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miyajimaさんのレビュー一覧

投稿者:miyajima

38 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

一億人の俳句入門 決定版

紙の本一億人の俳句入門 決定版

2016/12/31 20:05

切れ字だけでなく俳句そのものについて関心を持つようになりました

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まずはこの著者の「古池に蛙は飛びこんだか」(中公文庫刊)というタイトルを見て即座に購入。「む? 飛び込んでないの? そうなの?」ということで。

でもそもそも俳句についての知識が無いので「入門」と書かれた本書を合わせ購入。
いや、面白い。

内容としては俳句の定型・切れ・季語という三つの約束について書かれています。

まずは俳句の定型について。
俳句には「一物仕立て(いちぶつじたて)」と「取り合わせ」という2つの型があります。一物仕立てとはその名のとおり、一つの素材(一物)を詠んで仕立てた句。AはBであるという仕立て。

行く春を近江の人とおしみける

というのがそう。

取り合わせとは2つの素材を組み合わせたもの。

旅人と我が名よばれん初しぐれ

というのがそう。「旅立つ私を人は旅人と呼ぶだろう」という芭蕉の思いと、「初しぐれ」を取り合わせているわけです。

次いで「切れ」について。「切れ」の働きはそもそも何なのか?
切れの部分に何かが省略されていると考える人がいます。そんな人は俳句を「省略の文芸」などと呼んだりしています。あるいはまた強調だという人もいます。

どちらも間違い。
切れと切れ字の働きは強調でも省略でもなくて、その名のとおり句を切ることにあるんです。その効果は、「間」を生むことにあります。絵画で言えば余白、音楽で言えば沈黙。

もし切れの働きを省略と考えると、俳句の解釈や鑑賞は省略されたものを復元する作業になってしまいます。しかし、俳句の切れはそうではないんですね。言うべきことだけを切り出しているんです。言いたいけれど言わないことなど存在しないということです。そこで、登場するのが、

古池や蛙飛びこむ水のおと

です。
この句は古池に蛙が飛びこんで水の音がしたと言っているのではないんです。蛙が水に飛び込む音を聞いて古池を思い浮かべたという句なんです。この古池は現実世界にあるのではなく、蛙が水に飛びこむ音によって芭蕉の心の中に出現した幻なのです。この句を一物仕立てと解釈するとまったくつまらない句になってしまうわけなんですね。ここでこの句の説明臭さを払い去っているのが切れ字の「や」。これにより「古池に」の持つ理屈が切断され、大きな「間」が浮かび上がる、ということなのです。

ということで、俳句を解釈する際に理解しておくべき「切れ」と「定型」について詳細に説明がなされています。この二つの重要性を理解するのに芭蕉の「古池や~」の句が大変に参考になるということなんです。

この二つがわからないと、「古池に蛙が飛び込んだ時に音がした」という凡庸な句になってしまうわけなのです。

こんなこと学校で教えてくれませんでした。俳句と「切れ字」と言えば、『ぞ・や・かな・けり』→この字がついているところが俳句の「句切れ」で、この字がついている言葉が「作者の感動の中心という程度の知識しか教わりませんでした。これでは芭蕉の句は決して解釈できないですよねえ。

とか言っても2冊ばかり読んだくらいで上からモノを語るのも間違いだと理解しております。ということで著者の他の本も読んでみることにした次第。

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紙の本

質的社会調査の方法 他者の合理性の理解社会学

質的調査というか、社会学や文化人類学の初学者にもぴったり

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「断片的なものの社会学」が面白かったので、同じ著者が書いている資質的調査の本を見つけて早速購入。

本書で扱われる質的調査は「フィールドワーク」「参与観察」「生活史」の3つ。私としては質的分析というのは要するにノンフィクションとどう違うのかという点について、あまり確固たるものが持てないままでしたが、本書を読んである程度納得。

要するに質的社会調査を社会学という学問を支えるものとしているのは、それが私たちと縁のない人々の不合理に見える行為の背後にある理由(これが「他者の合理性」といわれるものです)を誰にでもわかる形で記述し解釈することにあるというのです。

