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mituさんのレビュー一覧

投稿者:mitu

844 件中 1 件~ 15 件を表示

飽きても、辞めても、かまわない。 また、始めれば良い。 人間は学びによってのみその宿命から逃れられる。

16人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「卒業してしまえば、諸君は私が授業で教えたことなど忘れてしまうだろう。でもそれでいいのだ。学んだ忘れてしまって、その後に残る何か。それが教育なんだ」

書店で平積みになっているベストセラーを、Amazon Audibleの「聞く読書」で学んだ。

聞きながら、冒頭の学生時代の恩師の言葉を思い出した。

自分には特技も取り柄もない。

本屋に行っては語学書やベストセラー、新書をあさり、買ってきては挫折して書棚の飾りとなる。

そんなことをずっと繰り返してきた気がする。

それは「学ぶことを諦めたくない」からだろう。

本書は、覆面ブロガーである著者が様々な具体例を持って「学び」について後押ししてくれる。

各章の冒頭では「無知くんと親父さんの対話」。

身も蓋もない二人の対話の中から、今何を具体的にするかの道しるべが示される。

独学者は一人だ。
だが、孤独ではない。

実際に会うことができない人を師と定めて学ぶ「私淑」。

偉大な先人たちの肩に乗って眺める景色。

図書館、インターネットといった誰でも無料で、もしくは安価で利用できる資源。

そして、自分自身を振り返るセルフモニタリング。

飽きても、辞めても、かまわない。

また、始めれば良いのだ。

人間は学びによってのみその宿命から逃れられるのだと、著者は力説する。

それは、自分にできることを挑戦してみたくなる意欲をくれる。

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衝撃的で、考えさせられるタイトルだ。挑発的でもある。大学の教員として青年たちに接する著者が、現場での実体験と、豊富な資料から、その理由をわかりやすく語りかける。

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

衝撃的で、考えさせられるタイトルだ。挑発的でもある。

良いことをしたら、褒める。
そうしたら、喜ばれるのではないか?

大学の教員として青年たちに接する著者が、現場での実体験と、豊富な資料から、その理由をわかりやすく語りかける。

講義では、後ろの方に並んで固まって座る。

物事を決めるために「あみだくじアプリ」はスマホに必須。

「成功した人も、しない人も、平等にして下さい」
「自分の提案が、採用されるのが怖いです」
「浮いたらどうしようと、いつも考えています」

と、多くの若者がそう思っている。

でも、著者は冒頭から断言する。

「若者からは、本当に多くのことを教わる。そして、もし変わる必要があるとしたら、それは彼らではなく大人が作った社会のほうだと、強く感じさせられる」(「はじめに」より)

「挑戦が成長につながることを実感できないのは大人であり、一度失敗すると這い上がれないと思っているのも大人であり、既得権信者もやはり大人である。
 大人たちがそう思っているからこそ、それが子どもたち、若者たちに空気感染する。
 私からすれば、そんな因果応報を棚に上げて、『まったく、今の若者は覇気がなくてダメだ』なんて言っているのは滑稽ですらある。何のことはない、若者たちはこの30年間、日本の大人たちがやってきたことをコピーしているにすぎない」(P198~9)

「私が知る限り、若者は『現役選手』しか尊敬しない。(中略)若者が変化を好まず、挑戦を避け、守り一辺倒の内向き志向となっているのは、若者が育ってきた日本社会がそうだからだ」
「したがって、本書の提言は1つ。大人のあなたがやるべきだ。まずはあなたが挑戦するべきだ」(P225~226)

当事者である若者たちには、具体的な2つのアドバイスを送っている。

「質問力を鍛えること」

意見を述べるのではなく、単なる質問でいい。

そして、質問のあとの感情を確かめる。

すごく緊張したなら、その分だけ心が成長した証拠。

なにも感じていなかったなら、それは質問する素質があるということ。


「メモの取り方を変える」

資料の気になったところに丸をつけて、横にクエスチョンマークを付けるだけでいい。

話し手の言葉ではなく、自分の頭によぎったことをメモする。

たったこれだけの行為だが、効果は大きい。


読み進めていくと、急所を突かれすぎて痛みすら感じる。
それは、本書の主張が正確なのだからだろう。

まずは、自分自身がどうなのか。

他人と比較するのではない。
昨日の自分より、一歩でも成長しているのか。

「われ以外みなわが師」(吉川英治)

