紅井無蘭さんのレビュー一覧
投稿者:紅井無蘭
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収容所から来た遺書
2023/01/17 03:46
当たり前こそ、力強い文化である
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シベリアに抑留された日本人捕虜の山本幡男。亡くなるその瞬間まで、山本が日本文化を愛し、信じた奇跡を描くノンフィクションである。
そこには、不用意な愛国精神はない。そんな大上段に構えた厳めしい精神が作品に込められていれば、そんな作品は簡単に歴史の中に埋没したことだろう。むしろ、このノンフィクション作品に流れる精神は、ただ当たり前の生活や文化への愛着である。
収容所の苦しい生活の中で山本は、日本の暮らしや文化を忘れない。山本は、俳句の会を開催しては、仲間たちの帰国への希望を鼓舞し続ける。まさに文化の力を信じなければ、不可能な営みである。
最後、山本に鼓舞された仲間たちは、山本の遺書を彼の遺族へと届けるべく、並々ならぬ努力を傾ける。出会うはずのなかった人々が、強い文化の力によって結ばれ、奇跡を起こすさまは、久しぶりに涙なしには読めないものであった。
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