undecaneさんのレビュー一覧
投稿者:undecane
ハイエク全集 新版 新装版 1▷別巻 隷属への道
2019/05/08 15:23
新自由主義に続く一作
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
1929年から続いた恐慌、大戦期において、社会は右派左派を問わず、全体主義の方向に向かっていた。ハイエクはこの世界の流れの中で、人類に本当の意味での「自由」を保持し続けることができるのだろうか?と問うている。
むらさきのスカートの女
2019/08/24 02:15
狡い人間の生態を克明に映し出している
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
平易で精密な文章が読みやすく、そして複雑なネットワークが見え隠れする今村先生の良作。
隠喩、直喩に留まらない換喩、提喩といった比喩表現も積極的に用いられている。
既出の『あひる』に見られるような"固有名詞の無さ"加減は極まりすぎて突き抜けている。加えて、クライマックスの部分は現代社会に対してのメッセージが分かり易く示されている。
過去に太宰治賞を受賞している今村先生。
彼の作家の著作『人間失格』の主人公葉倉に対するクライマックスの表現、「神様みたいな良い子」と関連付けて見ることができる点が面白い。
今村先生は"聖母"を救済を求める対象とし、主人公は"聖母"からその席を譲られてしまったように見える。(逃げられたとも、押し付けられたとも言えそうだが)
この他にも何気なく書かれているワードの一つ一つに重みがある。
こんなに狭い世界の描写で、よくこれ程のことを主張できるな、表現できるなと僕は思った。
本作を薄っぺらく感じる人は、普段相当難解な書籍を読んでるか、字句通りに読み流したために読みこなせていないかの何れかだろう。悪いこと言わないので、下記のワードに注目して再度読み直してほしいな思う。
以下気付くと解釈が変わると思われるワードの部分を挙げる。
(ネタバレにならないように注意したが、なっていたら申し訳ない)
p16新聞の人生相談コーナー
p21バザー
p44果物が嫌い
p52オレンジを食べる
p55動物園
p65飲めない人、下戸
p74注意書き
p78聖母
p87生臭い匂いのシャンプー
p88無理やり合わせている
p112腐ったバナナ
p116血みたいな色の爪
この他にも注目したい個所はあるが、この辺だけでも抑えると見方が変わる方、出てくるのではないだろうか。
むらさきのスカートの女への周囲の評価、ベンチ、子どもたちによるタッチ、フレッシュフローラルなシャンプー、「ともくん」の回数、が意味するところも大きい。
猶、関連ワードの変遷や、ワード登場時の周囲の状況、に注意すると読み込みが深くなる。
短い作品なので、是非、一度と言わず、三度くらいは読んで欲しい。
ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界
2019/05/21 23:16
ハーメルンの笛吹き男ーその成立に迫る
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皆さんおなじみ、ハーメルンの笛吹き男。
この話には大きく分けて二つの部分が存在する。
一つは子どもたちの連れ去り事件。
もう一つは鼠の大量発生とその除去。
前者についてはかなりの部分が謎に包まれていて、
13世紀の事件当時の記録について、さまざまな仮説について検証している。
特に一般市民の生活や心理状態などに関しても考察している点は、
事実だけによる歴史解釈とは異なることもあるので、大変興味深い。
珠玉の一作
測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?
2019/05/08 14:58
データの取り扱いに関して、考えさせられる一品
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本書において著者は、「データ至上主義」的様相を呈する現代社会に関して疑問を呈している。データをどこまで信用していいのか、運用は適切なのか、改竄はされていないか、等々。実際の事例(米国が主であるが)に即して、データ運用に問題が無いのか、考えさせられる。
孤独な娘
2020/01/29 15:14
クールミリオンと合わせて読みたい
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ニューエイジに続く社会情勢への不満を面白おかしく表している作品です。
明るい話では決してないですがウェストの作品は目を通しておきたいものです。
新潮版の「いなごの日・クールミリオン」と甲乙つけがたいなと私は思いました。
ヒトラー語録
2019/09/18 23:00
八割以上胸のすく、的を得た言葉の数々
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表題の通り、(多分)誰もが思っているけれど言わないこと、言えないことが書かれている。現代社会でも通じる点がなかなか興味深い。
女性参政権、ユダヤ人問題に関しては19世紀的な感覚も見え隠れするが、逆にそこを除くと今日でも納得できてしまう点が多い。
(ユダヤ人問題についてはマルクスの著書『ユダヤ人問題によせて』や『シオン賢者の書』も併せて確認したいところ)
また、ポリシェビズムに対して相当危機感を抱いていたのが見て取れる。
(でも、社会主義運動前は、左派運動してた時期有ったよね…?)
