コークさんのレビュー一覧
投稿者:コーク
2016/12/23 01:57
複雑怪奇な大乱の全貌
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教科書には必ず載っているが、詳しくその内容を説明できる人はほとんどいない応仁の乱の姿を描いた良書。
利害関係が調整できずにズルズルと長引く戦乱に、将軍として意外にもその役割を果たそうとする足利義政などストーリー性のある内容だった。
2019/01/20 18:21
オスマン帝国通史の決定版
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オスマン帝国600年の通史が300頁ほどの新書に収めるという筆者の力技に圧倒されつつ楽しく読んだ。
個人的には「近代」が押し寄せる中で、既存の体制をいかに変革し対応していこうとしたのか、その過程が非常に興味深かった。イスラムと「西洋」とを融合しそれなりに運営していたにも関わらず、戦争の荒波の中で脆くも崩れ去った大帝国の最期はあまりにもあっけない。
2019/01/20 18:19
近隣諸国を冷静に見つめるために
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世界の趨勢の中に日本・清・朝鮮の微妙な関係を位置づけ、「近代」でいかに変容していたかマクロな視点から描き出す。絶妙な勢力均衡状態により安定した「属国自主」が国際環境の変化とともに、清・朝鮮双方から再検討し両者の齟齬が明らかになっていく過程は非常にスリリングだった。
それにしてもカーゾンの不気味な”予言”がその後の歴史を見事に言い当てているのは流石としか言いようがない。
こうした外交官を持っていたからこその「イギリス帝国」だったのだろう。
紙の本占領期 首相たちの新日本
2017/06/19 15:40
大河ドラマ顔負けの人間模様
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戦後の首相5人にスポットを当て、各人の人間的な側面から政治史的な評価まで横断的に論じているが、それらがまた肩肘を張らないスタイルで記されているのが良かった。
2017/06/19 15:36
明治維新の精神史的状況
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明治維新がなぜ「成功」したのかという問いは多くの歴史家によって論じられている。本書はそうした問いへの一つの回答であるが、それらを近世知識人の著作から読み解く点に特色がある。
2017/03/30 23:18
藩閥でもなく民権でもない第三の道
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谷干城や近衛篤麿と聞くと保守的なイメージが強いがそうしたイメージを覆してくれる一冊。
「国民主義」の下に選挙権を有さない農民や半ば植民地状態であった沖縄の人々を包摂し弱者を見捨てることのなかった彼ら国民主義派を、現代の所謂「保守」にも是非学んでもらいたい。
2017/02/28 10:07
ロシアを考えるための必読書
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上下二段組みで500頁近くある大著だが、刺激的な論考で読者を飽きさせない。
プーチンを6つのペルソナから構成されているとし、それらがどう形成されどう大統領職に活かされているのか、圧巻の著述であった。
紙の本夏目漱石
2016/12/23 01:53
こういうのが読みたかった
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岩波文庫『漱石追想』の編者でもある著者による漱石評伝の決定版。
漱石の人生や作品を過不足なく紹介し、漱石ファンにはたまらない一冊だろう。
2016/10/17 21:39
日本ファシズム論を超えて
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おそらく戦前の政治史を考える際に基礎的な文献の一つとして挙げられる本書であるが、この本の魅力はかつて歴史学界で主流であった「日本ファシズム論」を史料を用い実証的に否定したことであろう。
恐ろしいことに30年以上前の書でありながら未だ内容は古びておらず学術的な評価にも十分耐えられる本書が復刊されたことは、素直に嬉しいものである。
2016/09/11 03:29
庶民に寄り添う姿
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従来、国粋主義的な側面ばかりが強調されていた平田篤胤の思想であるが、この本はその平田の思想家としての別の側面にも焦点をあてている。
それは庶民の生活に根差した神の世界を描き出し、人間と神との距離を急速に縮める世界観であった。
紙の本安保論争
2016/08/21 03:31
議論の基礎を築くために
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文章の節々に細谷先生の憤懣やる方ない感情が滲み出ているこの本は、安全保障を議論する際に抑えておきたい論点が散りばめられている。
紙の本分裂から天下統一へ
2016/08/14 10:30
世界の中の日本という視点
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村井先生の専門分野である中世の対外交流史を中心とした叙述であり、手軽に読める戦国時代の通史としては異色に存在であると言えるだろう。
日本・中国という領域を意識せず活動する倭冦の姿は、近世以降顕在化する国家のそれとはまた異なった興味深い事実を知ることができる。
2019/05/02 00:38
特異な立憲君主
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ベルギー王国の建国から「国王」に焦点を当てその個性と「国家」の来歴が語られる。卓越したバランス感覚で国際政治の荒波から小国ベルギーを守ったレオポルド1世、ベルギーの平和を願うあまり過度な中立政策に固執し、結果的にその地位を追われることとなったレオポルド3世等多彩な個性が国家の歴史を彩る。驚きなのは立憲君主でありながら極めて能動的に政治に介入し危機を打開しているというその政治性。王室がフランデレンとワロンという「二つの国家」とも言える地域を「ベルギー」として統一するには不可欠な政治的機関らしい。
2019/05/02 00:37
イギリス政治を考える手引き
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現在手軽に読めるもので最も内容の充実したイギリス政治入門の本だと思う。本来同じ方向を向いていたはずの各制度が、バラバラになり機能不全が更なる危機を生み出す負のスパイラルに事の深刻さが窺える。国会・地域議会・欧州議会で各々選挙制度が違うことが国会の小選挙区制で多党化を招いているという議論は新鮮だった上に、日本の現状を見ても思い当たる節が多々あった。まだまだイギリス政治は「学ぶ」対象(著者と同意見だが)ではないだろうか。
紙の本征夷大将軍・護良親王
2019/02/28 01:57
コンパクトながら濃密な評伝
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100頁に満たない一冊だが濃密かつ刺激的で面白く読んだ。
激動の護良親王の生涯を最新の研究成果を盛り込みつつ、一人の人間としての護良親王の姿を描いている。
足利尊氏に嫉妬して讒言やテロ攻撃を企て建武政権の不安定要因と化す姿は悲劇的だった。
息子も結局南朝の反主流派として暴れまわっているので、現代政治に見られる「反エスタブリッシュメント」っぽい雰囲気もあるような。