昭和の大文豪の言葉を思い出す。

人生100年の時代。

「生涯青年」の心意気で、死ぬまで学び続けなければならない。

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独学大全を手にした人も。 スルーしてしまった人も。 この本の存在すら知らない人にも。 独学という大きな大きな世界への入り口となる、スマホで見られる手軽で重厚な道しるべ。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本屋に平積みされていたベストセラー「独学大全」。

700ページ以上に及び、「鈍器本」と自虐的に語る分厚さ。

その厚さにたじろいだので、Audibleの「聞く読書」で取り組んだのが何度かの緊急事態宣言中のこと。

そのガイドブックが、kindle unlimited(定額読み放題サービス)に登場したので読んでみた。

聞き慣れた「無知くんと親父さんの対話」から、講義は再開する。

無知くん「鈍器本とかいう本が分厚すぎて、手が出ません」

親父さん「始めてもいない! いいか、大抵の本は何百ページあるが、すべてのページが一斉に襲いかかってくるわけじゃない」

「心配せずとも、書物はお前の実力に適ったものしか与えてくれない」

「書物は待ってくれる(Books can wait)。今は読めるところだけ読み、幾多の学びを重ねた後に、必要ならまた戻ってくれば良いだけの話だ」


二人の対話に始まり、何をどう学べば良いか、具体論が示される。

そして、読者からの質問に懇切丁寧に答えていく。

無知くんと親父さんの対話が、読者と著者による対話と類比するようで心地よい。

否、自分が著者に直接問いかけている感覚になってくる。

独学大全を手にした人も。

躊躇してスルーしてしまった人も。

この本の存在すら知らない人にも。

「真理がわれらを自由にする」(国立国会図書館の目録ホールカウンター上の言葉)

「『なぜ学ぶのか?』と問われたら、『自由になるため』と答えよう。この付録は、1年にわたって知識を巡るささやかな旅を導くためのガイドである」(1学び方を学ぶ)

独学という大きな大きな世界への入り口となる、手軽で重厚な道しるべだ。

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対話があれば、何かが変わる。 確実に前に進むことができる。

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

新聞のコラムで紹介されていたので、手に取った。

心療内科に通院していた時のことを思い出しながら、読み進めた。

まず、病院の門をくぐるのに時間がかかった。
心療内科に行くこと自体に、敗北感があったからだ。
ここに、決めつけがあった。

そこで、とても良いカウンセラーさんに出会った。

対話を続ける中で、病気と向かい合い続けた。

ただ主治医は、私の目を見ない人だった。
悩みを訴えかけても応えてくれず、薬を出すだけの人だった。

症状が悪化し、休職して、リワークプログラムに通うことになった。

そこで重視されていたのは、対話とコミュニケーションだった。

対話をしてくれるドクター。

優秀で心温かなスタッフの方々。

そして、寛解と復職を目指す老若男女のたくさんの仲間に出会った。

1年弱の休職後に復職。
今では、通院もしなくなった。

当時の仲間たちとの交流は続いている。

以下は本書で学んだ事柄だ。

「人類の歴史を動かしたのは、いつも対話だった。
 人は対話をやめたときに戦争を始めてしまう」

「対話の場は、全員が対等で初めて成り立つ」

「ただ話すだけで、それまで存在していた困難や誤解の多くは解消した。
 なぜなら、かれらは話していないだけだったからだ」

○著者がオープンダイアローグのトレーニングを受けた、フィンランドのケロプタス病院の「7つの原則」

・すぐに助ける。
・本人に関わりのある人たちを招く
・柔軟かつ機動的に
・責務/責任
・心理的な連続性/積み重ね
・不確実性な状況の中に留まる/すぐに答えに飛びつかない
・対話主義


「精神症状、幻覚や妄想などの状態にある人たちの多くが、こころに深い傷を抱えている」

「そんなときは、他の誰かに話を聞いてもらえたらと思う。それだけで、私たちはきっと生きていける。オープンダイアローグは、そのためにある」

「対話を何度も行うことができれば、お互いのことをだんだん理解するようになる」

「オープンダイアローグの目的地とは、自然に対話が起こることなのだ」


他人なれどもかたらひぬれば命にも替るぞかし。

人のために火をともせば我が前あきらかなるがごとし。

対話があれば、何かが変わる。

確実に前に進むことができる。

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パチンコ 上

パチンコ 上

2021/07/14 05:44

戦争と差別と宿命に翻弄されながら、目の前の現実を生き抜いていく人々の美しさと強さと逞しさ。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