「特定の状況下におかれた特定の人々についての解釈」を続けることで、仮説や命題の形に収まらないけれど、当事者の体験が量的調査では見えてこない、それまでの思い込みを覆すような視点を提供してくれることになるのことがあるというわけです。
誰かを観察したり、その人の生活史に耳を傾けることで、特定の社会問題の背景知識を得て(歴史と構造」)、その社会構造についての新しい見方を獲得する(理論化)というのが社会学を意味づける手段としての質的社会調査ということなのですね。

初学者向けの本なので、依頼書の書き方とかレコーダーの扱い方といった実に基礎的な事から始まるので、質的調査だけでなく社会学や文化人類学の初学者にもぴったりなのではないかと思います。何より、本書に挙げられた推薦図書がどれもおもしろそうなので、少なくとも買ったままで読んでいない本は読んでみようと思いました。

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紙の本

一発屋芸人列伝

紙の本一発屋芸人列伝

2018/07/01 20:05

そう、人生は続いている

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

各所で話題になっていたので買ってみる。この手の話題本は、自分の人生において前向きになれるようなものしか読みたくないとおもっていたので、しばらく様子見でいたのだが結局購入。まあ期待にたがわない良書であった。

本書で言う「一発屋」というのは、一発当てたけれどもそのあと失速してそれきり、ということではなく、「一発屋という肩書」で商売を続けている芸人である。一瞬スポットライトを浴びてその直後にエンドロールが流れてあとは忘れられるという刹那な存在ではない。あるいは失意のうちに芸能界を去っていった落伍者の物語でもない。そうではなくて「どっこいオイラは生きている」ということ、言い換えれば帯に書かれたように「それでも人生は続く」ということ。

「一発屋芸人」たちが当てたその後に、不器用でありながらも決してくじけずに努力している様を描いた本書は、気持ちが弱っているときに読み直す価値がある本だと思う。

(ハローケイスケだけは今後が心配、、、)

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紙の本

翻訳できない世界のことば

紙の本翻訳できない世界のことば

2016/12/31 15:18

まさに「言葉とは文化である」ということを実感しました

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私が大学受験生だったころ。ということはもう30年以上前の話。当時通っていた予備校の現国講師が薦めていた鈴木孝夫の「ことばと文化」。入試に頻出するということだけでなく内容もおもしろいということだったので早速読んでみたらこれが面白いのなんの。

「ことば」というものはその言葉を話す人たちにとって文化が歴史的重畳的に折り重なったもの。現在話されているものはいわば氷山の一角のようなもので、海面下にはその数倍・数十倍の歴史・文化の背景がある、というあたりが一番印象に残っています。

その鈴木孝夫を再発見の巻、と言うほどのものでもないのですが、その当時ことを思い出させてくれる本でした。

ある言語ではたったの一語で語ることのできるのに、他の言語にしようとするとものすごく面倒くさかったり、共有がむずかしくなる言葉を集めた本です。しかも何が素敵かといえば、一語一語に可愛らしいイラストがついている点。この本を購入したジュンク堂では「芸術:イラスト」のコーナーにあるほど。

それぞれの言語がどうしてそのような意味を持つようになったのか、話者同士でその言語を共有することが有益だったり必然だったりする背景を考えながら読みました。通読するのであればほんの10分もあればいいのですが、そんなもったいないことはせずに、寝る前や入浴中に2~3語選んでいろいろと妄想しながら過ごすことにしております。

一例をあげますと、「HIRAETH:帰ることができない場所への郷愁と哀切の気持ち。過去に失った場所や、永遠に存在しない場所に対しても」なんてウェールズ語。この本に書いてある解説はたったこれだけです。そうするとなんでまたこんな言葉が、ということでいろいろと思いをはせることになるわけです。

ウェールズと言えば産業革命の前後で町の景観も居住民も一変した街だからかなあ、しかも石炭から石油へのエネルギー革命でももう一回転したしなあ、なんて思うわけです。(でもそれ以上のことを知らないので、ついつい余計な本を買ってしまった次第)。

あ、あとね「BOKETTO:なにも特別なことを考えず、ぼんやりと遠くを見ているときの気持ち」って解説を先に見て「おお、いいじゃないか。どこの言葉だ」って見てみたら「ボケっと 日本語」ってね。

