サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 巴里倫敦塔さんのレビュー一覧

巴里倫敦塔さんのレビュー一覧

投稿者:巴里倫敦塔

43 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本トランスジェンダー入門

2023/09/11 15:59

海外事情を含め、トランスジェンダーを広範にカバー

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

トランスジェンダーという言葉の定義から、性別移行、差別、医療、法律など、海外事情を含め広範な領域をカバーした書。トランスジェンダーの現状と問題点、トランスジェンダーの人にどのように接したら良いのかを知ることができる入門書で、多くの方にお薦めできる。東京大学の生協でベストセラーの上位に食い込んでいるのは喜ばしい限りだ。
 筆者は「よくある勘違い」をいくつか紹介しているが、評者自身に当てはまるケースも少なくない。トランスジェンダーについて分かったつもりだったが、いかにいい加減な知識だったかを痛感させられる。
 本書は、「トランスジェンダーとは?」から始まり、性別移行、差別、医療と健康、法律、フェミニズムと男性学へと議論を進める。筆者は、トランスジェンダーとはどういった人たちで、性別を変えるためには何をしなければならないのか、どのような差別を受けているのかについて、具体例を挙げながら解説する。
 データに基づいて日本社会や政治の問題点を鋭く突く。例えば性別移行については、精神的移行、社会的移行、医学的移行について紹介する。差別についても、家庭や学校教育、就労、貧困、メディア、メンタルヘルス、性暴力、戸籍をはじめとした法律の壁など多角的に問題を提起し、重たい課題を我々に突きつける。トランスジェンダーの権利の問題が、公衆浴場やスポーツといった局所的な場面の問題にすり替えられている状況に憤る。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

ベンチャー経営の大変さや楽しさを軽妙・洒脱な文章で表現

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

DeNA創設者で経団連副会長の南場智子が筆をとった、DeNA立ち上げ時とその後の悪戦苦闘を題材にしたビジネス書。「それにしても、マッキンゼーのコンサルタントとして経営者にアドバイスをしていた自分が、これほどすったもんだの苦労をするとは……」と実感がこもった記述がそこかしこに登場する。ベンチャー経営の大変さや楽しさを軽妙・洒脱な文章で表現しており、お薦めの1冊である。
 9年前に上梓された書だが、読むタイミングを逸して長らく本棚の肥やしになっていた。読む本がなくなり、ずっと気になっていた本書を手にとったが大正解だった。経営者としてのロールモデルは誰か、MBAは役立つか、コンサルティングと経営は別物など、率直な意見を吐露している。9年前の書とはとても思えないほど面白い。
 記者時代に取材先だった日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)の村口和孝がキーマンとして登場しているのにも驚かされた。村口氏がDeNA創設に関係していたとは寡聞にして知らなかった。9年前の書なので仕方がないが、根拠のない怪しげな情報を垂れ流していた、DeNA運営の健康情報サイトWELQについての見解を知りたいところである。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

オンライン・オープンソースを駆使して真実に迫る手法は見事

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

情報技術を駆使することで調査報道を根本的に変える「報道のDX」を紹介した書。新聞では英調査報道機関と形容されることの多いべリングキャット(Bellingcat:猫に鈴をつけるの意味)社の成り立ちと調査プロセスの詳細を創設者自らが語る。地図情報(GoogleMap)やSNS、画像、動画、流出データベースなど、手に入る膨大な“オンライン・オープンソース”を駆使して真実に迫る手法は見事である。
 最近では米ニューヨーク・タイムズなどが同様の手法を取り入れ、「シン・調査報道」は広がりつつある。日本では日本経済新聞がレベルは低いものの取り入れ始めている。取材をせずインターネットの情報だけで作り上げる「こたつ記事」の評価は低いが、オープンな情報を使いこなして真実に迫るべリングキャット社の「安楽椅子探偵」の手法は一線を画す。今後のメディアの在り方に興味のある方には必読の1冊だろう。
 筆者は、ロシアのプーチン政権やシリアのアサド政権など、平然と捏造や隠蔽、嘘をつく権力者に立ち向かった具体的な事例の数々を紹介する。基本方針は特定、検証、拡散である。見過ごされている問題や発見されていない問題をネット上で特定し、あらゆる証拠を検証し、けっして推測に頼らない。わかったことを拡散し、広く知らしめる。
 べリングキャットが躍進したキッカケは、ロシアがウクライナ領域で撃墜した「マレーシア航空17便」の事件である。ロシアは、4D法(Dismiss否定、Distort歪曲、Distract目眩まし、Dismay恐怖)を駆使してしらばっくれる。べリングキャットは、公開情報を駆使して、ミサイルの種類、ミサイルの位置と場所などを特定し、ロシアの犯罪だと追い詰める。SNSの写真の背景からGoogleMapを使って場所と時刻を特定する過程はスリリングである。同様の手法が中国にも通用するのか興味のあるところだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