釜山沖の影島(ヨンド)のキム・フニが27歳になった1910年、日本が大韓帝国を併合。
翌年、15歳のヤンジンと所帯を持つことに。

フニの両親が亡くなった3年後に、4人目の子供にして初めての女の子、ソンジャが誕生。

ソンジャが13歳の冬、結核でフニは息を引き取る。

母子はささやかな下宿屋を営んで生計を立てていく。

そこに日本との貿易を営むハンスが現れる。
ソンジャは恋に落ち、ハンスの子を身籠もる。

だが、ハンスには日本に妻と3人の娘がいた。

「あなたには二度と会わない」

妾になることを拒否したソンジャの前に、若き牧師イサクが現れる。

ヤンジンとソンジャを命の恩人と慕うイサクは、ソンジャと所帯を持ち、大阪の兄夫婦を頼って来日する。

生まれた男の子はノアと名付けられた。

何よりも家族を大切にし、そのためならすべてを捧げても悔いはないと生きる人々。

親子四代に渡る、人間模様。

戦争と差別と宿命に翻弄されながら、目の前の現実を生き抜いていく人々の美しさと強さと逞しさ。

戦争ほど、残酷なものはない。
戦争ほど、悲惨なものはない。

民衆は生きて生きて生き抜いていく。

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知性は死なない 平成の鬱をこえて 増補版

知性は死なない 平成の鬱をこえて 増補版

2022/03/10 10:36

著者自身の体験と、それに基づく明晰な英知の言論が輝く。 それ自体が、力強いレジリエンスの証であり、歓喜の歌声のようだ。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2021年12月17日。
大阪市北区の「西梅田こころとからだのクリニック」で放火事件が発生。
たくさんの方が犠牲になった痛ましい事件。

ここでは「リワークプログラム」が実施されており、多くの人たちが心の病から社会復帰を目指していた。

事件の数日後の新聞に、本書が紹介されていた。

著者は、大学の教員時代に心の病を患った。そして、退職を余儀なくされた。

精神科病棟への入院後、「リワークプログラム」に参加。

現在では「元歴史学者」として、新たに活動を展開している。


私自身も、心の病により休職を経験した。

2014年にリワークプログラムに参加し、職場復帰を果たし今日に至っている。


「あなたには、あなたの『属性』も『能力』も問わずに、あなたを評価してくれる人がいますか」(P260)

老若男女が集うプログラムにあっては、肩書を名乗る必要もない。

ただ、健康になるために、その人そのもの。人間性だけがすべて。

そうした人と人のつながりこそが、心の病を回復させていくのだ。

プログラムだけではない。
ランチタイムの何気ないおしゃべり。
休憩時間の雑談。

すべてが有益だった。
一つひとつが人生の宝物になった。

病気から回復していった時のことを振り返りたくなり、そしてこれからのことを立ち止まって考えるため、本書を手に取った。

「知性は死なない」--読了後に、このタイトルが体の中に深く定着していた。

本書には、著者自身の体験と、それに基づく明晰な英知の言論が輝いている。

それ自体が、力強いレジリエンスの証であり、歓喜の歌声のようだ。

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嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか

2022/01/22 07:35

プロとは何か。 勝つために、勝ち続けるために、何をするのか、しないのか。 ヒリヒリするような勝負の現場の空気が、心の奥底まで響いてくる渾身のノンフィクション。

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

輝かしい現役時代の栄光と実績を引っ提げて、2004年シーズンから2011年まで8年間、中日ドラゴンズ監督を務めた落合博満。

日本一1回。
リーグ優勝4回。
8シーズンすべてで3位以上のAクラス入り。

圧倒的な実績を残しながら、2011年シーズン途中に契約解除が発表された。

筆者は日刊スポーツの記者として、自信の持てなかった駆け出しの頃から、その8年間に密着していった。

なぜ、フリーエージェントで移籍後、怪我のため3年間登板できなかった川崎憲次郎を開幕投手に抜擢したのか。
そして、それを試合直前まで川崎本人以外に誰も伝えなかったのか。