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紙の本

功利主義入門 はじめての倫理学

文字通り功利主義を学び始めるのに最適の書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

デイヴィッド・エドモンズの「「太った男を殺しますか? 「トロリー問題」が教えてくれること」の次に読みました。

「トロリオロジー」では功利主義を理解していることが必要ということでベンサムを読む前に予習。

功利主義は18世紀の哲学者ベンサムが定式化した倫理思想のこと。何かをなすときに指針となるのは「功利性の指針」をおいてほかにないと説きます。分かりやすく言えば「最大多数の最大幸福」を指針として行動せよ、ということです。

この場合の「功利性」とは人がなすべきことは社会全体の幸福を増やすことであり、社会全体の幸福を減らす行為は不正な行為ということ。「共感・反感の原則」とは、正しい行為とは自分が気に入った行為のことで、不正な行為とは自分が気に入らない行為のこととする考え方。

ベンサムによれば彼以前のほとんどの哲学者の考えがそうです。彼らは自分の考えをもっともらしく見せるために「自然の法」とか「良心」とか「永遠不変の真理」とか言う言葉を持ち出したのです。でも結局多数派が少数派に、権力者が社会的弱者に自分たちの考えを無理やり押し付けることになるとベンサムは批判しました。

そして功利主義では一個人の幸福を最大化することを考えるのではなく、人々の幸福を足し算して最大になるように努める必要があります。つまり利己主義ではないし、一人を一人として数えるという公平性の配慮が働きます。

功利主義への批判として、一例ですが次のようなケースがあります。火事の建物に二人が閉じ込められている。一人は大作家で、もう一人は主婦である自分の母親というものです。この場合功利主義者は迷わず大作家を助けるべしとします。ですがこの点が批判を受けるわけです。ですが、このような原理主義の功利主義者は現代では少数派となっています。

現代の功利主義者は年がら年中功利主義を振りかざしているのではなく、「約束を守る」「家族や友人を大事にする」などの道徳的義務や規則に従って行為することを勧めます。例えば家族を大事にする人は家族以外の身近な人をより幸福にできて功利主義的にも望ましい、とするのです。常識的な規則や義務が功利主義的に見て一部の人を不公平に扱っていると思われる場合の判断基準として機能させるわけです。

ややもすれば「最大多数の最大幸福」というスローガンは「少数派の犠牲の上に多数派が幸福になるための思想」と理解されがちです。ですが、そもそもベンサムが功利主義を唱えたのは産業革命が進行中で、既得権を守ろうとする上流階級がそれ以外の階級を虐げていると考えたからです。

政策決定において無視された労働者や女性などの社会的弱者の幸福も等しく考慮に入れるべきという立場だった点を忘れてはなりません。
ということで、功利主義についての現代的知見というか現在の地図を理解したくて読んだのですが、実にわかりやすく入門書としては大変に優れた本でした。

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紙の本

立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか

「議会主義的君主制」が民主主義を助ける

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本書は21世紀の今日、時代遅れとみなされることも多い、国王や女王が君臨する君主制という制度を未だに続けている国々の歴史と現状を検討することを目的としている。

イギリスなどでも君主制が時代遅れだとする論調が高まった時代があるが、実際に政治が混乱した時にリーダーシップを発揮して調整にあたったのが国王である。北欧なども同様で、特に第二次大戦中のナチスドイツに国土が占領されたときに、亡命政権を樹立してレジスタンスを王室が率いたほどだ。

つまり、絶対的君主制はともかくとして、立憲君主制(議会主義的君主制)は現代社会において民主主義を助け、強化する場面が増えている。君主は任期が無いことから中断はなく、首尾一貫して自らの姿勢を示すことができるという点がその強みである、というのが本書の主張。。

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紙の本

そろそろ左派は〈経済〉を語ろう レフト3.0の政治経済学

再分配政策と経済政策を切り離して考えてはいけない

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安倍政権に批判的な方の多くが、アベノミクスも批判されています。ですが、金融緩和と財政出動についてはそもそも安倍政権オリジナルというわけではなく、マクロ経済の基本中の基本のはず。

しかし、野党はおろか与党内部からも「トリクルダウンに過ぎない」などと批判されるのを見るにつけ暗澹たる気持ちになっておりました。これでは安倍政権以外に選択しようがないではないかと。そんな忸怩たる思いを抱いていた矢先、本書に出合いました。

