マルグリットさんのレビュー一覧
投稿者:マルグリット
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エヴァーグレイズに消える
2004/05/09 11:02
マグレガー様、御見それいたしました。
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と、透明人間! これはまずい。透明人間+エヴァーグレイズ(「狂おしい血」の舞台)とくれば、苦手なジャンルのマグレガーだ。けれど、MWA受賞作。まさか、SFホラーではあるまいと、しぶしぶ読み出すと、これがおもしろい。今までと、ちょっと違う。
自らすすんで、政府の秘密実験に参加した夫婦。その3年後、キャンプ旅行先で、思わぬことから実験に巻き込まれた親子3人。この2家族を軸に物語りは展開する。それぞれ違う背景を持ちながら、追われる身となる2家族。
追跡の手から、なんとか逃げ惑う透明人間達。狩られる者と狩る者、その展開が実にスリリング。緻密な心理描写はお手の物のマグレガーだから、透明化した人間の心理状態は、読み手をぐいとつかんで離さない。とまどい、苦しみ、絶望、なかでも、唯一子供である娘ケイティの感じ方は、興味深い。読み進んでいくうちに、自分もまた、透明人間になったかのごとくその世界に入り込んでしまう。また、透明化が、身体にどういう変化を及ぼすかという描写も細かく、リアルで、まるで、映像を見ているかのように楽しめる。
誰でも一度は、透明人間になったなら、と想像したことがあるだろう。だが、そんな楽観的な想像を陵駕してしまうのが、この作品だ。
いつもは、ずしんと重たく、なかなか読むのに力の要るマグレガー作品ではあるが、この作品は、中盤から一気に読み通せた。今回の作品も、透明人間あり、シャーマンあり、易までも織りこめられ、まさにマグレガーといった世界を展開しているのだが、従来の作品にみられた行き過ぎの感が薄く、それぞれが互いをうまく引き立たせている。科学者とシャーマン、透明人間と普通の人間、対比的にとらえがちな関係だが、二つの世界が織り成す融合世界は、まさにマグレガーの本領発揮といったところか。
普通の人間世界への唯一の接点が、インターネットというのも現代風透明人間として、親しみさえ感じてしまう。
一種、「闇」さえ感じさせる作品の多いマグレガーではあるが、この作品は、ストレートにおもしろい。
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