abababさんのレビュー一覧
投稿者:ababab
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2019/03/22 08:45
世界経済の変化に遅れをとる日本
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平成の日本経済低迷とアベノミクスの失敗をこれほど見事に分析した本はない。
野口氏によれば、日本経済が平成に入る頃から低迷し始めた原因は、日本が世界のIT化に完全に遅れをとり、生産性の低い製造業に固執し続けたことと、中国などの新興国からの安い製品が輸入されて国内産業が衰退したことだという。
現在でも、日本は製造業に代わる新たなビジネスモデルを見出せていない。しかも21世紀に入り人口減少・少子高齢化とともに国内需要が先細って企業活動は不活発になり、賃金は伸び悩んだままだ。
安倍政権は経済の停滞の原因を「デフレ」に求め、「デフレからの脱却」を目標に掲げたが、野口氏はこの政策を疑問視する。氏によれば、日本経済の低迷の原因はデフレではなく、産業構造を転換できないことだと言う。デフレとは持続的に物価上昇率が低下することで、それ自体が悪ではなく、賃金が上がらない産業構造に問題があるのだ。
したがって野口氏は、異次元の金融緩和を軸にしたアベノミクスに厳しい批判を加える。そもそも日本は内需が弱いので金融緩和など行なっても資金需要(投資)は増えないし物価上昇率も伸びない。だが安倍政権は、緩和を行えば物価が上がり国民はモノを買い急ぐので消費が増えて景気がよくなるという、日本経済の現状や経済原理を無視した政策をとった。しかしこれは考え方が逆で、もし物価が上がれば国民は消費を手控えて節約に走るのだ。子供でもわかる話である。
安倍政権にリフレ政策を提言したのはノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン(専門は金融政策ではなく貿易理論)だが、彼は数年後にこの政策の誤りを認めて謝罪し、安倍政権のブレーン浜田宏一も金融緩和だけでは効果がないことを認めた。だが日銀は、国債大量購入による金融緩和をやめれば長期金利が上昇して、ただでも巨額の赤字を抱えた国家財政がさらに苦しくなるので、怖くてやめられないのだ。
日銀の黒田総裁は2017年5月に国会で「長期金利が1%上昇すれば日銀保有の国債の評価損は23兆円に達する」と述べた。野口氏は、「仮にインフレ目標2%を達成できたとすると長期金利は3%になる可能性があり、そのとき評価損は69兆円という驚くべき額になる」と言う。それは結局、国民が負担することになる。だが国民はそのことに気づいていないし、マスコミは意図的に報じない。
野口氏は、金融緩和はすぐにやめ、物価上昇率を目標にするのではなく実質賃金上昇率を目標にすべきだと言う。そして、何よりも生産性の高い分野に産業構造を転換すべきだと述べる。実にマトモな提案だ。
ギリシア・ローマ神話を知れば英語はもっと上達する
2019/03/21 10:40
どこからでも読める本
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私はギリシア神話やローマ神話を読んでも神の名前やストーリーをすぐ忘れてしまうので、とても便利な本。新聞やテレビ、雑誌から用例をとっているから、わかりやすいし、忘れにくい。
また最初から読む必要もない。小説やエッセイ、映画などに出てきて気になった神々やそのエピソードがあればこの本で調べればよい。もちろん用例と解説を読めば英語の上達にも役立つ。
ヒッチコック
2019/03/21 10:07
ヒッチコック研究の基本書
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もっと早く翻訳されるべきだったヒッチコック研究書。
ヒッチコック作品をカトリック形而上学の視点から読み解くとともに、彼の作品全体を「形式」の革新と捉える(のちの構造主義批評の先駆)。個々の作品の具体的分析が魅力的。訳者による詳細な解説もすばらしい。
残念ながら原著は1957年に出版されているので、以降の作品には触れていない。「サイコ」や「めまい」などの後期の秀作についても書いてほしかった。
ともかく本書はトリュフォー・ヒッチコック「映画術」、Michael Walker “Hitchcock’s Motifs” 、Robin Wood “Hitchcock Revisited”などとともに、ヒッチコック研究の基本書である。