松尾先生はバリバリのマルクス経済学者、ブレイディみかこはアナキスト(笑 

ということで左右という立ち位置で言えば完全に左派。ただし、アベノミクスのうち少なくとも反緊縮の部分については肯定し、それどころかそれを強化すべしと説きます。

マルクスの唯物論は一言で言うと「結局世の中メシの問題だ」というもの。それはマルクス主義の基本中の基本。世の中はメシの問題(土台=下部構造)で動いていて、その問題を解決すると主張する政治思想や体制(上部構造)が選択されるというのが唯物論の考え方。

食べていけない貧困層がいっぱい出てくるとどういう上部構造が選択されるかと言えば、メシの問題を解決してくれる政治体制に決まっている、と説明します。

世界的にみて左派は反緊縮の流れで一致しているのに、なぜか日本の左派は真逆を選択しようとしていることの危険性を説いた本書。感情的な批判ではなく非常に説得力に富む本なので、一人でも多くの方に読んでいただきたいと願う次第。

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紙の本

東芝の悲劇

紙の本東芝の悲劇

2018/08/11 21:41

トップに人を得ないことの悲劇

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先に読んだ「東芝 原子力敗戦」では東芝衰退の最大の原因として原子力部門の暴走にフォーカスを当てていた。本書はトップに人を得ないことの悲劇という視点から東芝の破綻を描く。

特に抜擢人事、しかも傍流からのそれは多くの場合、実力者の院政とセットになっている点を指摘する。日立、ソニー、日航、東電、失敗企業(失敗経営者)の多くが「くぐつ(傀儡)」であったと説く。傍流であるから中枢や全体が見えない。「実力者の腰ぎんちゃくに過ぎない凡庸・愚鈍の人であり、そもそも将の器ではない」と断ずる。

何が問題かと言えば、東芝は経済環境の激変によって競争から落後したというよりも、ただただ歴代トップに人を得なかったということなのだ。それが「東芝の悲劇」ということ。

技術や製造に詳しくない西室泰三、西田厚聰という国際営業出身者がトップを占めることで組織は変容した。東芝の人事、総務、経理は社長でさえ恣意にできない独立性の高さを持っていたが、次第にイエスマンばかりが起用され、公平性と中立性が損なわれていった。

融通の利かないことを官僚主義と言って批判するが、東芝の悲劇を見ると、そういった頑迷さが中立と公平を保証するためのものである限り、巨大組織においては必要なことなのではないかと思った次第。

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紙の本

ペリリュー・沖縄戦記

紙の本ペリリュー・沖縄戦記

2018/08/11 21:39

理性の欠片もない戦場

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著者はアメリカ第一海兵師団第五連隊第三大隊K中隊の一員として、中部太平洋パラオ諸島にあるペリリュー島と、沖縄の攻略戦に参加した。本書はその体験記。

ペリリュー攻略戦は4日で終了すると軍は予想しており、それを真に受けた記者たちは上陸すらしなかった。その結果、甚大な犠牲を出した戦闘にも関わらずその内容が知られていない。ペリリューに先立つギルバート諸島タラワ環礁における第二海兵隊の甚大な被害は米国内で批判を集めたが、一方で「タラワ」の名前は勇気と犠牲の精神を象徴するものとして米国に知れ渡った。そのタラワの戦いの2倍の犠牲者を出したにもかかわらずだ。

さらに、この作戦の必要性については論争があり、大勢は、この作戦がなくともマッカーサーはフィリピンを奪還できた、というも、というものだ。ハルゼー提督はフィリピンにおける日本の航空戦力が思ったほど強力ではないと知ったからだ。

それまでの日本軍は海兵隊の上陸部隊が海岸線に橋頭保を築いてしまうとバンザイアタックを繰り返し自滅するのが常だった。だが、バンザイアタックが功を奏した例はない。しかし、ペリリュー島で1万の守備隊を率いた中川 州男(なかがわ くにお)大佐はバンザイアタックを禁じ、上陸してきた海兵隊を陣地の間近まで惹きつけ応戦するよう命じた。そのため第一海兵隊の払った犠牲はタラワの2倍にのぼった。

