リリトさんのレビュー一覧
投稿者:リリト
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紙の本源氏姉妹
2017/05/03 09:32
つまらなくはない
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平安時代の読者には「あるある」「わかるわかる」という感じで読まれて人気があったんだろうな、という感じの『源氏物語』、風俗や状況は変わっても、女性の気持ちって現代とそんなに違っていませんよ、と、その登場人物たちを現代に引き寄せて見せてくれた一冊。恋愛ドラマが好きな読者なら、これのおかげで「あるある」「わかるわかる」が味わえるかもしれない。
才女の著者らしい本ですね、とはいえるが、自分はそういう種類の読書はあまり好きではないので、一度読んだら十分という感じしかしませんでした。
2017/05/03 09:25
マニアックな、あまりにマニアックな
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練馬区美術館はいつも「よくまあ」と呆れたくなるマニアックな展示をやらかすのだが、今回も足を運んで同じ印象だった。そのカタログ。会場では高くて二の足を踏んだが、とうとう買ってしまった。ナポレオン三世治下、大改造された現在のパリ、それ以前のパリの姿を、版画や地図で再現する試みで、展示室の説明プレートも詳細を究めたものの、頭の中に常に現在のパリの地図と、おおざっぱな近代年表くらいインプットされていないと、内容が追い切れない。つまり鹿島茂の著作をそのまま、壁に展示したようなものなので、サイズが縮小された絵や地図は魅力を減じてしまうが、説明については本でじっくり読む方が適切だろう。
もっとも魅力的な絵は、本書83ページに収録された石版画、ガス灯に照らされた夜の公園と円形のサーカス小屋で、小林清親の明治浮世絵を彷彿とさせる。かなりディープに、パリの歴史に興味のある人向けなので、誰にでもとはいえない。なにせマニアックだから。
紙の本ヴェネツィア
2017/05/02 12:11
美しすぎる1冊
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ヴェネツィアは好きな街だ。写真集もついつい手を伸ばしてしまう。素人写真ですらそれなりに見える。被写体がどこを撮っても美しいからだ。しかし、谷口ジローの画力がここまでとは思わなかった。
横長の画面が水平線に似合う。四通八達する迷路と運河をさまよっても、この街には閉塞感がない。周囲には静かなラグーナがひろびろと開けているからだ。ヴェネツィアの色、空気、匂いさえ感じられる。
あとがきに目を通して涙ぐみそうになった。作者は続編を考えていたらしい。なのに、彼はもういない。
2016/11/07 14:59
嘘はほんとより信じやすい
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早い話、ジュール・ミシュレと池田理代子が悪いのである。おかげでルイ16世はちびでデブでお人好しだけが取り柄の愚物だったと信じさせられてしまった。おまけにミシュレによれば包茎だと。それは全部嘘でしたよ、というのがこの本。しかし、どうしても身も蓋もない事実より、ドラマチックな嘘の方が印象に刻まれやすいんだなあ。
総領さんが描いた、実説ルイ16世はとってもかっこいい。マリー・アントアネットは可憐で魅力的。それで「さあ今後は?」と身を乗り出すのだが、マンガはふたりの結婚からほんの短い時期と、革命直前のスケッチのみで終わってしまう。この本を手にするまでは、まさかマンガがあの1冊だけで終わってしまうのだとは全然思わなかった。
マンガの方は絵の美しさ、緻密さに感嘆しながら、どうせなら彼らの最期まで書いて欲しかった、と思いながら読み終えた。こちらのメイキング本もつまらない本ではないが、前菜を食べた後メインはお品書きを見せられただけ、みたいな食い足りなさは残る。
2016/11/07 14:48
『不潔都市ロンドン』
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栄光のヴィクトリア朝時代のロンドン、大気汚染がひどかったとは知っていたが、ロンドンの汚さはそんなものじゃなかった。馬糞と舗装の石のくずでどろどろになった道路、すごすぎる。紳士も淑女もあったもんじゃない。それからテムズ河に、下水に、トイレ。本のページから悪臭が立ち上ってくるような、ある意味迫力の一冊。
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