M.B.S.Lさんのレビュー一覧
投稿者:M.B.S.L
| 3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
2022/08/14 22:40
小川洋子さまの(個人的)最高傑作
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
読み終わった後に脳裏に浮かんだのは「美しい」という一言でした。主人公(リトル・アリョーヒン)の一生が、選びぬかれた言葉で語られています。それは例えて言えば一遍の壮大な詩です。物語で印象的に描かれる人物たちは皆「弱い人」、つまりこの世界の片隅にひっそりと、誰からも気づかれることなく生きている人たちで、彼らは大きな声を持ちません。これは小川先生ご自身が語られたことで、小川先生の作品に共通するものなのですが、この作品ではその傾向が極めて顕著に顕れています。なにせ、人物名が出てこないのです。「リトル・アリョーヒン」というのは主人公が操る人形の名前で、「ミイラ」というのは主人公にとっての少女の呼び名で、他に出てくるのといえば「マスター」、「祖父」、「弟」、「老婦人」......。どれも、特別でないものです。でも、これが物語の静謐さを醸しています。
この物語は、チェスを軸にしたものではありますが、チェスの知識は不要です。この本の主題はあくまで人物であり、チェスの技巧ではありません。だから、誰でも味わって読むことができます。かなり独特な内容なので、小川先生の作品が好きでないともしかしたら「面白くない」と思う方もいるかもですが、どうか味わって呼んでください。魂で、こころで、感じてください。声を潜めて「リトル・アリョーヒン」のさえずりを聞いてください。その繊細さに震え、その美しさに息をするのも忘れるでしょう。
この作品は、決して難しくはありません。堅苦しさではなく、寧ろ「やさしさ」。声を持たない人の声をきちんと拾ってくれるという安心感。そして、その「声」を宝石のように丁寧に扱い、そっと守ってくれる美しさ。そういったものがすべて混じり合い、協奏曲を奏でています。「ナツメヤシの種でできた世界一小さなチェスセット」も、しっかりと存在感を放てます。
私は、いまこの時代に生きていることを感謝しました。この作品は洗練されすぎている。言葉に無駄がないのです。なんだか、超越的存在が私達にくださった恵みのようにすら思いました。この本は本当に読んでよかった。この心の震えを、もっと多くの人に感じてもらいたい。ぜひ、手にとってください。そして、最後の響きまで味わってください。この本は、私の過去一〇年の読書生活で出会った中で最高の作品です。私が小川洋子先生のファンになったきっかけです。作者様のすべてが凝縮された、とても濃密な物語です。どうか、どうか心を震わせてください。
ヘヴン
2022/04/16 21:50
一度は読むべき作品
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
主人公の心情の移り変わりがとても丁寧にかかれていて、比較的読みやすく感じました。
特に、最後の表現が美しく、文学作品を味わう悦びを震えと共に感じられました。
本当に読んでよかった!
ですが、いじめが主題なので凄惨で陰鬱な描写は心地よいものではけしてありません。
| 3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