日本軍は硫黄島、沖縄本島でも複雑に入り組んだ縦深防御態勢で臨み、兵力を温存し消耗戦に持ち込んだ。執拗極まりない日本軍の抵抗を支えた戦術はこのペリリュー島の戦闘が先例となったのだ。

そのようなし烈を極めた戦闘の中で、著者は自分たち歩兵が消耗品に過ぎないことを痛感する。「生命と個人の価値を尊重する国に生まれ、そういう文化の中で育ってきた」にもかかわらず、自分の命に価値がないと思い知る。そしてむごたらしい死と恐怖、緊張、疲労の連続する野蛮極まりない状況において戦闘を続けることで、人間として信じられないほど残忍な行動がとれるようになる。

戦場では日米双方の兵が相互に狂的なまでの憎悪をお互いに抱いていた。戦場を知らない人たちにとって理解できないほど強烈なものだ。日本人の大義に寄せる敵愾心と、そのような日本兵によって行われた残忍な行為に対するアメリカ兵の憎悪は、両者の間に容赦のない残忍で凶暴な戦闘をもたらした。そこには理性のかけらなど微塵もない。そういった実情を書きつくした本書の意義はそこにある。

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紙の本

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

読書を通じた「気持ちの交換」に成功した稀有な例

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「おススメの本があったら教えてください」と言われることがある。これは困る。そう言っている方がどんな人生を歩んできて、どのような思考・志向・価値観を持っておられるのかについて知らないまま、いったい何を根拠としてすすめればいいのか困ることがほとんど。

「あなたが今まで読んで一番面白かった本は何ですか」と聞かれることもまた困る。たった1冊の本で表現できるほど俺の人格は単純じゃねーぞ、という反発を覚えたりする。

と言いつつ、本書の著者のように「出会った30分間という時間制限の中で相手にふさわしいと思う本を勧めて回る」という行為に興味があるのも事実。著者は、「人の役に立ちたいという気持ちだけではなかなか具体的に人に関わること難しい」「でも本を介してなら、気持ちを押し付けることなく知らない人と気持ちを交換できたりする」という。なるほど、そういう視点で、しかもそれが叶うのならばとても素敵なことだ。

特に「気持ちの交換」という視点は実に大事だ。一方的に受け取るだけなら一人で本を読んでいた方がいいし、一方的に主張するだけならFacebookで今まで通り垂れ流していればいいじゃないかと思う。ということで、稀有なポジションを築くことに成功した著者に嫉妬しつつ読了。

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紙の本

言葉の贈り物

紙の本言葉の贈り物

2018/07/01 20:08

言葉への信頼

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人間を人間たらしめる源泉としての言葉への全面的な信頼、あるいは限りない愛を表明した本である。それは同時に、相手が人間かどうかを問わない他者への愛がある。そういった想いをこれでもかというほどに畳みかけてくる24編のエッセイ。

何がすごいって、久しぶりに読書をしている電車内で泣いてしまった点。

著者の父親は本を読むことだけでなく買うことに情熱を持ち続けた人であった。晩年目が悪くなり活字を追えなくなってもなお毎月数万円の本を買い続けた。裕福なわけではない。著者を含めた三人の子どもが毎月仕送りをしていたくらいだ。だが、どんな言葉も彼を説得できなかった。

そのことを会社の同僚に愚痴った著者だが、その同僚から「読めない本は、読める本より大事なのかもしれない」と言われ衝撃を受ける。読書観ばかりか世にある物との関係にも大きな変化をもたらすことになったという。

著者はいう、「本を読むことの楽しみだけでなく、書物の奥には人生の多くの時を費やしても決して後悔しない豊穣な世界が広がっていることも、私は父から教わった。」「本は読むだけでなくそれを眺め、手にふれ、あるいは心に思い浮かべるだけでも十分な何かであることも教わっていた」と。

そう、そうなんだよなと。書物の中というのか書物の向こうというのか、そこには私が決して見たり知ったり感じたりすることのできなかったり、自分の見聞・見識を広げてくれる広大な世界が広がっている。実際に体験することは無くとも、その世界の広がりを想像するだけで心の底からワクワクする。

