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忍さんのレビュー一覧

投稿者:忍

119 件中 1 件~ 15 件を表示

三体III 死神永生 上

2021/07/22 23:14

書籍版は字が小さく読みづらい...

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

上巻を読了、作品の内容については下巻読了後にするとして、印象だけを書いておきます。
 前二作にくらべると、読んでも読んでもなかなか進まない印象があり、それは話の内容というよりは、活字が小さくなってページを繰るのが遅くなっているだけと思われる。ただ、数ページ程度のエピソードが並べ立てられているためか、話のつながりが悪く感じる。
 特に気になるのが、前二作でも感じたが、ある時に英雄として奉られた人が、少し時代が変わっただけで手のひらを返したように評価が反転し、悪人として扱われるところ。
 これは現実世界でもよくあることではあるものの、称賛か批判のどちらかしかなく、その中間的な状態がほとんど見られないというのが気になり、ちょっとついていけない感じがした。 作者としては意図的にそういう書き方をしているのか、それとも自然にそうなってしまっているのかは分からないが、何となく現実の中国の世情が反映されているように感じてしまう。
 それを端的に示しているのが、第一作冒頭の文化大革命のエピソードであるのだが、単に中国共産党による独裁がそうさせているのではなく、中国という国や民族の歴史がそうさせているのではないかと感じた。自らの知らぬところで、いつの間にか政権がひっくり返されてしまい、まったく別の民族が支配者になってしまえば、反対意見を言っても無駄であり、無条件に従わざるをえない、あるいは従ったふりをしなければ生きていけない。そういう世界に生きていると、時流に合わせて考え方が変わってしまう、というのもなんとなく納得できてしまう。その一方、心底まで考え方が変わってしまうわけではなく、虎視眈々と次のチャンスを狙っており、いざという時のために、あるいは保険のために、二の手、三の手を用意しておく。
 そういう中国人のメンタリティやしぶとさのようなものがにじみ出ており、日本人では作り出せない作品であり、また完全には受け入れることはできない作品であるとも感じた。

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土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて

2021/01/23 22:31

まるで泥遊びをしている子供のよう

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

雑誌のニュートンに作者監修の記事があり、それが面白かったので読んで見ました。
内容的には、ニュートンの記事は、本書のエッセンスを詰め込んだダイジェストという感じではあったのですが、記事には見られなかった自虐的なネタが面白すぎます。
気鋭の研究者が世界中をかけめぐる、と言ってしまえばかっこよすぎますが、宝の山を目の前にした幼子のような姿が浮かんできます。

また、サブタイトルに表れているように、作者のスタンスが、ただの研究者を目標としているのではなく、研究から得られた知見をもとに実践を行っているところに好感が持てます。

それにしても、存在することが当たり前のように考えていた土も、立派な資源であり、使い方を誤ると石油のように枯渇してしまう可能性があることに驚きました。

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結末には不満もあるが、無事完結したことに祝

5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最後は詰め込みすぎで、もう一巻あってもよかったのではないかと思う。特にエレンの論理やユミルの心をもう少し丁寧に掘り下げてほしいと思った。
よかったのは、ジークとアルミンが出会う場面。絶望・虚無感の中にさしこむ光、それは特別なものではなく、誰もが持っている何気ないけれど、かけがえのないもの、というところが感動的でした。エルヴィンが亡くなり、アルミンが復活した後、アルミンの出番がほとんどなく、存在意義がないように感じていたのですが、最後のどんでん返しのトリガーであったわけですね。
意外だったのが、リヴァイが満身創痍でありながら、最後まで生き残ったこと。最後の突撃で亡くなるのかと思っていたが、あっさりと突撃に成功してしまうのが拍子抜けでした。最後の突撃で重症を負い、それが致命傷になって、エルヴィンやハンジに迎えられながら息を引き取る、あるいは最後の突撃で腕を失って、心臓を捧げよのポーズができないはずなのにできているとか、最後にケニーが出てきて引導を渡すというようなシーンを妄想をしてしまいます。

