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Haserumioさんのレビュー一覧

投稿者:Haserumio

443 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本朝日新聞政治部

2022/06/01 20:19

オールド・メディアへの訣別宣言(読みごたえあり)

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ジャーナリズム(ジャーナリスト)論としても、企業組織論としても、日本政治論(史)としても読める大変読みごたえのあった一書。付箋だらけになった一冊ですが、肝心のいわゆる「吉田調書」問題について、背景・経緯や社内のドロドロをはじめとして実に明快に理解できた。(他の場所に行った東電社員が、「結果的に」命令に違反していたことは明白なので、要は原稿に「逃げ道」を作り忘れたところをさまざまな思惑を有する方々に利用されただけの話に過ぎないとの印象。元を辿れば、ある意味巷間よくある話であり、「のりしろ」と「鷹揚さ」を失くした日本社会や各種組織、職業人などのすさまじい「劣化」とレベルの低下を改めて感得。)著者のますますの活躍を願っています。

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紙の本

紙の本分断と凋落の日本

2023/04/27 16:39

優秀合格答案も偏向採点者が評価すると赤点になる(のであろうが・・・)

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「妖怪の孫」安倍晋三に率いられていた軍団や現政府関係者、右筋の方々からは受け入れがたい内容なのでしょうが、本書に書かれていることのほとんど大部分はどう考えても正しい。(後世の「答え合わせ」が、皮肉な楽しみとなるであろう。)さまざまな問題群の原因と連環が、きっちりと整理されまとめられた一書。文章も明晰で読みやすい。また、次の一文を知ったのも収穫。

「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって、自分が変えられないためである。」(277頁)

ただ、誤植の多さには閉口した。(一例のみだが、12頁、38頁、43頁、93頁、98頁、155頁、167頁、182頁、211頁、249頁(ここは「優秀」では?)、257頁、277頁(ここは「黒地」なのでは?)、299頁、301頁などなど。)また、64頁の「銃殺」という表現はいただけない。せっかくの良書の紙価が、これでは台無し。編集者は猛省を。

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紙の本

いや~、面白かった。売れているのもよく分かる。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「国商」とは、国士にして政商であることの謂いであり(196頁)、「国益とビジネスの結合」(290頁)の喩えでもある。昨日昼前に本が届いて、面白さにハマってしまい、一気に読了。人物ノンフィクション(NF)であるとともに、歴史NF、ビジネスNF、政治NFでもあり、はたまた財界NF、スキャンダルNFであるという具だくさんの混ぜご飯のような一書。唯一、89~90頁と100頁で意味の取りにくい箇所があったが、誤植もなく、近時売れているのもまずは納得の作品。お値段以上の面白本でした。

それにしても、菅元首相の弔辞で有名になった山県有朋の「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」(304頁、306頁)ですが、それ以前の段階で、安倍晋三が葛西敬之を送るそのFB投稿で引用していたという事実を本書で初めて知り、思わずのけぞりました。さまざまな意味で、まったくもって笑える一事かと。

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紙の本

紙の本日本の歪み

2023/09/30 20:30

「道徳の授業で必ず教わるのも「みんなで考えましょう」ということです。どうやってみんなで考えるんだ、と思いますが。」(178~9頁、養老)

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

三者三様の着眼と語り口で読ませる対談集。自然体の養老に、シャープで深い東、多分にボケ役(?)の茂木というキャラ立ちも面白かった(私見)。一方で、「歪み」ということそのものについての定義というか分析がないので、いささかまとまりのない真面目な雑談に終った印象もある。養老氏が各所で、今後想定される大災害に日本再生の希望を見い出している点(氏いわく「地震待ち」(239頁))には、不遜ながら同感した。なお、読みごたえがあったのは第四章(死者を悼む)と第五章(憲法)。誤解をおそれずに云えば、あとは枝葉であった。

「日本語には「AはBである」とだけ淡々と書く言葉の形がないんですよ。」(138頁、東)
「英語だったら高校生でも大統領でも「I」で済むのに、日本の高校生は「私」なのか「僕」なのかでなやまないといけない。言語が高校生のスピーチのあり方自体を規定してしまっているということです。」(142~3頁、東)
「むしろ全てYouで済ませる英語が特別シンプルだから、リンガ・フランカ(国際共通語)になり得たんですね。」(144頁、茂木)
「同時にインターネットがつなぐフラットな世界から見ると、過剰な歴史は余計なことです。GAFAなどのプラットフォーマーにとって、歴史はあまり関係ない。」(210頁、茂木、歴史過剰と未来志向の相反性)

