トニエルさんのレビュー一覧
投稿者:トニエル
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2017/07/31 23:45
教養として。
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世界地図で日本の場所を指せず、黄色の肌の人種を見て驚くような未知の異国の人に「日本人とは何者か。」と質問されたら今日の我々日本人はどう答えるのか。さらに相手は我々のことを高等な歴史を持たず、高度な思想を身に着けていないという先入観があると仮定すると、ますます返答に困惑することは必至であろう。しかし、今から百年以上前にそれと同様な時代があった。明治時代である。開国した当初の日本は、当時の欧米列強にとって未知の国であった。そんな中、内村鑑三という一人の男、そして、彼が書いた『代表的日本人』 が誕生したのである。『代表的日本人』は内村鑑三の主著と言って良い一冊であり、英語で出版されたということは特筆すべきであろう。同時期に、同様に英語で出版された岡倉天心の『茶の本』 や新渡戸稲造の『武士道』 と共に、日本人の精神世界及び思惟というものを世界、殊に当時の西欧列強諸国に向けて発信した名著の一つとして世に広く知られている。この著作が取り上げているのは、歴史上において活躍をした五人の偉人である。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の生涯である。しかし、この著作はこの五人の偉人伝とは遠く離れる。ましてや彼らの歴史的業績や格言を列記したものでは全くない。内村がこの著作において据えた主役は五人の人間ではなく、人間を超えた存在である。これを内村は「天」と呼んでいる。また、この五人は内村が想う心情的に近しい人物達であり、いわばこの著は他者の伝記の形をした内村鑑三の精神的な自叙伝とも言えるのである。内村鑑三という人物は世間的にはキリスト教思想家として知られているというのは疑うことは出来ないであろう。しかし、内村は日本で一般的なキリスト教に、そして広く世に知られているキリスト教のあり方に大きな疑問を投げかけた人物であることは『代表的日本人』を読み解くにあたって忘れてはならない大きな事実である。また、内村鑑三が生涯に渡って献身を誓った「二つのJ」を解釈する上で『代表的日本人』は欠くことの出来ない非常に重要な一冊である。教養として必読書であると考えられ、我々が「日本的」と捉える精神世界と世界殊に西欧世界の融合、相違が事細かに記されており、グローバル化が急進する現在、より一層通読の価値があると言える。また、文化及び精神の特徴を丁寧に取り上げているため、多文化共生の理念に通ずる思惟が盛り込まれていると言える。難解、長作では無いためどの年齢から読み始めても適切と考える。また、内村が『代表的日本人』と同時期に発表している『後世への最大遺物』、内村の講演録も併せて読むと理解が更なる深みに達すると考える。
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