テレビと原発報道の60年
2018/10/04 10:17
国民全員が読むべき本
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本間龍氏の原発本とともに、原発報道について書かれた最も重要な本。
七沢氏はNHKのディレクターとしてチェルノブイリ事故など原発関連の番組を作ってきた。原発研究の第一人者と言ってよい。
中でも驚いたのは、原発番組の制作をめぐりNHKの上層部から執拗な圧力があったことが生々しく書かれていること。
たとえば、氏は1999年に起きた東海村臨界事故の原因追求の番組を制作したが、編集の段階から報道局科学文化部の記者から「放送すべきでない」などあからさまな攻撃を受け、放送の翌年(2004)に放送文化研究所への異動を命じられた。
また、その後七沢氏は2011年にETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図〜福島原発事故から2ヶ月」を作り、視聴者の圧倒的な支持を得たり国の内外で数々の賞を取るが、直後に上層部から「厳重注意」を受け、経営委員会では二人の財界人(JR九州会長と、後に東電会長になる経営委員長)から不当な批判を浴びた。それ以後、NHKでは原発報道は激減する(企業から広告料を貰っている民放は、「報ステ」を除いて最初から報道はないが)。
今日の日本人は原発や放射能のことをほぼ忘れてしまったが、本書を読むと、国民が原発事故を忘却し無関心になった理由がよくわかる。
氏は現在も放送文化研究所に属しているが、この本がよく出版されたものだと思う。「こうした事件だけでも、受信料不払いの理由に十分なる」といった人がいるが、日本国民は随分おとなしいと言うか鈍感だと思う。(もともと「受信料制度」は戦争直後の民放がなかった時代にNHKを育てるという趣旨でできたもので、「ドネーション(寄付)」の意味で作られた。それがいつの間にか「強制」になってしまった)
2018/09/30 10:42
世界に先駆ける帝国主義論
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現在でも通用する帝国主義論。
帝国主義=軍国主義+愛国心(愛国主義と言った方が良い)という定義のもとで、軍国主義と愛国心の危うさをそれぞれ指摘しているのが世界でも先駆的。
特に、古代ギリシャ・ローマから現代(1900年当時)までの帝国主義に関わる歴史的事実を挙げて、その問題点を批判している点がユニークで説得力がある。
得てしてこういう議論では抽象的な言葉や論法に陥りがちだが、具体例と自分の言葉で論を進めているのがいい。
国家としての社会主義はほぼ消滅したが、思想としての社会主義は社会保障や分配政策など政策として現在に受け継がれている。その点で、今でも、というより今だからこそ意義のある書物だ。この代表作などのために幸徳秋水は当局から目をつけられて死刑に処せられた。大逆事件を契機にして日本帝国主義の時代が始まる。
日本が売られる
2019/03/21 11:24
グローバリズム批判
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本書は、グローバリズムや新自由主義への批判の書でもある。
世界は、ブレグジットやトランプ大統領の誕生、欧州の格差拡大への批判など、新自由主義(グローバリズム)からの離脱に向かっているが、今の日本は逆にこのイデオロギーを推し進めようとしている。堤未果氏はこの状況に危機感を持ち本書を著したのだろう。
本書のどの項目も重要なのだが、最近私が気になったのは、食の安全に関わる農薬と除草剤の問題。特に発がん物質グリホサートを主成分とする除草剤は、堤氏も触れているように、今や全国のホームセンターや100円ショップで売られている。だがNHKを初め大手メディアはこの事実を意図的に報道しない。私も当初、グリホサート入りの「ラウンドアップ」という、テレビなどで大々的に宣伝された除草剤を知らずに買って使用してしまった。マスコミはあらゆる分野で、こうした国民にとって重大な情報を伝えていない。もはやマスメディアは国民の味方とは言えないのだ。
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