自宅の居住スペースを圧迫してまで本を買い続ける私の振る舞い。それは家族を筆頭に誰にも理解できないことだろうという諦めとともに生きてきた。だが、そんな私を肯定してくれる考えに出合ったよろこび。そう、これが読書の醍醐味ということ。

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紙の本

チャヴ 弱者を敵視する社会

紙の本チャヴ 弱者を敵視する社会

2018/07/01 20:03

自己責任論に押し込めてはいけない問題

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イギリスの階級問題に関する本を立て続けに読んでいる。

労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱」「子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から」「ブレグジット秘録」に続く4冊目。

この4冊を読んで痛感するのは、新自由主義による資本の偏在と階級の固定化圧力が強化されていく姿は日本の将来を明示しているだろうということ。いろいろな論点を「差別主義」「甘え」と単純化してしまうことにより階級分断が進んでいくぞ、という危険性。

ピケティ(あるいは端的にマルクス)が説いていたように、強力な再分配がなされなければ富の偏在は加速するということを実感する本。

労働者階級を悪しきものとして扱うことは不合理な制度を正当化するための手段に過ぎない、という本書の指摘をもっと真剣に受け止める必要があろうかと。「ブロークンブリテンにおいては、被害者はつねに自分を責めるしかない」という著者の指摘は重い。

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紙の本

経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人を救え、ということ

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著者二人は疫学者。疫学は病気の本態や原因、影響を調べるのが仕事だが、経済にも応用し、政府の予算編成や経済政策の選択がその国民の生死、病気への抵抗力、死亡リスクをどう左右するかを調べた結果が本書の内容。

ちなみに原著書名である「The Body Economic」とは「ある経済政策の下に組織された集団。その政策に影響を受ける集合体としての国民」のこと。著者は疫学をボディエコノミックに応用した

で、財政緊縮か財政刺激策かという選択はどのような影響を健康に及ぼすのか。それらは大恐慌、ソ連崩壊、東アジア通貨危機などのように世界規模で自然実験が行われてきた。その結果はどうか?緊縮政策をとった国は大きな代償を払うことになったことが明らかになった。経済政策の結果は経済成長率だけでなく平均寿命の伸縮や死亡率の増減にあらわれた。

社会保護政策は命を救う。そしてそれを正しく運営すれば財政を破綻させることにならず、むしろ景気を押し上げる。緊縮政策の提唱者たちは、すでにデータで明らかになっている健康上、経済上の影響をひたすら無視して否定してきたのだ。

先日読んだ「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう」とあわせると、もう緊縮一辺倒はやめた方がいいと思うのだがどうか。

た、だ、し、気を付けるべきは単なる積極財政が推奨されるのではなく、求められるのは社会的セーフティネットへの十分な投資である点。特にALMPと呼ばれる積極的な社会保護政策は自殺リスクを下げる最も有効な手段だと断言されている。

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紙の本

戦艦武蔵 忘れられた巨艦の航跡

美化を拒絶する巨艦の悲劇

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2015年3月にフィリピンのシブヤン海の海底でその船体が発見されて大々的に報道された戦艦武蔵。

大和と並んで知名度の高い戦艦であるが、武蔵は大和と比べて地味な存在である。本書の目的の一つとしてその差がどうして生じたのかを問うことが挙げられている。
武蔵は大和に比べて生き残った者が多く、その沈没後の運命もさまざまであった。1000人以上が脱出に成功したが、その多くは引き続き劣悪な戦地に送られ半数以上が戦死した。それでも約450名が戦後を迎えることができた。ここに武蔵の生還者が自身の体験を美化できない理由がある。その中の一定数が特定の士官を長らく強く非難もしている。一方大和は短時間で爆沈した結果生き残りはわずか276名である。さらに4か月後に終戦となった。生き残った者が少ないことから多くの美談が作り出された。

戦後の高度成長期に大和のエリート士官たちの視点による海軍賛美(吉田満「戦艦大和ノ最期」など)がもてはやされた。「プレジデント」あたりの主要読者である50代ビジネスマンが仕事上くみ取るべき種々の「教訓」の源として消費可能であったからだ。一方、下士官主体の武蔵の物語は、遠い昔の貧しい日本の象徴にしかなれず、したがって彼らの消費に適さなかったわけだ。

