水一トンさんのレビュー一覧
投稿者:水一トン
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頼むから静かにしてくれ 1
2020/06/11 17:06
シンプルだけど力のある文章が描く、哀しいおかしみ
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最初の一編を読んだとき、何が起こったのか分からなかった。
淡々と、徹底的に無駄を削った語りで、登場人物たちの言動が語られる。
その透徹した簡素な文体で描かれる状況が、どうにも変なのだ。
不条理という言葉で片付けられるほど、単純に不条理ではないような気がする。
最初は、登場人物に共感できるのだけれど、話が進むにつれて、徐々に彼らがわたしの理解を越えていく。
登場人物はみな、それぞれのありように、徹底している。
かれらのありようには、都市の哀しみ、というようなものが漂っている。
社会の中で他者とともに生きざるを得ない中で、他者の中にいる自分を眺める視線は複雑になっていき、かれらをじたばたさせる。
かれらが囚われているものは、他人から見ればたいしたことがないように見えるけれど、かれらにとっては自分の存在がかかっているほど切実で、自分の切実さに正直だ。
読んでいる間、物語がエスカレートしていく様子に戸惑うのだけれど、読み終わったとき、何となく分かるような気がするのだ。
情感に直接ふれるような語りではないけれど、硬質で研ぎ澄まされた読み口が、直接は語られない登場人物の不安や哀しみを、立体的に彫りだす。
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