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和さんのレビュー一覧

投稿者:和

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住まいと仕事の地理学

2020/03/15 23:18

心惹かれる地理学の面白さ

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資本主義の下で商品化される住宅と労働力は,本質的には人びとの生きられた経験や営為の積層としての「住まい」と「仕事」である.本書は明治期以降の日本の大都市圏における人びとの住まいと仕事に着目し,その実践を空間−社会の変化と相互に不可分であると捉えることで,地理学の視点から考察することを目指している.

本書の各章は,大正期における新中間層,戦後の住宅政策,集団就職と向都離村といった日本の都市地理学における多くの重要な切り口をもとに種々のデータを組み合わせることで,住まいと仕事の「歴史−地理」を描き出す.中でも第2章『住所の歴史学』では,近年の国勢調査における不詳割合の増加が示されており,あらゆる統計が事実との不整合を孕んでいることを再認識させられる.また第8章『多産少死世代のライフコースと郊外化』では,人びとの諸経歴の束であるライフコース概念が紹介されている.高度経済成長期は東京大都市圏での就職を経て郊外のマイホームを手にする,サラリーマン男性の「従業員としてのライフコース」が主流のように思われたが,実際にはホワイトカラー職に従事することができず,下町の中小企業等で手に職をつけてきた「自営業主としてのライフコース」も多くを占めていたことを明らかにしている.
また本書の後半部分では,近年における著者の研究の中核をなす「労働の地理学」に関する論が展開されている.第11章『間接雇用がもたらすリスク』では,いわゆる「派遣切り」によって住まいと仕事の両方が脅かされた大分県の製造業派遣労働者の事例が取り上げられている.派遣労働者の多くは職場が位置する地域と社会的つながりを持たないが故に,対象地域においても自治体の緊急雇用対策を頼らない者が多かった.労働力のフレキシビリティを高め,商品化を推し進めることは,同時に労働者の生存も脅かすことを強く示唆する章となっている.
そして本書の到達点かつ白眉であるのが,第13章「地方創生の政治経済学」である.ここでは生きられた経験である住まいと仕事や,諸経歴の束であるライフコースという本書の出発点であった鍵概念が捨象され,人間を人口という数値に置き換えた上で議論する地方創生の論理にメスが入れられている.日本が直面する人口減少は,読み替えれば生産・再生産の主体である労働力の減少であり,持続的な経済成長を損なうとして問題化される.そこで東京一極集中を是正し,地方を再生産の空間として人口の再配置を行うことによって,出生率の回復と更なる東京の経済成長が企図されている.すなわち著者の主張は「『地方創生』政策は人口維持と経済成長のための手段であって,それ自体が目的ではない」というものであり,一連の政策が機能不全に陥ることが露わになった結果,政府は外国人労働力に依存する手段に辿り着こうとしている.この点についても,労働力を補うための外国人は必要であるが家族の呼び寄せや定住は問題であるという政策姿勢に注目し,著者は批判的検討を加えている.

本書は現代日本が抱える多くの社会問題が実生活とどのように接点を持つか,そして地理学がどのように貢献できるかを肌で感じることができる一冊である.著者の論文や過去の著作と併せて,広く本書が読まれることを期待する.

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