哲学者は「社会の虻」は言い得て妙

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「暇と退屈の倫理学」の続編。前著が経済問題が中心だったが、本書のターゲットは「新型コロナ政策から見えてきた政治の問題」である。高校生向けと東大生向けの2つの“講話”を書籍化したもので、深く考えることの重要さを説く。イタリアの哲学者アガンベンの発言をキッカケに、アーレントやヴァルター・ベンヤミンなどの著作や発言を咀嚼しながら解説を加えており、とても分かりやすい。哲学者は「社会の虻(あぶ)」という見立ても興味深い。その昔、米IBMが人材募集に使った「虻のように口うるさい人、異端者を求む」というキャッチコピーを思い起こさせる。
 筆者は、新型コロナ危機以降の世界に違和感を感じ、その正体に迫る。新型コロナ以来の息苦しさは、「あらゆることを何かのために行い、何かのためではない不要不急の行為は認めない、あらゆる行為はその目的と一致していて、そこからずれることがあってはならない」という風潮から生じるとする。「人間が自由であるための重要な要素の一つは、人間が目的に縛られないことであり、目的に抗するところにこそ人間の自由はある」と断じる。“タイパ”重視は人間の自由とは真逆というわけだ。
 今回の講話は、アガンベンの「根拠薄弱な緊急事態を理由に甚大な権利制限が行われ、それを当然と受け止めるていることの怖さ」を指摘した発言をトリガーに展開される。新型コロナが権利の制限を拡張する理想的な口実となり、人間にとって最も苦しい罰となる「移動の制限」につながったと述べる。哲学者のアガンベンは移動の制限の根底にある危険性を明らかにし、政治家であるドイツのメルケルは移動の制限の必要性を切々と国民に訴えた。2人はともに自らの役割を確信をもって果たしたと評価する。日本の政治・行政・官僚支配の危機的状況への指摘も鋭い。多くの方に勧めの1冊である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

常識の誤謬をデータを駆使して論破した書

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

常識だと思いこんでいる勘違いを、データを駆使して論破した書。勘違いとしては例えば、「世界は戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方である。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きる」。世の中を正しく見るためのポイントを的確に押さえた書である。明晰な分析と優れた訳文のおかげで、約400ページの書だがあっという間に読み通せる。
 勘違いを生むのは、分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン本能、宿命本能、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能である。メディアはこの本能を利用して「世界をドラマチックに仕立て上げる」。こうした本能がマスコミの雇用を支えていると手厳しい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本論点・日本史学

2023/07/20 16:06

教科書とは違う楽しみ方ができる日本史

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本史研究で論点になっている事項を網羅的に紹介した書。日本史を古代史、中世史、近代史、現代史に分け、154件の論点を示す。読者に評価を押し付けることなく、最新の研究を含め“素材”“諸説”を示すことに専念する。「こんな出来事も評価が定まっていないんだ」「こんな見方もあるんだ」と、教科書とは違う楽しみ方ができる。日本史への興味が湧く書で、多くの方にお薦めである。
 A4判と大きく、紙質が良いこともあってけっこう重いので、持ち運びに難がある。出勤時や出張時に読むのには向かない。本書は一つの論点を見開き2ページで示しているので、寝る前に1件ずつ読む進むといった方法が良さそうだ。1件あたりの文章も、A4判と大きいこともあり分量的にも適度なのでお勧めの読み方である。     
 本書のカバー範囲は広い。古代史では、縄文時代や弥生時代、邪馬台国といった定番を含め、国家仏教と行基、木簡から見える古代の日本、武士論といった話題をカバーする。中世史で取り上げるのは、平安後期・鎌倉期の僧侶のネットワーク、鎌倉期・南北朝期の朝廷と公家社会、室町期の荘園制、中世の身分制と差別、中世城館の機能と特質、中世の「家」と女性、などである。近世史では、村と百姓、江戸幕府による朝廷の位置づけ、江戸の町人社会、被差別身分、女性の役割などをカバーする。近現代史では、「武士」の近代、下層社会と貧困、アイヌと沖縄人の近代、ジェンダーと近現代、原子力と核、在日コリアン、公文書と近現代史研究と現代に通じる話題がぐっと増えてくる。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