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電子版の特典がうれしい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

書籍版を古本でもっており、迫力はやはり大きな書籍版に譲りますが、書籍版の刊行以後に発表された作品を載せた電子版の特典がうれしいところです。特に真幻魔大戦の第二部から第三部、およびそれらの文庫表紙のあたりは神がかり的に素晴らしい出来栄えです。残念なのは、巻末の索引がありますが、これにリンクが張られておらず、クリックしても移動できないところです。

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老神介護

2022/10/23 20:47

日本語のタイトルがいいセンスをしています

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「流浪地球」と合わせるように四文字漢字のタイトルにしたのだと思われるが、「老親介護」ならぬ「老神介護」はできすぎという感じがします。小松左京か筒井康隆が同じネタで書いていてもよさそうなアイデアで、どういうオチになるのかと思っていたのですが、最後は作者らしい大ネタになり、次作につながっていきます。
どの作品もSFの黄金時代の奇想と現代社会を取り巻く問題が、疑似科学を含めたハードSF的なアイデアと力業でねじ伏せられるという感じです。まさに「SFは絵だよねぇ」を感じさせてくれる作品集です。

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スッキリわかるC言語入門 第2版

2022/02/27 21:53

トンデモ本? かと思いきや…

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かなり最初の方でtypedefを使ってString型を定義しており、完全にダメダメな本かと思ったのですが、配列型やポインタのわかりにくさを一時的に回避するための苦肉の策として持ち出してきたものであり、それが功を制していて、スムーズな流れでC言語を理解することができると思います。
全体の構成は、前半部はC言語の文法のなかで重要なものを選択して説明し、後半はmakeやdoxygenのようなツールの紹介や開発の流れ、C言語の規格の状況やほかのプログラミング言語の紹介などがあり、最後に補足的にC言語の文法の落ち穂拾いをするという流れになっていて、かなり斬新な構成だと思います。
かなり斬新な構成で、勘違いしてStiring型を使ってしまう人もいるのではないかと危惧してしまうのですが、C言語だけを使い続けるのではなく、そのほかの言語も含めて状況に応じて使い分けていくという流れから考えると、初心者向けの良書かと思います。

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本のタイトルは地味ですが、内容は非常に刺激的です

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の第二作「土 地球最後のナゾ」は気鋭の研究者の珍道中という感じでしたが、第一作の本書はもう少し科学寄りな内容で、一般ウケしにくいかもしれませんが、個人的には非常に刺激的な内容でした。
5億年の歳月をかけて微生物と植物が蓄積してきた土壌という資源を、1万年前にホモサピエンスが利用し始め、近代化とともにそれを搾取するだけでなく、それの代替となる発明をすることで、逆にしっぺ返しを食らうというのが現代。
文明の勃興や環境・エネルギーの問題も、(すべてではないにしろ)その根本に土が関わっているという視点は、学校の社会科の教科書では教えてもらえない内容です。
そう考えると、歴史という学問・教科は人文科学の考え方に偏りすぎており、もっと自然科学的な考え方を導入していく必要があるのではないかと思いました(飛躍しすぎかもしれませんが...)。
かなわぬことではありますが、SF作家の小松左京さんがご存命であられたら、この本をどう評価されただろうか、と考えてしまいます。

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100均が日本の成長を阻害している

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

全商品が100円という状態はすでに過去のものとなっているが、いまだに100均が存続し続けられていることが日本のデフレを象徴していると感じていた。それがデフレの結果ではなく、100均そのものがデフレの原因になっているという視点が目新しく感じた。
昔に比べれば品質が向上してはいるが、それでもやっぱり100均の品質であり、売る方も買う方もある程度妥協することを受け入れてしまっている。試しに買ってみて、当たればラッキー、はずれてもワンコインの損失、という感じで失敗しても捨ててしまえばよいという風潮になっており、消費者は商品を見定める目を身に着けることができない。同じことは店員にも当てはまり、商品の陳列とレジ打ちの接客をしているだけで、バイヤーとしての実力は何もない。そうやって日本民族が劣化していくのを助長しているのが100均。
同じようなビジネスモデルを行っている他社の経営者を見ていると、儲けることしか考えていないような発言ばかりで、売り手と買い手がWin-Winな関係であり、それが支持されて大儲けしているのが何が悪い、というような論調に聞こえるが、そこには三方よしの考え方や社会全体が潤って成長していくという理想はうかがえない。
そういうことを感じた本でした。

