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投稿者:n
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コウルリッジ詩集 対訳
2019/03/01 18:08
長大な幻想詩
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アウシュヴィッツ強制収容所の生還者であるプリーモ・レーヴィは,手記『アウシュヴィッツは終わらない』を生還直後に書きましたが,それから40年後に癒えない苦しみとの戦いの記録を『溺れるものと救われるもの』において著しました。
そのエピグラフに引用されているのが,コールリッジの「老水夫行」です。(上島訳ではありませんが)
「それよりこの方いつとはなしに/かの苦悶また帰り来たるや/わがもの凄き話終へでは/この心衷に燃ゆるなり」
ある苦難を経験した老人が,永遠に消えない苦悶の記憶を,語り続けることなくしては,憎しみに心を焼かれる様がたったこの四行から伝わってきます。
コールリッジの背景は知りませんでしたが,この言葉の力強さに引かれ,この本を手に取りました。
しかし,この詩が,この岩波文庫で,「幻想詩」に分類されていることからもわかるように,人生の教訓や,辛い思いを内に噛みしめる老人の苦悩が歌われているのではなかったです。
むしろ,想像の戯れの冒険譚として,ファンタジー映画を見ているような,ワクワクした気持ちを味わえました。
同じ詩でも文脈によって全く異なる効果を与える一例として大変興味深かったです。
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