扇町みつるさんのレビュー一覧
投稿者:扇町みつる
海の見える理髪店
2019/08/27 18:41
独白のかけ合い
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
舞台は理髪店、登場人物は理髪店店主と客の二人だけ。この作品にはカギ括弧でくくられたセリフが無く、店主と客の独白で語られて行く。
ラストでなるほどとなる訳だけれども、カギ括弧のセリフと地の文で書かれるよりも二人のそれぞれの思いが伝わって来たのではないかと思う。直木賞、納得。
他5篇の短編が収録されている。どれも家族関係に悩みを持っている人や、ある程度年を経た人に刺さる内容だと思った。今、特に何も感じなかった人も10年後くらいに読み直してみると結構刺さるかもしれない。
私の仕事 国連難民高等弁務官の10年と平和の構築
2021/09/30 14:03
もしご存命だったら
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
今の新型コロナ流行のこの状況を見たら、何とおっしゃるだろうか。
ナミヤ雑貨店の奇蹟
2019/08/11 23:22
好物の”時空を超える”モノ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
私は、時空を超えたり死者と会えたりといったストーリーが結構好きです。
たとえば「世にも奇妙な物語」のラストのちょっとほろっと泣けるタイプのストーリーが好きで、今回何を読もうかと考えたときに、ファンタジー要素のあるものにしよう、でもバリバリのSFを…というほどではない。
そこで、演劇集団キャラメルボックスの上演作品の原作小説を調べてみました。それで見つけたのが『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川文庫)です。
2〜3日くらいで読もうと思って読み始めたら…。
これは止まらないやつや〜!
結局ノンストップで読み続け、てっぺん超えた真夜中に読了しました。
それぞれの人生、過去と未来
本書は、ナミヤ雑貨店、そして丸光園という場所を中心に繰り広げられる物語です。同じ時に一堂に会するのではなく、おおよそ40年くらいの幅の中で邂逅しています。
私は一気に読んだのでそれぞれの人物相関を正確に把握した訳ではなく、読了後に劇場版のサイトの人物相関図を確認しました。
結構複雑なので、しっかり把握したい方は、時間をかけてじっくり読むのをおすすめします。
登場人物はそれぞれ人生の困難に立ち向かい、迷い、ナミヤ雑貨店にたどり着いて相談の手紙を書きます。
その手紙が時空を超えて…。
手紙のやり取りを経て、相談の答えを読んで考え、悩み、答えを出し、それぞれの道を選び歩き始めます。
それから何十年か経ち、相談をした人々が再びナミヤ雑貨店へ。
本書は5章で構成されているのですが、それぞれ独立した話になってはいるけど、各章が複雑に絡み合っています。
読み進めていくうちに、「あーっ!これがこの人か!」と気づいていくのが気持ちいいですね。
劇場版はまだ未見なのでぜひこちらも見てみたいです。
それにしても、これだけ複雑なつながりを描くのに、どうやってプロットを立てているのだろう。と思いました。それともプロットは立てずにいきなり書く天才肌なのだろうか…。
2019/03/09 21:38
西太后という一人の女性
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『蒼穹の昴』は、ラストエンペラー溥儀の一代前の光緒帝の御代、貧困の中で生きる春児(チュンル)と科挙に合格した地元の名士の息子梁文秀がそれぞれの形で紫禁城に上がり、西太后や皇帝に仕え、二人はそれぞれの立場で戊戌の政変に巻き込まれていきます。
冒頭で書いた映画などの影響で、とても不気味な女性というイメージで固まっていた西太后は、この作品ではとても人間的に描かれています。時には癇癪を起こすこともあるけれど、西太后もまた、激動の時代に翻弄された一人の女性となっています。
2019/02/13 23:45
皇帝の寵妃の悲しい死
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光緒帝の妃で、井戸に落とされて死んだ女性がいる。いつの頃知ったかは忘れてしまったけど、小学生の頃から西太后に興味があったので、その関連で知ったのでしょう。
本書は『蒼穹の昴』(浅田次郎/講談社文庫)の続編…というかサイドストーリーのような位置づけになっています。文庫本で言うと、「蒼穹の昴4.5」というようなお話。
『蒼穹の昴』に登場した人物や、登場はしなかったけれど描かれたストーリーの外側で生きていた人物が、それぞれの立場から珍妃の死について語ります。
各章それぞれの人物による語りがメインなので、好き嫌いもあるかもしれませんが、『蒼穹の昴』の世界にどっぷり浸かった方なら面白く読めることでしょう。
特に、春児と蘭琴に胸キュンだった方に強くオススメします。
珍妃の死の真相に迫るごとに、人の浅ましさや弱さがむき出しになり、しかしその中に儚くも確かに残った愛が胸を打ちました。