実績のなかった森野将彦に、ぶっ倒れるまでノックを続けたのか。
そして、あえてチームの看板選手である立浪和義と競わせたのか。

「チームのことなんて考えなくてもいい。自分の成績だけを上げることだけを考えろ」
なぜ、和田一浩はこの言葉に心の底から納得することができたのか。

「落合に任せておけば、大丈夫です」
球団の取締役編成担当である井出峻(いでたかし)は、定例役員でこう言い続けることができたのか。

プロとは何か。
勝つために、勝ち続けるために、何をするのか、しないのか。

ヒリヒリするような勝負の現場の空気が、心の奥底まで響いてくる渾身のノンフィクション。

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学びと対話こそ、闇のような世界を照らす光だ。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「わたしのペルソナ(他者に対峙するときに現れる自己の外的側面)は、わたしがそう演じている役である、といったら言い過ぎだと感じられるだろうか?」(「はじめに」より)

脳科学者の著者が、自身の内面を、そしてこれまでの人生で感じてきた喜怒哀楽を時間を遡る形で記した。

多くの著書で、様々なテレビ番組で、脳科学の知見から、的確で鋭いコメントを穏やかに紡ぎ出す笑顔の奥底にあったものが、読みやすい言葉で語られている。

時代遅れの男性原理の象徴のアカデミズムでの奮闘。

テレビ番組での大きな気づき。
テレビは、トレーニングステーションだった。

脳における「正義」のトリック。

必要なのは「マイルドヤンキー」のコミュニケーション能力。

正確さを目指す日本人、アレンジを誇るフランス人。

「誰かほかの人を介するのではなく、本を介して直接、私の頭の中と皆さんの頭の中をつなぐことができればと思っている。これなら、本が存在し続ける限り、私と皆さんとはいつでも会えるのと同じことだ」

「一隅を照らす、という言葉がある。こうして書いている一文字一文字が、闇のような世界の中で、誰かの足元を照らすことができればいいなと思っている」

中国の文豪魯迅は語った。
「生きていく途中で、血の一滴一滴をたらして、他の人を育てるのは、自分が痩せ衰えるのが自覚されても、楽しいことである」

本書を読み通したときに、この言葉が頭を駆け巡った。

偉大な知性との対話。
苦闘する英知との語らい。

「学びに年齢は関係ない。いつでも思い立ったときに始めればいいのだ。勉強したいと思ったときが適齢期、だと私は思う」

そして、読書を通して学びを通して自分自身を見つめ直す。

他人なれどもかたらひぬれば命にも替るぞかし。

学びと対話こそ、闇のような世界を照らす光だ。

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人間の善性、無限の可能性を引き出す哲学。 読む前と読む後で、物事への取り組み、考え方を大きく、そして深く、強くしていける渾身の書。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力もしくは陰性能力)とは、『どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」をさします。
 あるいは、『性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力』を意味します」

「私自身、この能力を知って以来、生きるすべも、精神科医という職業生活も、作家としての制作行為も、ずいぶん楽になりました。いわば、ふんばる力がついたのです。それほどこの能力は底力を持っています」

(「はじめに」より)

精神科医であり、作家である著者が、その根底の哲学を縦横無尽に語り尽くす。

すぐに結論を求められる社会。

白か黒かを決めたがる安易な態度。

問題の解決ばかりに目を向けて、その奥底にある真実に向き合うことのできない薄っぺらさ。

未知のウィルスとの闘いに右往左往する2021年。

先の見えない闘いの中で、誰かを攻撃することで憂さを晴らす浅はかな態度。

そういう現代だからこそ、不確かな状況に耐えうる力。

相手の苦しみに簡単な答えを出すのではなく、寄り添い、同苦し、共感していく姿勢。

人間の善性、無限の可能性を引き出す哲学。

読む前と読む後で、物事への取り組み、考え方を大きく、そして深く、強くしていける渾身の書。

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語りかけるような穏やかな話し方でありながら、鋭い論考が繰り広げられる。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ベストセラーとなった「人新世の資本論」に続いて手に取ってみた。