読後の感想を一言で云えば、日本人一般における「実感信仰」の不死身の強靭さということ。近代主義者として批判するむきも多いが、やはり丸山眞男がかつて縷々述べた諸点はいまだ妥当していることを改めて確信した。

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紙の本

大田正一そしてその家族の物語

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昨日午前中に購入して、止められなくなり、本日午前過ぎに読了。贅言は無用。読めば判る一書。(内容が重いため、容易な要約も許されなかろう。)元ネタが、ETV特集「名前を失くした父~人間爆弾”桜花”発案者の素顔」として、2016年3月19日に放送されていたとは知りませんでした(再放送希望)。

「いまさらわしがほんとうのことは言えんのや。国の上のほうで困るやつがおるからな・・・・・・」(34頁、大田正一の言葉)
「大田は上層部に利用されたにすぎないのではないか、と植木はみている。・・・「・・・ 大田さんが発案したことにしとけば、実戦をやってきた人のひとつの考案だったということにすれば、そんなに問題にならない。それをうまく利用された感じがするの」」(48~9頁、植木忠治の言葉)
「こんな大それた、人間爆弾と呼ばれるような大戦略を(大田が)つくり上げたってそんなことできるわけないですよ。・・・ ぼくは、彼は犠牲者だと思っている。何百人をそれで死なせた責任を負わされてる感じがする。(上層部の人間が)あいつがやったんだ、俺じゃないよ、と・・・・・・」(56頁、田浦研一の言葉)
「ぼくは、彼の場合にはものすごく大きな見えない手が動いているような気がする。というのは、ハワイ作戦(真珠湾攻撃)のときの参謀がいたでしょう、戦後国会議員になったのが。あれと関係があるんじゃないか。」(159頁、同上、「使えなかった男」(163頁を参照)源田実のことですね)

個人的には、大田正一の前妻(というか・・・戸籍上の妻? 表現が難しい・・・)である太田時子とその子供たちの話も盛り込むべきではなかったとの感想を抱きましたが、なかなか難しいか・・・

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紙の本

またまた学びの多い一冊

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これは面白いだろうと即決購入速攻読了。お二人の息の合った掛け合いで議論が展開していく読みごたえのある一書で、近時の日本(そして国際)社会について考える上での新たな視野と視点を学ぶことができました。諸所で披歴される参考本も不知のものが多く、今後の読書リストの参考になりました。評者の脳裡に刺さった箇所を幾つか:

「戦争の原因は愛だ」(23頁、尤もこの点は山極寿一氏を俟つまでもなく、ローレンツの『攻撃』の中でも開陳されています。)
「「腐る通貨」・・・ 一定期間で通貨としての価値を失効してしまうから、その間に別の価値と交換しないといけない。」(57頁、これは目鱗で、新井和宏氏の名前とともに覚えさせて頂きました。)
「手当たりしだいに集めたって収拾がつかないよ。・・・「そんなに集めてどうするんだ。無限に生きるつもりか」っていうやつもいる。」(66~7頁、評者のことを云われたのかと思いドキッとした部分。テーマや対象を絞ってそこに集中したコレクションこそ、やはり迫力が違うかと・・・)
「規則という論理だけで考えると、人間が思いもつかなかったようなブレークスルーが起きてしまう。計算のアルゴリズムが勝手に新しい世界を拓いて、その後を人間がついていくみたいなことが起きる。それこそが技術の進歩ということでしょう。」(87頁、「2-4=-2」の話)
「結局、AI社会というのは、われわれが「これが現実だ」「これが自然だ」と素直に考えていたものがなくなってしまう世界だともいえる。そうして、おそらく人間はこれからそういう世界にどんどん適応していく。それが、人間のほうがAIに似てくるということなんだ。」(100~1頁)
「精神主義は短期間しか通用しない」(117頁)
「変わらないところは変わらない。それなら、そういう特性をできるだけ上手に生かすしかないでしょう。」(120頁)
「僕は昔から、「あらゆることに適応的な意味があると考えるのはおかしい」といっていたんだ。・・・ 適応しているように見える場合も、形や行動が変わったから、自分にいちばん適した環境へ進出していったケースが多いと思う。それを事後的に見れば、環境に適応したように見えるわけ。僕はそれを「能動的適応」と呼んできたけど、悔しいから、誰もそれを池田清彦がいい出したとはいわないんだ(笑)。」(141頁)