本書を読まずに『中原の虹』に進んでも大勢に影響は無いかもしれませんが、『蒼穹の昴』の余韻を感じられる1冊なので、ぜひ読んでみて下さい。
阪急電車
2021/09/30 14:01
いつか乗りたい
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阪急今津線の乗客たちの人生が交錯して紡がれる物語。日頃、電車で乗り合わせた乗客のことなど気にもとめない。しかし、乗客の人数分の人生がありそれぞれの物語がある。もしそれらが一瞬だけでも重なり合ったら…。
本作は阪急今津線という短い路線を走る列車を舞台に、人間の悲しさ、浅ましさ、愚かさ、強さ、弱さ、優しさなどが描かれている。高校生から孫のいる老婦人まで様々な年代の人物、そしてカップルが登場し、ほんの些細な会話やちょっとした出来事の場に居合わせる。お互い交わされる会話は多くはないし、縁が深まるものばかりでもないのだが、その僅かなやりとりで己を見つめ直したり、傷ついた心が安らいでいく。
どの人物も、迷いの中にいたりもがき苦しんだりしているが、最終的には自分の方向性を見つけていく。こんな風に素直になれていたらなぁ、これから素直になれるかしら。うん、きっとなれるさ。読み終わる頃にはそんな気持ちになれた。
関東生まれ関東育ちの身には阪急電鉄は片手で数えられる程しか乗ったことがなく、今津線は乗ったことがないが、住めるものなら一度住みたいなと…、それは叶わずとも、文庫本片手に今津線めぐりをしてみたいと思った。
廉太郎ノオト
2021/09/30 13:49
夭折した天才
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瀧廉太郎というと真っ先に浮かぶのが『荒城の月』と『花』。他には?と言われたら、この作品を読むまで分からなかった。こんなに身近な歌を世に送り出した人だったのかと再認識。
他の方の感想で青春小説と書かれていたんだけど、それもその筈、享年23歳では生涯のほとんどが青春だ。
序盤で亡くなったお姉さんの影響で楽器を演奏するようになる廉太郎だが、お姉さんは楽器(琴)が好きだが才能がない。私もお姉さん側の人間だからそのあたりはよく分かった。
才能に恵まれた廉太郎は東京音楽学校に入学する。いろいろな壁にぶちあたりながらも、良きライバルや同級生たちと研鑽を積みながら少しずつぶち破り、ついには海外留学することになる。しかし、西洋音楽の本場でさらに上を目指そうとした矢先、終わりがあっけなくやってきた。
短くて儚くて、でもそれゆえに濃密だった人生が廉太郎の奏でる音楽と共に綴られている。そして、廉太郎の原風景の一部となっている水琴窟の音色、これもまた廉太郎の人生を表した描写となっているのかなと思った。
蛇足ですが、奏でる音楽を文字で表している(音の強弱や技術の程度、そこからにじみ出る気持ちなど)、小説なので当然なんですけど、素人小説を書いている身からするとプロの作家さんて凄いなと脱帽。
空飛ぶ広報室
2019/08/27 18:46
知られざる自衛隊広報のストーリー
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航空自衛隊のパイロットだった青年が、航空幕僚監部広報室に異動になるところから物語は始まる。
テレビ番組で自衛隊の特集が組まれることがたまにあるが、そういう時に裏で動いているのは広報室の職員である。
ドラマやバラエティの撮影や、歌手のPV撮影など、そのたびに許可の申請や事前訓練、必要な人員の手配に奔走する広報室の面々が生き生きと描かれている。本作は2013年にドラマ化されていて、放送当時毎週楽しみに見たものだった。
昔に比べるとだいぶ一般の目に触れる機会が増えてきたが、まだまだ”自衛隊ファン”以外の人の理解は深くはないだろう。中でも広報室の職員についてはほとんど語られることがなかったので興味深く読んだ。
読みながら『蒼き鋼のアルペジオ』というアニメのOPテーマ曲PVの護衛艦での撮影は、本作の登場人物のような人たちの尽力によって実現したのだなと思った。
ちなみに本作の出版は最初は2011年夏の予定だったそうだが、東日本大震災が起こったため急遽「あの日の松島」が加筆され、2012年の出版となった。その辺はドラマ版でも描かれている。
眩
2019/08/11 23:25
文字から読めた美しい色彩
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2017年にNHKで放送されたドラマで見て原作を読んでみたいと思っていた一冊。
映像で表現されていた見事な色彩が小説の世界ではどのように表現されているのだろう。文章から美しい色彩や江戸の景色を感じることが出来るのだろうかと思っていましたが、感じることが出来ました。
一度ドラマを見てるから…と言ってしまえばそうかもしれませんが、実はドラマの内容の記憶はほとんど残っていなくて善次郎を誰が演じたか、これを書くのに調べるまで忘れていたほどでした。
なので、ドラマの映像の記憶と重ねながらではなく、文章から受け取った映像が脳内に再生されました。