難しいテーマを、分かりやすく。

語りかけるような穏やかな話し方でありながら、鋭い論考が繰り広げられる。

「あなたが、この入門書を手に取った理由はなんでしょうか。
 毎日が楽しくてしょうがない人が、この本を積極的に手に取る確率は低いはず。
 少なくとも漠然と、今の仕事や社会のあり方に生きづらさや虚無感を覚えたり、気候変動や円安のニュースを前にして、未来に不安を感じたりしている方が多いのではないでしょうか」
(「はじめに『資本論』と赤いインク」より)

「世界のいたるところで、これまでのやり方からの大胆な転換を求める声が高まっています」

「現状への不満や未来への恐怖が排外主義などの反動的欲望へと転化しないようにするためには、別のより魅力的な選択肢が存在することを、説得力ある形で示す必要があります。けれどもそれは容易なことではありません」

「だから、古典は面白い。今でも私たち自身の問題意識を映し出す鏡として、『資本論』は何度も違った視点から読み直す価値があるのです」

(「あとがき 革命の時代に」より)

誰もが、このままでいいなんて思っていない。
でも、現実の中で生きていくしかない。

知恵は現場にあり。

地球のいたるところで、その萌芽は芽生えつつある。

<本書から>
・「商品」に振り回される私たち
・なぜ過労死はなくならないのか
・イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む
・緑の資本主義というおとぎ話
・グッバイ・レーニン!
・コミュニズムが不可能だなんて誰が言った?

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女のいない男たち

女のいない男たち

2022/09/26 09:56

通勤電車のなかで、毎日一作づつ読み進めていくのが、心地よかった。そして、人生についてよく考えることができる時間をつくることができた。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「自分の小説にまえがきやあとがきをつけるのがあまり好きでなく」との「まえがき」から始まる短編集。

通勤電車のなかで、毎日一作づつ読み進めていくのが、心地よかった。そして、人生についてよく考えることができる時間をつくることができた。


〇ドライブ・マイ・カー

俳優の家福(かふく)は、ある事情から自家用車の専属運転手を探していた。
二十代の女性ドライバー渡利みさき。

無口で堅実な運転で、その仕事を着実にこなす。

妻を亡くした家福が語っていった秘密とは。


〇イエスタデイ

大田区田園調布生まれで大田区田園調布育ちなのに、ほぼ完璧な関西弁を話す木樽。

「僕」は、早稲田大学文学部二年生の時に、アルバイト先で浪人生にして同級生の彼に会った。

木樽は恋人の栗谷えりかと僕を付き合わせようとする。


〇独立器官

渡会は52歳。これまで結婚したことのない、同棲の経験すらない。麻布のマンションで一人暮らしをつづける美容整形外科医。

何不自由のない生活に、抗いようのない変化が訪れる。


〇シェエラザード

「千夜一夜物語」の王妃シェエラザードのように、彼女は不思議な話を聞かせてくれた。

「十代の頃のことだけど」とある日、彼女は打ち明けた。

「私はときどきよその家に空き巣に入っていたの」


〇木野

木野は夫婦のトラブルをきっかけに、会社を辞めバーを始めた。

店のなまえは「木野」にした。他に適当な名前を思いつけなかったからだ。


〇女のいない男たち

夜中の一時過ぎに電話がかかってきた。

「妻は先週の水曜日に自殺をしました、なにはともあれお知らせしておかなくてはと思って」

その女性は、「僕」の「昔の恋人」だった。



人生とは何か。

財産があれば幸せになれるのか。

よい環境にいれば、幸福なのか。

どんな恵まれた環境にあっても、人は宿命に翻弄される。

だが、その宿命に抗っていく力も持ち合わせている。

著者の人間を見つめる眼を通して紡がれた短編集。

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あきらめると、うまくいく 現役精神科医が頑張りすぎるあなたに伝えたい最高のマインドリセット

あきらめると、うまくいく 現役精神科医が頑張りすぎるあなたに伝えたい最高のマインドリセット

2022/09/09 11:26

全部やろうと、がんばらなくていい。 できることから、できる範囲でやっていけばいい。 優しく、力強く、自分らしく生きていくための、手軽な羅針盤となる一書。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「世界一受けたい授業」(日本テレビ)で、著者に出会った。

