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投稿者:みちなり
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日本の歴史問題 「帝国」の清算から靖国、慰安婦問題まで 改題新版
2023/05/13 11:29
日韓、日中の歴史的和解の道を探る
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本書では日本の国家承認を得た講和条約を起点に一連の二国間の平和条約・賠償協定の束を「講和条約体制」と呼び、一応の歴史問題の封じ込めとアジア太平洋の秩序安定の基盤にしてきたと論を進める。しかしながらその基盤がもたらす領土、戦争賠償、帝国解体の処理(植民地支配の精算)、国内の戦争責任の判別と引き受け、慰霊や追悼の問題(靖国問題)のこれら五つの難題が生じ、日本は対応に迫られてきた。
論構成の骨格は過去から現在の歴史管理の様相と齟齬を密接に繋ぎ合わせている。難解で一方向な理解に終始されがちな問題を、本書は見事に論点整理して、日本と周辺に横たわる溝と歴史的問題を平易に叙述している。
最近の日韓関係のシャトル外交を念頭において、この問題の本来の解決とは何を意味するのかを多くの人が思うだろう。だからこそ著者の幅広い検討と論点は参考になる。より複眼的視点を得たい方に必読を勧めたい。
一方で、末尾の著者の提案は日本全体の歴史認識を右左問わず、大胆にするような期待を含んでいる。また終章で各国のグローバルな帝国観の広がりに触れ、その「見たくない未来」の到来から平和のため、帝国日本の歴史と戦後の後始末の見直しが必要と説明する。実際、グローバルな安全保障の拡大が続き、敵味方の別を明確にする機会が増えている。そして本書の出版後に日本は防衛費増額、日米統合が進み、「見たくない未来」への対応は相当に加速した。「見るべき過去」のために、より著者の指摘は重みをもって重要になっていないだろうか。
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