本書を読み終えて、中国というのはいわばアメリカとロシアの中間型国家であると推察(それに中国社会の特性と歴史が独特の陰影を与えている)。ロシアのような独裁制(但し、「独」裁制ではなく、自民党的な派閥争い的要素(一定の民主主義?)を内包した「民主集中制」な訳ですが)とアメリカの如き弱肉強食を基本とする強欲資本主義(あるいは、それ以上かも)ないしはある意味剥き出しの経済的自由とを合金化した「ハイブリッド国家」がその規定としてふさわしいのではないか、こんなこともつらつら考えてみた次第です。(こりゃ手強いわ。)

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紙の本

滋味豊かにして心の糧となる五篇が収録されています。訳もさすが。

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今月のNHK「100分de名著」の課題図書の一冊であったので、購入・読了。自らの心の在り様を問う五篇が収録されており、人生について考えさせられる。各篇とも、見事な骨格と描写は、さすが文豪の筆になるものと納得。(特に、「火をそまつにするとー消せなくなる」の後半などは、あたかも映像を観ているかのよう。)

「おまえが悪をもって悪を滅ぼそうとすれば、それはおまえに返ってくるだよ。・・・ 人を殺せば、自分の魂が血だらけになるだ。お前は悪人を殺したつもりでも、-悪を滅ぼしたつもりでも、そのじつおまえは、それよりもっとわるい悪を、自分のうちへひき込むことになるだ。災難には負けているがいい。そのうちには災難がおまえに負けるようになるよ」(123頁)
「彼は、この世では神がすべての人に、死の刹那まで、愛と善行とをもってその年貢を果たすように命ぜられたのであることを、さとったのだった。」(178頁)
「同じく敬虔なキリスト教徒でありながら、まったく異なった性格の所有者である二人の老人を対置することによって、形式的教会キリスト教と、真のキリスト教とを対立させ、形式打破の精神を高調しているところ、この人の作品としてまことにふさわしいものといえる」(188頁、解説より)

年に何冊か、こういう本は読みたいなと改めて感じました。

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紙の本

「田丸と光子」「ペリリュー島のマリヤ」で感涙

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『ペリリュー』本編のサイド・ストーリー集。案の定というか、標記二作品で感涙。やはり、本編読了後に読むべきでしょう。

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紙の本

公共政策における「ショック・ドクトリン」と企業経営におけるそれとの違い

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『ショック・ドクトリン』そのものは2度も購入しておきながら、ボリュームに圧倒されて手が出ていないのですが、本書(というか本番組)は裨益するところ非常に大。収められた具体例もそれなりに多く、大いに勉強になりました。

企業の場合、それまで出来なかった経営改革が「ショック・ドクトリン」で実行され経営の実が挙がることも多く、割とpositive imageみたいなところもありますが(例えば、COVID-19禍をテコにこれまで出来なかった生産性改革を実現し、業績が前よりも改善)、そうした事象との落差が、正に政治的なるものにおける公平性や公共性の存在(重要性)を示していると思う。

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紙の本

ミネルバの梟は夜に飛翔するのである

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「本丸」を落とすべく、まずは堀を埋める狙いで一読。大いに知的好奇心を喚起されました。新書としては厚目ですが、内容的には(著者自身の語りになる)173頁までと鹿島茂氏寄稿を読めばよいかと。(大澤真幸氏と東畑開人氏パートは独りよがりの雑文。渡邊英理氏パートは最もシャープでしたが難解。佐藤優氏パートは安定の佐藤優品質。鹿島茂氏パートは読者目線の叙述と補論で、裨益するところ大。)

