きりさんのレビュー一覧
投稿者:きり
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BUTTER
2021/01/17 12:42
柚木麻子の持つ根源的なテーマたち
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すごく面白かった。有名になった事件を下敷きにしてるけど、日本を取り巻くルッキズム、常に男に「見られる」対象としての女、食べることへの欲望と抑圧、そして確固たる自信と決意を以って書かれたシスターフッド&フェミニズム小説だった。
柚木麻子は『終点のあの子』が大好きで、他にも何冊か読んだけど面白いけど残らないなあという感じで、やっぱりわたしにはあの一冊だけだったのかな…と思ってたけど、『あまからカルテット』も『ランチのアッコちゃん』も、あれらはここに結実してきたのだな…!と思わせる渾身のごはん描写。食欲がそそられる。
柚木氏があの事件を基に小説書くってピンとこなかったけど、読むうちにどの要素も柚木氏がずっと軸にしてきた大事なテーマたちのためのこの題材だったのだなと深く腑に落ちる。書きたいことを存分に、すごい力で書いたんだろうなあ。久しぶりに早起きしてまで夢中で読んじゃった。ごちそうさまでした。
LGBTを読みとく クィア・スタディーズ入門
2018/10/11 14:31
さよなら知ったかぶり
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副題『クィア・スタディーズ入門』の文字をもっとでかくした方がいい。クィアは調べてみるも全然ピンとこなかったけど、この本の解説でだいぶ分かりやすく頭が整理された気がするし、知れば知るほど社会のあらゆるものごとに関わってくるからすごく面白い分野だと思う。
主題『LGBTを読みとく』も、これだけパッと見るとうーん今更〜と思っちゃいそうになったけど全然今更なことはなく、むしろ知らなかったことや勘違いしてたことも多くて知ったかぶり大変失礼いたしました!!!(土下座)な本だった。
そんな歴史的、分類的あれこれを見据えてクィアという学問なのだな。
個人的には、文脈違うかもしれんけど「カップルでいることで得をする社会ってどうなのか?」て問題提起がされてることにすごく勇気付けられた…(独身アラサーの悲しき焦りを開き直らせているだけかもしれないけど)でも考えたうえでひとりの方がいいわ〜ていう結論になる人も絶対一定数はいるはずでしょ?!?!
そういう、LGBTだけの問題にとどまらず、かなり直接的にわたしの問題として立ち上がってくる事柄もあって、ここに順応できないのはわたしの落ち度かなと思ってしまっていたことも実はそういうことでもないのでは?と思わせてくれたというのがとてもいい読書をしたなという感じでした。
世界がわかる宗教社会学入門
2018/10/11 14:42
世界の仕組みをダイジェスト
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宗教+社会学?がピンとこなくて読んでみた。ユダヤキリストイスラム、あたりは他の本でも読んだことあるなと感じたけど逆に日本における仏教、儒教のことを全く知らなかったことを知った。読みやすいわかりやすい、世界史を勉強する高校生たちの参考書に勧めてあげたい。
世界がわかったかどうかはわからないけどわかりやすくまとめてあるので世界史をつまらんと思ってる高校生にそっとこの本を教えてあげたいと思った。現代とのつながりを見せることができればもっと宗教と社会のつながりとか、世界のすべては手順を踏んで今こうなっているということを教えてあげられるんじゃないかな。わたしはこの本、高校生だったときに出会いたかった。実際高校生のときくらいにちょうど文庫本が出ていたし。
きみの鳥はうたえる
2018/10/11 14:27
水曜日さ
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佐藤泰志作品、実は初めてで、すごく硬い文章の人だと勝手に思っていたのだけど穏やかで澄み渡った、けれどすぐ足元に生の気だるさを置いた文章だった。映画版は時代も街も変わっているのにたしかにこの小説から出てきたものだと思った。終わらないようでゆっくり死んでいく時間、常に破滅がちらついている、何か、確かな予感を秘めた時間。
気だるさはふと訪れる死の予感にとても敏感、だから未来を生きられず今の時間だけをさまよっている。破滅はふと、天気が変わるだけのこと。原作を読むと、映画版があれでもかなり「青春」に舵を切ったのだなあと思う、けど映画版もまごうことなくこの『きみの鳥はうたえる』だと思った。
映画版では時代設定が現代になってたけど原作は佐藤泰志が生きた80年代で、スマホもなく、静雄と僕が置き手紙でやり取りするのとても良いなあと思った。「水曜日さ」っていうたった一行の返信が、これ以上なく美しいものに思えた。佐知子が笑い飛ばすのもわかるなあと思った。いちばん好きな一節。
もし、映画にも静雄のAnd Your Bird Can Singをアカペラで歌うシーンがあったならどうなってたんだろうなあと思う。染谷将太がきっとあの遠くを見てる目で、間接照明に横から赤く照らされながら、曖昧なところは鼻歌も挟んで静かに愉快にうたう、彼の声以外には音のない夜だっただろう。
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