KUMA0504さんのレビュー一覧
投稿者:KUMA0504
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冬の蕾 ベアテ・シロタと女性の権利
2021/04/20 18:34
時代の要請
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初出は93年。樹村みのりはひとつのテレビ番組を観て、憲法に男女平等条項を入れた若い女性の半生を描くことにした。未だベアテ・シロタさんの名前が広く知られていなかった時である。
その後、シロタさんの自伝も映画も出来た。シロタさんの公表が遅れたのは、若干22歳だった彼女の歳が改憲論客に利用されるのを恐れていたからだそうだ。
彼女の草案の是非については、多くの詳しい本があるだろうからそちらにお譲りする。私は、一、二の思い切った橋を渡ったのかもしれないが、何一つ間違ったことを書かなかった、むしろ#ME TO運動や昨今の女性差別発言事件を見るにつけ、75年先の未来をも見据えた素晴らしい仕事だったと思う。去年、本書が岩波現代文庫に入ったのも、そういう経緯からだろう。現代にこそ、広く読んでもらいたい。
偶然が3回続けばそれは必然である。
とは、最近映画「花束みたいな恋をした」の感想を書いた時に、ある人から教えてもらった箴言だ。
樹村みのりは、3回どころか、シロタさんの憲法草案の仕事は、様々な偶然が奇跡的に重なった必然だったことを、まるでドキュメンタリーのように見せた。シロタさんが産まれた時のこと、日本に関係なかった両親が来日したこと、日本で育ち、アメリカで語学を学び、その経験で日本と米国のジェンダー問題の現場を見てきたこと、また敗戦時いち早く日本に戻って奇跡的に両親に再会出来たこと、心が安定した時に2週間の草案の仕事に取り掛かったこと。まるで日本国民に、憲法24条という贈り物をするために生まれてきたような女性だった。こういう構成は、おそらく樹村みのりの発明だろう。
樹村みのりを約40年ぶりぐらいに読んだ。本書には2002年発表の短編三編も載っているし、文庫本用のあとがきも書いている。元気なことを知れて嬉しい。驚くのは、レビュー以来、ひとつも変わらないその硬質な「画」である。これは、漫画家としては驚異的なことだと思う。
2022/02/28 18:28
お付き合いしたい
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私はこのコケの本を手に入れるまでに約10年以上の月日をかけている。ずっと苔のことが気になっていた。常に私たちの身の回りに居るのに、どの種ひとつも、名前さえ知らない苔たち。古代からどのように生きてきて、今どのように生きているのか、それさえも知らない。それなのに時々ハッとするような美しさを見せる。
図鑑を手に入れて、その名前ぐらいは知らなくてはならない。でも、それはかなり難しいのではないか?と思ってきた。一度展示会場で見たけど、何処がどう違ってこの種になったのか、さっぱりわからなかった。机上の学習では心許ない。かと言って重たい図鑑を持って外を歩き回るほどの時間は持てない。と思いながら10年が過ぎた。
一念発起。やっとキッカケとなる本を手に入れた。入門編の記述が豊富で、入門図鑑になりそうな本書が、電子書籍で安く手に入ったのである。
序章は苔の歴史。後は、都市、庭園、農村、里山、高山に分けての美しい写真を交えながらの代表的な苔の解説。これだとスマホ片手に、都市、庭園、農村までは直ぐに確認出来そう。
苔愛好者には悩みがあるそうだ。
苔観察は、普通の道で立ち止まり、こそこそ塀や街樹を見たり、しゃがんだりする。明らかに不審者である。それを避けるための動作が更に不審者ぽくなる。
更には、半日のコケ観察会で数メートルしか移動しなかったことは「あるある」だそうだ。
こういうマイナーな苔の立ち位置は、長年の遺跡愛好者の私には既視感ある立ち位置で、好感を持った。やはりお付き合いしたい。
ホモ・サピエンスの歴史は20万年しかないが、苔の歴史は藻類が進化して誕生したと言われる。4億5千万年前である。約2250倍もの差がある。この可憐な小さな生命が、そんなにも大先輩で、そんなにも長い間の風雪に耐えているかと思うと、光り輝いて見える。