「産業資本主義が成立するためには、それを強いる、何らかの観念的な「力」が不可欠だったということです。宗教改革からそれは来た、とヴェーバーは考えた」(135頁)。
「生産関係が変わるのは、その基底にある交換のあり方が変わるからです。したがって、社会的関係の「土台」(下部構造)は「交換様式」にある、といわねばならない」(140~1頁)。
「宇野はそれらを峻別し、史的唯物論は"イデオロギー"であるが、『資本論』は科学である、と主張したのです。・・・ 宇野の考えでは、『資本論』は、産業資本の致命的な欠陥を示した。それは、産業資本が本来商品となりえない労働力を商品とすることによって存立していることです。この特殊な商品は、必要だからといって、急に生産することができないし、不要だからといって始末することもできない。そのことが資本主義経済に、決して解消し得ない困難と危機を必然的にもたらす。これは、今日も起こっている事態です。たとえば、少子・高齢化や移民の問題」(143頁)。
「定住後は、その地域では確保できないものが出てくるから、どうしても交換をせざるをえなくなる。しかし、交換の相手は他の共同体の見知らぬ者なので強い抵抗が生まれる。では、そうした抵抗を押し切って、彼らは交換に踏み切ったのか、あるいは彼らをしてそうせざるをえなくさせたものはなんなのか?・・・ それを成り立たせたのが、各人の意志を越えた『霊』の力である」(271~2頁、鹿島氏パートより)。
「「原遊動性(U)」は「向こうから来て」交換様式Aを発動させたのだから、その交換様式Aの高次元での回復であるはずの交換様式Dにおいてこれが強く作用していないはずはないからである。では、この「原遊動性(U)」が反復強迫的に「向こうから」回帰してくる兆候は現在の世界には存在しないのか? 私はあると思う。それは先進国における人口減少と、発展途上国における人口爆発である」(280頁、同上)。

上記の引用からも、来たるべき様式Dが、今後の人間存在(の重視)や労働の在り様と深く連関していることは明らかであろう。なんにせよ、「引力」のみならず、「国家権力」や「政治権力」というワードもあるわけなので、柄谷氏のいう「力」(force)があるという認識はなんらの問題も惹起しないように評者には思われた。

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紙の本

知らなかった史実や新解釈がてんこ盛りの一巻

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

極上の面白さの一冊。知らなかった史実や新解釈がてんこ盛りの一巻で、巻末の「参考文献」のうちの何冊を即買い。1590(天正18)年から翌年にかけての朝日姫と大政所、豊臣秀長の連続死について、「ある研究者は、この時期の聚楽第には何かしらの伝染病が蔓延していたのではないかと唱えている」(150頁)との注釈が入っており、興味深かった。

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紙の本

紙の本角栄に花束を 第8卷

2023/05/16 22:19

サンフランシスコ講和成って、「クリスマス内閣改造」「福永幹事長指名事件」「抜き打ち解散」へと

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第8巻が出ていたのを見逃していたところ、今週気づいて即購入一読。吉田茂たちの動静を軸に戦後政治のエッセンスがギュッと濃縮されており、これまでの巻と同様にパンチの効いた内容となっていて堪能。

「金は渡し方が難しい 実は受け取る側の方が心苦しいのだ 決して"くれてやる"などという気持ちで渡してはならぬ」(129頁、角栄の名言ですが本巻における描写を読んで改めて納得)

衆議院解散時のバンザイを「ヤケクソの万歳」(189頁)というというのは、本巻で初めて知りました。ああ、続巻が待ち遠しい。

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紙の本

「文字を越えようとする文字」(7頁、柳宗悦の表現)

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

4福音書そのものはかつて岩波文庫版で読んでいたのだが、その際の理解がいかに浅かったかを教えてくれた番組のテキスト。山場は第4回。番組とテキストでは、細かいところで若干のズレがあるので、付き合うなら両者を是非。

「イエスにとっては、ユダは単に自分を嫌った人ではありません。イエスがどうしても最後に背負わなければならない試練を準備する人、それがユダだったのです」(102頁)。
「イエスは嘆きの言葉とともに逝った。私たちもまた、そのように弱い者としてこの世を後にしてもよいのではないでしょうか」(105頁、イエスは「神の子」であって「神」そのものではない。神の意図はイエスにもわからないのである)。
聖書には「マグダラのマリアが(復活した)イエスを見た、とは記されていません。何らかの姿をしたイエスが彼女の前に「現れた」というのです」(109頁、イエスの復活とは「3.11」後にみられた死者との対話現象のようなものか)。