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タイトルが意味不明であり、サブタイトルはそのまんまという感じ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

過去の追憶からストーリーが展開し、途中から二つのパラレルワールドのはなしになっていく。現在や過去といった章タイトルに加え、もう一つの過去という章が現われ、最終的に現在パートでエンドとなり、その世界の秘密が明かされるが、それよりももう一つの現在がどうなったのかが気になった。

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はずれなしの短編集

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

未翻訳短編の寄せ集めになるか、と思っていたのが大間違い。
どの作品も面白く、本書以前の短編集も含めて、全くはずれなしというのがすごすぎます。
作品的には「フィールズ・オブ・ゴールド」が面白く、期待にあふれて全人類が見守る中、それが絶望に変わっても、未来を志向していくという力強い意思が感じ取れました。

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肥料争奪戦の時代 希少資源リンの枯渇に脅える世界

2024/02/23 14:04

面白いけれど、日本語タイトルは本書の一部しか表していない

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

肥料に必要なリンに関わる様々な課題を取り上げた本。
 内容は非常に面白く、様々な登場人物が現れて短いエピソードとしてつづられているため、読みやすい。NHKスペシャルとして2回シリーズくらいで映像化されると面白いと思う。

 かつて、リンが含まれた洗剤による公害が問題になったことがあったが、今では農業(特に酪農)で排出されるリンによる公害が問題になっている。前者は、少数の企業が作った製品を多くの一般市民が使ったことで幅広いエリアの問題であることが分かりやすかったが、後者は多くの農家から知らず知らずのうちに排出されてしまったものが、その下流域という比較的狭い領域に影響を及ぼすため分かりづらい、という違いがある。
 アメリカで書かれた本であり、農業の規模がそれほど大きくはない日本には当てはまらないのかもしれない。それでも昭和の時代には瀬戸内海の赤潮問題、琵琶湖の富栄養化問題に対する無リン洗剤の広がりがあり、今では海の貧栄養化による海産物の不漁、ロシア-ウクライナ戦争による肥料高騰とそれへの対策として下水汚泥の肥料への活用などの課題があり、根本的な部分にリンの循環のサイクルが関係していることに気づかされる。

 なお、タイトルを見ると、リンの希少性に対する経済的な観点からの問題を取り上げたように思えてしまうが、それは第1部リン争奪戦の内容であり、公害問題を取り上げた第2部リンの代償、それらの問題の解消策の第3部リンの未来の内容が抜け落ちています。本の腰巻やカバー折り返しに書かれている文言も、「リンの枯渇」や「一人の国王が独占」という煽り文句がクローズアップされ、原著タイトルTHE DEVIL'S ELEMENT(悪魔の元素)とは少々かけ離れている。

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表紙とサブタイトルに偽りあり(笑)

