樋口悟さんのレビュー一覧
投稿者:樋口悟
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沼の夢
2024/02/12 03:35
イチオシです
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
『世界で一番すばらしい俺』につづく工藤吉生さんの第二短歌集。
衝撃こそないかもしませんが、稀有なユーモアは切れ味があり、爆笑しながら読みました! 笑えるだけじゃなくて、家族のことなどじわっと心に染みる歌もあります。実は幻想的な一面も垣間見ることができる一冊でもあるんです。夢中で一気に読みました。
読みやすいので短歌をあまり読んだことない人にもオススメできますし、また、読み込むと深い味わいがあるような、噛めば噛むほど味のある歌の数々とも感じましたね。大切にして、何度も読みたい本です。オススメです。ヨシオ沼に一緒にハマっちゃいましょう。
大好きな歌をいくつか。
見かけより歯ごたえのあるパンだけどオレもそうだぜパワーでかじる
言ったってどうせ信じてくれない、と涙流したけど嘘だった
「それだけのことだ」と言って長ーーーーーーーーーい説教終わる
高校の頃の自分に出会いたい嫉妬渦巻く目をのぞきたい
冬の枝 こころぼそさに君の名を呼んだらこらえられそうにない
浅い川 底がいくらか見えていて寝苦しい夜ゆううつな朝
見かけより歯ごたえのあるパンだけどオレもそうだぜパワーでかじる
世界で一番すばらしい俺 工藤吉生歌集
2024/02/12 03:37
世界で一番すばらしい
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新進気鋭の歌人、工藤吉生さんの第一歌集。
私自身、短歌の本は初めて読んだのですが、57577の世界ってこんなに素晴らしいものなのだと知りました。
まずタイトルが目をひきます。タイトルで思わず読んでしまいましたが、どれも無根拠な全能感と、そこからくる挫折と自己嫌悪、無気力、諦観などどれも陰キャには突き刺さるところがありすぎてすっかり気に入ってしまいました。
冒頭の「校舎・飛び降り」が鮮烈な印象でした。失恋した高校生が校舎から飛び降りてしまうのです。それを短歌で描いているのです。この出来事は作者の中で深い根を張っているのでしょう。全編を通じてそれが幹のように貫いていると感じました。
中には「ああ人は諭吉の下に一葉をつくり英世をその下とした」などクスリと笑わされる作品もあります。
自分と他の人が違い世界のように感じたり、世間に対して鬱屈した気持ちを持ったり、ままならない人生にもがいたり、こんな気持ちの時もあると共感しながら読みました。ファンになりました。
ほかにも好きな短歌がたくさんありました。
うしろまえ逆に着ていたTシャツがしばし生きづらかった原因
秋がくる 床屋の椅子に重大な秘密があって欲しいと思う
三人で歩いていれば前をゆく二人とうしろをゆくオレとなる
この人にひったくられればこの人を追うわけだよな 生活かけて
公園の禁止事項の九つにすべて納得して歩き出す
東京に行って頑張りたいなどと聞こえるベンチにまどろんでゆく
オレ以外みんな真面目に生きていて取り残された気のする深夜
眠るため消した電気だ。悲しみを思い返して泣くためじゃない
膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番すばらしい俺
時には激しく心を揺さぶり、時には寄り添ってくれる、工藤吉生さんの短歌。ぜひ多くの方に手にとってほしいです。
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