うさぎこぞうさんのレビュー一覧
投稿者:うさぎこぞう
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蒲生邸事件 新装版 下
2022/06/12 02:59
ドキドキするけどそれだけじゃない
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旧版で関川夏央が解説していたように、この物語の真の主人公は「歴史」なんだろう。
18歳の孝史も他の人物も、現代に生きる私たちも、大きな歴史の流れに逆らうことはできないけれど、その中でどのように考えどのように生きるかを選ぶことはできる。
蒲生大将の死の真相や孝史は現在に戻れるのか?という謎を追いかけて、わくわくしながら読み進めた。でも謎が解き明かされていくに連れて、いつの時代に生きるにしろ、平凡な時間の積み重ねこそが尊いものであると改めて感じさせられるようになっていった。
読んでよかったと思った。
エリザベスの友達
2022/04/24 21:14
少し苦いけど、静かでユーモアのある小説
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老人ホームに入居中の初音さんは認知症が進み、娘たちのこともはっきりわからないし、日常動作も緩慢だ。人の手を借りないと食事もできない。でも初音さんは意識の中で若かった頃に生きている。優雅で楽しかった日々。辛かった思い出もあるはずだけれど、甘く輝く思い出ばかりが現在のことのように目の前に広がる。このことは娘たちもホームのスタッフも知らないこと。
ホームの他の入居者たちも、人知れず現在と過去を境目なく自由に行き来する。
彼ら彼女らは側から見ると理解できない言動も多いし、スムーズに動くこともできない。惚けたようにただそこに座っている。かと思うと時々激しく動く。その様子を常温の感じで写し取っている。
入居者の家族たちはそれぞれ心配したり、現状を受け入れたりしながら彼ら彼女らを見守る。
老人たちを美化せず、でも悲惨に描くこともしない。
あたたかくてユーモアのある作品。
現実の老人たちのホームでの暮らしぶりは飾り気のない描写の一方、主に初美さんの見ている「幻の現実」は霞みがかったような砂糖菓子のような筆致。それが違和感なく混ざり合っている。
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