きみくんのパパさんのレビュー一覧
投稿者:きみくんのパパ
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月の満ち欠け
2022/07/05 15:59
小説としての設計図の巧さを感じる
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
テーマの面白さもさることながら、計算されつくした(であろう)展開の緻密さは、読後に唸らずにはいられない。
暇と退屈の倫理学
2022/07/22 15:22
タイトルほど「お堅い」内容ではありません
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「暇」という時間観念と「退屈」という自己観念の関係性を倫理学的思考で深堀りしていく。こう書くと何やら堅くて難しくて興味が湧かないのだが、「暇」だから「退屈」なのか、「退屈」だと「暇」なのか、というパラドクスのような思考の整理を、過去の哲学者の思考の足跡を追いながら追及していく。小気味よいテンポの文章表現に、ついつい吸い込まれてしまう読み物。認知バイアスという生理学的なアプローチの視点を踏まえて読み込んでいくと、人間がもっている「知」の追求・欲求を哲学・倫理学的に補強できるような印象を受ける。人間という生き物が持つ「哀しい」側面とそれがゆえに人間というアイデンティがあるというまっとうな事実とを眼前に突き付けられた。
ニューヨーク、雨でも傘をさすのは私の自由
2022/10/21 11:30
ニューヨークあるあるがありのままに
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生活してみないとわからない、体験してみないとわからない、ニューヨークの「あるある」。世界中から吸い寄せられるように万人が訪れるこの街では、世界中の常識が、日本人たるわれわれ「エイリアン」の相手。でも、いつしかその常識が心地よくなるのも事実で、「エイリアン」としての立ち位置が、生活者としての「ニューヨーカー」に代わってくる、その心持ちの移り変わりを、この一冊の中でストレートに表現している。
グッド・フライト、グッド・ナイト パイロットが誘う最高の空旅
2022/07/04 11:10
描写の美しさは飛行機好きにたまらない
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翻訳者の苦労が伝わってくる、パイロットによる情景描写の繊細さと心情心理描写の微妙なニュアンス。タイトルの通り、まさに空旅に誘われるための一冊。一操縦士のエッセイなのか、物語りなのか、読者自身がコックピットに、客席に、そして世界の街角に、しばしばふっとトランスバートしてしまう語り口に、新鮮さを覚える。
グッバイ・イエロー・ブリック・ロード
2023/05/09 08:46
今回はスピンオフ気味な…
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今回はシリーズの中ではちょっと異色なストーリー展開だが、シリーズを通して、この先品でちゃんとネタを「回収」して、そしておそらく、このあとの作品への「仕込み」を入れているのだと感じた。相変わらず「一気読み」できる作品。
逃亡くそたわけ
2022/08/24 08:31
あり得ないけどありそうな展開
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精神疾患者の療養施設からの逃避行の1週間を描いた作品。主人公の設定が、そもそも精神疾患者であることで、逃避行の中にプロットされる、あり得ないがあってもおかしくない、という自由度が高い展開を引き出しているとも読める。主人公の直情的な選択が、ストーリーに面白みの抑揚をつけ、事後的な自己分析で、自分の行動をセトルしていく。時間経過を伴う感情の「揺れ」に、逃避行の同行者との、微妙に交わることのないやり取りkら生じる瞬間的な「行き違い」とのバランスに妙味を感じる。
あたしたち、海へ
2022/07/04 11:19
いじめる側といじめられる側
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ストーリーそれ自体は、「スクールカースト」と「いじめ」を題材としたある意味描きつくされた内容だが、井上荒野さんの筆力と展開力は読みごたえあり。社会的な善悪を単純にストーリーに込めるのではなく、それぞれの立場の人間の行動を理解する上で必要以上に人物を登場させない、そういうメリハリの利いた展開が、読む側に過不足感を与えない、ストレートさが出ている。
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