さらに言えば、レイテ沖海戦で米機の投下する魚雷や爆弾を次々と回避して「冴える森下(艦長)の操艦の腕」と評されたのに対し、実践経験が乏しく直進を主張した猪口艦長の武蔵は次々と被弾して横転転覆した点は大和の格好の引き立て役、あるいは創意工夫を怠り競争に敗れたビジネスマンを重ねる扱いとなった。

武蔵の生還者たちは美化も否定もともに強く拒絶するものが多い。武蔵に対する他者からの意味付けの拒否だ。どういうことか?武蔵に対するマイナスの評価は「真実」ではないから拒否する。だが、自らの手でプラスの意味付けもまたできない。第二次大戦は負け戦であり武蔵は間違いなく沈められたからだ。だとすればそこには武蔵という物語を「脱文脈化」するよりほかに無いということなのだ。

武蔵に乗艦して戦争をした人にとって、なぜ自分がひどい目に遭ったのかを他ならない自分のために真剣に問えば問うほど武蔵は何者かであり得た。だが、そうではない人に向かい合った時にその物語は誰のものでもなくなるのだ。

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紙の本

アデナウアー 現代ドイツを創った政治家

アデナウアーをトレースすることは戦後西ドイツの外交政策をそのまま学ぶことということ

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日本では今一つ知名度のない西ドイツ初代首相。ですが当地ドイツでは今なお歴代首相としての評価は常にトップレベルに位置する偉人。

2003年のテレビの企画で「もっとも偉大なドイツ人」を視聴者から募ったところ182万人の投票があり、堂々1位になりました。これはルターやマルクスを退けてのものです。

一方日本では「保守」「反動」といったマイナスイメージでかたずけられているのです。本書はそのアデナウアーの生涯とその業績を論じたものです。そういう点では本書は読んでよかったです。

アデナウアーをトレースすることは戦後西ドイツの外交政策をそのまま学ぶことということが実によくわかりました。ほとんどのページに付箋が付くほど。これは何度でも読み直したい本です。

さて、アデナウアーの業績は大きく2点。第一は内政における自由民主主義の定着を成功させたこと。ワイマール憲法の反省のもとにその人民民主主義・価値相対主義を排し代表制を徹底したこと、民主主義の敵には寛容を排除したことです。これを強権的に進めたことで「宰相民主主義」と揶揄されたりもしました。

第二は外交における「西側選択」。これはアデナウアー個人のイニシアチブが徹底的に発揮されました。それまでのドイツ外交は東西を天秤にかけたり西欧を出し抜いてソ連と結んだり中東欧を勢力圏に入れようと画策したりしてきたのですが、それが周辺諸国の緊張を生んできました。

しかしアデナウアーは東西冷戦という国際情勢を背景に、「西欧」を決して裏切らないドイツを築いたのです。スターリンからのちょっかい(中立化など)にも一切惑わされることなくこの路線を貫きます。

アデナウアーはライン地方のカトリックの中心都市ケルンで生まれました。南ドイツのバイエルンのようにカトリックが反自由を代表していたのとは異なり、ケルンのカトリックはリベラルで社会改良志向が強かったのです。アデナウアーは国家に先行するものとして個人の尊厳と自由を守ろうとしましたが、この価値を基礎づけたのがキリスト教的自然法だったのです。

そうした理念の担い手とされたのがキリスト教民主同盟(CDU)でした。その一方で共産主義とソ連を全体主義・無神論として徹底的に拒否しました。
戦後は憲法(正確にはボン基本法)を改正し再軍備を行い。ヨーロッパ統合を推しすすめました。さらにイスラエルに対して「過去との和解」に着手します。

実はアデナウアーの対ユダヤというかイスラエル政策としては「ドイツ人の集団的罪責を否定し、むしろドイツ人はナチスの被害者と位置付けた」として後世に批判をされるのですが、1951年の連邦議会でなされた演説では「ドイツ民族の名において」犯された「言語を絶する犯罪」を認めている点は留意すべきでしょう。(でもやっぱりドイツ国民の罪責は決して認めていない点は気を付けないといけないのですが)。

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