kinyaさんのレビュー一覧
投稿者:kinya
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勝率2割の仕事論 ヒットは「臆病」から生まれる
2016/08/10 12:32
若き広告クリエイターへの挑戦状
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元電通の敏腕クリエイティブ4人衆が独立して立ち上げた、17年間ずっと飛ぶ鳥を落とし続けてきたクリエイティブエージェンシーTUGBOATの総大将 岡康道は「競合プレゼンの勝率2割だ」と語る。
「なぜ、負けるのか?」
TUGBOATの広告作りポリシーが敗北に次ぐ敗北を呼ぶそうな。商品と人々の関係性を捉え直して訴求するべき本質的なものを見つける。そして、そこにフォーカスしたクリエイティブを作る、その手順に従えば、結果的にクライアントのオリエンと全く異なる内容になることも度々。たいてい「そんなこと、頼んでましたっけ」という反応が…。その一方で、2割くらいの確率で「おもしろい!」と言ってくれるクライアントと出会う。その2割に賭けて仕事をしていると。確かに広告作りには、クライアントの度量にかかる部分が大きい。企画をイエスと言わない限り、アイデアは陽の目を見ない。「クライアントと共謀」と言えるぐらいの関係の構築出来上がれば、企画は俄然面白さを増す。この共謀とは、これから始まる広告が世間に衝撃をもって迎えられることをワクワクしながら一緒に待っている関係と喝破する。膝を叩いて大いに納得。
250頁を通じて、これまで広告マンとしての歩み、広告ビジネスの現場、広告表現術、広告業界へ目指す若い人への檄、アイデアの引き出しの作り方、メガエージェンシーへの挑戦状…といったいろんな側面が饒舌に真摯に語られている。
仕事を次世代に引き継ぐとかバトンを渡すなんて、そんな使命感は糞食らえ!拡大の一途をたどるシルバーマーケットの広告作りの担い手は若手ではなくベテランであり、企画の跳躍力は年齢とは関係ない!と50代後半のCMプランナー岡康道はますます意気軒高に語り、咆哮する。大いに元気と勇気をもらえた本。
鳩の撃退法 上
2018/02/28 11:15
あらためて凄い作家だ、佐藤正午
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かつては直木賞も受賞したと噂される40代の小説家 津田伸一が主人公。不倫など数々の不祥事を起こし、地方都市にてデリヘルの運転手で糊口を凌いでいる。ある大雪の夜、ドーナツ店で出会った男と会話を交わす。翌日、男は妻子と共に忽然と姿を消す。その1年2ヶ月後、親しくしていた古書店店主から形見のキャリーバッグが津田の元へ届けられる。中身は数冊の絵本と古本のピーターパンと3,403万円の現金。ところがその中に偽札が含まれていたことが判明。「神隠し」と「偽札」。この2つの事件をモチーフに再び小説の執筆をはじめた津田。以来、彼の周辺で次々と事件 が起こり、裏組織から逃れ、東京中野へ高飛び。バーテン見習いをしながら、Macbookに向かう津田。やがて自身がその小説の最重要人物になっていることに気づく。騒動の核心と小説が重なり、過去と現実と虚実が行きつ戻りつしながら、その境界が徐々に決壊していく。あるひとつの行為が、巡り巡って事件を引き起こし、それに連なる人間を次々と結びはじめ緩慢な円環を成していることに気づかされ、物語は終結に突き進んでいく。
読者は作中の出来事=実は主人公であり小説家の津田が描いたものだったという、所謂「メタフィクション」の手法で、本書が紡ぎだされていく過程と事の成り行きを同時進行で読み進めていくことになり、読者側も次第にすっかり惑わされていくという奇妙な読書体験を味わえる。
複雑かつ巧緻な構成、スリリングな展開、随所に張り巡らせた伏線、鮮やかな回収、クスッと思わず笑ってしまうユーモアの妙…にぐいぐいと引き込まれ上下巻千頁超の大作なのに、あっという間に読まされ、読後感はしばらく陶然状態が続いている。
向田邦子との二十年
2016/09/29 13:27
本まるごと一冊「亡き恋人にあてた恋文」
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脚本家 向田邦子と演出家 久世光彦の二十年にわたる交流を抑制の効いた筆致で、エピソードをつまびらかにしていく。「万年筆を何本もぶんどられた」といった軽妙なエピソードもあるが、多くのエピソードは枯葉色に変色し、そのひとつひとつに目を細め、愛しむようにして書かれたであろう随想記。一冊まるごと向田邦子へのオマージュであり、亡き恋人にあてた恋文の様でもある。向田邦子について語り、書かれた文章は多く存在するが、はたしてここまで描き切れる人はいるだろうか。深く愛した男はいただろうか。著者の心情が読む者の琴線に強く触れる好著。
シャトゥーン ヒグマの森
2016/08/10 12:38
食事しながら読むのは御法度です!
