つのテクストから成り、それぞれ二編から十六編の詩からできています。

自己と他者、此処と彼方、憧憬と諦念、現と夢などが多彩なパースペクティブな記述により語られ、それぞれの存在と意味が、分裂しながら重なり、ふたたび同質なものに還り、あるいは変性した異質なものとして立現われ、さらには異質なものを経ながらもなおも同質なものとして回帰せざるを得ないような、ディペイズメン的なアプローチによって解離的でシュールな心象風景が描き出されていると思います。

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若干厳密さに欠ける異形のエンサイクロペディア

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章立てとその中で紹介される異形は一部ですが次の通り。
・「第一章 光の住人たち」
  天使、分身、妖精、鬼火、ピグミー、etc
・「第二章 幻想動物たち」
  蛇、大蛇、クジラ、カニ、サメ、狼、狐、雌羊、雄山羊、黒猫、コウモリ、ヒキガエルとカエル、ネズミ、etc
・「第三章 闇の住人たち」
  巨人、ゴーレム、亡霊、死人、幽霊、死霊、骸骨、ミイラ、吸血鬼、ゾンビ、人狼、etc

著者は日本ではあまり知られていませんが、フランスでは2006年のファンタジー系の祭典『レ・ジマジナル』(詳細は不明)においてイマジナル賞・特別賞などに輝き、高い評価を得ているそうです。

表紙はハードカバーの大型版で分厚く、また紙にわざとしみを付けて古さを演出し、項目は250以上、図版も100以上とボリュームもあります。ただし解説は深いとは言えず、それとともに重要な要素である異形たちの図版が残念ながら重厚さに欠けている印象を受けます。また、版画や図の一部は画家名、題名などのキャプションが付けられていますが、それ以外のものが全てオリジナルなものとは思えず、出典を明記すべきものも多いのではないかと思います。

引用文献はありませんが参考文献は多数載せられています。
解説のレベルは、良くご存じの異形を二~三読まれるとすぐにお分かり頂けると思います。編集レベルで気付くべき誤植も何ヶ所かあります。

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紙の本石の幻影 短編集

2016/06/29 20:08

カフカ的不条理

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『タータール人の砂漠』で知られるブッツァーティによる短編集です。

表題作の「石の幻影」・・・自分を裏切り続けて死んだ妻を再生した男。愛してもいなかった夫に再生されてしまった女。そして再生された女の体は石だった。

中編としては若干冗長な印象を受けます。いっそのこと三十六軍にたどり着くまでの話だけで終わらせれば、カフカへのオマージュとして完成度の高い作品になったのではないかと思います。

あるいは、“愛してもいなかった夫に再生されてしまった女と騙され続けた妻を再生してしまった男それぞれの苦しみ”と“その二人を傍観する観察者としての誰なのか分からない私の視線”といった三つのエピソードに分けて、最後に捩れた三本の糸を一本に手繰り寄せるような展開にすれば、よりドラマチックに引き締まった気もするのですが。

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大陸別に199ヵ国を概観したもの

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世界に国の数がいくつあるかは様々な見解があるようですが、本書では199ヵ国(実際には200の国が載せられている)について、歴史・地理・産業・政治・民族など、加えてトリビア的なものまで最新の情報が載せられています。

編著者である「世界情勢を読む会」とは“混沌とする世界情勢を研究するために集った編集者・ライター集団”なのだそうです。

国あるいは地域の地図が少し色が薄くて見づらいのが気になることと、アイウエオ順の国の索引があればより親切だったと思います。

付録の「統計資料編」として「インターネット自由度国別ランキング」・「世界主要国の貧困率ランキング」・「世界主要国の失業率ランキング」など44の資料が載せられていて参考になります。

キャッチコピーにある「地理情報辞典」的に読めば楽しいと思います。

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自然保護を優先するためにナチスにすり寄ったドイツの自然保護主義者たちについて

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原著は「The Green and the Brown」(2006年)
  “緑”と“茶”が意図するものは明らかですが、それは「赤と黒」のように対立するものではなく、互いに多くの信念を共有し広範囲に協働し、“緑”は多くの点において“茶”であり、説明が不可能なほどの複雑なイデオロギーと個人の欲望が寄せ集められ、それがさらに全体主義へと結びついた過程が説明されています。また第二次世界大戦以降は、自然保護運動がナチスにすり寄った過去を無視し、無反省に見過ごししようとした事実も述べられています。

 ナチスが政権の人気取りのためには、自分たちの理念とは異なる言葉や概念さえも利用することに非常に長け、またナチス時代の環境主義者たちは自分たちの主張を通すために程度としては様々ではあるとしてもナチスに近づき、その大多数はナチスの権威に対して協力し、意見の相違する点については口を噤みました。そうした両者が代表する普遍的な危険性に対して警告した書でもあると言えます。

 事例について理解をすすめるために、図版がもう少し多くあっても良かったのではないかと思います。
 ただし多数の文献を詳細に繙き、例外的な記述も紹介しながら偏ることなく客観的に解説しています。また「用語について」という項目を設けて、本書がドイツ人の著者が英語で書いたものであり、ナチス時代のドイツ語を英語に翻訳する際の困難さを具体例を挙げながら説明しています。訳注も詳しく丁寧です。著者の批判的で冷静な視線は特に好感が持てます。

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