女性アスリートの抱える課題あど、旬の話題をカバー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アスリートは体作りやパフォーマンス向上のために、どのような食事をどのように摂っているかを探ったノンフィクション。食事だけではなく、筋トレや腸内環境・腸内フローラ、サプリメント、女性アスリートの抱える課題といった旬の話題もカバーする。最適な食事を摂るために血液検査を受けた大谷翔平選手の話題が登場するのも嬉しい。肩のこらないテーマを扱っており、移動時間や休日などに読むのに向く。
 取材対象は、相撲の押尾川親方、プロレスの棚橋弘至と武藤敬司、陸上長距離の新谷仁美といったアスリートのほか、駒沢大学陸上競技部の寮母(大八木監督の奥さん)、スポーツ栄養学の専門家、体脂肪計(タニタ)の開発者など。彼ら・彼女らのインタビューをベースに歯切れのよい文体で綴る。アスリートの中では押尾川親方、棚橋弘至、新谷仁美の話がそれぞれの個性が出ていて興味深く読める。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

幅広い視野での自閉症の解説に役立ち感

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

自閉症についての理解を深めることのできる書。エジソンをはじめとして自閉症の人々が発明や発見によって人類の進歩に寄与した事例を紹介する。筆者は英国の心理学者・精神医学者でケンブリッジ大学の自閉症研究センター長を務める人物。牽強付会と感じる部分もあるが、具体的事例や脳医学の知見を含め幅広い視野で自閉症について解説しており役立ち感がある。    
 脳には2つのメカニズムがあるとする。完全なシステム化メカニズムと完全な共感回路である。前者は「もしならば(if-and-then)」パターンの識別に特異な能力につながり、この傾向が強く出ると自閉症につながる可能性が高まるという。同時に人間のif-and-thenを探る能力が、ホモ・サピエンスが地球を支配できた原動力になったとする。技術者と自閉症の関係にも踏み込む。STEM(科学・技術・工学・数学)分野に貢献している人材は、一般人よりも自閉症の子供を授かる可能性が高いとデータに基づき論じる。     
 社会に利益をもたらすだけではなく、雇用が自閉症者の精神衛生状態を大きく完全させるので、自閉症の人々の支援を整備した雇用枠を拡大すべきだと説く。自閉症者の斬新なアイデアは、周囲のサポートがあってこそイノベーションになりうると強調する。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

電子書籍

電子書籍小さな企業が生き残る

2022/10/10 11:06

小企業がトランスメーションするためのエッセンスが詰まっている

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者が実践したAX(アナログトランスメーション)の事例を紹介した書。苦境にあえぐ地方の伝統産業の零細企業が、ビジネスを変革して再生した4つの事例、12の方策、自らの強みを見つけるための方法論で構成する。残念ながら2017年出版とあってDXは登場しないが、小回りが利く小企業がX(トランスメーション)するためのエッセンスが詰まっている。失敗事例についても取り上げていたら、本書の価値はもっと高まっただろう。
     
 著者は、今年のET&IoT Westのパネルディスカッション「ヘトヘトNIPPONからわくわくNIPPONへの挑戦」にパネリストとして登壇したデザイナー。軽妙なトークが持ち味だが、本書にも生かされている。親近感のわく語り口と抽象論に陥らない具体性が本書の特徴である。
     
 筆者は考動(考えて動くこと)と売ること、製造と販売を一体にして自社商品を作って自走することの重要性を説く。「とりあえず」で作ってはいけない。企画が感じられない商品、流通を考えていない商品、生産を考えていない商品は消えていくと断じる。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本現代ロシアの軍事戦略

2022/07/19 15:06

ロシアのウクライナ侵略以前に出版された書籍だが陳腐化していない

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ロシアの軍事・安全保障の研究者が、軍事的にも経済的にも「弱いロシア」が体面と大国意識を保つために、どのような軍事戦略を採っているのかを分析した書。ロシアのウクライナ侵略以前(2021年5月)に出版された書籍だが、さほど陳腐化していない。ウクライナ侵略の現状を理解するのに役立つ指摘もあり、読み応えがある。著者の専門家としての眼は確かで、テレビに引っ張りだこになっている理由がよく分かる。ウクライナ侵略の背景を知る上で必読の書だろう。
 筆者はロシアの軍事・安全保障戦略の中核を「ハイブリッド戦争」と位置づける。直接軍事力を行使するクラシカルな戦略だけではなく、非軍事的手段を組み合わせる。すなわち、サイバースペースでの攻撃、電磁波を用いた電子機器への攻撃、人の認識を操作し侵略を正当化する情報戦(プロパガンダ)を織り交ぜて、NATOや米国と対峙する訳だ。
 一方の欧米(NATO)もハイブリッド戦争を前提に戦略を組み立てる。実際クライナの現状を見ると、クリミア占拠(2014年)とシリアへの軍事介入(2015年)におけるロシアのハイブリッド戦争を参考に、NATOや米国が対応している様子もうかがえる。
 戦術核兵器使用に関する分析も注目に値する。いわゆる「エスカレーション抑止」である。限定的な核使用によって敵に「加減された被害」を与え、戦闘の停止を強要したり、域外国の参戦を思いとどまらせるというものである。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本人口減少社会のデザイン