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極寒の北海道・天塩。冬眠に失敗し、飢えて凶暴化した350キロの巨大ヒグマが研究者たちが集まる小屋に襲いかかる。孤立無縁の状況下から抜け出すべく、知恵と策略を練るも…。ひとり、またひとりと餌食に。これまで読んだヒグマものの中でも、むごさ、えげつなさ、 えぐさは群を抜く。
冤罪 田中角栄とロッキード事件の真相
2016/09/29 13:21
ぐいぐい読ませる異色の田中角栄本
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田中角栄について語る時、「ロッキード事件」を抜きにして語ることはできない。本書はロッキード事件に焦点を当て、又、田中の金権体質についても自らの経験を率直に吐露しながら「親分 田中角栄」の無念さを代弁し、論理をもって無罪を世に問うた一冊。
◎「ロッキード事件」についての著者の見解
「日本政府の対潜哨戒機(P3C)調達に絡んだ日米両国に横たわる巨大な利権スキャンダルを揉み消すために田中角栄がスケープゴートにされたのでは?」。この仮説の検証をすべく、幾度も渡米を重ね公文書の収集・関係者への取材を積み重ね、その証拠固めに奔走する。この抜かりのない調査は気鋭のノンフィクション作家顔負けである。
◎「田中角栄ははめられたのか?」
事件の背景には、日本政府とP3C購入に暗躍する13名の灰色高官が存在し、この利権スキャンダルの発覚は日米の両政権を揺るがしかねない。その揉み消し工作の陣頭指揮を取ったのが国務長官キッシンジャー。田中政権になるや否や、中国との国交正常化、積極的な資源外交を行ない、陰で「デンジャラス・ジャップ」と罵り、田中の決断と実行力が癇に障っていたキッシンジャー。この大疑獄事件は田中を蹴落とす好機と捉え、ターゲットを田中角栄ひとりに絞る。そこで、民間旅客機トライスター購入に際して現総理大臣 田中角栄は5億円の賄賂を受け取ったという汚職事件にすり替える。
◎「四面楚歌の田中角栄」
この謀略を首相の三木武夫は脆弱な政権基盤の強化につながると考え、クリーン三木を標榜し、田中をターゲットに捜査を進めさせる。今太閤ブームは一気に去り、メディアは「反角」で世論を煽り、その世論を追い風に東京地検特捜部は、首魁を上げるべく「田中有罪ストーリー」を作り上げ、最高裁判所は賄賂を送った側の罪は問わないという、所謂「免責宣明」して証言をさせる…。北朝鮮ならいざ知らず、三権分立の国家がここまでするかと戦慄が走った。
◎「この謀略が事実だったとして」
政治家として<理想と志>を持ち、数多くの議員立法を成立させ、総理大臣へ。「これから我が国は米国追従から独自の道を!」の思いを胸に進みだした矢先に、アメリカに疎まれ収賄容疑を着せられ逮捕、刑事被告人へ。自派の勢力を拡大するも、子分の反乱にあい、酒に溺れ、病に倒れ、失意のうちに亡くなる。「今、田中角栄が生きていれば~」「稀代の政治家」の称賛の声をあの世でどう聞いているんだろう。田中角栄は深い虚しさの境地で聞いているにちがいない。
※巻末には、著者が記述した「政治家として考える ロッキード裁判に関する一考察」の論文は読み応えあり。「世論の状況を考えると公開したら逆に反発を受けかねない」と考え、田中角栄とその周辺の5名だけに密かに手渡した小冊子。B4判・53頁・10章で構成された論文は、ロッキード事件と裁判の問題点・疑問点を多角的かつ論理的まとめた「無罪ペーパー」。著者の親分に対する深い愛情が書かせた論考。
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