穏やかな笑顔。やさしく語りかけてくる言葉に、力強さがあった。

心の病を経験した者として、著者の考えを深く知りたくなり読んでみた。

ただでさえストレスだらけの社会で、前代未聞のコロナ禍と戦う日々に、終わりは見えない。

ついていない。
境遇ががよくない。
あいつが悪い。
政治がダメだ。

誰かのせいにしてマイナス思考ばかりでは、心にも体にもいいわけがない。

著者は4歳の時に川崎病を発病。
以来、激しい運動ができなくなってしまった。
心臓に後遺症が残り、大好きだったサッカーもあきらめなければならなかった。

それが、医師になる原点の一つだった。

「走れなければ車に乗ればいい。泳げなければ浮き輪を使えばいい。いい意味での『あきらめ』が自分の気持ちを楽にしてくれたのです」(『はじめに』より)


〇受け入れ、受け流す技術

あきらめる。
いい人をやめる。
我慢の限界を数値化する。

あるがままを受け入れる。
ストレスのもとに近づかない。
俯瞰で見る。

ルーティンを作る。
感情のまま突っ走らない。
「発想の転換」を習慣化する。

考え込まない。
鈍感力を身に付ける。
体を動かし、心の余裕を作る。

〇自分が好きな自分になる

媚びない。
自分を大切にする。
沈黙に慣れる。

自然体で生きる。
大切にされることを待たない。
許す。

悩みを書き出す。
最短距離を選ばない。
極論しない。

やらない後悔より、やった後悔。
人生はなんとかなると知る。
感謝して生きる。

傾聴する。
目標を低く設定する。
お金と向き合う。

ひとりぼっちを恐れない。
心地よいことを求める。
朝一番で自分を褒める。

自分のなりたい方向を目指す。
運を呼び込む。

全部やろうと、がんばらなくていい。
できることから、できる範囲でやっていけばいい。

優しく、力強く、自分らしく生きていくための、手軽な羅針盤となる一書。

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先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち

先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち

2022/08/22 13:23

今の若者はと嘆く前に、自分自身に問おう。 成長していますか、現役選手であり続けられますか、と。 「われ以外みなわが師」(吉川英治)との言葉が思い出した。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

新聞の著者インタビューを読んで手に取った。

衝撃的で、考えさせられるタイトルだ。挑発的でもある。

良いことをしたら、褒める。
そうしたら、喜ばれるのではないか?

大学の教員として青年たちに接する著者が、現場での実体験と、豊富な資料から、その理由をわかりやすく語りかける。

講義では、後ろの方に並んで固まって座る。

物事を決めるために「あみだくじアプリ」はスマホに必須。

「成功した人も、しない人も、平等にして下さい」
「自分の提案が、採用されるのが怖いです」
「浮いたらどうしようと、いつも考えています」

と、多くの若者がそう思っている。

でも、著者は冒頭から断言する。

「若者からは、本当に多くのことを教わる。そして、もし変わる必要があるとしたら、それは彼らではなく大人が作った社会のほうだと、強く感じさせられる」(「はじめに」より)

「挑戦が成長につながることを実感できないのは大人であり、一度失敗すると這い上がれないと思っているのも大人であり、既得権信者もやはり大人である。
 大人たちがそう思っているからこそ、それが子どもたち、若者たちに空気感染する。
 私からすれば、そんな因果応報を棚に上げて、『まったく、今の若者は覇気がなくてダメだ』なんて言っているのは滑稽ですらある。何のことはない、若者たちはこの30年間、日本の大人たちがやってきたことをコピーしているにすぎない」(P198~9)

「私が知る限り、若者は『現役選手』しか尊敬しない。(中略)若者が変化を好まず、挑戦を避け、守り一辺倒の内向き志向となっているのは、若者が育ってきた日本社会がそうだからだ」
「したがって、本書の提言は1つ。大人のあなたがやるべきだ。まずはあなたが挑戦するべきだ」(P225~226)

当事者である若者たちには、具体的な2つのアドバイスを送っている。

「質問力を鍛えること」

意見を述べるのではなく、単なる質問でいい。

そして、質問のあとの感情を確かめる。

すごく緊張したなら、その分だけ心が成長した証拠。

なにも感じていなかったなら、それは質問する素質があるということ。


「メモの取り方を変える」

資料の気になったところに丸をつけて、横にクエスチョンマークを付けるだけでいい。

話し手の言葉ではなく、自分の頭によぎったことをメモする。

たったこれだけの行為だが、効果は大きい。


読み進めていくと、急所を突かれすぎて痛みすら感じる。
それは、本書の主張が正確なのだからだろう。

まずは、自分自身がどうなのか。

他人と比較するのではない。
昨日の自分より、一歩でも成長しているのか。

「われ以外みなわが師」(吉川英治)