次回の『精神現象学』も大変楽しみである(かつ、その次の『ショック・ドクトリン』も)。

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紙の本

「歴史は繰り返さないが、よく韻をふむ」(199頁)

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の真実探求への情熱と文章からうかがえるお人柄などがよく伝わり、快読させて頂きました。肩の凝らない(?)好読み物。個人的には、「細川家に伝わる「光秀謀反」の真相」「秀頼の実父に新候補」「三代・徳川家光の「女装」」「尾張藩主の連続死に迫る」「赤穂浪士の「吉良の首切断式」「鼠小僧は「義賊」にあらず」と「孝明天皇の病床記録」の7篇が印象に残る。(評者の読書傾向がモロ出しですが(笑)。)

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紙の本

紙の本今日のミトロジー

2023/01/21 17:44

さまざまな気づきが得られる神話学的思考の玉手箱

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

評者自身何となく意識の奥底でぼんやりと感じていた微細な世界把握を見事に言語(イメージ)化してくれた冒頭の「スケートボードのポエジー」で唸らされ、以降の各篇を堪能。なるほどこういう捉え方もあるのかと目鱗の一書でした。

「この国の文化そのものが、深層においてミトロジーを土台になりたっているのかもしれない。日本文化の豊かさもまたグローバリズム化された世界で露わになっているその弱点も、そこに起因している」(3頁)。
「高度な現代の科学技術を操れて、資本主義の経済システムにもおじけづかない日本人の心の中には、それとはまったく異質な「野生の思考」が生き続けている。そのことが、現代世界の競争を生き抜いている日本人に、弱点と長所とを与えている。弱点と言え、いやというほどたくさんある。いまだに村のモデルにしたがっている社会の作り方、それを拡大した会社の人間関係、政治家と官僚の思考様式の古さ、個人を超えた共同体の力にいつも怯えている心性など。これは「野生の思考」型の社会が、そのまま近代に突入してしまったときに起こりうるちぐはぐな不調和で、これは克服すべき弱点である。しかし日本人の心の中に、「野生の思考」が生き続けていることがもたらす長所のことも、忘れてはならない。・・・「野生の思考」は人間と自然の間に壁を築かないところに、その特徴を持っている。この点は、人間と自然の間に壁を築くところから、文明を作ってきた西欧とのもっとも大きな違いである」(28~9頁)。
「技術は人間と自然の媒介者であって、自然の抑圧者などではない。日本の技術はこのことを忘れないかぎり、未来にそのユニークな地位を失わない」(32頁)。
「西方世界では、合理的なロゴスが普及していったが、東方のアジアではそれとは違うレンマの思考が発達していた。レンマの思考法では、ものごとを直観によって全体的に理解するやり方がもとめられる。たとえロゴスから見たら不合理なことでも、全体性の中に飲み込んでしまうのがレンマである。・・・ ロゴスとレンマは、人間の脳の構造にセットされている、二つの異なる知性の型をしめしている」(147頁)。
「人類の男性は、猿から受け継いだ多くの弱点を持つ動物である。・・・ こうした猿以来の特質が合わさって、人間の権力欲が生まれている」(153頁)。
「大乗仏教では、この世界は妄想的知性によってつくられている、と説かれている。この妄想的知性は、ものごとを二値論理(0と1によるデジタル論理)で処理する「分別値」のスクリーンをとおして、世界を見ている。しかし現実は二値論理などでできていないから、とうぜん分別する知性は、現実世界を見ていないことになる。それが妄想世界をつくる。大乗仏教は、このようにつくられた世界からの脱出をめざす思想である」(155頁)。
「かつて ・・・ 動物の遺体は、人間の遺体を扱うように慎重に取り扱われて、ていねいに食べられた。こういう感覚が失われだしたのは、人間が動物の家畜化をはじめた頃からである」(195頁)。
「日本人はこの不安定な大地の上に、その文明を営んできた。そのせいだろうか、ここでは確実な真理を打ち立てようとする情熱が芽生えることは稀で、堅固な論理よりも、揺れ動く情緒のほうが好まれてきた。今日、日本文化の独自性と言われていることの多くは、そのあたりから発生している」(235頁)。

少しずつ読み進めているうちにいつの間にか多幸感に包まれながら読み終わっているという、知ることの悦びを感じることのできる一冊かと。

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