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yhoshi2@mb.neweb.ne.jpさんのレビュー一覧

投稿者:yhoshi2@mb.neweb.ne.jp

3 件中 1 件~ 3 件を表示

河井道の思想形成

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

天皇の戦争責任。戦後生まれの我々でも、生涯に何度かは必ず出くわす重い質問である。
主人公 河井道、敬虔なキリスト者でありながら、いやそうであったからこそ、敗戦後間もない時期にGHQの高級将校に向って、心底から「陛下をお救いなさいまし」といってのけることが出来たのだろうか。
そして、その助言が実際にマッカーサーを動かし、連合国の最終的な「天皇無罪」の判断を導き出した背景の(しかも決して小さくない)ひとつとなった、ということを筆者は残された記録、丹念な取材から明らかにしていく。
その手法はまるでミステリーの謎解きだ。
さらに、そうした河井道の思想形成にとって、北海道、函館での幼少期のキリスト教との出会い、そして札幌での米国人宣教師(スミス)そして新渡戸稲造との深い人間的なつながりが非常におおきかったと筆者は推測する。
そして総仕上げは明治31年からの米国留学。
戦前の「教育勅語」の影響を奇跡的に免れ、かつアメリカ人と対等に議論の出来る見識と英語力をみにつけて帰国した河井。
彼女が帰国後の生涯を捧げたのは当時まだ軽視されていた女子への高等教育の実践であった。
こんな凄い女性がいたということ自体に驚きを感ずるとともに、彼女の生涯を決定づけたいくつかの要因が今日では喪われつつあのではないかとの思いに暗然とする。
90歳を超えようという当時の教え子たちがいまだに目に涙を浮かべながら熱く語る「河井道」の生涯の物語、特に臨終の場面はからだが震えるような感動を覚えた。
近頃珍しい、重量感のあるドキュメンタリー。

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紙の本噓つきアーニャの真っ赤な真実

2003/03/18 02:13

社会主義体制崩壊に翻弄されたたアーニャの「嘘」と「真実」

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まずは装丁がいい。真っ赤な表紙に渋いパステル調の特徴ある屋根が続く挿画はタイトル「プラハにて」。ストーリーは1960年代、父親の仕事の関係でチェコはプラハのソビエト学校に通った筆者マリが出会った3人の同級生、リッツア、アーニャ、ヤミンスカとの10代前半の5年間にわたるみずみずしい交友を描くところから始まる。まだ東西冷戦下、ソ連・東欧各地のみならず、世界中から出自も性格も異なる同年代の子供たちが集っての稀有な教育環境。(当時はまだ「国際共産主義」なる言葉がそれなりに通用しえた)子供たちの息づかいまで聞こえてきそうな臨場感一杯の筆致。筆者のストーリーテラーとしての才能躍如といっていい。そして帰国後30年が経ち、今は「バツいち+子持ち」のロシア語翻訳者となったマリが、音信不通となった彼らを探す旅に出るという設定。その旅は「社会主義崩壊」後の余燼くすぶるルーマニア、ユーゴ、ロシアなどをごく僅かな手がかりのみを頼りに辿り歩くスリルに満ちたものとなったわけ。結局3人のすべてに劇的な再会を果たしたものの、彼らが生きた30年は戦火・流血・裏切りに満ちたロシア・東欧の現代史そのもの、ということがわかってくる。平和ぼけ「日本」からは想像もできない過酷な話。しかし一筋の救いは再会後のマリと3人との間で交わされる果てしない会話にこめられたウィットあふれる表現。読んでいる途中何度も声を出して笑ってしまうほど。おかげで家族からは怪訝な視線を浴びせられたが。


星野 裕
最近は谷川志穂、米原万里と女性作家の本に傾倒。雪に降り込められる毎日の読書の友はやっぱり「異性」の方が似合うということか。それとも最近読み応えある骨太の男性作家に出会わない(?)からか

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紙の本海猫

2003/03/15 10:04

ハコダテの昭和30年代

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

南茅部は道南にある人口数千の鄙びた漁村。昆布では日本一の折り紙もつけられているここはまた海猫が大群をなしてやってくることでも有名。海岸の岩礁が海猫で真っ白に埋め尽くされる光景は圧巻。そこで昆布漁を営む逞しく一途な漁師が、函館から川汲(かっくみ)峠を越えるバスで降り立った白無垢の花嫁を迎えるところからストーリーが始まる。彼女は1/4ロシア人の血をひく匂いたつような美女。満州から引き上げてきた母・弟とともに函館に住んでいた。当時まだ北洋漁業の景気で沸き立っていた函館からあえて南茅部という寒村、それも不慣れな漁師の妻を選んだ主人公には何か心に期すものがあったものか。そして結婚生活。最初は夫のあふれんばかりの愛情に包まれ幸福の絶頂。しかしその彼女が、夫の弟と不倫の愛の末に最期はほとんど心中同様に南茅部の海岸に身を投げることで結婚生活は無残な終末を迎える。とまあ、こう書くとありきたりの不倫小説のようだが、作者の筆は主人公の揺れ動く心理描写に周辺の多彩な人間模様と社会背景を絡ませて上手い。数奇な人生を送る母親(最期は元町でピロシキを売る店を成功させる)、そして弟(典型的放蕩息子、大門の遊郭の女と駆け落ち)、一方の夫の両親(父親は生粋の昆布採りの漁師、母親は姑の典型)そして兄とはまったく性格の異なる弟(北洋船団乗り組員から後はハリストス正教会の鐘つき)などが、昭和30年代の函館・南茅部を舞台に、まるで実在のごとく息づく。父親の違う二人の娘が祖母(主人公の母)の許で美しく成長し、母親が身を投げた南茅部の崖っぷちに立って、ことの真相を知るというエンディングもまるで一幅の絵をみるようで、思わず目頭が熱くなること必定。もちろんフィクションだが、当時のハコダテの町、特に正教会と元町周辺、大門の遊郭、北洋漁業船団などがよく書き込まれていて、取材の確かさがうかがえる。函館の戦後の一時期を知る上でも価値ある一冊。

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