本のウサギさんのレビュー一覧
投稿者:本のウサギ
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紙の本ワンダー
2017/02/18 19:53
暗くて辛いハンディキャップの物語を読みたい人には決しておすすめしない本
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
主人公の少年、日本だと小学生相当の男の子。家族や友人に恵まれたごく普通の男の子。ただし顔を除いてはーーーとの見出しで、顔に障害を持つと書いてあるが、実際は外観だけのハンディではない。補聴器を使用し、食事の時も他のみんなと同じようにスムーズには食べられない。耳や嚥下機能、首から上全体に広く障害があり、何度も手術を重ねてようやく通常の生活を送れている重度の障害の子だとわかる。
人称が章によって変わるが、主人公の一人称の時は、走ったり話したり笑ったり、見たり考えたり、全くその世界は本人が語る通り普通の男の子である。
いじめの問題も含んでいる物語でありながら、いじめそのものを語っている部分は全体の一部である。障害やいじめの本だから陰惨で読むのが辛いだろうと思い手に取ると、拍子抜けするのではないかと思う。なぜなら愛し愛されている家族と友人たちとの基本的な信頼、心の基盤が全編通して彼と読む者の心を支えてくれている物語だからである。
彼の生きる世界は始めから終わりまで明るく光に満ちている。それは、障害があろうがなかろうが、初めから誰にでも当たり前のように与えられているべきものである。暗い世界を思い描いて読み始めた自分の心には何があったのかを、読後現実に戻って考える事になった本である。
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