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

正月三日の話。大晦日の夜以来、東丈は失踪状態で、GENKEN事務所をあずかる杉村由紀はヤキモキしている。秘書見習である平山圭子のほか、野沢緑、夏本幸代をまとめ上げていく役割も荷が重い状態。そんな中、8巻末に登場した女優が性懲りもなくやってきて来て丈に会わせろと催促。その場にいた高鳥が相手を務めるうちに、女優のボディーガードを果たすことに。女優に対する江田四朗=幻魔の攻撃に対抗する中、いつしか自分の超能力がパワーアップしていることに気づいていき、やがて悪の救世主への道に陥っていく...一方、真冬の大峰山脈で一人祈っていた丈のところに、入院中で翌日に手術を受ける予定の井沢郁江が出現、なぜか卵巣癌が治癒してしまったらしい...
 40年前の初読時には、表紙とサブタイトルの内容から、1~3巻のようなドンパチが始まるのかと期待して読んでいたのですが、完全に裏切られました。大峰山脈とベガを思わせる石像は、この時点では唐突な感じがして、どういう理由で登場させたのかが分かりません。それが理解できるのは、並行して執筆されていた真幻魔大戦がエピソードが進んでからで、本作の初出(1981.3)から半年以上たってから(1981.12~1983.3)になり、たびたび言及されてきた役行者にもつながってきます。
 この巻で東丈は悟りを開いたのか、以降は雰囲気が変わって内面を伺わせる描写がなくなり、何を考えているのかよくわからないようになっていきます。それに反比例して変貌した高鳥のストーリーに重点が置かれていきます。

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2巻は原作コミックにはないシーンから始まります

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超能力に目覚めた主人公の東丈は、その力に戸惑い気味で不安定な状態。そんな丈を姉の東三千子がささえるという流れ。姉とともに超能力で夜空を飛ぶシーンがすばらしい。特に、過去の素晴らしい思い出として述懐しているところが、後の悲劇と対比するように描かれており、「昔はよかった」的なノスタルジーであふれています。
 このあたりのシーンは、原作のコミックにはない小説オリジナルの部分であるためか、主人公の雰囲気が1巻と3巻とはやや異なっているように感じられます。また、三千子が幻魔に襲われるシーンがありますが、無事切り抜けられたものの、場面が切り替わってしまうため、幻魔の脅威が現実のものになっているのに、あっさりとした1シーンのようになっており、不自然な感じがします。
 場面が変わってニューヨークのシーンは、原作そのままなのですが、有色人種に対するルナ王女の偏見が原作よりも深く描かれています。このため、黒人に対してだけでなく、黄色人種に対しても偏見があることが、原作よりもよく理解できます。

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第一巻にはすべてがあった

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アニメ映画化された頃に出会って以来、何度目かの再読。何度読んでも1~3巻は最高のノリで、初読時には小説ってこんなに面白くてもいいんだ、と思ったのを覚えています。後のグダグダ感のただよう展開から比べると、あっさりとしすぎているようにも思えますが、コミックをノベライズするというスタンスなので仕方がないところでしょう。超能力に目覚めた主人公が、英雄になることを妄想する場面がありますが、その内容が4巻以降の展開をなぞらえているようにも思われ、またラストがバッドエンドを思わせる内容になっており、シリーズ全体のダイジェストのように思えました。発表されたのが1979年で、描かれている場面は1967年(春~夏)のため、古臭く感じてしまうのは仕方のないところですが、名作です。

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NHKラジオを聞いて読んでみました

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ラジオ番組「国語辞典サーフィン」でサンキュータツオさんを知り、読んでみました。
 番組の内容そのまま(というか、本の内容がそのままラジオ番組になった)からスタートして、言葉の面白さに気づいたところから、やがて国語辞典の擬人化=キャラクター化にたどり着き、国語辞典の魅力に取りつかれる、という流れになっています。
 この国語辞典キャラが抜群に面白いところですが、ちょっと間違うと書籍の宣伝になってしまうので、NHKの番組では取り上げにくいところですね。ビジュアル化されたキャラという点でも、ラジオには向いていないですし...
 自分の中でヒットしたのが、三省堂国語辞典の項にあった鏡(かがみ)と鑑(かがみ)の違いです。言葉を写す鏡と言葉を正す鑑。
 常に変わり続ける言葉をどう切り取るか、という考え方の違いであり、どちらが正しいというものではないのですが、ややもすると正統と異端、保守と革新のような二項に単純化して考えてしまいがちです。そう言うところに対して、どちらか一方に軍配を上げるのではなく、どちらもあり、というバランス感覚がよいと思いました。

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