美しかった。火事の緋色、夕暮れの紺青、カナリアの黄色、揚羽蝶の黒…。様々な色、そして江戸の街の景色、季節、絵に書く被写体の女性の色気、瑞々しさ、光と影。
目に見えるものはもちろん、お栄のさまざまな気持ちに至るまでこんなに事細かに文章から感じ取れたのは、読書を得意とするわけではない私としては珍しいです。
素晴らしかったです。
それと、これはドラマでもそのまま使われていた北斎のセリフなんですが、
「だが、たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ」
私は何か作品を生み出してそれで稼いでるというわけではありませんが、とても響きました。
また、映像も見返してみようと思います。
スクリプトドクターのプレゼンテーション術
2019/03/09 21:47
プレゼンの心構え
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本書は、著者が行った講演を文字起こししたものです。なので、喋り言葉で書かれていて読みやすいと思います。前半は「プレゼンとは対話である」ということを、後半は「プレゼンに大事なのは自己開示である」ことを著者のユニークな視点で説いています。
スライドはこのように作りましょう、といったテクニック面ではなく、プレゼン(人に何かを伝えること)においての己の精神面について書かれています。
なので、普段からプレゼンや人前のスピーチに慣れている方ではなく、そういう経験に乏しくむしろ人前でアガってしますような方こそ読むべき内容になっています。
なぜ人前で何かを話そうとするとアガってしまうのか。これは長年の私の悩みです。この問題のおかげで出来なかったこともかなりありますし、社会的に挫折もしました。
本書はそんな悩みに対する一つのアンサーを提示してくれました。
学問のすすめ 現代語訳
2019/01/05 18:20
現代でも色褪せていない言葉
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さすが一万円札になっただけの人、と言ってしまうとかなり上から目線になってしまうが、率直にそう思った。
まだ江戸時代の価値観が多く残っていたであろう明治の初期に、民にも独立の気概が必要、男尊女卑の批判など現代においてもなお色褪せていない事を説いていたからこそ、今の文明があるのだろう。
現代語訳にした齋藤孝先生も「解説」で述べていたように、昭和初期に福沢諭吉がいたら太平洋戦争は回避できたのではないか、確かにそんなふうに思ってしまう。
そして、現代にいたら今のこの日本を見てどう思うだろうか。
より理解を深めるために再読したい。
いますぐ書け、の文章法
2019/08/11 23:14
とてもシンプル
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本書では、
読む人の立場で書け。
とまず述べています。
どんな人に向けて書くのか、どんな人に読んでもらい喜んでもらいたいのか。
そして、
いますぐ書け。
良い文章を書こうと、グダグダと資料を集めて辞書を熟読して頭のなかでこねくりまわす時間があるならば、自分の今持っている知識で今すぐ書けと。
実際、文章を書くに至るまで色々と考えていまいがちなのですが、考える前に書けと。そういうことが書かれていました。
2019/03/09 21:34
感想
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本書は、沢村さんの子供時代の思い出、女学校時代や若手女優時代のこと、年を経てからの生活、料理、和服、日々の暮らしの小さな幸せなどが綴られています。
名の通ったベテラン女優でありながら、家事もそつなくこなし、贅沢しない質素な暮らしぶりがうかがえます。
質素ながらも食へのこだわりは強く、かと言って贅沢なものを食べるということではなく、旬のものを美味しく料理し、旦那様と美味しくいただく。バブルの時代も通り抜けながらも、飽食に染まることなく、「身の丈に合った暮らし」を貫いておられたようです。
私のお気に入りの一編は、「小さな内裏びな」。
家庭教師をしながら通う女学校の修学旅行でみつけた小さなおひなさま。進学を考えていたので財布の紐をかたくしていたけれど、どうしても欲しくて思い切って購入。戦災をくぐり抜け、それからはお節句の時期以外も飾っていた。
という話。
家康に天下を獲らせた男 最上義光
2021/07/31 08:44
最上義光を知りたかったら
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「北天に楽土あり」(天野純希/徳間書店)の補足として読んだ。
書状などの史料を追い、義光を中心に父義守の代から最上家改易までの動向を掘り下げたり、義光が使っていた花押や印判も紹介されている。
ところどころで史料が紹介されている。著者によって現代語訳されているので、初心者には嬉しいが、原文を読める人には物足りないと思う。
かなり駆け足で読んでしまったが、いわゆる史実(記録に残っているエピソード)を確認できたのでよかった。
