John Doeさんのレビュー一覧
投稿者:John Doe
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加藤周一はいかにして「加藤周一」となったか 『羊の歌』を読みなおす
2018/11/30 12:34
「精読とは何か」を指し示す
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現在まで教養書の一つとして読まれてきた『羊の歌』と『続羊の歌』の精読、そして一次史料の検証を通して、「加藤周一」という一思想家の形成過程を明らかにしようという一冊。
この本でも指摘されていたことだが、『羊の歌』と『続羊の歌』は今の我々にとっては読みづらい本になっている。これは、加藤周一と今の我々とが持つ背景知識が全く違う、加藤周一がわざと曖昧に書いていることに起因している。それにも関わらず、我々は『羊の歌』を通して加藤周一を分かった気でいたのかもしれないことに気付かされた。
また、この本では一文字もおろそかにしない著者の読むことに対する姿勢がよく現れている。具体的な動向から家族関係まで、一次史料の調査、綿密な聴き取り、そして著者の幅広い教養をもとに浮かび上がらせている。現在、『~を精読する』という本が多く出ているが、ここまで「精読」したものは珍しい部類に入るだろう。
読後、「本を精読するときには、ここまでしなければならないのか」と感嘆したが、おそらく、ある本を精読しようとするならばここまでしなければならないだろう。そこまでしなければ、「あえて」書かれなかったことにも気付くことは難しくなり、本を通じて著者の「本質」を見抜くことが難しくなる。
この本は、加藤周一という一思想家に対する新たな視点を明らかにする研究に留まらず、本の精読の仕方を指し示すものとしても読める良書と言えるだろう。
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