重版されるかわからない本なので、気になる人は早めに確認して入手することをお勧めします。
あひる
2019/08/24 01:07
精密過ぎて捉えどころがなく、そこに魅力がある
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平易な文章で描写性に富む今村先生の文章は一見、とらえどころがない。
風景がただ流れていくようだ。
ただ、"何か"を伝えようとしている"違和感"が一度読むと感じられる。
次に付箋紙を持ちながら"違和感"を持ったワードを追っていくと何か今村先生の意図することが見えたような気がしてくる。(あくまでも、気がしてくる)
次第に、アヒルや私、両親や"お客さん"の意味するところ、役割が見えてくる。(気がする)
一つ一つのセリフや単語が物語の中を縦横無尽にネットワークを構築し、意味のつながりを構築している。
複雑なネットワークを読者に分かり易く伝えるために、あえて美辞麗句で飾らず、平易な文章を編んでいる。
これは、芥川賞受賞作の"むらさきのスカートの女"で極められることになる。
IRT入門 「新テスト」の学力測定方法を知る 基礎知識からテスト開発・分析までの話
2019/08/24 00:19
式を可能な限り排除して説明している入門書
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項目反応性理論(IRT)の"理解"の為の入門書。
IRTから得られるデータがどのように算出されたものなのか大雑把枠組みで理解できるだろう。
本理論は大学共通テストでも利用されることから高等学校の先生は知っているに越したことはないし、一部の県学力調査で導入が進む小中学校の先生方も目を通したい。
点数・偏差値に代る新しい評価軸であることが実感できるはずだ。
世界名言集
2019/07/19 12:01
慣用句でもことわざでもない。一味違う味わい
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一般に知られる用語集は、熟語・慣用句・ことわざの羅列に終始しているが本書はそれらとは少し違う。
岩波文庫既刊タイトルについて、作品の根底・エッセンスとなるような部分だけを引き抜いて作られており、読んだこともない作品を感じ取れるようにできている。
ありきたりでない、ちょっとスパイスの効いた言い回しを欲している人にはうってつけだ。
ただ、個人的な視点で見れば、『道草』を持ってくるなら、「知に働けば角が立つ,~」の部分は採用して欲しかったな、と思う。
教育のワールドクラス 21世紀の学校システムをつくる
2020/01/29 15:21
世界各国の教育事情についての記載が多数あり
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教職に携わる身なので興味が湧いて手に取ってみました。
各国の教育事情から、各種指標との相関など、何が教育に関わってくるのかという点についてデータを用いて説明してくれています。
OECDの報告書を読めばいい話なんですが...(長いし、英語じゃないですか。読めなくはないけど…)
要点がまとめられている本書はいいんじゃないでしょうか。
ただ、相関関係についての記述が多く、因果関係まで踏み込めていないのが残念。教育だと難しいのかなと思わなくないところですが…。
景気の回復が感じられないのはなぜか 長期停滞論争
2019/09/01 18:18
五年程前の議論を翻訳し直した本
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リーマンショックから経済が立ち直った?かに見えた時期の米国での議論です。
サマーズやバーナンキ、クルーグマンによるブログ上での分かり易い議論を翻訳している為、景気動向の本質を彼らがどのように見て来たのか、そのことが分かります。(日本語で)
翻訳者の山形先生は『21世紀の資本』等を翻訳されている方なので誤訳・不適切用語はまず見当たりません。
ただ、紙面が限られている為、初学者には?という点もあるのではないかと思われます。(モデルの説明や図説等を、脚注として細かく入れると誰もがすんなりわかっただろうに)
結論が同じ方向に行ってしまうため、リチャード・クー著『追われる国の経済学』等の方が、多面的で、丁寧であるのは確かです。
日本語修辞辞典
2019/08/25 00:12
教科書として使える文章表現学習書
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辞典と書かれていますがどちらかというと教科書です。
修辞法を五十音順に並べ解説と用例が記述されています。
和歌や古典の用例が記述されているのは良し悪しが分かれます。
近代作家の用例は見られますが、外国作品の用例は限られます。
見やすさが優先されている為分量は決して多くはありませんが、逆に気軽に使い続けられます。
総括として、日本語のレトリック、修辞に関する書籍としては買いです。
そもそも佐藤先生の『レトリック事典』と中村先生の『日本語の文体・レトリック辞典』ぐらいしか他にありません。
いきなり『レトリック辞典』に行くのはハードルが高い人には、まず本書か中村先生の書籍を読むことをお勧めします。
修辞を学びたい方は本書の野内先生か、佐藤先生、中村先生の何方かの書籍しかないのが現状ですからね。
スカルド詩人のサガ コルマクのサガ/ハルフレズのサガ
2019/08/24 00:05
サガ関連資料は少ないので評価したいが…
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北欧の文献に関して邦訳したものは多くない。
その為できる限り星5評価をしたいなと常々思っている。
本書も、訳書のないコルマク・ハルフレズのサガを取り扱っており嬉しく思う。
ただし、サガの内容についての各話に関する脚注が一切ないのは如何なものかと思う。
宮廷律・ヘイティ・ケニングといったスカルド詩の技法についての説明やノルウェー・アイスランドの年代記を付録してくれているのはありがたいが…。
他書でも取り扱われていないわけでは無いのだから、サガ・スカルド詩の解説を充実して欲しかった。
とはいえ貴重な取り組み
星4評価はしたいと思う。
ダイグロットバイブル NIESV54DIブルー-新共同訳・ESV 和英対照聖書
2019/05/08 15:11
世界観の確認のために・・・
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外国人の著者の本を読んでいると、聖書の詩篇の一部の引用をしている場合が見かけられます。(ギリシャの哲学書、ルネサンス期の偉人の格言などと同様に)
そうすると、気になってくるわけです。聖書ってどんな話だったっけという感じで。
また本書に限らずですが、旧約の部分を読んでいると、なんでイスラエルが今でもドンパチやっているかなんかもなんとなーくわかります(わかる気ばします)。
本書は日英双方で記されているので、非キリスト教信者でも受け入れやすい文体で読めるわけです(英語がね)。
ホントよくできているので、このまま、第二正典、外典、偽典なんかも二か国語約で出してほしいなと僕は思っています。
