デルフィニュームさんのレビュー一覧
投稿者:デルフィニューム
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東へ
2018/08/13 13:22
「小説」を超えた小説?!!
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これまでになかった素晴らしい読書体験でした。
舞台となる9世紀のギリシャ、イスラム、東方世界の当時の政治・経済の実態や、思想・文化・宗教とそこに生きる人達が実に生き生きと見事に描き出されています。
中東世界を通して人類の歩みを見せられ、考えさせられ、一方では主人公ニコロを含む三代の物語世界が面白く、まるで見てきたかのように精緻に描かれるのに驚きながら、一気に読み進みました。
作品中、生起する一つ一つの事柄の存在感・物質感に圧倒されました。それは、膨大な知識と情報の正確な分析と判断を基に、卓越した構成力と際立った観察眼による描写によって初めて可能になるものだと思えました。小説でもこの様な臨場感が出せるとは初めて知った事です。
全編を通じ、著者の主人公ニコロを始め登場人物に注ぐ眼差しはあくまで温かく、人間や自然に対する愛情に満ち溢れています。そうした登場人物たちによってこの作品世界では、著者の理想とする人間関係=人間社会や、世界観が、現実の社会に先んじ既に実現していると感じました。
その背景となる考え方が、母からの結婚の贈り物としてもらった真珠の首飾りを見ながら、それに託した主人公ニコロの次の思いとして示されており、大変印象的でした。
「私はミナイ(主人公の妻)であり、母でもあり、・・・・・、そのうえに見知らぬ多くの人々でもあり、そして最終的には世界そのものであるに相違ない。」
人間は個体としての特有の器=身体的・精神的特性を持ちながらも、人類としての精神的同質性と歴史的共通体験に於いて一つにつながっています。ゆえに、万人が平等であり人類の一人として尊重される存在であると思うのですが、残念な事には21世紀に入り益々人間のアトム化が進み、互いを尊重する事も少なく悲惨な事件も多く発生するようになりました。世界中で人間としての尊厳が持てないまま貧困で悲惨な生活を強いられる人達が増えてきているとも感じています。
そんな中、一人でも多くの方々がこの作品に接し、主人公ニコロと共に旅をしながら「私はあなたであり、多くの見知らぬ人々でもある」事の大切さに想いを寄せ、類的存在の一人としてこれからの自身の旅の糧とされる事を願うものです。
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