苔に、諸星大二郎「生物都市」のような集団意識があったならば、地球の数億年の歴史はどう見えるんだろうか。
実は、本書を手に入れて約4ヶ月。何度か市中観察を敢行したのであるが、確信を持ってお名前が判明した苔はいない。なぜならば、まだルーペなどないので、細かい観察が出来ないことと、いくつかの苔は胞子を見ないことには見分けがつかないからである。
苔は、大型植物の「雑草」と競争したら負けは決まっている。それではどうするか。重要な戦略は、雑草が芽吹く前に芽吹くのである。立春(2月初め)が、苔の勢力拡大の時期らしい。その時に、私はさまざまな苔の名前を知ることになるだろう。
そうは言っても、名前判明の目星は付いている。
街の中で、コンクリートの隙間にモコモコと生えているのはホソウリゴケ。その他コンクリートにはハマキゴケ、ヘラハネジレゴケがいる。白い苔はギンゴケだろう。荒れ地にぽつんぽつんと生えてゆくのはヒョウタンゴケ。かもしれない。
街路樹に生えるのは、ヒナノハイゴケ、コゴメゴケ、コモチイトゴケなどがいる。
庭の中の代表選手は、ウマスギゴケである。春から初夏に雄株と雌株の胞子体の違いが顕著になるので、楽しみ。それを侵食してゆく背の低いコケはハイゴケだろう。暗がりにいるのはオオスギゴケの可能性が高い。農村にもいる、晩冬から芽吹くのはコバンチョウゴケかもしれない。
早く君の名を聞いて、本格的なお付き合いをしたいと思っている。
2022/12/05 11:09
映画と全く違った
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映画の「土を喰う日々」を観てたいへん面白かった。面白かったが、まさかあんな美人の編集者(松たか子)と懇ろの仲になっていたとは思わなかったが、母方の親戚(尾美としのり)が自分の母親の葬式の一切までも水上勉(沢田研二)に任せ、あろうことか骨壷まで置いていったのをみて、そんなことをありあるのかとビックリして本書を紐解いたのである。
予想通り、そんなことは一切書いてなかった。どころか、未だ奥様は健在だったし、どうも義理の母親の葬式エピソードに似たのは、祖母の一人暮らしエピソードを改変したようだった。中江裕司監督は、真冬の信州の自然に、沖縄の死生観と自然観を注ぎ込んだのだ。
映画にも出てきたが、道元の著書が至る所に出てくる。思うに、その自然観と死生観は、500年を経て尚且つ生命力を持つものだろう。
2022/07/29 13:39
これはホラーなのか?ミステリなのか?
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ホラーとミステリとの親和性はとても高い。
ミステリの祖とも言えるエドガー・アラン・ポーは、ホラーとミステリの両方の傑作から始まった(読んでないけど)事は、とりあえず知っている。
それを真似た日本推理小説の祖・江戸川乱歩もホラー(「人間椅子」等)とミステリ(「二銭銅貨」等)から始めた。私の好きな宮部みゆきもミステリから始めて、今や長大な百物語という怪談物にも挑戦している。
若竹七海のデビュー作(「ぼくのミステリな日常」)も、全体としてはミステリだけど、作中作の12の物語にはホラーが数多く仕込まれていた。
さて、本作である。
ホラー短編集である。が、中には純粋にホラーとは言えない短編も混じっている。むしろ、その境界を曖昧にしようと努力している、テーマも長さも、勿論登場人物もバラバラのこの短編集を、唯一そこを梃子にして編んだ、かのような気さえしてる。
これはホラーなのか?ミステリなのか?
例えば表題作「バベル島」。
どうやら「昨年」イギリス、ウェールズ北西部で世界的な大事件が起きたらしい。その生き残りの日本人青年が残した2冊のノートに、その真相が書かれていた。青年は失語症に陥っていて証言はできない。警察は取り合わない。いったいどんな「恐怖」が書かれていたのか?
ホラー小説とは言え、そんなに怖くない。事件の真相も途中で見えてくる。ミステリとしても秀逸じゃない。じゃあ何故これが表題作になったんだ?
現代にバベルの塔を実現しようとしたジェイムズ・ヘンリー・アルフォンス伯爵の心理がとても「恐ろしい」。たった1人の言い間違いがこんな悲劇を生むとは。実は後でじわじわくるタイプの小説だった。
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