honto好きさんのレビュー一覧
投稿者:honto好き
記憶の中の誘拐 赤い博物館
2022/11/28 20:41
アクロバティックな論理と異様な動機の本格ミステリ短編集
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
謎を解いてやるぞと意気込んで読んだのに、途中までは真相を見破れてもその先の真相が読者の考える前提を大きく覆すものだったり、伏線の張り方が都合よすぎると思ったら必然だったことが分かったりと、すっかり作者の術中にはまってしまった。
『赤い博物館』と『記憶の中の誘拐』を続けて読み、「冴子の推理」と「犯人の動機」のロジックがだんだんアクロバティックになっていくとともに、犯人の動機の異様さがより深い人の心の不可思議さを描いているように感じた。『戻り川心中』や「赤い靴」を読んだ時の興奮を思い出した。作者はロジックに裏打ちされたトリックが得意という印象だったが、『赤い博物館』シリーズは異様なロジックのホワイダニットがプラスされている。連城三紀彦や山田風太郎のように、ミステリのロジックで人間の異様な心を描いている。今後のシリーズの展開が楽しみだ。
赤い博物館
2022/11/28 20:36
精緻でアクロバティックな論理が導き出す意外な真相を堪能
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
冷徹な美女で変人の冴子と左遷されて鬱屈した寺田のキャラもいいし、組織内の軋轢など警察小説としての味わいもある。ロジックがあぶりだす人間ドラマも魅力的だ。特に、青春小説風の哀切さに満ちた手記形式の「復讐日記」、失われた家族への郷愁が皮肉な結末に繋がる「炎」、異様なロジック・異様な動機「死に至る問い」には、ミステリだからこそ表現できる人間の苦悩や悲しみを感じた。
さむけ
2021/01/30 13:44
『夜明けの睡魔』でも激賞
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
失踪人調査の依頼を受けてアーチャーが探し出した新妻は、人を殺したと告白した。事件の遠因に過去の殺人事件のと死亡事故の影が。本格としても傑作と聞いてたので、あれこれ推理しながら読んだ。まさに『さむけ』を催す真相。でも、これは「アメリカの悲劇」か?アガサ・クリスティー級のトリック、横溝正史張りの愛憎劇。
鳴門秘帖 1
2021/01/30 13:22
陰謀あり、チャンバラあり、もつれにもつれた恋愛関係あり、波乱万丈の時代伝奇小説
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
法月玄乃丞に複雑な恋心を抱く女すりの見返りお綱、お十夜孫兵衛・旅川周馬・天堂一角の悪人トリオ等、登場人物はいずれも魅力的。最後に明かされる孫兵衛にまつわる秘密は山田風太郎を思わさせる意外なもの。しかも伏線をきちんと張っていた。
中学生までに読んでおきたい日本文学 1 悪人の物語
2021/01/26 19:28
「中学生までに読んでおきたい日本文学」という叢書の第一巻
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
読みごたえがあったのは野口冨士男「少女」。復員した男が、身代金目的で誘拐した少女を連れまわしているうちに次第に情が移っていく心情を描く。「少女」の主人公は、少年時代に飲屋の女主人である継母にいたずらされたり、終戦時に入手したヒロポンを密売したりで、こんな話を中学生までに読ませていいんかという作品を第一巻にもってくる「中学生までに読んでおきたい日本文学」は攻めてるなと思う。
忍法八犬伝
2020/09/24 20:51
山風版八犬伝
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「忠孝悌仁義礼智信」の八顆の珠が「淫戯乱盗狂惑悦弄」にすり替えられた。里見家取り潰しを防ぐため、服部半蔵率いる八人のくノ一に八犬士の子孫が挑む。が、そもそも八つの徳目にうんざりしていた八犬士たちは、忍法修行をしていた卍谷を抜け出し、江戸で自由気ままに過ごしていた。そんな彼らは里見家のためではなく、聖女のような村雨の御方のために命がけでくノ一たちに挑んでいく。ご先祖様と正反対の性格で、忍者としては半人前の八犬士たちが活躍する山風版八犬伝。
変調二人羽織
2020/06/10 21:01
連城三紀彦のデビュー作を含むヴァラエティー豊かな短編集
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
表題作は、クローズドサクークルにおけるフーダニットを噺家にまつわる芸人小説として叙情的に描きながら、現役刑事と退職した後輩との書簡のやり取りによりミステリとしての仕掛けも楽しめる濃厚な著者のデビュー作。前作「戻り川心中」は花を基調としたシリーズ物であったが、本作は各編趣向が違ってヴァラエティー豊かな短編集。
ミンコット荘に死す
2021/01/30 13:37
キャロラス・ディーン物
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
レギュラー陣のギャグがさえている。「死の扉」でも繰り返しギャグがおもしろかったが、シリーズを通じての繰り返しギャグになっていて、より楽しめる。
挑戦者たち
2021/01/30 13:28
「読者への挑戦状」を様々な形式で表現したパロディー集
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
帯に「さて、この本の面白さが諸君にわかるかな――」と書いてあったが、おもしろく読めたものもあれば、何がおもしろいかわからないものもあった。おもしろかったのは、夢野久作の名作の構成をうまく使った「53瓶詰の挑戦状」、思わずスマホで試してしまった題名どおりの「68Challenge to the Barcode Reader」。
密室蒐集家
2021/01/30 13:17
謎の密室蒐集家が時代を超えて密室事件を解明する連作短編集
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
各作品、密室に様々なアプローチをし、論理と意外性を楽しめる。真相が意外であるとともに悲しい恋を描くことになる「少年と少女の密室」が最もおもしろかった。
ウィチャリー家の女
2021/01/26 19:32
行方不明の富豪の娘の生死は?
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
関係者は誰もが怪しく、娘を中心とした人間関係は不穏な雰囲気。終盤、事件の様相が次々と変化していく様は圧巻。ハードボイルドとしてのおもしろさはよく分からないが、普通にミステリとしておもしろかった。
現代語訳南総里見八犬伝 上
2020/09/24 20:50
波乱万丈の伝奇小説
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
波乱万丈の伝奇小説。複雑な人間関係や魅力的な悪役といった伝奇小説の系譜は鳴門秘帖へと受け継がれていくのだろう。鳴門秘帖のネタ元と思えるような場面もあった。ただ、主人公の八犬士が儒教的な価値観を体現した存在であるため、人物の書き分けができていないのが物足りなかった。
幻を追う男
2021/01/30 13:41
カーのラジオドラマ3編
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ラジオドラマでもカーらしい抜群のストーリーテリングで謎解きや歴史活劇を楽しませてくれる。「誰がマシュー・コービンを殺したか?」は、ラジオドラマという設定をうまく生かすカーの稚気に脱帽。
ハイキャッスル屋敷の死
2021/01/30 13:38
キャロラス・ディーン物
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
いかにも英国ミステリ的な雰囲気を描くユーモラスな筆致を楽しめた。おなじみになったレギュラーの性格を逆手に取る展開も良い。。
