かめさんのレビュー一覧
投稿者:かめ
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2020/02/08 09:52
有田で生きた1人の女性の一代記
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和歌山出身の父から紹介され、この本を読み始めました。
亡くなった祖母の実家が有田にあり、私自身も小さい頃箕島の甘いみかんをよく食べていました。
作中を彩る和歌山弁も懐かしく感じられました。
作者・有吉佐和子と曽祖父とは交流もあったと聞いています。
主人公・千代の波乱万丈の人生は、さながらNHKの朝の連続テレビ小説のようです。
時代は戦前から戦後。
彼女の人生は常に有田川、そしてみかんとともにありました。
幼い頃、上流から流れて来たところを御霊の津久野家で拾われ、その後水害でまた流され、浄念寺の柏槙の木に捕まって助けられ、河口にある箕島の川守家へ嫁ぎ、山を買い蜜柑栽培を始め、やがて家庭を持ち「蜜柑の小母ん」と呼ばれるようになります。
和歌山とのつながりがある方はもちろん、そうでない人も楽しめる一冊となっています。
「稔りの秋は田を黄金色に染める他に、川添いの櫨の木をそろそろ紅葉させ始め、しかも山々の蜜柑はまだ青く、木々の緑は濃いのである。有田の秋は色豊かであった。」
一度、有田に行ってみたくなりました。
翔ぶが如く 新装版 9
2020/01/01 18:19
落ちていく薩摩
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西南戦争の最激戦地・田原坂から敗退し、熊本からも落ちていく薩摩。篠原国幹らここまで何度も登場した人物らも次々に命を落として行きます。
ただ、政府軍は百姓上がりの鎮台兵が主で、敗走も多く、個々の戦闘能力および意欲では薩摩に分がありました。
しかし兵の数や武器の性能では圧倒的に政府軍に分があり、その辺りが敗因としてあげられます。
またこの巻では山川浩ら会津人が政府軍の一員として活躍します。
警視庁の部隊として太政官から抜擢されて戊辰戦争の恨みを晴らしに行く訳ですが、太政官もそもそも薩長中心なわけで、時代の因果や会津人の苦労が窺い知れます。
「一介のテロリストだった桐野や書生にすぎなかった篠原を泥の中から掘り出して陸軍少将の軍服を着せ、たれよりもこの両人を信頼し、結局はかれらの政治的狂躁に乗せられた」(256p)。筆者は前巻と同じく、西郷はあくまで桐野に唆されて戦争を引き起こしたと主張しています。
翔ぶが如く 新装版 8
2019/11/23 01:14
象徴として担ぎ上げられる西郷
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西南戦争が開戦。
7巻までは時代描写や、自由民権論などが展開され続けるだけにようやくという印象を受ける。
当初大久保は西郷が乱に無関係であると信じていたという点は昨年の大河ドラマ「西郷どん」と同様の描き方である。
司馬はこの物語で西郷を一種の木偶として描いているが、この巻でも乱の総大将であるにも関わらず、その心情描写がほとんどない。
それによって篠原や桐野ら薩摩私学校の面々に象徴として担ぎ上げられる彼の悲哀さを描き出しているように思う。
そして実際に熊本城を前に苦戦する彼らに対して、司馬は"西郷さえ持ち出せば、その圧倒的人気によって、戦略の機能を十分果たしうると思っていた。(中略)戦いは、政治性も戦略性も失って、瑣末な戦闘にすぎなくなった"(P260)とその甘さを指摘するのである。
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