2020/03/29 15:46

人口減少社会が持続的であるためになすべきことを多角的に論考

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本にとって喫緊の課題となっている「人口減少社会への対応」に興味のある方にお薦めできる1冊である。
 筆者は、人口減少社会が持続的であるためになすべきことを多角的に提案する。ドイツ以北の欧州を手本にしたコミュニティ重視のまちづくりや、鎮守の森・自然エネルギーコミュニティプロジェクトなど、耳を傾ける価値のある提案も登場する。著者のリベラルな思想には賛否があるかもしれないが、高度経済成長の呪縛をいまだに引きずり、経済成長がすべてを解決するという幻想に取り憑かれた日本にとって興味深い論点を提示しているのも間違いない。
 筆者は人口減少社会の意味から説き起こし、コミュニティやローカライゼーションの重要性について論じる。その後、人類史における人口減少の意味を位置づけ、ポスト成長社会を議論する。さらに持続可能な社会保障、持続可能な医療、持続可能な福祉社会といった時宜にかなった論点について持論を展開する。死生観といった話題を取り上げるのも本書の特徴である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本ネットは社会を分断しない

2019/12/16 11:09

定説を大規模調査で打ち砕いた書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「インターネットは社会の分断を助長する」「インターネットは罵詈雑言の世界で、エコーチェンバー現象で過激化する」「若者は保守化している」といった世の中で流布する定説を、10万人規模の大規模調査データに基づいて打破した書。
 分極化し過激化しているのはインターネットを使わない中高年層である。インターネットを介して多様な情報に触れている若者層は、相互理解を深めて穏健化しているという。ヤフーなど大手ネットメディアの利用者は分極化していないというのも興味深い。FacebookやTwitter、ブログの利用者では左傾化と右傾化が同時に進行し、分極化が進んでいるとする。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

多彩な登場人物も魅力

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

阪急電鉄、宝塚、東宝、阪急百貨店などを立ち上げた稀代の事業家・小林一三の評伝である。生い立ちから、不遇の銀行員時代、鉄道事業への進出、宝塚、少女歌劇団、映画や演劇の東宝の立ち上げ、政治家時代、戦中戦後に至る小林の足跡を丹念にたどっている。著者はフランス文学者で、渋沢栄一の評伝も手がけた鹿島茂。全般に手慣れた感じで安心して読み進むことができる。
 小林の凄さは、「需要がなければ生み出せばいい」という思考パターンである。例えば阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道の立ち上げに際しては、「乗客がいなければ作ればいい」と考え沿線の宅地を開発した。阪急百貨店のターミナルデパートしての特徴を十二分に活用した経営手腕にも思わず唸らされる。筆者はビジョナリスト/イノベーターとしての小林一三、ビジョナリー・カンパニーとしての阪神電鉄についてしっかり書き込んでいる。渋沢栄一や松永安左衛門、鳥井信治郎、岩下清周、五島慶太、岸信介、古川ロッパなど、多彩な登場人物も本書の魅力の一つである。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

賢い生き方やより良い生き方についての指針を示した書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

仕事や人生、健康におけるタイミングの重要性と、タイミングとは科学だとを説く書。How to本ならぬ、When to本で、視点がユニークだ。人間の肉体的/心理的状態に対する新たな知見を示している。学際的な研究やデータに基づいて議論を進め、賢い生き方やより良い生き方について役立つ指針を示している。
 本書が対象とするのは、仕事の種類とタイミング(朝・昼・晩でやるべき仕事は何か)、運動のタイミング(減量や鍛錬、怪我を考慮したタイミング)、休むタイミング(注意力を高める休み方)、休憩と成績の関係などだ。結婚や転職のタイミングや事業の始め方、中年の危機などについても考察する。読んでていて楽しくなる書である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

新聞などの報道を正しく理解するために役立つ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

先進国における日本の生産性の低さが問題となってる。戦後最長の景気回復を達成したが、日本の潜在成長率は1%程度と低い。その元凶が生産性(正確には全要素生産性)向上の停滞である。本書は分かったつもりになっている生産性について、高めることの意味や、高めるための処方箋などを論じた書である。新聞などの報道を正しく理解するために役立つ。生産性を明快に解説しており、多くの方にお薦めできる。
 日本の生産性が低いのは、低生産性の企業を延命し、生産性向上を図るために仕事のやり方を変えようとする活力を失わせ続けてきた政策が原因と筆者は語る。AIなどの技術革新はあるものの、それをビジネスに適用しやすくする制度改革や組織改革がないために、生産性が停滞していると分析する。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

43 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。