昭和の大文豪の言葉を思い出す。

人生100年の時代。

「生涯青年」の心意気で、死ぬまで学び続けなければならない。

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人新世の「資本論」

2022/07/27 09:34

若き知性が紡ぎだした英知の結晶が、行動が、連帯が、人類の未来を照らす。 今まで以上に、自分ができることを本気で取り組む静かなる情熱が沸き上がる一書。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

100年に1度の異常気象が、毎年のように起こっている。
明らかに地球がおかしい。悲鳴を上げている。

自分が、そしてまわりの大切な人々が倒れてしまう前に何かできることはないか。
そう思って、本書を手に取った。

「SDGsは、大衆のアヘンである」

過激なフレーズから、本書は始まる。

そもそも「資本論」「マルクス」という段階で、いかがなものかと思っていた。

だが、読み進めるうちに、豊富な資料と、緻密な理論構成、そして明快な論調に、霧が晴れるように視界が広がっていく。

「MEGA」とよばれる、著者も含めた世界各国の研究者が参加する新たなマルクスの全集編纂プロジェクトから、新たな視点が紡がれていく。

これまで光の当たらなかった晩期マルクスの思想的大転換の中にこそ、地球の危機を照らす英知があふれていると著者は語る。

先進国の豊かな生活は、見えない誰かの、「グローバルサウス」(グローバル化によって被害を受ける領域並びにその住民)の犠牲の上に成り立つ。

「資本主義が崩壊するよりも前に、地球が人類の住めない場所になってしまう」

その元凶である資本主義そのものと対峙しなければならない。

しかも、それは民衆による平和的な方法でなければならない。

その取り組みは、着実に世界の各地で広がり、つながり始めている。

「コモン」(社会的に人々に共有されるべき富、公共財)の民主的・水平的な共同管理。

平等で持続可能な「脱成長コミュニズム」。

「開放的技術」に基づいた共同体。

「気候正義」という「梃子」(てこ)。

「マルクスで脱成長なんて正気か--そういう批判の矢が四方八方から飛んでくることを覚悟のうえで、本書の執筆は始まった。(中略)それでも、この本を書かずにはいられなかった。最新のマルクスの研究成果を踏まえて、気候正義と資本主義の関係を分析していくなかで、晩年のマルクスの到達点が脱成長コミュニズムであり、それこそが『人新世』の危機を乗り越えるための最善の道だと確信したからだ」(「おわりに--歴史を終わらせないために」より)

若き知性が紡ぎだした英知の結晶が、行動が、連帯が、人類の未来を照らす。

今まで以上に、自分ができることを本気で取り組む静かなる情熱が沸き上がる一書。

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読む薬 読書こそ万能薬

読む薬 読書こそ万能薬

2022/07/05 04:36

リワークプログラムの第一人者が、読書の知られざる効用を縦横無尽に語り尽くす。 大いに共感するとともに、読書のモチベーションをさらに高めることができた。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かつて通っていた病院の理事長の著書と知り、手に取った。

著者は精神科医として「リワークプログラム」の第一人者。

心を病んで休職した社会人向けに、職場復帰へのプログラムを行っている。

その著者が、読書の効能を豊富な文献資料をもとにわかりやすく縦横無尽に語り尽くしている。


第一章 読書は脳年齢を若返らせる
 ・心を発達させるフィクション効果
 ・文芸小説を読むと心の知能指数が上がる
 ・他人の感情を知るために本を読もう

第二章 読書人は長生きする
 ・認知機能の低下を防ぐ
 ・高齢期でも知力が高まる

第三章 読書は心の良薬
 ・うつ病に有効である
 ・読書療法とは何か
 ・楽しむ読書は幸福度を高める

第四章 読書は生活にいい
 ・読書は最高のリラックス法
 ・読書は最高の快眠法
 ・電子書籍よりも紙の本を読むべき科学的裏付け

大いに共感するとともに、読書のモチベーションをさらに高めることができた。

これからも無理することなく、本の世界への旅を続けていきたいと、静かに、そして強く思えた。

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