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ヘーゼルさんのレビュー一覧

投稿者:ヘーゼル

1 件中 1 件~ 1 件を表示

信じてはいけないのはこの著者

15人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この著者は,本書やメディアでロシアをこっぴどく貶しているが,一方ロシアメディアのインタビューで何を話しているかご存じだろうか。以下は私がロシアメディアから拾ったインタビューの一部だ。

「日本がロシアと平和条約を結ぼうとしても,いつもアメリカに邪魔される。アフターコロナの世界覇権を制するのはプーチン大統領。日本の世論でもプーチンは大人気だ。領土問題は返還なしのまま日ロ間で完全終結する。それでも日本はロシア製のコロナワクチン欲しさに日ロ関係の関係改善に乗り出すだろう」。

呆れたことに,彼はずっとこうやって,日本では日本の世論やメディアに媚び,ロシアでは現地の世論やメディアにへつらっているのだ。お分かりだろうか。この著者の正体は,とんでもない二枚舌なのだ。日ロ両国がまともな隣国関係を築けずにいるのは,こんな人間がメディアで跳梁跋扈し,日ロ両国の尊厳を傷つけ,両国民を愚弄しミスリードしていることにも原因がある。なかでもこの著者こそが,ロシアメディアに都合のいいように利用され,陰で日本の国益を貶めている張本人なのに,居直って「ロシアを信じるな」とは厚顔無恥も甚だしい。どの口が言っているのか。

著者は,ロシア滞在時の出来事として,詐欺に遭い,レジで釣り銭をごまかされ,タクシーにぼられたエピソードを披露している。しかし,今日のロシアで普通に生活している限り,こんな目に遭うこと自体かなり珍しい。異国の街角で著者がどう振舞っているのか知らないが,よほど悪目立ちするのだろう。無防備で脇の甘い旅行者がカモにされるのは,ほかのヨーロッパの観光都市とて同じ。ましてや自身のホームグラウンドで,こんな古典的なトラブルすら予見できないとはどういうことか。その場で悪人どもをやり込めるどころか,逆に自分が泣き寝入りし,今更こんな本で不満をこぼしている内弁慶ぶりが情けない。

日本が置かれた今日の不甲斐ない現状は,長年ロシアと隣国の立場にありながら,したたかな相手の研究を怠り,口約束に慢心し詰めを欠き,状況の変化に鈍感なまま,長期にわたり漫然と対応し続けた結果に他ならない。こうした経緯は,旅行者としてカモられる著者自身のエピソードと見事にシンクロする。どちらのケースも,平和ボケした者が,厳しい弱肉強食の世界で食い物にされ,いまごろ泣き言を並べている。自分の弱さ・不覚・無知・不作為・無邪気さ・お人好し・言語力不足を棚に上げて,いまさら相手を嘘つき呼ばわりし負け惜しみを言っても,後の祭り。もちろん他国や海外の同業者からは「あんたの自業自得」と冷笑されるのがオチだ。

この人が吹聴していることを,真に受けてはいけない。平均的な日本人がロシア事情に疎いのをいいことに,彼は,今日では滅多にみかけない旧態依然のイメージや後進性を誇張して見せることに躍起だ。彼にとって,現実をありのまま語ることではなく,ロシア嫌いの日本の世論に迎合して歓心を買うことが重要だからだ。しかし彼がメディアを使ってロシアを貶め続け,日本人の安っぽい優越感をくすぐっている間にどうなったか。すっかり立場が逆転し,足元を見られているのは寧ろ日本。ロシアは東アジア圏での存在感を着実に増し,もはや日本の援助など切り札どころか必要ともされていない。こうしたゲームチェンジのなかで,日本がその窮状をどう打開するかが重要なのに,著者は国民の目を現実から遠ざけ,今そこにある危機と現実的な対策を提示することすらできない。読者を誤解に導くこんな代物を「新しいロシア論」「最新の現実」と偽って売り出す出版社も無責任極まりない。

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